名刺の残量が少なくなってきた。僕の名刺は、石巻市の料亭 「さとう」 の社長、佐藤英悦さんのそれを真似たものだ。普通サイズの倍の大きさで、二つ折りになっている。
表紙にあたる面には日本語の表記。裏表紙にあたる面には英語の表記と、Macintosh Classicを操作する猿のアイコン。この猿の下に "Human is ape who uses computers" の文字。そして中を開くとその全面に、とても見やすい会社の地図が現れる。
数年前から何度も改版をして、おおむね気に入っているこの名刺だが、ただ一点、日本語のフォントが気にくわない。
僕が初めて名刺を作ってもらったのは、20年以上も前のことだ。何の変哲もない名刺だったが、実は文字が手書きだった。これは後に、自分のデザインによる名刺を作ろうと、出入りの印刷屋にそれを見せたときに分かったことだ。
手書きの文字は鉄筆によるもので、シロウトには活字との判別がつかない。しかし何とも涼やかで、清潔な文字だった。この手書きの名刺を作った印刷屋は、今となっては特定できない。また、鉄筆による仕事をこなす職人も 「昔は、いたんだよねー」 と、既にして幻の扱いだ。
僕の現在の名刺には、この鉄筆の文字にもっとも近い感じの写植文字を使っているが、それでも不満は残る。
最近になって、宇都宮の器屋 たまき から届いた案内状のフォントが、鉄筆の文字にひどく似ていた。早速、田巻社長に電話で質問をしたところ、これは新宋体というフォントで、彼のMacからプリントアウトできるという。
次回に作る名刺には、このMacの新宋体から直接に写植を起こし、ペイストしようと考えている。
夜、ユニクロ へ行く。常識はずれの安値。圧倒的なQ(quantity)の勝負。
京都の "easy" で買える、UnitedSports社のHeavy weight cotton T-Shirtに比べれば、ウンザリするくらい欲しくないTシャツを売りまくったユニクロ。Champion社の重厚な製品に比べれば、いささか心許ないスエットシャツを並べるユニクロ。
しかしながら、品質と値段の均衡点よりは、ずっと低い価格で商品を売るユニクロに、客足の途絶えることはない。
これから1年間、旅行をして暮らそうとしている人がいたとする。出発前に衣料を揃えようとすれば、ユニクロは重宝な店だろう。ちょっとした防寒着が、わずか1900円で手に入る。
気分一新、いままでの服をすべて捨てようとしている人がいたとする。新しく統一のとれた服ばかりを部屋の隅の箱に収めようとするならば、ユニクロへ行くことは、最も手っ取り早い手段だろう。
ユニクロが海外へ出るとしたら、その1番店は英国の街に似合いそうだ。あのオースティンミニが車の持つ階級差別を破壊してしまった英国に、ユニクロの思想は大いにフィットしそうだ。
日銀短観とは 「企業短期経済観測調査」 であって 「日本銀行の希望的観測」 ではないだろう。しかし日銀短観を新聞で読むことと、盛り場でタクシーの運転手さんに 「どうすか最近、景気の方は?」 と訊くこととは、割合に似ている。
市場のムードが色濃く反映される、アナログなデイタ。街の気分に左右される、我田引水のデイタ。
それはさておき、我が社の 「ムード」 や 「気分」 からすると、やはり景気は好転しているように感じられる。日光東照宮の特別拝観や紅葉見物による渋滞の繁忙とは、明らかに違う 「何か」 を感じる。
そしてその「ムード」 や 「気分」 に浮かれて、僕はつい濫費をしてしまう。
宇都宮の グリル富士 へ行って、夏には200gのステーキでガマンをしたところ、本日は250gのヴァージョンを注文してしまった。舌の上で溶ける脂がしつこ過ぎず、しかし物足りなくもない。
大きく乾いた音を立ててキャッチャーミットにめり込んだばかりの、ミルク色の硬球のような美味さの凝縮。
社会の「ムード」 や 「気分」 を盛り上げるためにも、みんなが自分のできる範囲内で 「濫費」 をしたら良いと思う。
子供のころから知っている酒屋のオヤジが、電話をしてきた。
「よう卓ちゃんよう、うちのカーヴにシャトーラトゥールの90年モノが12本あるんだよ。買ってくんねぇかな。木箱入りだよ」 (僕の本名は卓哉)
「ラトゥールの90年モノですか」
そう。ビンテイジもんだぜ、よー」
「えぇ、それは分かりますけど、高いでしょ?」
「今さ、市場価格は13万だってんだよ。それの半額で良いから、どうですかー?」
「ハハハ、1本6万5千円ですか。12本だと100万ですね」
「そんなことないでしょう、えぇっと・・・78万だよ。よー、人助けだと思ってさー」
「いや、財布を逆さにして振っても、ゼニないですよ、僕」
「卓ちゃんがそんなこと言ったら、世の中ひっくりがえっちゃうでしょうよ、まったく」
「いえ、ホントに」
「ラトゥール飲んでホロ酔いかげんでさ、天上から地上の不景気でも眺めていてくださいよ」
僕は自分でも感心するくらいにゼニがない。普通預金の残高が数千円台になることもザラだ。
高校生がプラダの5万円の靴をはいたり、20歳代のOLが50万円のエルメスのバッグを持ったり、カタギが1本10万円のワインを飲んだりする世の中は、やはりおかしい。
そしてワインは人が買う前に、高騰する前に買わなくてはいけない。
どんなことでも、どんな場合でも、意志決定は素早く間髪を入れずに行わなくてはいけないという強迫観念が、僕にはある。飲み屋でさえもそうだ。
白い上っ張りと白い三角巾の店員が、あるいはカウンターの向こうのオヤジが 「ご注文をうかがって、よろしゅうございますか?」 と訊いてくる。僕は品書きをチラリと瞥見し 「お酒、お燗で。あと、みつばのお浸しお願いします」 などと即答をしてしまう。
尻のポケットから文庫本をとりだし、これから読むべきペイジを開いて、手のひらでごしごしと、開きっぱなしになるよう紙にクセをつける。
おもむろに壁の品書き短冊に目をやると 「泡盛」 の文字。「豚足せいろう蒸し」 の文字。
「あー、やっぱりあれにしときゃ良かったなぁ」 こういことが、少なくない。
2年前の5月、ワケあって 浪花ろばた八角 社長の吉田ゲンチャンと、三浦海岸駅前の飲み屋へ行く機会があった。
よくいえば小栗公平の映画に出てくるような、昭和30年代初期の香りのする飲み屋。悪くいえば掘っ建て小屋。明かりはジージーと音のする蛍光灯。
僕は入店するなり、壁の品書きをサッと見て 「ビール。それから、そら豆と冷やしトマト」 と、割烹着のおばあさんに頼んだ。
ゲンチャン、これにいたく感心をしたらしい。「キャリアが違いますね」
初めての店の場合、入るなりその店の雰囲気をつかみ、間違いの無さそうなお酒を注文し、外れそうな料理を避け、またそれほど時間のないときには、直ぐに完成する肴を頼む。僕もこれで、瞬時にいろいろなことを判断しているらしい。
それでも 「あー、やっぱりあれにしときゃ良かった」 を、僕は月に2度ほども経験する。
家でとる夕食でさえ、飲み屋のようなメニュが好きだ。
高知県幡多郡佐賀町黒潮1番地の明神水産から取り寄せた 「一本釣り・藁焼き鰹たたき」 が、めっぽう美味い。パンフレットを信用するならば、ワラであぶったというカツオが、真空パックの冷凍便で届く。
醤油と酢とカボスとをあわせたタレにカツオのたたきを沈め、タマネギ、ミョウガ、ミツバのみじん切りと大根おろしをてんこ盛りにする。これをグジャグジャとかき混ぜる。
脂の乗ったカツオが強めの酢となじんで、とても美味い。美味いからどんどん食べ進みたいところだが、悲しいことに量に限りがある。我ながらケチくさいと思いながらも、一切れを一度に口に入れることはせず、3回に分けて食べるつつましさ。
タレの残骸に熱い豆腐を投入して食べるという野蛮な流儀が、これまた悪くない。しかし今日は、豆腐の用意はなかった。
お酒は神亀の槽しぼりかめ口。カツオのたたきのように力の強い食べ物には、あまり合わない優しさ。しかしグランテトラの水筒に入れて、冷蔵庫で冷やしておいたお酒はこれだけだ。
「お酒に申し訳ないな」 と思いながら飲む。
吉田兼好が徒然草のなかで 「最近は誰でもカツオを食べるが、むかしは身分の高い者は、このようなものを食する習慣はなかった」 と書いていたことを、思い出した。
朝の3時に目を覚ます。eメイルをダウンロードし、必要な分については返信をする。4時過ぎに再び就寝。6時に起床し、6時30分に甘木庵を出る。花小金井にある、自由学園で7年先輩の小野さん宅には、8時前に着いてしまった。
僕は自由学園卒業生のためのメイリングリストPDN(Primary Dougakunotomo Network)の管理者を引き受けている。管理者のやっかいな仕事のひとつに、バウンスメイルの処理がある。
バウンスメイルの原因は多岐に渡る。そしてメイリングリストへ送られバウンスするメイルは、会員数が多い場合、バカに出来ない数に登る。
バウンスメイルの処理係が、仕事で海外へ行くこともある。自前のコンピュータを使いながら、現地でバウンスメイルの処理をすることは、並大抵の神経では勤まらない。
「バウンスの原因を突き止め」
「送信者にバウンスの現状をメイルで伝え」
「返信の無いときには直接に電話を入れ」
それでも捕まらないときには、送信者の同級生にメイルを送付して連絡の代行を頼み
事態を収拾させる。
空港の公衆電話で、ホテルのビジネスセンターで、管理者は黙々と奉仕の仕事をしている。
メインテナンスフリーのNIFTYのデジタル会議室PATIOを使っていれば、このような消耗戦を強いられることはなかっただろう。しかしメイリングリストではなくNIFTYの会議室を使う、という僕のアイディアは現実性に欠けるとして、1996年当時から早々に却下されていた。
特定の管理者に過重な負担のかからないよう仕事を割り振ることは、組織運営の基本だ。これからは僕もPDN(Primary Dougakunotomo Network)での仕事をひとつ増やし、バウンスメイルの処理をしよう。小野さんに、そのノウハウを一から伝授された。
商品パンフレットの減りが速い。
今年の4月から、新しくペイジ数の多い商品パンフレットを使い始めたが、その在庫も底を突いてきた。このヴァージョンには、校正で発見できなかったいくつかのバグがある。次回の作成までに、そのデバッグをしなくてはいけない。
世の中には、重箱の隅をつつくような校正の天才がいる。しかし僕はまったく、そのような才能には恵まれていない。この数ヶ月間に見つけた校正ミスをチェックし、蛍光マーカーで位置を特定する。
印刷物について、画像も含む細かい手直しを行うときには、注文主とデザイナーの間を直に結ぶ必要がある。
間に営業マンを介在させると、どうしても顧客の希望がデザイナーに伝わりきらない。これは隔靴掻痒の欲求不満を、顧客とデザイナーの双方にもたらし、また結果として納期の遅れを引き起こす。
今回は印刷会社はそのままに、デザイナーだけを換えた。仕事相手との相性は大切だ。池袋の喫茶店にて、現行のパンフレットにある間違いや不具合を数十ヶ所、新たなMac使いに伝える。
当方の要求に応える新しいデザイナーに、確かな手応えを感じる。紙の上にフリーハンドで細部を確認していく彼女のペン先に、新しい信頼を感じる。
新ヴァージョンのパンフレットの出来上がりが、待ち遠しい。
夜、本郷の飲み屋へ行くと、おかみが 「これ、このまえ忘れませんでしたか?」 と、僕の手帳とボールペンを持ってきてくれた。確かに今月の17日に、僕が見失ったものだ。思わず 「そうです、僕のです。よく分かりましたね、凄い!」 と答えて、それを受け取った。
そして 「これは言ってはイケナイことだ」 と思いつつも、ついにガマンが効かずに 「あの、指輪はありませんでしたか?」 と訊いてみたが、こちらの方は見当たらなかったという。
このあたりが、僕がまだ大人になり切れていないダメなところだ。
「年末ギフトのご案内」 DMは雨の中、無事に郵便局の赤いクルマへと積み込まれた。顧客への到着は、明日かあさってになるだろう。
夜は 本酒会(ほんしゅかい) の10月例会。
本日分の日本酒10本10リットルを準備するのは、酒屋でもある根本会員の役割りだった。しかし本人はそのことを、すっかり失念。夕方になって異変に気づいた僕が電話で連絡をすると、本人は未だに自分の当番に気づいていない。
係の大慌てとは逆に、本人はいたってノンビリという感じ。
失念というよりは、次の係を指名する会報を、ハナッから読んでいないということだろう。
急遽、根本会員の店にある 「そこそこのお酒」 を本酒会場である蕎麦屋 「やぶ定」 へ運んでもらうことにする。当然ながら、地元のお酒が中心の飲み会になった。
本日の得票第1位は、福島県・夢心酒造の 「夢心純米吟醸」 総合点20。
第2位は広島県・酔心根本店の 「酔心純米吟醸」 総合点19。
第3位は山形県東北銘醸の 「初孫生酉元純米酒」 総合点12。
「酉元(もと)」は本来、ひとつの漢字だが、僕の使っているワードプロセッサATOKには、この文字が見当たらない。どなたかお持ちの方がいらっしゃったら、僕までメイルにてお送りください。
僕の一押しは 「松の寿」、次点が 「初孫」。
逆に 「これはちょっとなー」 と感じたのが 「関の蔵」 と 「末廣」。
「関の蔵」 で特に感じられる麹臭が、僕はとても苦手だ。
出品されたお酒が一巡すれば、あとは飲むも帰るも自由だ。「やぶ定」 の外へ出ると、11月も近いというのに、柔らかく降る雨は、まるで春のような暖かさだった。
デイタベイスから昨年10月の販売実績をみると、本日の第4日曜日が最も繁忙であることを示している。天気は薄曇り、道路は相変わらず、我が社の前から日光東照宮まで7Kmの渋滞。
「人のゆく 裏に道あり 花の山」 とは、古くから相場師の好む俳句だ。遊びにおいても、人と一緒に動けば、花の山や紅葉の山はそれだけ遠くなる。
ところで僕の良くない性格のひとつに、行楽や遊山への腰の重さがある。ウチからクルマで数十分以内にある多くの観光テーマパークへさえ、まったく行ったことがない。
お客様から 「面白い?」 などと訊かれると 「はい、良いようですよ」 などと答えるが、これは第三者からもたらされた無責任な情報を、そのままお伝えしているに過ぎない。
紅葉についても同じだ。
僕のホンダ製トライアル用オートバイで北へ向かえば、わずか30分間で日光のかなり奥まで浸透することができる。しかしながら毎年何百万もの人を集める日光の紅葉を、僕は生まれてから一度として眺めたことはない。
午後からは小雨になったが、客足は衰えずに伸び続けた。今年も第4日曜日が、10月で最も繁忙な1日になるだろう。
新潟県の長岡市に来ている。トンボ繊維 の社長である板東秀行さんによる脳力開発・戦略行動学研修を受けるためだ。
脳力開発とは、第二次世界大戦の後も中国に留まり、山西省野戦軍の指揮を執った、城野宏が提唱した学問だ。常に戦略と戦術を明確にし、可能性を求めて科学的に行動することを学ぶ。
行動指標の確認、歴史上の人物の考えや動きの検証、またケイススタディなどからなるカリキュラムは、既に昨夕から始まった。
昨年7月に東京で開かれたMG学会における、「薬師庵」 山下社長と 「ちぼり」 古屋工場長のお話を聴いたこと、同じく10月に初めて受けた脳力開発・戦略行動学をきっかけに、我が社は年間PQ(売り上げ)の面でも人事の面でも、どんどんと良くなってきた。
夕方4時30分に研修は終了した。今日は薄曇り。上越新幹線から降りた大宮で再び 「いづみや」 へ行き、「ゲソワサ」 「串カツ」 「ポテトサラダ」 「目玉焼き」 と、焼酎1杯に泡盛2杯。これにラーメンで2500円弱。
天井近くに置かれたTVは、ジャイアンツ対ダイエーの日本シリーズ。3対1でジャイアンツのリードだった。
新潟県の長岡市へ行くため、昼過ぎにJR今市駅を出る。
大宮駅の上越新幹線ホームへ上がり、キヨスクで井深大の幼児教育についての文庫本を2冊を買う。電光掲示板を見ると、連絡が良くない。長岡へ停車する列車が来るまで小一時間、待つようだ。
ビープが鳴り、ゲイトの閉まる自動改札機に阻まれる。駅員に切符を見せ、中央通路に出る。
東口の 「いづみや」 へ行く。いづみやは朝10時30分から夜10時15分まで、低廉な肴とコップになみなみ注がれた焼酎で客を待つ、上出来の飲み屋だ。24時間に15分足りない営業時間は、なにか条例との絡みでもあるのだろうか。
僕の入店時間は午後2時30分。店内は4人がけのテイブルが3つと、細長いカウンターが縦に3本。昼下がりから酒を楽しむオヤジ連中が10名強。僕の好きなシテュエイション。
水色の上っ張りと共布の三角巾をつけたオバチャンに、燗酒とモツ煮を注文する。
ザックから金子光晴の 「アジア無銭旅行」 を取り出す。この本に感情というものがあったなら、本当はバタビアあたりの屋台で、耳たぶほどの羊肉を刺した串焼きを食べながら、読んで欲しかったかも知れない。燗酒コップ2杯とモツ煮1皿で550円。
国境の長いトンネルを抜けると、越後湯沢は大宮と同じ小雨模様だった。長岡まではあと70Km強。しかし時間にすれば、僅々20分の距離に迫った。
朝4時から、「年末ギフトのご案内」 送付先を、毎日の受注を入力したデイタベイスから抽出する。
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他にもいろいろな考えを組み合わせながら、検索条件式を考える。いつも頭を悩ませるところだ。 検索条件が決まったら、それに従ってデイタベイスからDMを送るべき人の抽出に入る。
この作業は割合に面倒なため、以前マクロ化したこともある。しかしかゆいところまで手の届いた 「最終抽出」へ至るには、やはり手による作業が欠かせない。ミスの許されない細かな仕事のため、電話や来客に邪魔されない早朝に行うことが肝要だ。
1時間少々で、大まかな抽出は完了した。ここから更に
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というような 「パンの耳落とし」をする。最後には打ち出されたタックシールを、ヴェテランの社員が目による超アナログな確認をして 「最終のダメ出し」 とする。
来週には、この 「年末ギフトのご案内」 が無事に投函されることだろう。
甘木庵にて目覚める。二日酔い。銀座だけにしておけば良いものを、地元に帰ってきてまで飲むから、こういうことになる。冷蔵庫からお茶を出して、大きなコップで2杯。
きのう身につけていた下着と靴下が見当たらない。あちらこちら探し回って、脱衣所のゴミ箱の中にそれらを発見する。風呂場の床が濡れているところからすると、シャワーはしっかり浴びたらしい。
昨日の日記を書き、サーヴァーに転送する。ついでにeメイルをダウンロードすると、既にコンピュータリブから昨日の訪問に対する礼状が届いていた。たとえCCメイルにしても、きめの細かい心遣いだ。
浅草から、朝8時発の東武日光線スペーシアに乗る。車内にてPATIO(NIFTYの電子会議室)のチェック。少しでも書く手が遅れると、人の発言はスレッドの上流に置き去りにされたまま、自分だけが下流に流される。
気がつけば 「まもなく下今市」 のアナウンス。これが流れると、ほとんど余裕もなしにスペーシアは下今市の駅へ到着する。あわててThinkPad240Xの電源を落とす。DOSのときのようには、コンピュータは直ぐに閉じてくれない。
ショルダーバック、切符、携帯電話、コンピュータをむき出しのまま抱えてホームに降りた。こういう行為が、また物を紛失する失敗に繋がっていくことは分かっている。いつまでも直らない悪癖だ。
今日は "World PC Expo 2000" の関係者招待日だ。コンピュータリブ のマヒマヒさんからもらった招待券を持って、午後3時過ぎに東京ビッグサイトへ行く。今月5日の "TOKYO PACK 2000" の静けさとは対照的な混雑に驚く。
会場には "COMDEX" や "BUSINESS SHOW" と同じく、低音の効いた大音響と、極端に増幅された声によるプレゼンテイションが、洪水のようにあふれている。いち早く目的のブース位置を検索し、たどり着かないと、耳からの疲労で行動する意欲が漸減する。
コンピュータリブは、動画も含む画像の保存検索システム "Mr.Cheese" を展開中だった。この "Mr.Cheese" は、参加する人が増えれば増えるほど、巨大なデイタベイスになっていくところがミソだ。マヒマヒさんの成功を祈りたい。
それはさておき、ここ2、3年、落とし物をするクセが顕著になってきた。本日の紛失物は 「ゆりかもめの切符」 「ボールペン」 「手帳」 それに 「指輪」だ。
夜になって銀座で2軒、本郷で1軒を飲み歩いたが、カバンからボールペンや手帳を出したことはなく、また指輪を外すなどということは、更に考えられない。頭の中には大きな 「?」 が、増えるばかりだ。
「秋遊び」 という季語がありはしないかと、稲畑汀子編 「ホトトギス季寄せ」 をあたった。そのような季語はなかった。しかし秋十月が持つ季語は、他の月に比べると明らかに多い。
「渡り鳥」 から始まって 「きつつき」 まで、22も鳥についてのものが並ぶ。「初紅葉」 から 「紅葉且つ散る」 まで、紅葉のつく季語は19。「木の実」 から 「はまなすの実」 まで、実にまつわるものに至っては47を数える。
秋とは、これらを愛でるために外へ行く季節なのだろうか、バスによるお客様の数が、今日はずいぶんと多かった。月曜日にもかかわらず、前日の日曜日に迫る数の商品が売れる。
日曜日に出かけて月曜日に帰るという旅行のパターンが近年増えてきたことも、見逃せない。今市市から鬼怒川温泉への途次にあるテーマパークのパンフレットにも 「火水木曜日なら、ゆっくり遊べます」 などいう一文がある。
曜日に関係なく遊んでいる、あるいは曜日に関係なく働いている僕は、自分のリズムに固執することなく 「最大公約数の余暇動向」 を学ぶ必要がある。
店を休むことによるクレイムは耳目に届かなくても、実際にはとても多く存在すると考えられる。それまでの月曜日定休を廃止し、今年の5月から店舗の年中無休体制を確立できて、本当に良かった。
「利便性に欠ける商売をしていると叱られ」 かつ 「お金が入ってこない」 という 「苦の二乗」 が、これてひとつ解決できたことになる。
MG1日目、第1期において準備された300の資本金は、第3期の終了時291で折り返した。商品をあとひとつ売っていれば、自己資本は300を超えていたことになる。
「ゲイム中に損益分岐点を超えると、そこでとたんに販売の手を弱める」 という僕の欠点が、既に表れている。
自己資本が300を超えていれば、第4期の期初に 「自己資本×1-前期末の借入残高」 の長期借入が受けられる。自己資本が300以下のときには 「自己資本×0.5-前期末の借入残高」 の借り入れが限度になる。この差は大きい。
MGは勝ち負けのゲイムではない。自分の考えを検証するため、自分のアイディアをシミュレイトするため、自分の予想に反する何かを顕在化させ確認するためのシステムだ。
ゲイムの展開は自分の目的によって、自由自在に組み立てればよい。
ときどき陥穽が待ちかまえていたり、あるいは逆に突然の幸運が訪れたりして、当初の経営計画を狂わせたりもする。しかしMGの名人上手は逆境を乗り越え、あるいは最初からリスクをヘッジし、また偶然のラックを上手に生かして、自己資本を積み上げていく。
僕はなかなかに頑迷な人間だ。ゲイムにおいても安売りはしたくない。研究開発の効いた高価な商品を少数のみ販売して、会社を維持しようとする。
そしていつも結果は 「ハイP(高くて)ロウQ(売れませんでした)」 となる。
今日はいつもの意地を捨て、いつもより1割ほど低い価格で、売り個数を増やしてみることにした。相場は相場に訊け、市場は市場に訊け。市場なりに沿ってゲイムを展開することも、大切なことだ。
第5期の展開は、激しいものだった。
入札に勝つため、戦略費を恐れず追加投入する者、大量の社員を雇用し、低い利幅で膨大な数の商品を売る者、そして市場にではなく、その大量販売者に自社の商品を安く納入する者、最もPQ(売上高)の高いA卓の6人が、それぞれの方法で激突する。
結局、僕の自己資本は5期終了時で412。2位の410を僅差で抑えて、32名の参加者中トップとなった。1位から3位までの表彰状は、自己資本の高い順に渡される。PQ(売上高)の高い順ではない。これは当然だろう。
今日の僕のMGは 「値頃感のある、客足の途切れない店」 をゲイム上に展開して、それに成功したようだ。しかしながら次回のMGもこの戦術で勝てる保証は、どこにもない。
今日はMG。MGは、開発者の西順一郎が直に指導するものでなくてはダメだ。あるいは常に西順一郎とコミュニケイションを保ち続け、MGの進化に付き添っている人がインストラクションをするものでなくてはダメだ。
自分でMGを経験せず、取材だけでこれを記事にしようとする経済誌の記者も、またダメだ。見ただけで、何が分かるのか?
品川区大崎のMG会場へ行く。10時からMGの第1期が開始される。出席者は30名強。ひとつの市場は5、6人で形成される。この5、6人がMGをプレイするテイブルが会場に6つ、作られる。
2日間にわたる1期から5期までのゲイム中、出席者は自身が上げたPQ(売上高)によって、より競争の厳しい市場へ駆け上がったり、あるいはより小さな市場へ突き落とされたりする。
MGを続けることによって、参加者は経営の仕組みやそれについての数字を理解し、強い会社、良い会社を育てていくすべを身につけていく。また主権在民のコンピュータ技術を習得していく。
MGは副次的効果として、人間を向上させる力を持っている。これについて論理的な説明をすることは、なかなかに難しい。
ゲイム中に損益分岐点を超えると、そこでとたんに販売の手を弱めるところが、僕の短所だ。実際の経営において、血の小便を垂れるような経験をしていないことが、こういうゲイム展開に繋がっているのかも知れない。
夜9時に会場を出て、20名ほどが近くの飲み屋へ移動する。様々な業種、広い年齢層の人間が歓談をするこの集まりが、また参加者を磨き、向上させていく。
夜、高校生とふたりで、銀座7丁目の寿司屋へ行く。高校生をちょっと指し、板前さんに 「こちらはおかませで」 と伝える。「ふたつずつ、握ってよろしいですか?」 「はい、それでお願いします」
僕はヤリイカの煮たので燗酒。
シカゴカブスの帽子を後ろ前にかぶった高校生の前に、まずはトロ。
・・・「きれいなトロだね」
次に赤貝。
・・・「他にも貝はあるけれど、赤貝か」
次に、活き白魚の軍艦。
・・・「をいをい、値の張るものばかりじゃないか?」
心の中で言っている分には、波風は立たない。
「巨人とダイエー、日本シリーズはどっちが勝つと思う?」 「巨人です」
高校生は、二者択一の際の歯切れが良い。
支払いは、予想した価格の半額だった。
高校生と別れ、西五番街3丁目の立ち飲みバー"MOD"へ行く。ドライシェリーとドライベルモットとジンをシェイクしてオンザロックスにした変形ソヴィエトを1杯。次にオールドパーベイスのロブロイをオンザロックスで1杯。
通りは金曜日の夜にもかかわらず、あまり多くの人は歩いていない。こういう日には、いわゆる 「安い店」 は外からでもひと目で分かる。「お客で鈴なりの店」 イクォール 「安い店」 だ。
外食産業や衣料品の世界では 「非常な低価格を」 「異常に高い販売数量」 でバランスする業態が、明らかに増えている。
僕のコンピュータはThinkPad530から535、240と、徐々に軽くはなったものの、表面積は増える一方だ。これまで韓国製の安いThinkPad専用かばんを愛用してきたが、240に至ってさすがに、無理矢理詰め込む感じになってきた。
数年前、知人の持っていた LAGASHA のショルダーバッグを見て好感を持った。その彼に今になって問い合わせてみると、種々の欠点もあり、これは薦められないと言う。また、LAGASHAのデザイン・コンセプトも、当時とはずいぶんと変わったようだ。
ということで、次の候補として吉田カバンの、厚い木綿にビニール・コーティングしたものを考えた。検索エンジンが 田中かばん店 というオンライン・ショップを探し出す。
僕が持つ多くの欠点のひとつは 「ギリギリを好み、余裕を退ける」 というものだ。「大は小を兼ねる」 などということには、我慢がならない。
バッグの大きさを慎重に検討する。ThinkPad240をELECOMのスポンジ袋に入れ、またいくつものモバイル道具を納めるとすると、LINERシリーズ の951-9236という型番が、最も適しているようだ。
さっそく田中かばん店にeメイルを送り、重量や質感について質問をする。コンピュータが軽くなるかわりに、その入れ物が重くなっては困る。
そして今日、その吉田かばんのショルダーバッグが届いた。目で見て、手で触って満足する。細部の縫製は、まるで定規を当てたように精密だ。
コスモ天地堂が銀座から消えて、バッグの購入はずいぶんと不便になった。10年以上も前からこの店で眺めては 「いつか欲しいね」 と思っていたショルダーバッグが、ついに自分のものになった。
1万円台のバッグを10年もかかって買うなんて。僕は耐久消費財の購入には、なぜかとても慎重な人間だ。
預金通帳を眺めて 「俺はどうして、こんなに金が無いのか?」 と、不思議になる。本日、普通預金口座から10万円を引き出したら、残余は4万円になった。
楽天市場でワインを扱っている 和泉屋 からメイルマガジンが届いた。こういうときに限って、"Domaine Leflaive"の最も安いワイン"Bourgogne Blanc 1998"の入荷を知らせている。
"Domaine Leflaive"の優秀さは、ワイン輸入商の老舗ミツミが、いまだ銀座に現存した1990年代の初めに知った。そのとき手に入れたストックは大切に飲んできたが、それも底をついてきた。しかもミツミはダックという会社に身売りし、今は既に無い。
昨年の9月、和泉屋に"Domaine Leflaive"によるワインの取り寄せが可能かどうかのeメイルを送った。和泉屋は 「難しいながらも、トライしてみる」 との返事をよこした。
そして2ヶ月後、和泉屋はこの製造元の赤ワイン"Blagny Sous Le Dos d'Ane 1994"と"Bourgogne Blanc 1998"を、各々12本ずつ送ってきた。ウェブ・ショッピングとは、なんと便利なシステムだろう。
そして和泉屋はついに、"Domaine Leflaive"のワインを定期的に扱うようになったらしい。"Bourgogne Blanc 1998"を12本注文した。かくして僕の預金残高は、ますます減っていくことになる。
宇都宮パルコへ行く。旧市街の百貨店は、あまり元気が無い。どの街にも見られる現象か。このパルコでも某有名レストランの撤退や、ショップの頻繁な出入りが見られる。
4階の"LA PAX"で、吉田カバンLINERシリーズの表面の質感を確かめる。欲しい型番は品切れ。
6階のハロルズギアで、革ベルトの在庫調査。見るだけのつもりが、若いのに珍しく慇懃で笑顔の良い店員のために、1本を購入することになってしまった。
近年、僕の腹は太くなる一方だ。小学校の頃からいつも健康診断書には 「痩せすぎ」 と書かれ続けてきたが、今夏の人間ドックでは、ついに 「肥満」 との評価を得た。
ベルトには穴がいくつあっても、真ん中の穴を使わないと格好が悪い。ハロルズギアで売っている最も長いベルトは34インチだ。いまやこれしか、僕の腹に合うサイズは無くなってしまった。
パルコ裏の、名前も知らない汚い中華料理屋で昼食。鍋の下のゴトクは脂に脂が重なって、ダースベイダーにも似たオブジェになっている。壁もカウンターもベタベタ。品書きは何年も書き換えられていない。それでも店は満員。
僕の注文は、いつも醤湯麺(じゃんたんめん)。この醤湯麺が美味いかどうかと考えると、よく分からない。それでも僕が昼どきに宇都宮の中心部にいれば、いつも昼食はこの店で摂る。
人を惹きつけるお店の不思議というか、そこになぜか蝟集してしまう人間の不思議というか。ヒトとはまことに、論理的な解析の不可能な生き物だ。
ウチは国道119号線と121号線の 交差点角 にある。日光までは5Km、鬼怒川までは15Kmの距離だ。
今日は連休の2日目で、激しい渋滞。たぶん日光までは2時間を要するだろう。クルマは完全に "creep" 状態だ。
渋滞の原因その1は、輪王寺大猷院廟奥の院、つまり徳川家光のお墓が、建造された17世紀以来、初めて公開されていること。この公開は、東照宮や輪王寺が世界遺産に登録されたことや、NHKの大河ドラマと連携したものかも知れない。
タクシーの運転手さんによれば 「日光はこの400年で、最高のにぎわい」 だそうだ。
渋滞の原因その2は、日光田母沢(たもざわ)御用邸が整備され、記念公園として一般公開が始まったこと。
この御用邸は大正天皇が皇太子のみぎりに建造された、和風宮殿様式の建築。赤坂離宮から移築された部分が、その中心をなすらしい。建物の総面積だけで1360坪。
見学をしてきた人の話によれば、廊下を連なって歩く人々が、後ろからの新たな人たちに押されて、トコロテンのように出口まで押し出される盛況らしい。
経済においてはあまり良い知らせに触れることのない昨今、日光の街のにぎわいは、ひさかたぶりの光明。この盛況を、なんとか来年につなげたい。
次男の運動会。ウチでは長男と次男の年齢差が10歳あるため、次男はまだ幼稚園の年中組だ。
10年前、僕は幼稚園の父母会副会長だった。今では若い父親たちにその任が与えられている。当方としてはとても気が楽だ。責任を持たない者の開放感を味わう。
係を受けている家内が先に家を出て、次男は僕が9時を目安に幼稚園まで送っていく。途中、家内から、既に園児が入場ゲイトのところへ集合している旨の電話が入る。
僕が人の話をいい加減に聞いているために、こういう事態が出来(しゅったい)する。
「9時に家を出ればよいのか」 「9時までに幼稚園へ着いている必要があるのか」
という細部を、まったく聞き流している。僕はズボラとパラノイアの複合体だ。
まるでTV局のクルーのような装備で、ヴィデオ撮影をしている父親がいる。他にも、入場門の近くに三脚を立てて待機する父親が多数。このあたり、グータラな僕は反省すべきか否か。
仕事のために会社へもどり、昼食の時間を見計らって再び幼稚園へ。そしてまた会社へ。
「職業に貴賎無し」 とはいうが、次男の運動会を見ていて 「幼稚園の先生というものは、銀行員よりも位の高い仕事だなぁ」 ということを、しきりに感じた。
午後2時30分ころ、次男は園児全員に渡される金メダルを首から下げて帰ってきた。雨は降らず、事故もなく、良い運動会だった。
自由学園の体操会。母と家内と僕の3人で、午前8時30分に東久留米市の自由学園に着く。
体操会が始まるのは午前10時。それまで、生徒が育てている2頭のブタを見にいったり、同じ卒業生の知った顔を見つけて立ち話をして過ごす。空は快晴。
運動会ではなく体操会と呼ばれる通り、自由学園の体操会に徒競走や騎馬戦は無い。
デンマーク体操 を基礎にした転回、組立、ボール体操、クラブ体操、ダンスなどが、サッカー場ほどもある 大芝生 の上で続く。
今日この場にいない人のために、あるいは後の楽しみのために、ヴィデオカメラで体操会の様子を撮影する。
ヴィデオ撮影とは 「記録を残す行為」 ではあっても、「記憶を残す行為」 ではない。ファインダーや液晶を通して対象を視認するとき、風景はただちに現実感を失い、その輝きは退化する。
負荷に耐えてふるえる筋肉、褐色の皮膚に載る汗。難易度の高い技を無事に成功させて、安堵と感動に号令の声を詰まらせる壇上のリーダー。濃い感動は常に 「生」 の接触から発生する。
昼休みには、記念講堂でブラスバンドの演奏会がある。中等科3年生の長男は、そのビラ配りのために15分間で昼食を済ませ、深い緑の中へ浸透していった。
午後7時過ぎ、銀座5丁目の 「おぐ羅」 へ行く。突き出しのない料理屋では先ず、すぐに出てくる酒肴を注文することが肝要だ。冷酒と莫久来とキヌカツギ。
それらを食べ飲みながら、すかさず次は土瓶蒸し。ふたを取ると、ハモと松茸。夏と秋の混交。味と香りが濃く、めっぽう美味い。
鰹のたたきと、それを食べた後のポン酢、ネギ、紅葉おろしなどの中に、熱い豆腐を投入するこの店の定番。冷たいたたきから、熱い豆腐への劇的な変化。
魚はキンキの煮付け。頭骨の中のドロドロを、チューチューと吸い取る。飯を軽く一膳所望し、煮付けのタレをそこにかけ回して食べる。この行儀の悪い食べ方は、人を喜ばす天才である、この店のオヤジにむかし薦められたものだ。叱られる心配は無い。
オデンはぜんまいの油揚げ巻き、京菜の湯葉巻き、それにつみれ。お酒はいつの間にかお燗から焼酎のオンザロックスへ。
いつものとおり料理屋や飲み屋で長っ尻をしない僕は、滞留時間45分で店を出る。
バーへは行かず、コリドー街のスターバックスコーヒーで、エスプレッソのホイップしたものを飲む。午後9時に甘木庵へ帰着した。
東京ビッグサイトの "TOKYO PACK 2000" に行った。包装資材、梱包機械の展示会だ。取引のある商社に、あらかじめ自分の調べたい会社名を知らせておく。これが僕のいつもの方法だ。
広大な敷地、膨大な数のブースから目指す会社を見つけることは、骨の折れる作業だ。勝手を知った営業マンに案内をしてもらえば、この展示場に滞在する時間を、大幅に短縮することができる。
ゆりかもめで新橋まで戻り、銀座に出る。地下鉄銀座線車内の手すりに、その場所が何号車の何番扉であるかを示す点字シールが貼ってあった。新発見。
僕のコンピュータはここ数年で、ThinkPad530から535、そして240と、表面積が拡大する一方だ。重宝していた韓国製のThinkPad専用バッグでは、そろそろキツくなってきた。伊東屋6階でバッグの下見をする。この階には業務用として、ダークグレイのi-Macがあふれていた。
並びの銀座松屋がリニューアル中。5階のセレクトショップ "SOHO'S SHOP" で、オレンジ色の地に大きな黄緑と紫のダイヤ模様を並べた、派手なマフラーを買う。ここではディスプレイに、G4Cubeが奢られていた。
フロッグデザイン社による知的で合理的な外観を、マックが取り戻すことは、もうないだろう。
日本橋丸善の隣に "Berlitz" ができ、この1階に "Beck's" というコーフィーショップが入った。ホットハム&チーズサンドウィッチとグレイプフルーツジュースにて休憩をする。
今日、街で見かける姿の良い女の人は、おしなべて茶系の服を身につけている。偶然なのか、流行なのか?
東武日光線スペーシアの中で、昨日の日記を書く。列車の中は誰にも邪魔されない、ホントに作業のはかどる空間だ。夕方、甘木庵にてその日記をサーヴァーに転送する。
夜6時、自由学園の同級生である小茂鳥君と、新橋のローズ&クラウンで会う。ジントニック、モスコウミュールから飲み初めて、やがてイタリアの赤ワインに移る。
アボカドのフライをタルタルソースにディップして食べる料理が美味い。カキの香草焼きも注文する。もうカキの季節か。200gのローストビーフを二人で分けて食べ、この店は締める。
タクシーで六本木に向かう。溜池から坂を上がると、六本木の交差点付近は何かの工事で込み合っていた。途中でタクシーを降り、誠志堂書店ちかくの小さなバーに入る。
マスターの生演奏は、カントリーウエスタンからリズム&ブルースへ。IWハーパーのダブルをオンザロックスにて2杯。ローズ&クラウンの代金は小茂鳥君が払ったので、この店は僕がもつことにする。
新橋へ戻り、銀座8丁目から5丁目まで歩く。近々、夕食をとることになる店の位置を確かめるためだ。僕は行き当たりバッタリということを、あまり好まない。甘木庵に帰着したのは、0時少し前のことだった。
家の近所に金長(かねちょう)という洋食屋がある。ここのメンチカツは、東京日本橋にある某老舗のそれよりもはるかにうまい。1ヶ月ほど前に、マスターの金子君からステーキのタレをもらった。
金子君は、このタレについて 「富士のタレと、ほぼ同じにできました」 と言う。
「富士のタレと同じぃ?」 僕は耳を疑った。グリル富士は、僕がもっとも好きなステーキ屋だ。「そんなに簡単なワケ、ねぇだろう」
金子君からもらったステーキのタレは、まぁうまいけれど、富士のタレには似ても似つかない、酸味の強いものだった。そしてこの1ヶ月のあいだ色々な料理に使ってはみたけれど、それは相変わらず酸味の強い 「金長スペシャル」 に過ぎなかった。
ところが、ところが今日、たまたま安かったステーキ用黒毛和牛肉を焼いて、金子君のタレを使ったところ
「あれっ? これ、富士のタレにそっくりじゃん」
「寝かす」 ということの不思議さ面白さを、僕は今日、初めて知った気がする。
昨夜の就寝は9時30分、今朝の起床は3時すこし前のことだった。いつの間にか、極端な早寝早起きが身についた。起床時間については、前立腺肥大の老人並みだ。
今年はじめて目覚まし時計に起こされたのは、3月13日の朝、成田のホテルでのことだ。朝の飛行機に乗る必要があった。2度目は9月23日。文京区の甘木庵から、朝のうちに藤沢まで行く用事のあった朝だ。
眠っているときに目覚まし時計の音を聞くと、ギクッとする。嫌な気分。心臓に悪い。
10代で寮生活をしているころ、朝5時30分に寮番の 「起床!」 という大音声で起こされた記憶がよみがえる。あるいはやはり10代に那須の農場で労働をした日々の、同じく朝5時30分の起床のサイレンを思い出す。
ヨーロッパのどこかの国では、ジプシーの子供が官憲の刈り込みに遭うという。施設に入れられた子供たちは、こう言うそうだ。
「ここの人たちは狂っているよ。○時に起きて、○時に食事をとって、○時に寝るなんて。僕たちは起きたいときに起きて、腹が減ったら食べて、眠くなったら眠るんだ」
とすれば僕の就寝と起床は、彼らの常識に沿っていることになる。
長きにわたって目覚まし時計に起こされ続ける生活とは、肉体と神経への間断のないボディブロウだ。
好きなときに寝て、好きなときに起きられる自分の境遇に感謝したいというか、自分の人生なんてまだまだ甘いというか。
自分が作成管理しているウェブペイジのアクセス解析は、 毎週日曜日に行っている。
レンタルサーヴァー屋のサイトへ行って、パスワードを打ち込む。ブラウザから直接アクセスログをコピーして、秀丸のマクロでCSVテキストに変換する。これをマイツールに取り込んで、オートでアクセス解析の一覧表を作成する。指が手順を覚えれば、わずか1分以内の作業だ。
清閑PERSONAL のアクセス解析をしていて興味深いことのひとつは、既に常識のものとなっているが、アクセスカウンタと実際のアクセス数との誤差だ。
ブラウザ上で見ることのできるアクセスカウンタと、アクセス解析によるトップペイジの数字には、2倍近い開きがある。カウンタが表示される前に、各コンテンツへのボタンをクリックされることが多いと、こういう現象が起きやすい。
ちなみに、アクセス解析による今週のトップペイジへのアクセス数は、以下カッコ内の通り。
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面白いのが、自由学園のクッキーというペイジのアクセス数で、以下。
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9月24日には、トップとこのペイジが、同じアクセス数を示している。 これはとりもなおさず、このペイジへの訪問者が、トップからの流れではなく、 検索エンジンから誘導されたことを示している。「自由学園」とか「クッキー」というキーワードで引っかかったものだろう。 こういうときにも、アクセスカウンタは更新されない。
もうひとつ、僕の運営する 本酒会で、上記と同じ現象が見られる。今週の 「本酒会」 トップペイジへのアクセス数は、以下。
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で、1995年から本酒会で飲んだお酒677本のデイタベイス へアクセスした数は、次の通り。
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なんとトップペイジよりも階層の低いこのペイジの方が、アクセス数で勝っている。 ここに含まれる膨大な酒名あるいは蔵名が、検索エンジンにヒットするからだろう。
トップペイジに有名人の名前を列挙することによって、 アクセス数を積み上げている確信犯的ウェブマスターは、意外に多い。