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おれは天國の住人なのか それとも地獄に堕ちる身なのか わからぬ
草の上の盃と花の乙女と長琴さえあれば  この現物と引き替えに 天國は君にやるよ
Omar Khayyam

 2010.0131(日) 鮟鱇鍋

午後、宇都宮からどこかの高速道路を経由して茨城県の海沿いに出る。僕はいわゆるドライブをしないため、またクルマに乗ってなにかをしにいくという仕事でもないため、どこをどう通ったらどこへ行ける、という知識に乏しい。

とにかく砂浜の幅は薄く、そのかわり岩礁の目立つ海を望む民宿にて夕刻、ガラス張りの風呂に入る。お湯の温度はちょうど良く、浴室には僕以外の誰もいず、よって湯船の中に長々と手足を伸ばしてくつろぐ。

空と海が暗くなるころ食堂へ行き、味噌仕立ての鮟鱇鍋を食べる。鮟鱇については普通の肉は無視してクニュクニュベロベロギョックリした部分のみを選んで食べる。弱火で保温される鍋の残り汁には鮟鱇の細かく砕けた肝が浮かんで至極美味い。よって燗酒を飲む勢いはなかなか止まない。

部屋へ戻って焼酎を飲もうとするが、そう飲めるものでもない。そして10時すぎに就寝する。


朝飯 ほうれん草のおひたし、春雨炒め、昆布の佃煮、すぐき、納豆、メシ、豚肉と長葱の味噌汁

昼飯 「玄蕎麦河童」のかけ蕎麦舞茸と蕗のとうの天ぷら

晩飯 「肴の宿」のあれこれ、日本酒(燗)


 2010.0130(土) 宿題

年末は飲酒の機会が多いにもかかわらず、先月は月のノルマである8日を超えて9日の断酒をした。よって余った1日は次期繰り越しとし、今月の断酒は7日と決めた。本日断酒をしないとその7日目が達成できないため、夜は焼酎をやめてメシを食べる。明日は茨城県の海沿いに泊まる。鮟鱇鍋を前にして飲まないわけにはいかない。

酒を飲まなくても眠くなるときには眠くなる。しかし今日は23時を過ぎても目が冴えている。来月に迫った高島屋東京店での販売に先立ち、お客様にこれをお知らせするダイレクトメールの送り先を今日までに確定しておくよう事務係のコマバカナエさんに頼まれ、しかしいまだ何もしていない。それを気にして23時30分に1階の事務室へ降り、コンピュータを持って4階の居間へ戻る。

「お安いコピー機のご提案です」とか「トルコリラによる新しいファンドが出ましてですね」というような電話がかかってきたり「近くに参りましたのでお寄りしました」と、用もないのにどこかの営業係の来るような日中には、とてもではないが精密な作業はできない。

1時間30分かけて宿題を片付け、しかしいまだ眠くはならない。そして午前3時30分に就寝する。


朝飯 ほうれん草の油炒め、納豆、昆布の佃煮、メシ、シジミと長ネギの味噌汁

昼飯 カレーライス

晩飯 焼き餃子、春雨炒め、ニラ玉、メシ


 2010.0129(金) 湯豆腐

日本橋、青山、表参道と、地下鉄銀座線に乗ったり降りたりしながらあちらこちらを訪ねる。冬の午後、赤坂を背にして青山通りを歩けば、日は早くも渋谷の方角に傾いて目に眩しい。

高樹町から骨董通りを経てむかしは閑静な屋敷町だったところに足を踏み入れる。桜の老木が青い空を背にして黒々と枝を広げている。お稲荷さんの赤いのぼりが折からの強風に煽られ高く音を立てている。膝までの長いダウンコートを着ている人もいるが、気温はそれほど低くない。

夕刻ふたたび銀座線に乗り、夜7時前に帰宅する。

美味い湯豆腐を食べるたび「なぜこれほど単純なものがこれほど美味いのか」と驚き呆れる。そのようなわけで今夜も驚き呆れつつ湯豆腐を食べ、焼酎のお湯割りを飲む。


朝飯 すぐき、スクランブルドエッグ、パンチェッタ、メシ、豆腐と長葱の味噌汁

昼飯 3種のおむすび

晩飯 湯豆腐ソーセージとレタスとジャガイモのサラダ焼き鳥、イチゴ、芋焼酎「赤利右衛門」(お湯割り)


 2010.0128(木) 日光MG(2日目)

マネジメントゲームの2日目はいつも、利益感度分析の講義から始まる。普段と異なるのは開始時間で、外部参加者の早めの帰宅を実現すべく、西順一郎先生は定刻の30分前よりマイクを握った

マネジメントゲームは5、6名がひとつの市場を形成し、ここで気力と知力を尽くして材料仕入れ、製造、入札による販売を繰り返す。会社を大きくするのも小さく保つのも、高く売るのも安く売るのも、少なく売るのも、また多く売るのも各人の自由だ。

マネジメントゲームの参加者は、1日目の朝に資本金300を与えられて第一線に並ぶ。しかし2日目の夕刻には自己資本を倍にして分社する者もいれば、また債務超過に呻吟する者も出てくる。

「人間は犬に食われるほど自由だ」と書いたのは藤原新也だっただろうか。マネジメントゲームに横溢するのは実にこの自由さで、結果はすべて、瞬時瞬時の自分の決断による

自己資本を高く積み上げた者が偉く、倒産した者はその逆、という認識はマネジメントゲームには無い。しかしゲームであれば、そこに表彰のあった方が面白い。マネジメントゲームでは通常、第5期終了時に種々の条件を満たした上で自己資本の高い順に3名が表彰される。

今回、到達自己資本第1位の「最優秀経営者賞」は埼玉県から参加のワタベタツミさんが、第2位の「優秀経営者賞」は秋田県から参加のチバヒトシさんが、そして第3位のおなじく「優秀経営者賞」は東京都から参加のウワサワユーキが獲得した

原稿用紙2枚分ほどの感想文を書いて「第19回日光MG」が完了して後は、西順一郎先生および一般参加者のうち時間に余裕のある人たち、その半分は学生だが計7名で"Finbec Naoto"を訪ない、しばし歓談をする。

本格のフランス料理屋であっても"Finbec Naoto"には日本酒の用意がある。先生とチバさんの前には黒龍酒造の「いっちょまえ」と斎彌酒造の「美酒の設計」のなみなみと注がれた大ぶりのグラスが並び、羨ましくてならない。

そして次の「日光MG」は今年の9月1日と2日の両日に開催される。


朝飯 「ヴィラデアグリ」の朝定食

昼飯 「ヴィラデアグリ」の昼定食

晩飯 "Finbec Naoto"のエスカルゴと比内鶏のグラタン帆立貝と海老のマリネ牡蠣とトリュフのリゾット甘鯛のポアレイチゴのフレンチカンカン、コーヒー


 2010.0127(水) 日光MG(1日目)

各自が自分の会社を持ち、2日間で5期分の経営を盤上に展開するのがマネジメントゲームだ。僕がこれを始めたのは1991年、新入社員研修に採り入れたのが1994年、女子社員を集めて行うようになったのが1999年、全社に広め且つ一般の参加者を募って「日光MG」としたのが2001年で、だからこの社員研修の歴史は随分と長い。

今回の「第19回日光MG」は社員のほか、一般から経営者、事務職、製造職、大学院生、大学生、高校生までの申し込みを得て、開始以来の大人数になる。ここ数日は特に、この「日光MG」がすべての参加者に良い効果をもたらすことを望み、あれこれ腐心した。

それでも始まってしまえば僕のすべきことは要所における挨拶と意志決定くらいのもので、あとはこの研修の特徴である各人の自発性により遅滞なく1日目のカリキュラムは完了した。

夜は昼の研修とおなじくらい大切な交流会にて、普段は早寝をしてしまう僕も0時すぎまで正気を保ち、周囲の方々から有意義なお話を伺う


朝飯 「ヴィラデアグリ」の朝定食

昼飯 「ヴィラデアグリ」の昼定食

晩飯 「ヴィラデアグリ」の夜定食


 2010.0126(火) ラバウルの星

先日、東武日光線スペーシア車内で"ThinkPad X61"を起動したところ、電力の供給が少なくなったから内容を保存して終了する旨の表示が、ほんの15分ほどで出た。この機械を購入したのは2008年3月25日で、以来1年と10ヶ月。バッテリーは死につつあるのだろうか。

僕は1995年から代々の"ThinkPad"を使い続けている。購入してしばらく経てばキーの表面がすり減って平滑になり、あるいはキーのひとつが外れて元の場所に収まらなくなる。そうしたらキーボードごと新品に交換し、しばらく使って社員に譲ることを繰り返してきた。

キーボードが壊れる前にバッテリーが駄目になったのは今回が初めてのことだ。そして今月19日にその新品を注文し、本日午前に届く。よって早速にそれを本体に取り付けると、交流100ボルトからパワーを注入されたバッテリーは見る間にインジケーターの数値を増して自らの健全さを誇示する。

終業後、着替えと共にその"ThinkPad"をスーパーマーケットの黄色いカゴへ納めて三菱シャリオに載せ、東武日光線下今市駅に西順一郎先生をお迎えする。そして宇都宮市の「ヴィラデアグリ」へ行く。施設内のビヤホール「麦の楽園」にて明日の研修に備えての前泊組計6名にて晩飯を食べる。

食後、季節により見えたり見えなかったりする星の話などしながら宿泊棟へ向かい、入浴して22時30分に就寝する。


朝飯 長葱の卵焼き、すぐき、じゃこ、たくあん、納豆、メシ、豆腐と長葱の味噌汁

昼飯 ドライカレー

晩飯 「麦の楽園」のクネルのサラダ、野菜のスープ、サーロインステーキ、パン、玉子の中のプリン"Chianti Classico Denominazione di Origine Controllata e Ggarantita 2005"


 2010.0125(月) 靴のサイズ

会社の、年に1度の健康診断が朝からある。僕の血圧が、上が100ちょうどの下が60台とは、きのう寝る前に飲んだ血圧の薬が効きすぎているのだろうか。問診票に「20年前にくらべて体重が10キロ以上増えている」という設問があったので「そんなわけねぇじゃねぇか」とバツ印を付ける。

20年前にくらべて僕の体重が10キロ以上増えていることはないが、しかし7キロくらいは増えているかも知れず、それは25年前に買った"ALDEN"のサイズ"6"が現在は"7.5"になっていることで実感できる。

きのうステーキを食べたばかりで今日もまたおなじものが食べたい。しかしその望みは叶わず夜は鶏肉を食べる。鶏肉とはいえソースには生クリームとバターが随分と含まれている筈だから、カロリーはそう低くもないだろう。

白ワインの在庫が少なくなってきた。そろそろ注文の時期である。


昼飯 鍋焼きうどん

晩飯 鶏肉のクリーム煮ニンニクとパセリと唐辛子のスパゲティいちご、"Chabilis J.Moreau & Fils 2007"


 2010.0124(日) 肉汁

来週の水曜日と木曜日は社員研修の2日間にて、外部からの参加も含めれば30名以上が一堂に会し、泊まりがけで勉強をする。参加者の中には帰りの経路によりJR宇都宮駅までお送りした方が良さそうな方もいらっしゃる。よって当日の粗相を避けるため終業後、会場である「ヴィラデアグリ」までホンダフィットで出かけ、ここから宇都宮駅まで実際に走ってその距離や所要時間を調べる。

午後7時、JR宇都宮駅のロータリーでクルマの距離計と時計を確認すれば他に用事はない、東北新幹線のガード下を抜けて「グリル富士」へ行く。

この店の外にある料理の蝋細工は、天日にさらされ長く白茶けていた。ところが本日見てみればいつの間にか新しい物に換えられたらしく、幾分かはマシになっている。しかし「幾分かは」という程度だから相変わらず見栄えはしない。

この蝋細工を見て「不味そうな店だな、止めてこう」と決めつける人の気持ちは重々理解できるが早まってはいけない。そのまま中へ入り、オニーチャンに案内されるまま席に着き、自分好みの肉の部位と、自分が食べられると思われる肉の重さ、それに焼き方を伝えさえすれば数分後には別世界が目の前に広がるのだ。

僕が自由学園の生徒のころ、友だちが来ればオヤジはいつもこの店に連れて行ってくれた。この店のステーキを何人の友だちが何回、その若く餓えた腹に収めたか知れない。店主の焼く肉は35年前と変わらず、カリッと焼かれた表面は熱い肉汁の内圧でプックリふくれ、いつまでもフワフワしている。

そして「ウチの子供も、そのうちまた連れて来なくちゃなぁ」と考える。


朝飯 ほうれん草の油炒め、すぐき、納豆、たくあん、温泉玉子、大豆の五目煮、メシ、徳用湯波とワカメと三つ葉の味噌汁

昼飯 カレーライス

晩飯 「グリル富士」のサラダ、コーンとブロッコリーのバター炒め、サーロインステーキ、ライス、"TAKAHATA WINE ef"


 2010.0123(土) 「人生五十愧無功」

今朝の日本経済新聞第36面「私の履歴書」で細川護煕が、首相辞任の日「人生五十功無きを愧ず」と先祖、細川頼之の七言絶句を日誌に書きつけたことを明かしている。その部分を読んで「まるでオレのことじゃん、まぁ、オレは53歳だけど」と、恬淡として恥じないあたりが僕の駄目なところだ。

「一月は行く、二月は逃げる、三月は去る」のことばのとおり、元日から既にして3週間が経ってしまった。あれこれ行動はしているものの、その密度はそれほど濃くない。うかうかしているうちに気がついたら4月、ということのないようにしたい。

夜、居間から枕元へメモを取りに行き、忘れてはいけないことをふたたび居間へ戻って箇条書きする。


朝飯 バナナ、ホットミルク

昼飯 チャーハン

晩飯 しゃぶしゃぶのための鯛豆腐と長ネギしゃぶしゃぶの鍋で食べる豚の薄切り、うどん、「不思議と手が出るタンナファクルー」、芋焼酎「赤利右衛門」(お湯割り)


 2010.0122(金) 本の探索

居間の自分の座布団のまわりや寝室のベッドの下は本だらけで、それもきちんと積み重ねてあるのではなく、乱雑に散らかっている。これを家内が年末に片付けた途端に必要なものが見当たらなくなった。「ロンリープラネット」のタイ版もそのひとつで、きのうから時間をかけて探しているが、どこにも見当たらない。

見つけ出そうとする気持ちがあまりに強かったためか、今朝はこの本が居間の違い棚から発見された夢を見た。「あの棚は真っ先に探したけれど、いまだ探索が足りなかったのかも知れない」と、起きてその場所を見ても、やはり無い。

洋服屋やCD屋などでは万引き防止のため、店から商品を持ち出そうとした途端にアラームの鳴る仕掛けがある。「あそこから更に一歩進んで、自分の持ち物すべてに"GPS"を組み込めるような仕掛けができねぇかな」と考えることがある。

おなじ本を2度買う手もあるが、それは面白くない。「整理整頓のできない人間ほど無駄金を使う」という事実の典型に自分が当てはまってしまうのもシャクだ。

というわけで今日も引きつづき、仏像の頭のてっぺんに金色のペンキを塗る少年僧を表紙にした、その本を探す。


朝飯 大根の柚こぼし、すぐき、昆布の佃煮、じゃこのお茶漬け

昼飯 「ふじや」の湯麺バター

晩飯 ツナとジャガイモとレタスのサラダパンチェッタとニンニクとトマトのスパゲティ"neu frank"のコーンビーフ"Chabilis J.Moreau & Fils 2007"


 2010.0121(木) ものを手に入れるということ

昨年の夏に南の国へ行ったときには、持参したトランクスは毎日、部屋のゴミ箱に捨てた。そうしたところウチのタンスには"FIORUCCI"の、トマトや色とりどりの水玉のプリントのあるものや、あるいは"FILA"の、外から見れば紺色だがウェストの内側部分のみ深紅のものなどが残った。僕の感覚からすると"FILA"のパンツなどは、勿体なくて元旦にしか使えない。

普段、仕事のとき交互に穿いている2本のズボンが随分くたびれてきたので、これは一体いつ買ったものだろうかとコンピュータを調べると、2008年6月14日に、あるウェブショップに注文した記録が見つかった。1年と7ヶ月も穿けば、これはもう充分だろう。

よって我が町の"UNIQLO"へ出かけ、トランクス4枚と新しいチノパン2本を買う。

研究開発型の会社によく見られることだが"UNIQLO"も、以前買って気に入った品をまた買おうとすると廃盤というか絶版になっていることが多い。本日もそのようなことに出くわしたが"Traditional Chino"のタグの付いたものが木綿の質も良く生地の厚さも充分だったので「これなら今日まで穿いた、アメリカ製のものより長持ちするだろう」と感じた。僕の好む服の第1条件は「すり減らないこと」で、第2条件は「すり減りづらい」ことだ。

"UNIQLO"から家へホンダフィットを走らせながら、なんだか嬉しい。そして「たとえ高いものでなくても、ものを手に入れる喜びとは、確かにあるもんだなぁ」と今更ながらに気づく。


朝飯 じゃこ、納豆、塩鮭の皮、ピーマンの網焼きかつおぶしかけ、メシ、豆腐と徳用湯波と万能葱の味噌汁

昼飯 「笹の蕎麦」のラーメン

晩飯 レタスとパセリと人参のサラダ、カレーライス、温泉玉子、いちご入り牛乳プリン、"KIRIN FREE"


 2010.0120(水) コーン

来月は複数の社員が東京へ出張する。慣れない環境で朝から働きづめで、ひと息つけるのは晩飯になってからだろう。仕事も戦争も兵站をおろそかにすると人は疲弊する、兵站の最たるものはすなわちメシである。

よって本日閉店後のミーティングにおいて社員のイトーチヒロさんに「銀座で鮨、食べるとしたら、何が食べたい?」と訊くと、イトーさんはにっこり笑ってひと声たかく「コーンです」と答えたから僕は思わず「コ、コーン?」と問い返した。

この場合コーンといえば、マヨネーズと和えたトウモロコシを軍艦に載せたものだろうか、銀座でそんなものを出す店があるだろうか、そして僕は「若いとは、ただそれだけでひとつの価値である」という箴言を思い出さないわけにはいかなかった。

好きな鮨種を訊かれて「コーンです」などと屈託なく答えるとは「王様は裸だ」と叫んだ子供くらいにしかできないことで、苔やかさぶたの身にびっしりとこびりついた大人には、とてもではないが無理な芸当なのだ。


朝飯 ヨーグルト、レタスとトマトとスクランブルドエッグのサラダ、2種のパン、コーヒー

昼飯 3種の野菜とソーセージのスープ2種のパン

晩飯 「とんかつあづま」の野菜サラダ、牡蠣フライ、メシ、豚汁、3種の漬物、日本酒(燗)


 2010.0119(火) 送料無料

何年か前に100円ショップで求めて以来とても重宝していた、曜日別に1週間分の薬の入るピルケースを昨年の暮に紛失した。家の中のどこかにあることは分かっているが、探しているときに限って出てこない。よってこれを求めるべく検索エンジンを回したら当該の品はすぐに見つかった。

すぐに見つかったは良いけれど、300円に満たないそれに、その倍以上の送料を支払うのも馬鹿ばかしい。

僕の観察する限り通信販売において、送料をタダにするためつい注文数を増やしてしまう人ほどお金は貯まらない。送料の負担をいとわず必要最小限のものしか買わない人ほどお金は貯まる。

僕はもちろん前者に該当するから、そのウェブショップの「税込み3,150以上で送料無料」の条件を満たすべく、他にめぼしいものを探す。

僕のアカギレに適切な質と大きさを持つバンドエイドは、近所の薬局ですこししか在庫をしていない。郊外の大型ドラッグストアではすこしどころか店に置いていない。これを先日は北千住の「マツモトキヨシ」で見つけたから5箱まとめて買った。

そうしたところ、ピルケースを見つけた店ではそれと同じバンドエイドを「マツモトキヨシ」よりも安く売っている。よってこれを複数注文し、更にアカギレに良く効くという軟膏2種を買い物カゴへ入れたら代金は3,150円の倍以上になった。

そして「マツモトキヨシより安い価格でモノを売って、その総額がたかだか3,150円を超えれば送料をタダにできるんだから、薬屋の利益率ってのはかなり高いんだろうな」と考えつつ注文ボタンをクリックする。


朝飯 玉子と万能葱の雑炊、べったら漬け、じゃこ

昼飯 塩ラーメン

晩飯 ジャガイモとレタスのサラダトマトのスクランブルドエッグマカロニグラタン"Chablis Domaine Servin 2007"


 2010.0118(月) 興味

およそ「興味がない」ということほど強いことはない。

書画骨董に興味が無い、酒に興味が無い、稀覯本に興味が無い、博打に興味が無いとなればそれらを遠ざけるための我慢は要らず、ストレスを感じることなく金が貯まる。

僕の幸いなところはクルマに興味のないことで、興味が無いと言っては語弊がある、学生のころから欲しかったクルマは1990年代のはじめにひょんなことから手に入り、オヤジの遺したクルマもあれば、これから欲しいクルマは無い。バッハヘンデルハイドンモーツァルトベートーベン亡きあと彼らを凌ぐ作曲家が世に出たか、クルマも同じことである。

ところでクルマを買わなければ金が貯まるかといえばそのようなことはない。

先日は南の国を旅するための上着を、着るのか着ないのか不明のまま仕立屋に注文してしまった。泥濘の山道と都会のバーの双方に通用するブーツも欲しい。そういう方面への興味もあって、僕の預金残高は伸びないのだ。


朝飯 べったら漬け、納豆、じゃこ、ほうれん草の油炒め、温泉玉子、メシ、徳用湯波と万能葱の味噌汁

昼飯 鍋焼きうどん

晩飯 ジャガイモと人参とレタスのサラダ鮭と帆立貝のクリーム煮、メシ、"Chablis Domaine des Malandes 2006"


 2010.0117(日) 3枚の絵

昨秋、良い絵が描けたからと、今井アレクサンドルがまとめて作品を送ってきた。僕はその中から素早く3枚を選び、残りは送り返した。この3枚の絵を、配置図を添えて宇都宮の器屋「たまき」のタマキヒデキさんへ渡し、画材屋「白木屋」での額装を頼んだ。そして3枚の絵をひとつの額に納めたそれは昨年末に届けられた。

店舗奥の棚一杯に生けられた正月の花を本日、カワムラコーセン先生が小さくまとめ直して白い壁が現れた。よってそこに前述の絵を飾ってみる。するとこれが和の空間にすんなり収まって悪くない

こう言っては失礼かも知れないが、今井は絵を描く際に何も考えていないように思われる。絵や音楽は数学的に巧緻に構成されるところがあるが、頭で考えすぎても面白いものはできない。

先日、ウチにある今井の絵を観てしきりに感心した取引先がいたので、今井が太陽と富士山を油彩でこってり厚塗りした団扇を進呈したらとても喜んでくれた。

ウチにある今井の絵のうちもっとも好きなものは畳2枚分の大きさがあって店舗には飾れない。飾ろうと思えば飾れるが赤地に無数の金の十字架を描いたこれはやはり、自宅に置くべきと思う。


朝飯 トースト、玉子の生クリーム焼き、いちご、コーヒー

昼飯 「ふじや」の味噌ラーメン

晩飯 「coco壱番屋」の野菜サラダ、豆腐とオクラのカレーライス


 2010.0116(土) あつまり

年賀状の返事を上り特急スペーシアの中で書く。

僕の年賀状は作成ソフトにより宛先もろともプリンタから出力して一丁上がり、というものではない、裏面は長男による木版画、表面の上半分が宛名で下半分に手書きの文字を連ねれば250から300文字はいってしまうから書くのに時間がかかる。

春日部までに12枚を完成させ、そこで眠ってしまったらしい。気づいたときには列車は北千住に停車中で、慌てて降りようとしたが間に合わない。終点の浅草よりもその手前の北千住で降りた方が都内各所への所要時間は短くて済むが仕方がない。

浅草、上野と経由して池袋へ達ししかし同学会新年総会の開かれる明日館の講堂には時間前に着いた

礼拝、学園近況報告、諸連絡、還暦を迎えた卒業生のお祝い、懇親会などのスケデュールの合間を縫って、仕事の話、その他の話、挨拶などを、見知った顔の先輩や後輩たちと交わす。

我々35回生は成績良く10名ほども集まったから夜は同窓会をしようか、という話もあったがそれに出席しては今夜中の帰宅は無理になる。よって早々に会場を辞し、寄り道をしながら10時前に帰宅する。


朝飯 2種の漬物、塩鮭、昆布の佃煮、じゃこによるお茶漬け

昼飯 「ふじや」の野菜麺

晩飯 「加賀屋北千住店」のあれこれ、「古澤酒造」の「天風辛口」(燗)


 2010.0115(金) 深見千三郎

東京の2ヶ所をまわっての作業と商談は午前のうちに済んでしまった。浅草に着いたのが正午。12:30発の下り特急スペーシアに乗れば素早く帰社できるが昼飯くらいは食べたい。そういう次第にて「並木藪」の前まで来ると数人が立って待っている。よってすぐに頭を切り替えきびすを返す。

観音様をお参りし、浅草寺本堂の西の口から外へ出る。そのままジグザグに歩いて街灯に深見千三郎の写真の飾ってあるあたり、つまりまぁ、地元の人あるいは浅草に通い慣れた人あるいはある種しかたのない人くらいしか行かないところまで達して「翁そば」に入る。

ここは入れ込みの奥に格子で囲まれた帳場を持つ古い普請の店だが、ひっきりなしに来る客に家族だけで対応できるよう、酒類はビールのみ、酒肴も天ぷらも無しと、メニュを合理化している

というわけで小さな器からあふれんばかりの蕎麦を食べ、13:30発の下り特急スペーシアに乗る。


朝飯 3種のおむすび

昼飯 「翁そば」のカレー南蛮蕎麦玉落とし

晩飯 飛竜頭の蟹あんかけ、小松菜とエリンギの胡麻和え、焼き鳥きのう「和光」でもらった赤飯、2種の漬物、芋焼酎「赤利右衛門」(お湯割り)


 2010.0114(木) 確率

おととい残念だったのは、ひとりの社員の家に泥棒が入ったことだ。と書けばこの文章はいささか正確さを欠く。社員は警察の現場検証に立ち会うため会社を早退した。よって"Finbec Naoto"での新年会には参加することが能わなかった。

この社員は飛び抜けて大メシ喰らいのため、デザートの直前に希望者へのみ供されるひとくちカレーライスを、彼の分だけは超大盛りカレーライスへと、予約の段階で変更しておいたのだ。その超大盛りカレーライスをこの社員が平らげる風景の見られなかったことこそが、つまりおとといの僕の「残念」である。

後に訊いたところによれば、泥棒は多少の現金と宝くじのみを盗み、ほかに被害はほとんどなかったという。泥棒は宝くじの愛好者だったのだろうか。

当たる確率を勘案すれば宝くじなどとても買う気にはなれない。子供のころからそういう考えだから、僕は生まれてこのかた宝くじはただの一度も買ったことがない。

確率といえば四半世紀ほど前、ある病院へクルマで行ったところ、ナンバーを記載せよと、受付で紙を渡されたことがある。社用車のナンバーなどいちいち覚えていないからそのころ乗っていた個人のクルマのナンバーを代わりに記入した。

そして用事を終え、駐車場へ戻ってみれば、その社用車のナンバーは偶然、僕個人のクルマのナンバーと同じ4桁の数字だった。この合一は恐ろしく低い確率の上に成立したものではないか。

というわけで、僕が非常に低い確率を以てあることを得るのはせいぜい上に書いたくらいのことと考えているので、宝くじについてはこれからも買うことはないだろう、と思う。


朝飯 2種のおむすび、フリーズドライ味噌汁"with LOVE"

昼飯 2種のケーキ、ホットミルク

晩飯 「和光」の突き出しの柿なますミル貝の刺身焼きハタハタポテトサラダ、麦焼酎「吉四六」(お湯割り)


 2010.013(水) マッチ

明け方から朝にかけて薄く雪が積もった。それは雪というよりもあられにちかく、だからサラサラとして箒でも寄せられる。社員の出てくる前より店舗駐車場の雪を掃き、社員が出社して後は彼らの力にてそれらを国道沿いの川に捨ててもらう。

きのう水神祭の祭壇に灯明を上げるため、仏壇からマッチを借りた。今朝になって仏壇に線香を上げようとすると、きのう持ち出したマッチは返却していなかったから、当然のことながらあたりには見当たらない。よって仕事場からガス点火用のライターを借り、これにて仏壇へ灯明を上げる。

むかし年末になど銀行から大きなマッチをもらうたび「こんなのあっても使わねぇよなぁ」と困惑をした。しかしよくよく考えてみれば、そのころにはマッチなどそこここにあったゆえの「使わねぇよなぁ」だったのだ。ある特定の物が世の中から姿を消すときには一斉に消す、という一例が、このマッチである。

戦争中、物が不足して苦労した人のうちの何割かは、そのときの辛さが忘れられずに今でもあれこれ溜め込む。しかしそうして溜め込まれた物は得てして、必要なときに限ってその姿を現さない。

マッチといえば東京オリンピックのころからデザインの変わっていないウチのマッチが昨年暮、遂に在庫終了となった。これまで作ってくれていたマッチ屋さんは廃業をした。そういう次第にて「マッチちょーだい、お宅のマッチは中身がたっぷり入っているから良いのよねー」というお客様には不便をおかけしていた。

年が明けて新しいマッチ屋さんが見つかったから早速、同じデザインにて発注をした。デザインは同じでも住所の「今市市」は合併後の「日光市」に修正をしてもらった。電話番号の下にはウェブショップのURLを加えてもらった。

神仏に関係するものを自宅内に持っている家では、いまだマッチは必需品である


朝飯 スクランブルドエッグ、炒めずに煮たハム、2種のパン、コーヒー

昼飯 盛り蕎麦

晩飯 おでんの最後のところと煮奴、豚肉と白菜と椎茸の中華風炒め、徳用湯波と小松菜の薄味炊き、かまぼこ、芋焼酎「赤利右衛門」(お湯割り)


 2010.0112(火) 水神祭

きのう会社や家の鏡餅を片付け、餅は餅、飾りは飾り、ミカンはミカンと仕分けをして処分しようとしていたところ「鏡餅のミカンを食べると風邪、ひかないんですよ」と包装係のアオキマチコさんに言われた。よってそれらのミカンの中からもっとも小振りのものひとつを僕が取り、残りはすべてアオキさんに渡した。

今朝になって、その小さなミカンを食べると存外に甘かったから、すこし得をした気分になる

朝9時前に瀧尾神社のタナカ宮司が来社して水神祭を執り行う。いつからウチにあるのか不明の「水神」と彫られた石の前には既にして供物や灯明が上げられている。そこに主だった社員があつまりお祓いを受けたり祝詞を聞いたりする。良い水を欠いて良い醸造はできない。このようなお祭りは、いつまでも続けるべきだ

「1年に何度かはプロの作った美味いメシを食べようぜ」ということで夕刻よりフランス料理の"Finbec Naoto"へ集まり会社の新年会をする。冷たい料理、温かい料理、熱いスープ、すべてが美味い。

先ほどまで降っていたみぞれの上がるころ「それでは今年もよろしく」と、会のはじめに言ったことをふたたび社員たちに繰り返しつつ帰宅する。


朝飯 切り干し大根煮、納豆、すぐき、生卵、メシ、シジミと万能葱の味噌汁

昼飯 じゃこのおむすび

晩飯 "Finbec Naoto"の赤ピーマンのムース、魚介類のエチュヴェ、フォアグラのフラン、平目のポワロー風味、ひとくちカレーライス、アップルパイいちごの入った小さなシュークリーム、コーヒー、一番安いムスカデ


 2010.0111(月) 街歩き

朝、朝日新聞の第1面に、日本航空の上場が廃止される旨の大きな文字を見る。この航空会社には何の思いもないが、人まかせで、つまり人や旅行社に切符の手配をゆだねると、使用航空会社は日本航空になることが多く、それが僕にはいささか面白くなかった。

面白くないとは日本航空を個人的に嫌っているわけではない、ただ、上海へ行くなら中國民航の、香港へ行くならキャセイパシフィックの、バンコクへ行くならタイ航空の、カラチへ行くならパキスタン航空の、コルカタへ行くならエアインディアの、カトマンドゥへ行くならネパール航空の飛行機で僕は行きたい、ということだ。

夜、下野新聞の第17面「県高校総合文化祭写真展」を興味深く見る。掲載された特選以上の8点はどれもみな良い写真ばかりで、撮影者の名前を見る限り8人中の7人は女子生徒らしい。「大したもんだなぁ、それにしてもヤローは何やってんだ」と思う

もっとも僕も人のことは言えない。昨年の11月10日に"RICOH GR DIGITAL III"を手に入れたとき、その値段は6万円強だった。それが今は55,000円台である。そしてその間、僕はこのカメラをほとんど使っていない。

街を歩き回らないと僕は写真が撮れない。その、街を歩き回る機会を作らないのは自分がいけない。そう思いながら日ばかりが過ぎていくのだ。


朝飯 何種類かのパン、スペイン風目玉焼き、コーヒー

昼飯 チャンポン麺

晩飯 切り干し大根煮、津軽漬け、ほうれん草の柚味噌和え、おでん、赤飯


 2010.0110(日) 瓦の話

宇都宮あたりの農家の蔵などには、今でも大谷石の屋根瓦を持つものがある。先月「ツインリンクもてぎ」へ向かいながら、その瓦を目で指して「柳宗悦があれを激賞して日本民藝館でも見られるんだけどさ、なぜそこまで褒めるのか、その理由が分かんねぇんだよ」と長男に言った。

すると長男が「あそこにそんな瓦、あったかな」と返すので「民藝館の母屋じゃなくて、狭い道を挟んだ向かいの建物だよ」と教えた。

そうしたところ本日、長男がらメイルがあって、その内容は「駒場に行くついでがあったので件の瓦を見てきたけれど、なるほど『へぇ』というくらいのものでした」というものだった。つまり僕と長男には、この瓦の良さを理解するだけの力がない、ということなのだろう。

僕にとって宗悦といえば「蒐集物語」で、先日これを本棚に探していたら、そのちかくに「柳宗悦民藝紀行」も見つかった。そしてまた小林秀雄の「鎌倉文士骨董奇譚」も目につき、だからこの3冊をまとめて長男に送った。長男のメイルには、この本が甘木庵に届いた礼も添えてあった。「鎌倉文士骨董奇譚」はむかしサイパンに持ち込んだもので「およそこれほど南国のプールサイドに似合わねぇ本もねぇな」と、読んでいて感じたことを思い出す。

今夜は町内の役員と組長を集めた新年会があり、しかしまた次男の冬休み最後の夜でもある。よって新年会では料理にはほとんど箸を伸ばさず酒も唇を湿す程度しかやらず、早めに帰宅してから家内と次男との3人で焼肉屋へ向かう。


朝飯 何種類かのパントマトと玉子のスープ

昼飯 バターと明太子のフェデリーニアップルパイ

晩飯 春日町1丁目公民館に運ばれたタケダミッチャン手製の2種の漬物同松前漬け「丁田屋」の刺身「元気寿司」の鮨、お祭りで上がった日本酒(燗)、「大昌園」のあれこれ、麦焼酎「田苑」(オンザロックス)


 2010.0109(土) メシの希望

昨午後からの風邪気味にて、家内の買ってきた「ユンケル黄帝ロイヤル」をきのうに引きつづき飲む。「風邪にユンケル」とは歌舞伎町あたりの都市伝説に過ぎないのではないか、という気もするが、まぁ、なにかの助けにはなるだろう。他に胃薬を飲みビタミン剤を飲みアスピリンも飲む。

本日の午後は、来月の仕事に備えてマクロを書く。マクロとはいえ僕の使っているソフト"My Tool"ではマクロとは言わずオートと呼ぶ。昨年の同時期に作成したはずのそれを見ると、同年の実情に合わせた跡がない。ということは昨年はこの仕事を"sabotage"したということだ。

「去年のオレにくらべれば、今年のオレの方が気力が充実しているみてぇだな」などと考えながら、しかし数式の上手く走ってくれないところではため息と共に失敗と再構築を繰り返し、夕刻にようやくこれを完成させる

次男の冬休みも終わりに近づけば、メシの希望は多く本人の希望にしたがうことになる。そして晩飯を食べに「ユタの店」へ行く。「今日はお酒は、よろしいんですか?」と店のオバサンに訊かれても、いまだ体調は回復していない。


朝飯 玉子の雑炊、じゃこ、おから

昼飯 玉子の雑炊、厚揚げの薄味炊き

晩飯 「ユタの店」のアボカド鮪、キムチ豆腐、2種の餃子、海老春巻き、豚角煮と味玉、メシ


 2010.0108(金) 「足だけは冷やすな」

20代のころにはおよそ2ヶ月に1度の割で高熱を発し、そのつど1週間ほども寝込んだ。熱を下げるには抗生物質の静脈注射が必要で、だから僕の腕の内側には今もその針の跡がある。30代の中ごろより元気になったのは、人間がだらしなくなったせいだろう。

ところが本日は、人間はだらしないまま、しかし何だか腰が痛く、からだもだるい。元日からきのうまで酒を飲み続けたことが悪かったのかも知れないし、風呂上がりの腰にタオルを巻いただけの格好でソファでうたた寝をし、気づいたときには肩から背中から冷たくなっていた、というようなことが悪かったのかも知れない。よって夕刻より布団に入り、2時間ほどぐっすりと眠る。

晩飯の後、寒い洗面所で歯を磨き、布団に入って血圧を測ると150の92だった。「こんな数字じゃ記録できねぇ」と、小一時間そのまま横になって、布団から出したくなるほど足の先の暖まったところでもういちど計ると今度は137の76になっていたからそれを紙に書く。

厳冬期のキャンプをよくした四半世紀ほど以前、半径数キロ以内には人っ子ひとりいない夜の雪原で「足だけは冷やすな、足を冷やすと眠れねぇぞ」と、年長の友人ヨコタジュードーは、まるで口癖のように言っていた。

足を温めればすべては解決する、というものでもないだろうが、今夜は血圧計の数字を見ながら、そういうむかしのことを思い出した。


朝飯 玉子の雑炊、すぐき、じゃこ、梅干し

昼飯 焼きそば

晩飯 カレーライス、らっきょうのたまり漬、イチゴのヨーグルト和え、"Chez Akabane"のイチゴのショートケーキ


 2010.0107(木) 初秋の返信

「ここで一発、歯の浮くようなお世辞を上司にカマせば栄転は固い」と分かっていながらそれのできない人がいる。「ここで布団をサッと跳ね上げ、起きてしまえば学校へ行ける」と分かっていながらそれのできない子供がいる。僕の場合、日記は書けても年賀状は書けない。そして返信のハガキを初秋のタイ最北部からようやく投函したりする。「どうしてもできない」ということが、世の中には確かにあるのだ。

上のこととは関係ないが「蕎麦屋へ入りながら、どうしても蕎麦まで達しない」とか「おでん屋へ入りながら、どうしてもおでんまで達しない」ということが僕にはしばしばある。蕎麦やおでんの前にじゅんさいの三杯酢とか銀杏の焙烙炒りとか鱧のかまぼことかしめ鯖あたりで酒を飲んで満腹になってしまうのだ。だからおでんは家で食べる。

僕はおでんは和辛子ではなく豆板醤で食べるのが好きだ。おでん屋でそれはできないが家でならできる。きのう香港帰りの方から「八珍國際有限公司」の「辣豆瓣醤」が文字通り到来したので、とここまで書いて"ATOK"は「唐来」を変換しない、とにかくその豆板醤で鶏肉の団子や里芋やフワフワの揚げ豆腐を食べる

「豆板醤なんか付けたらそれはもはやおでんじゃねぇだろう」という気もする。しかし香港の豆板醤の香りを聞けば、自分の今いる場所に香港の雑踏の現出した気がして嬉しいのだ。そして芋焼酎のお湯割りを3杯ほども飲む。


朝飯 温泉玉子、納豆、べったら漬け、おから、メシ、大根と春菊の味噌汁

昼飯 2種のサンドウィッチ、コーヒー

晩飯 おでんイチゴ、「指宿酒造」の芋焼酎「赤利右衛門」(お湯割り)


 2010.0106(水) 区切り

「金が無い、ヒマが無い」は言い訳だという。そうかも知れないが昨年の暮は忙しくて床屋へ行くヒマがなかった。当方にその時間ができて床屋へ電話をすると、そういうときに限って先方の都合が悪かった。

「こんなむさ苦しい姿で初売りに臨むのはイヤだからなぁ」と、大晦日の閉店後17時35分にカトー床屋へ電話をすると応答がなかった。念のため店の前まで行ってみると、カーテンを閉め切った店内は既に暗く、人の気配はなかった。そしてドアには元日から5日までは休みとの表示があるばかりだった。

よって本日ようやくこの床屋の椅子に座って頭やヒゲにバリカンを当ててもらう。訊けば大晦日の夕方は、あまりのヒマさに呆れて早じまいをしてしまったのだという。

床屋やパーマ屋の大晦日は除夜の鐘が鳴ってもいまだ忙しく、仮眠を取って後、元旦からまた仕事を始めたなどは、理容業界の古老の思い出話でしか知ることはできなくなった。

新年を前にして髪を整えるとか、職人は大晦日にはみずからの道具を酒で清めるとか、元旦にはおろしたての服を着るとか、そういう日時に応じて区切りをつけるということが近ごろは随分と減ったように思う。

むかしあるマンションの住人が、そのマンションの前に別のマンションの建つことを憂えて「パジャマのまま朝飯を食ってたら、それが向こうに丸見えじゃねぇか」と言った。それを聞いていた僕は「パジャマのまま朝飯を食うってことが、そもそもの間違いですよね」と笑いたいところを、相手は自分よりもずいぶん年上だったから遠慮したことがあった。これもまた、時間や状況における区切りの喪失、である。

仕事の関係から昼飯が遅くなったら、夜の飲み屋では突き出しのほかに1品だけで腹がふくれてしまった。8時に帰宅して甘いものを食べる。


朝飯 3種のおむすび、豆腐とワカメと長葱の味噌汁

昼飯 「ふじや」のタンメンバター

晩飯 「和光」の突き出しの浅蜊の玉子とじたこぶつ常連からまわってきたイチゴ、麦焼酎「吉四六」お湯割り、帰宅してからの栗きんとんとわらび餅


 2010.0105(火) 飲みぞめ

お客様へお送りする手紙の時候の挨拶については、これを手書きするのは若い事務係だが、若いだけに、地域性や季節を感じさせる一節を考えるのは上手くない。よってこの部分だけは僕が作り、彼女たちに渡す。

今朝はコマバカナエさんに年初のそれを求められ、よってふたつばかり考える。そうして昨年の4月1日から書きためたそれらの挨拶を一ヶ所に集めてみれば、その数は32に上った。無い知恵も絞れば9ヶ月でそれくらいは浮かぶのだと、妙に感心をする。

「飲み初め」という言葉はないだろうけれど、夜は今年になって初めて飲み屋へ行く。「和光」の引き戸を開けるといつもの常連の姿がない。訊けばきのう彼らは普段どおりに酒を飲むうち、いつの間にか店主も巻き込んだ新年会に発展し、かなりのアルコールを体内に取り込んだという。本日は、それに伴う無断欠席なのだろう。

というわけで今夜は、いつもと異なる顔ぶれの中で焼酎のお湯割りを飲む。レモンを搾った生牡蠣の、殻に残った汁が殊のほか美味い。


朝飯 お雑煮

昼飯 「ふじや」の味噌ラーメン

晩飯 「和光」の突き出しの揚げ湯波の薄味炊き、蕪と胡瓜の浅漬け、生牡蠣ポテトサラダ、麦焼酎「吉四六」(お湯割り)


 2010.0104(月) ハヤシライスにウィスキー

フランス料理の "Finbec Naoto" では毎年、市場が開くまでの数日間はカレーライスやハヤシライスをメインにした気楽なコースを出す。そしてこの日記を遡れば僕は2005年と2006年の正月において、これを食べていたようだ。

4年ぶりとはしばらく間の空いたものだが、本日6時45分に家族4人で夜の街へホンダフィットを乗り出し、木の柱と木の床、漆喰の壁を持つ、暖かでこぢんまりとした店に行く。

メニュを開くまではスープとサラダとカレーライスくらいしか食べるものはないと考えていた。しかし当方は4年前のことを忘れていたのだ、酒肴やスープ、またカレーライスやハヤシライスにも選べるオプションがあり、今夜は断酒を考えていたにもかかわらず、やはりグラスの白ワインを頼んでしまう。

そしてハヤシライスの出てくる頃合いを見計らってウィスキーの水割りを注文する。牛肉の煮込みにはウィスキーがよく似合う。そして上出来のデザートとコーヒーで締め、8時すこしすぎに帰宅する。


朝飯 お雑煮、赤飯、べったら漬け、イチゴ

昼飯 海苔と落花生のお餅バター醤油

晩飯 "Finbec Naoto"のスモークトサーモン、エスカルゴのニンニクバター焼き、オニオングラタンスープ、ポテトとレタスのサラダ、牛頬肉のハヤシライス、らっきょうのたまり漬、きゅうりのたまり漬、イチゴのフレンチカンカン、コ-ヒー、白のグラスワイン、「山崎蒸留所仕込水割り」


 2010.0103(日) 安い白ワイン

初売りのきのうに続いて今日も穏やかな天候で有り難い。

正月も3日となれば電話やウェブショップを経由しての地方発送のご注文も徐々に増え、それに加えて店舗で受けるお送りのご注文もあるから、当番で出社した製造係のタカハシアキヒコ君はなかなかに忙しい。「ホントに夕方までに終わるのか」との、他の部署からの心配の声を受け、たびたび現場へおもむきその進捗状況を見る。

長男の友人ひとりが夕刻より遊びに来る。ウチでは泊まりのお客にはみな近くの温泉へ行ってもらう。茶臼山のふもとにある「長久の湯」に電話で問い合わせると、既に営業しているというので安心をする。

夜は、もんじゃ焼きのようなピッツァで安い白ワイン2本を飲む。そして深更に及んでは缶ビールを飲みながら、ビデオに撮っておいた「吉田類の酒場放浪記」を見る。


朝飯 お雑煮

昼飯 「コスモス」のハンバーグライス

晩飯 卓上のホットプレートで焼くピッツァ、野菜と"neu frank"のソーセージのスープブロッコリーと"neu frank"のコーンビーフの油炒め"Chez Akabane"の杏仁豆腐同イチゴのショートケーキ、"Chablis Vieilles Vignes Domaine des Reves 2008"、"Chabilis J.Moreau & Fils 2007"


 2010.0102(土) 初売り

むかし家にあった「サザエさん」を読むと、「初荷」の旗を威勢よく飾ったトラックの絵が正月の場面には頻繁に見られたような気がする。それで、小学校のときの誰先生かは忘れたが「タクヤのところでもそんなことをするんだろ」などと訊かれ、しかしトラックに初荷の旗を飾るとは、僕の子供時代にも、もはや見ることはなかった。

と、4行ほど無駄なことを書き連ねたが本日がウチの初売りにて、開店前にお見えになった今年最初のお客様には「片山酒造」のカストリ焼酎「粕華」1本を進呈する。もしもこのお客様のおせち料理に、煮こごりに覆われた鯛の煮付けでも残っていれば、この透明で強い酒はその煮こごりの美味さを倍加させること間違いない。

店舗は10時より忙しくなり、それが午後3時くらいまで続く。

終業後は製造現場へ移動し、明日の準備をする。今は冷蔵庫よりも仕事場の方が気温は低く、だから意図して冷蔵庫から出しておく商品もある。

「飲んじゃ日本酒がいちばん美味いわな」とは顧問税理士のスズキトール先生が我が町の「ばん」で言ったことだ。神楽坂の「伊勢藤」で猪口の燗酒を干すなり「この、ノドに沁み通る感じが何とも言えませんね」と笑ったのは後輩のマハルジャン・プラニッシュさんだ。

確かに日本酒は美味い。しかしどちらかといえばその美味さの簡単に理解できる日本酒を遠ざけ、普段の僕は芋焼酎ばかりを飲んでいる。しかしこの正月は日本酒を飲んだ。そして今夜もきのうに続いて「土屋酒造店」の酒を冷やで飲む。


朝飯 お雑煮

昼飯 「さぼてん」の豚カツ弁当

晩飯 津軽漬け、鴨鍋、「久埜」の栗きんとん、「土屋酒造店」の「亀の海大吟醸山田錦」(冷や)


 2010.0101(金) 元旦のあれこれ

元日の朝は先祖に敬意を表して家族で墓参りに行く。自宅へ戻ると神棚、仏壇、お稲荷さん、水神、地神にそれぞれお雑煮をお供えする。人間が食べ物にありつけるのは、その後のことになる。

師走30日を迎えたとき、月の断酒ノルマはいまだ1日分を消化していなかったからその日を断酒日とし、するとその勢いで大晦日も酒を抜いた。つまり12月はノルマよりも1日余計に断酒を達成したから年明けの今月は1日余計に酒を飲もうと思う。

それはさておき午前はクルマで追分地蔵尊、続いて瀧尾神社に初詣をする。帰宅して次男の調えた昼食を摂って後は、介護老人保健施設「森の家」におばあちゃんを見舞う。

「羽仁もと子とは、話をしたことはあるの?」と僕が訊くと「あるよ」とおばあちゃんは答え、そのやりとりを見ていた次男は「良いなぁ」とため息をつく。「漱石が『こころ』を書いたとき、おばあちゃんはもう生まれていたんだよ」と長男が言う。おばあちゃんの長命を測るモノサシとして漱石を持ち出すのが長男のクセだ。

3日も断酒をすると却ってからだがおかしくなるから今夜は日本酒の四合瓶を開ける。長男とふたりで四合の酒量は少なすぎるようにも思われるが、明日は初売りである。よって今夜のところはそのあたりで止め、食後のウィスキーや風呂上がりのビールは飲まないこととする。


朝飯 お雑煮「ばん」のおせち料理其の一其の二其の三

昼飯 海苔と落花生のお餅アーリオオーリオソース

晩飯 「ばん」のおせち料理其の一其の二津軽漬け「久埜」の栗きんとん「土屋酒造店」の「茜さすヌヴォー無濾過生原酒特別純米」(冷や)