朝2時30分に起床する。
家では起きた後の居場所があるから良いが、これから家族と行く数日間の旅行では、できるだけ遅く寝て、できるだけ遅く起きる必要に迫られる。宿の近くに24時間営業の喫茶店が欲しいところだが、世はおしなべて、上手く運ばないことが多い。
いつもの仕事をこなし、昨日の日記を作成し、数通のeメイルを書く。
朝飯は、塩らっきょう、柳橋小松屋のカキとアナゴの佃煮、オイキムチ、胡瓜の塩漬けによるお茶漬け。
仕事をしつつ家族のそれぞれが、自分の荷物を2つのトランクに詰める。大きなトランクは京都の宿へ送り、小さなトランクは甘木庵から広島まで手で運ぶ段取りをする。
下今市駅14:36発の、上り特急スペーシアに乗る。車内はほぼ満席で、数日前に座席指定券を買った我々も、2人、1人、1人と、離れて座る。
車内にて、自分のpatioに3通のレスポンスをつける。今日はそれ以外に、10通の返信をpatioに書いた。
浅草から地下鉄銀座線に乗り、僕だけがトランクを引いて上野広小路で降りる。大江戸線に乗り換え、本郷三丁目に至る。偶然、知り合いに遭遇する。その知人の家の近くまで、話をしながら一緒に歩く。
甘木庵にトランクを置き、ザックから取り出した "ThinkPad s30" を起動してメイラーを回す。顧客からeメイルが入っていたため、取り急ぎ返信を書く。
すっかり日の延びた夕刻に、湯島の切り通し坂を降りる。もめ事のあったパチンコ屋の前を過ぎ、上野広小路から地下鉄銀座線に乗る。
日本橋にて下車し、高島屋にてオーダーメイドを頼んでおいたベルトを受け取る。日本経済をできるだけ浮揚させるべく、安くないスカーフを買う。
中央通りを横断して丸善に入り、地下1階で "Eagle Creek" の靴袋を買う。この袋は靴を入れるためではなく、コンピュータの入ったザックをコインロッカーに収めた後の、小物入れとして使う予定だ。単行本とデジタルカメラ、携帯電話とサイフの入る容量さえあれば、それで充分だ。
再び銀座線に乗り、京橋で降りる。ビルの谷間に、ハイペリオンブルーという受注生産の色を持つ、"Peugeot 406 coupe" が停まっている。ラテンのクルマの格好良さは、写真ではあまりよく分からない。実物を見てはじめて、線と立体の魅力にクラクラと幻惑をされることになる。
4丁目まで歩き、三愛1階の喫茶店で 「斷腸亭の経済学」 を読む。しばらくするうちに、有楽町の映画館で "MONSTERS,INC" を見終えた家内と長男、次男が来る。降り始めた小雨に慌てながら、三原橋への道を急ぐ。
ゆっくりした晩飯を食べ、9時ちかくに料理屋を出る。数寄屋橋から丸の内線にて本郷三丁目へ至り、9時40分に甘木庵へ帰着する。
ビールは飲まず、冷たいお茶のみを飲んで、0時30分に就寝する。
朝3時に起床する。
事務室へ降りて先ずすることは、特に決まっていない。コンピュータのスイッチを入れ、電熱器にステインレスのカップを乗せて、お湯を沸かす。コーフィーを飲み、メイラーを回す。i-modeのアドレスを持つ顔文字だらけの注文が届く。整形して会社のpatioにアップする。
重い腰を上げて、本酒会 の アナログ版・第106回会報を作成する。
"amazon" へ、高橋義孝の本を1冊と、団鬼六の本を2冊、追加発注する。
朝飯は、石鍋に煮立てた韓国風味噌汁、目玉焼きとグリーンアスパラガスのソテー、プティトマト添え、胡瓜の塩漬け、納豆、メシ。
「田舎に住んでも美味いのは野菜くらいのものだから、自分はやはり東京に住みたい」 と言った美食家がいる。裏を返せば、田舎の野菜は本当に美味いということだ。このトマトも、今市市森友地区の農家が直接販売をするものだが、「プティトマトとは本来、こういう味だったのか」 と、しげしげ眺めてしまうほどに美味い。
昨日の雨とはうってかわって今日は朝から晴れ渡り、気温も20℃ちかくまで上がる。隠居の庭を散策する。僕は植物のことは、なにも知らない。見てくれる人もいない冬の花が、衰えかけている。昨年の暮れにナガシマトウコさんが確認をしたホタルの幼虫は、いまだ生きているのだろうか?
終業後、会社の花見を大谷川河畔の 「みとや寿司」 にて行う。花見とはいえ、花は見ない。季節柄、そう称しているだけだ。みんなでメシを食べ、酒を飲む。
この花見は同時に、新入社員の歓迎会と、永年勤続者の表彰式も兼ねている。僕のコンピュータには1962年1月1日入社と記録されているオオシマトキオさんに、勤続40年の表彰状と賞品を贈る。
ここ数年で、会社の宴会時間が短くなっているのは良いことだ。7時45分に店の玄関を出て、歩いて帰宅する。
入浴してキリン一番搾りを135CC飲み、「斷腸亭の経済学」 を1ペイジだけ読んで9時30分に就寝する。
朝3時に起床する。
事務室へ降り、メイラーを回す。ウェブショップの受注を処理し、昨日の日記を作成する。数通のeメイルを書く。
居間へ戻って窓から外を見ると、味噌蔵の甍の向こうに 桜のつぼみが紅くなっている。家内は 「桜はつぼみのときが最も美しい」 と言うが、僕は大きな桜なら、おしなべて何でも好きだ。
朝飯は、塩らっきょう、タラの内臓のキムチ、アナゴの佃煮、山かけ、納豆、キャベツの油炒め、メシ、タシロケン坊んちのお徳用湯波と長ネギの味噌汁。
朝の雨の中を、鄙には希な優れた和菓子屋 「久埜」 のオヤジさんが、わけあってカステラを届けてくれる。これが、いままで見たことのある最も大きなカステラの更に4倍という巨大なもので、大いに度肝を抜かれる。その四分の一ほどを切り取り、あとは社員へ分けることにする。
普段は溜めがちなpatioへの返信を、4、5通ほども書く。
およそ更新の無いペイジほど、管理者の不熱心さを示すものはない。ウェブショップ に、「街の美味しいもの屋さん」 というコンテンツを加えることにして、とりあえずその初回分を作成する。
多くの食べ歩きの本、料理屋紹介のウェブペイジは、ライターが自ら食べずに作っていることがほとんどだ。僕はこのペイジを、自分の足で稼いだ情報のみにて満たしていくことにする。
1ヶ月に1店を更新すれば、1年で12店の情報が蓄積されるはずだが、僕はあまりたくさんの料理屋へは足を運ばない。実際には、それよりも少し低い頻度での更新になるだろう。
オフクロが 「先ごろ、体の調子を崩したときに、心配をしてもらった義理があるから」 と、大昌園に予約の電話を入れる。家族5人にて、6時30分から店を訪なう。
肉、臓物 ともにいつもの倍量ほどを注文するが、長男がいるため、なかなか僕の口に入るまでは至らない。テグタンラーメンにて締める。
帰宅してキリン一番搾りを135CC飲み、9時に就寝する。
昨夜の就寝が遅かったため、今朝は5時になってようやく目が覚める。
ウェブショップ からの受注を処理し、きのうの日記を書く。本酒会の紙の会報については、いつもその作成と送付を面倒に感じるが、今月末から小旅行へ出かけるため、それまでにはすべてを終わらせなくてはいけない。
"VOCALESE ON DANCE JAZZ" Eddie Jefferson PCD-2706 を聴く。
空は夜のうちから晴れたらしく、駐車場の水たまりが凍っている。気温はこれから、徐々に上がるだろう。自分が運営するpatioと他のpatioに、あわせて14通の返信をする。
夜7時前に、春日町一丁目青年会の新年会および総会へ出席するため、会社の通用門を出る。ふたまたに分かれたモミジの向こうに、大きな月が上がりかけている。モミジの幹が、ルソーの絵に出てくる密林の木のような質感で光っている。
僕は基本的には、会合を嫌う。自分の趣味に合わない会、自分がその存在の意義を認められない会、まずいメシの供される会については、できるだけ不義理をする。
ただし、自分がその働きを大いに認める会、好きな人の来る会、美味い飯の出る会、ヨタ話とスケベ話しか発生し得ない会へは、積極的に参加をする。
今夜の会は後者にあたる。「市之蔵」 へ行く。
何十年か前に青年会を退いたはずのアンザイ畳屋のオヤジが、なぜか入れ込みに闖入して席を占める。いまや孫もいる年齢にて、いまだ青年会員の カミムラヒロシさんが来る。オノグチショウイチさんが来て、ひさし付きのキャップをかぶったオヤジが3人揃う。
出席すると言いながら、定刻より90分を過ぎていまだ来ない2人に電話を入れる。
同級生のカトウタケシ君の奥さんが申し訳なさそうに 「疲れて休んでいます」 と、言う。疲れたわけではなく、今夜の予定を忘れて飲酒の上、寝てしまったのだろう。
湯波屋のタシロマナブ君に電話を入れると、奥さんが 「少々お待ち下さい」 と言った後 「すぐに伺うそうです」 と、答える。
大体において、どこの家でも亭主はバカで、女房は利発だ。
ようやく 「市之蔵」 の引き戸を開けて入ってきたタシロマナブ君に、カミムラヒロシさんが説教をたれる。酔っぱらいの説教が効力を発揮することは、常にほとんど無い。
2時間も飲み続けたあげくに決まったことは、「来年の新年会は、しっかり準備をして、鬼怒川と川治のあいだにある竜王峡の旅館に泊まろう」 ということだけだった。
こういう洒落た会へは、僕は積極的に参加をする。
更に飲み続けるみなに挨拶をし、1番に店を出る。7時前には大きく丸かった月が、なにやら三日月に見える。「月蝕?」 と思いながら歩くが、多分、酔った眼による錯覚だろう。
帰宅してキリン一番搾りを135CC飲み、10時前に就寝する。
朝4時に起床する。
ウェブショップ の注文を処理して会社のpatioにアップする。きのうの日記を作成し、数通のeメイルを書く。僕自身は欠席した25日の本酒会報を作成し、同報メイルにて会員に送付する。また、これをペイジにする。
"Swing Time In Hawaii" Anita O'Day & Herb Ohta MHCD1221 を聴く。
朝飯は、たらこと塩鮭のおにぎり、焼き海苔、カンピョウと湯波の味噌汁。
汗ばむほどに暖かい日と肌寒い日が数日ごとに入れ替わるが、全体としては確実に、人々の着る服は薄くなっている。
長男の "Vaio" が起動不能になり修理へ出したが、その際にハードディスクが交換された。初期設定を頼むため、これをカトーノさんの勤める 「日光わんわんの森」 へ持参する。
森は、薄い霧に覆われていた。カトーノさんはちょうど、食堂棟の薪ストーヴに火をつけているところだった。
三菱シャリオで20分ほどもかけて帰社すると、店舗の駐車場にクルマがあふれている。天気の悪い日の来客は、ことのほか有り難い。駐車場の混み合う場面はその後、2度ほどもあったが、午後2時以降は潮が引くように静かになった。
閉店後、しばらく仕事をしているうちに、雨が上がる。自転車のカゴに 「斷腸亭の経済学」 その他を入れ、「和光」 へおもむく。
大徳利の燗酒に、突きだしはマカロニサラダ。冷蔵ケイスの中にホタルイカとソラマメを発見し、これを頼む。ホタルイカのツマはミョウガタケにて、すべて食べてしまう。
便所の日めくりカレンダーにて、相田みつをが 「アレもコレも欲しがるなよ」 と、いさめの言葉を述べている。
ある人が僕に、「相田みつをで感動できる人は、また萩本欽一の芸で笑うことのできる人だ」 と、語った。言い得て妙とは、こういうことを指す。
「アレもコレも欲しがるなよ」 とは言われても、もう一品は食べたく思う。この店の魚は常に入念に焼かれるため、できあがりに時間がかかる。カレイの一夜干しを頼むと、すかさずオヤジさんが 煮タケノコを出してくれる。
最後の一皿を 猫も鼻で嗤って去るほど綺麗に食べ、店を出る。
泥の路地から狭く区切られた空を見上げると、雲が速く流れて月を見え隠れさせている。これから数日のあいだは、また暖かい日が続くだろう。
帰宅して入浴し、キリン一番搾りを270CC飲む。「斷腸亭の経済学」 を読んで、11時に就寝する。
甘木庵にて、朝5時30分に起床する。数通のeメイルを書き、きのうの日記を作成する。
7時45分に玄関を出ると、小糠雨が降っている。施錠したばかりの扉にふたたび鍵を差し込んで開く。傘を取り、これをさして春日通りを歩く。
定食の 「たつみ屋」 にて、ポテトサラダ、ホウレンソウのおひたし、ハムエッグス、メシ、油揚げとワカメとホウレンソウの味噌汁 を食べる。
本富士警察署を背にして御茶ノ水方向へ歩いていると、60歳代とおぼしき男の人に声をかけられる。
「新宿は、どちらの方向ですか?」
「新宿? ここは新宿の近所じゃないですよ。電車で行くんですか?」
「いや、電車賃が無いから、歩いていくの」
「歩きで? この道をまっすぐ行くと神田川に突き当たりますから、右へ折れてください」
「新宿まで、歩いてどれくらいかかるでしょうね?」
「さぁ、3時間くらいは、かかるんじゃないですか」
「3時間・・・」 と言うなりオジサンは絶句して、顔をゆがめた。
身なりは普通だが、一体どうしたことだろう。浮浪者であれば、都市の地理には詳しいはずだ。
「オジサン、これ上げるから電車で行ってください」 と、硬貨を差し出すことはしなかった。
御茶ノ水駅ちかくのエクセルシオールカフェには、約束の8時30分すこし前に着いた。"computerlib" の中島マヒマヒ社長は、既にして哺乳瓶のようなテイクアウト用のカップでコーフィーを飲んでいた。
店内の大テイブルで、ウェブショップの新しい受注システムにつき構想を練る。双方が質問と応答を繰り返し、種々のすりあわせを行う。
密度の濃い打ち合わせは10時に終わった。マヒマヒ氏とは御茶ノ水駅前にて別れ、僕は総武線で浅草橋へ向かう。お茶の水から浅草橋へは、わずか2駅の距離だ。
浅草橋から神田川の左岸を歩き、柳橋の小松屋へ至る。東京にあるすべての佃煮を食べ尽くすなどという気の遠くなるようなことはできないが、僕が自分のお金で購う佃煮は、東京ではこの店のもののみだ。
神田川の右岸を歩いて 浅草橋を渡る。50歳代とおぼしき男の人に声をかけられる。
「岩本町へは、どうやって行ったらいいですか?」
「バスでですか?」
「いいえ、歩いてです」
今日はヤケに、徒歩移動者に遭遇する日だ。
「そこの靖国通りを右にずっと進めば岩本町の交差点ですが、念のため角の交番で訊ねた方が良いですよ」
「分かりました、ありがとうございます」
オジサンは交番を目指して、清杉通りの横断歩道を渡って去った。
都営浅草線に2駅乗って浅草へ着く。いまだ10時45分にもなっていない。浅草駅11:00発の、下り特急スペーシアの切符を買う。江戸時代から街のあった地域での仕事や用足しは、その移動距離の短さから、ごく短時間にて効率よく済ますことができる。
スペーシアの車内で、今日の日記を途中まで書く。一眠りして目を覚ますと、列車は10分ほど前に下今市駅を出発したらしく、鬼怒川を渡っている。仕事の効率が上がった分だけ、それを相殺する制約が発生する。
鬼怒川まで至って昼飯を食おうかとも考えたが、ひと駅手前の新高徳にて下車すると、ちょうど上りの快速がプラットフォームに微速で進入してくる。まるで今日の僕のために組まれたような、絶妙のダイヤだ。
下今市駅へ戻り、午後1時30分に帰社する。
晩飯は、カニのキムチをダシにした鍋。ニラやミツバの他に生のソーセージなども用いる、ブデチゲという下品な鍋だ。最後に投入するラーメンが、これまた美味い。最初から最後まで、"tio pepe" で通す。
入浴の後に、キリン一番搾りを270CC飲む。「斷腸亭の経済学」 を読んで、9時30分に就寝する。
朝3時に起床する。
事務室へ降りて Becky! を回すと、F氏という未知の人からeメイルが届いている。「ある人から教えられて清閑PERSONALを知ったが、面白く勉強にもなるため、自分のペイジからリンクを張った」 との内容だった。
文章に貼付されたURLをクリックすると、「酔わせて下町」 というペイジが立ち上がった。清潔なデザインで、内容も粋なものに仕上がっている。読み進むほどに楽しい。
即、墨東のどちらかに住むらしいF氏に、当方からもそちらのペイジへリンクを張る旨の返信をする。
それにしても 「"清閑PERSONAL" が勉強になる」 とは、これを開いてより初めて耳にした言葉だ。
昨夕に開かれた春日町1丁目の会議内容を、マイツール のスケデュール管理に登録する。4月に行われる瀧尾神社の例大祭は、特にその準備や片付けが早朝から少しの人数により行われるため、これを失念するわけにはいかない。
僕は物忘れの激しい質ゆえ、自分ではハナッから憶えようとはせずに、コンピュータへ記録をする。
"Everything for you" Jos Van Beest Trio を、何度も聴く。甘く叙情的な "The windmills of your mind" が、たまらなく良い。
朝飯は、大根おろし、ゴボウとニンジンのキンピラ、名前を知らない魚の煮物、塩らっきょう、塩鮭、イカのオリーヴオイル焼き、メシ、ダイコンとワカメの味噌汁。
昼に、家族で 「かねしま家」 へ行く。引き戸を開けて真っ先に蔵づくりの店へ入った次男が、大声で 「頼もう」 などと言い、僕は途方に暮れる。
我が町のすべてのラーメンを食べ尽くすなどという気の遠くなるようなことはできないが、醤油のスープなら、僕は真っ先に、ここのラーメンを思い出す。
半袖Tシャツの上に木綿のスモックという、3月下旬の気温には著しく適合しない恰好にて、6時35分に家を出る。下今市駅18:51発の上り特急スペーシアに乗る。夕刻から引き続いて、列車内でもeメイルを書き続ける。会社のpatioに数通と、自分が運営するpatioに10通の返信をする。
北千住から銀座へ出て、2丁目のジャズクラブへ行く。この店のミュージックチャージは、出演者の実力によってではなく、市場の需要によって変動する。女の歌手の奥に立つ、出来の良いベイスばかりに注目をする。
11時すぎに甘木庵へ帰着する。「斷腸亭の経済学」 を読み、0時に就寝する。
朝4時30分に起床する。
"Continent Blue" Clementine & Griffin CSCS5026 \2,500 を聴きながら、朝の仕事をする。
朝飯は、たらこ、キノコの生醤油煮と大根おろし、納豆、生姜のたまり漬、メシ、ダイコンとカキナの味噌汁。
甘木庵に自転車を置こうとは、15年以上も前から考えていることだ。甘木庵のある本郷の丘から北へ下れば数分で根津、東へ下れば10数分で根岸。南へ下れば10分で皇居へ達し、南西に10数分上り下りすれば神楽坂へ至ることができる。
ただし僕は、そのアイディアが浮かぶたびに、いつもそれをうち消してきた。
少しまともな、僕の趣味にあった自転車を20万円で購入したとする。20万円という自転車代を、1000円のタクシー代で除算すると、200回という数字が導き出される。
自らモノを持つよりも、そのモノによって実現されるサーヴィスを買った方が安楽で合理的だということを、この計算は示している。
第一、麻布霞町の自宅から自転車にて乃木坂のバーへ至り、飲酒を為しているうちに、先ほど下り来た乃木坂を酔って上れなくなった、同級生のコモトリケイ君の例もある。
こうして僕は、甘木庵へ自転車を置くという1年に数回は頭に浮かぶ考えに、今回もフタをする。
閉店後、販売の社員を集めて、アイテム別前年度粗利総額比較表の検討をする。今週の実績は昨年のそれを上回ったが、販売個数が前年の同じ週より増えても減っても、それが当方の努力によるものなのか、外的な要因によるものなのかの境界は、はっきりと掴めない。
6時30分より、ゴボウとニンジンのキンピラ、カキナの胡麻よごし、甘エビの酢の物 にて、「山田錦大吟醸 大津屋 三割五分精米」 を飲む。
イカのオリーヴオイル焼き、名前を知らない魚の煮物。甘エビの頭の味噌汁にて締める。
7時に少し遅れて、春日町一丁目公民館へ行く。役員たちと、来週の総会に備えた最後の打ち合わせをする。
8時に帰宅し、入浴してキリン一番搾りを135CC飲む。「斷腸亭の経済学」 を読み、9時30分に就寝する。
朝4時に起床する。
部屋から廊下へ出ると、カサブランカが強く匂っている。開きすぎた花は、常に美しい。事務室へ行く途中、外への扉を開けると、闇の中で弱い雨が降っている。
"BLUE'S MOODS" Blue Mitchell VICJ-23590 \2,300 を聴く。
ウェブショップ の注文を処理して会社のpatioにアップする。きのうの日記を作成し、数通のeメイルを書く。
森英介という人から、原宿の "scruffy murhys" という店で開かれるパーティの案内状が、eメイルにて届いている。文章に添付された URL をクリックすると、何ヶ月も前に1度見たことのあるウェブペイジが立ち上がった。
「なにゆえ僕に、この案内状を送付したのか?」 と、質問を送ろうとして留まる。
朝飯は、たらこ、塩らっきょう、目玉焼き、納豆、塩鮭、しもつかり、キノコの生醤油煮、メシ、豚汁。
昼前まで降り続いた雨は一時、雹に変わることもあったが、その後、空は急速に明るくなった。
午後1時より、2月11日に亡くなった叔母の納骨式が、如来寺にて始まる。本堂における読経と焼香の後に新しいお墓へおもむくと、既にして須藤石材のオヤジが待機していた。
昨夕、僕とオフクロが雨に濡れないよう、ビニールをかぶせておいた土に、遺骨は無事、収められた。
2時15分、およそ20名弱の親類と共に、"Finbec Naoto" へ行く。
フォアグラのムース、3種の貝とウニのサラダ、鯛のポアレ、牛頬肉のシチュー、イチゴとアイスクリームのミルフィーユ、コーフィーによる食事会を持つ。
ちょうど牛頬肉のシチューがサーヴされようとするとき、自由学園 の終業式を終え、しかし寮の解散式へは出ずに早退した16歳の長男が、店に入ってくる。
納骨式に伴う食事会は、4時30分に終了した。帰社して着替え、仕事に復帰する。終業後、自分の運営する patio に14通の返信を書く。
家族の中には晩飯を食べる者もあったが、僕は若干の酒肴と "tio pepe" のみを口に入れる。
長男が持ち帰った 「東天寮便り」 を読む。これは、中等科1年生から高等科3年生までの6学年を持つ自由学園男子部の生徒が、自ら寄稿、編集、印刷、製本をする冊子で、1年に5、6回ほども刊行される
僕は毎回、長男が長い休みにて帰宅する際に持ち帰るこの 「東天寮便り」 を、いつも楽しみに待っている。今回の 「特集62回生」 は、この春から男子部を離れる高等科3年生全員から原稿を集めた好企画だ。
オールドパーを生にて90CCほども飲み、「斷腸亭の経済学」 を数ペイジ読んで、10時前に就寝する。
目を覚ますと、隣の部屋ではいまだ家内が起きている。時間は0時だ。そのまま起床しようとして叱られる。「静かに横になっていれば眠れるから」 と言われるが、寝台の上でなにもせずに過ごす時間ほど、無駄に感じられるものはない。
結局は、1時間30分ほど経って後に再び寝入り、気がつくと5時になっていた。
事務室へ降り、朝の仕事をこなす。昨日の日記を作成し、2、3のeメイルを書く。
朝飯は、「なめこのたまり漬」 のスクランブルドエッグ、しもつかり、納豆、たらこ、塩らっきょう、メシ、カキナとダイコンとブタ挽肉の味噌汁。
郵便局にて、税金の還付金を受け取る。こういうものを机上に置いた空き瓶にでもストックできれば僕も大したものだが、いずれほどなく、夜の巷で費消されてしまうことだろう。
"amazon" へパスワードを打ち込んで、今月12日に為した注文の配送状況を調べると、その出荷日について 「03/26-04/26」 と表示される。
書店にて平積みにされているような本ならすぐにでも送られてくるのだろうが、絶版スレスレの商品を頼むから、こういうことになる。
朝3時30分に起床する。
事務室へ降りて Becky! を回すと、千葉県にある 「鍋店神崎酒造」 の長谷川みち子さんという方から、eメイルが届いている。読んでみると、昨年の10月30日に書いた 東十条「埼玉屋」 におけるできごとが、検索エンジンにヒットしたらしい。
そういえばこの日の日記には、優れた食べ物を供するとはいえ、失礼ながら東十条という場末のモツ焼屋に、「仁勇・米水人」 という上出来の酒を見つけて驚く一節のあったことを思い出す。
「お友達と一緒に、ぜひ蔵を訪ねて欲しい」 との旨が、長谷川みち子さんからのeメイルには記されていた。本酒会 の旅行で近場を逍遙するのも悪くはないと考えつつ、返信を書く。
ウェブショップ からの受注作業をし、きのうの日記を作成する。澤野工房の視聴盤 "sawano trios sampler" ばかりを、繰り返し聴く。
朝飯は、塩らっきょう、しもつかり、キノコの生醤油煮、カキの佃煮、塩鮭、メシ、カキナと豆モヤシとブタ挽肉の味噌汁。この味噌汁が、常軌を逸して美味い。これだけの味噌汁を作りながら、シナモンロールとミルクティーなどというもので朝飯を済ます家内の嗜好には、信じがたいものがある。
8時前に、ふたりの新入社員を迎える。ウチの初出勤日は、給与の計算開始日である21日に合わせてある。世間よりは、すこし早い入社になるだろう。始業と同時に、出勤しているすべての社員が現場へ集まり、各々が自己紹介をする。
終業後、親戚の法事に出かけていた家内を、下今市駅へ迎える。その足で沈丁花と梅の香る知人宅へおもむき、預かってもらっていた次男を引き取る。自宅で晩飯を作ることのできる時間は過ぎていたため、どこかの料理屋で食事をしようとするが、お彼岸に休業をする店は存外に多い。
僕は、多くの料理屋を食べ歩くことを好まない。"Casa Lingo" へ行く。
デキャンタの白ワインを取る。突きだしに、ふかした里芋をベイジルと粒コショウの上で転がし、オリーヴオイルを振ったもの が出る。淡い味にオリーヴオイルの香りが引き立ち、素晴らしい小品に仕上がっている。
ワカサギのサラダ、マッシュルームのサラダ。僕は果物をあまり食べないが、野菜については馬食のたぐいだろう。次男の好きな ハーブポテト も注文する。
ピッツァマルゲリータ、アサリとベイコンのスパゲティ、鯵のフライ。
チーズの盛り合わせにて締める。
勘定場まで来ると、エントランスのヒヤシンスと石釜で燃える薪の香りが混じり合って聞こえ、陶然とする。僕は強い香水をつけた女の人なども、忌避することはしない。その向こうに香を焚きしめたヒンドゥーの寺を思い出して、うっとりとすることもしばしばだ。
帰宅して入浴し、キリン一番搾りを135CC飲んで、9時前に就寝する。
朝2時30分に起床する。ウェブショップ からの受注をこなし、数通のeメイルを書き、昨日の日記を作成する。僕のデジタルの先生カトーノさんの意見を容れ、日記の最新版のみ、実験としてその横幅の規定を675ドットから85%に変えてみる。
朝飯は、カレーチーズトーストと、レタスとツナのサラダ。
昨夜、家内に 「明日の朝飯はパンでいいよ」 と言ったら、それが本当になってしまった。今朝のパンは、美味いには美味いが、美味いパンと不味い米飯をくらべたとき、僕は明らかに不味い米飯の方を好む。
4月から、ヤマト運輸の荷札に郵便番号を記入する欄が設けられる。そのフォーマットに合わせた新しいマクロを、マイツール に組む。理論上は簡単にできるはずのこの作業も、実際には、紙の上に過不足なく文字が収まるよう微調整をしていく職人仕事だ。
高橋savon君のThinkPadを借りて、"try & error" を繰り返す。1時間30分ほどもかかって、マクロが完成する。
現在、ウェブショップ からの注文は、僕のコンピュータにeメイルの形で送られてくる。香港にいてもサイパンにいても、ThinkPadが手放せない。それはかまわないのだが、問題は急ぎのお客様への対応だ。
先日、下今市駅14:36発の特急スペーシアの中で、「今日出荷して、明日の午前中に配達せよ」 という注文を受けた。取り急ぎ事務のシミズサチエさんに電話をして事なきを得たが、こういう綱渡りは、あまり褒められたことではない。
ブラウザにて受注の確認がなされれば、事務室の誰もが随時、注文の受けつけを行えるようになる。この部分の外注をすべく、"computerlib" の中島マヒマヒ社長に、26日朝の面談を申し込む。
閉店後、自分が運営する patio に8通の返信を書く。
晩飯では、茹でたホタルイカとマグロの刺身にて、はじめ紅乙女を生でコップに半分ほども飲み、その後、「山田錦大吟醸 大津屋 三割五分精米」 を常温で2杯飲む。
揚げ湯波を作ろうとして失敗した残余が 「お徳用湯波」 になる。あらゆる湯波の中で、最も僕の口を喜ばせるのはこれだ。「お徳用湯波」 とカキナを鍋に仕立てる。
きのうは 「えんや」 にて妙な味のマーティニを飲んだが、今日は自分で氷のグラスを用意し、ゴードンのジンとノイリープラットのドライベルモットを適宜混ぜて飲む。
「斷腸亭の経済学」 を読み、10時に就寝する。
7時間も眠って、朝5時30分に起床する。いつもの朝の仕事をこなし、きのうの日記を作成する。
頭を使わなくても書けるeメイルがあれば、頭を使わなくては書けないeメイルもある。つい遅れがちになる頭を使わなくては書けないeメイルを書いて送る。
朝飯は、カキの佃煮、たらこ、塩鮭、塩らっきょう、野沢菜、キノコの生醤油煮によるお茶漬け。
9時すぎ、卒園式に臨む家内と次男をクルマで幼稚園へ送る。園庭にて、次男の写真を1枚撮影する。
帰社して仕事をしていると、インターネットに関連した会社の営業係がふたり、訪ねてくる。どうして人が仕事をしている最中に、連絡もなしにいきなり訪ねてくるのかと、いぶかしく思う。
インターネットによる諸々をなりわいとしている人なら特に、対象とする会社のウェブペイジを調べ、eメイルにて面談の約束をとりつけて後に訪問をするという順序が充分に踏めるだろうと僕は考えるが、そうでもないのだろうか。
「突然に訪ねてこられても、相手はできかねる」 と述べて、帰っていただく。
本日、無事に幼稚園を卒業した次男が 「焼き肉を食べたい」 と言うため、市内の2軒の焼肉屋に電話をするが、どちらも出ない。日光に1軒、知った焼肉屋があるため、そこへ行こうかと相談をしていると、次男が 「日光なら、えんやが良い」 と、希望を述べる。
「えんや」 とは、我が町にある焼肉ヴァイキングの店 「こらや」 の姉妹店だが、よくもまぁ数ヶ月前に1度しか行ったことのない料理屋の名前を記憶しているものだと、大いに感心をする。
「雪国」 の島村は、駒子を左手の人差し指のみにて覚えていた。6歳の次男は、食べ物や料理屋をインデックスとして、いろいろなものを記憶の底から引き出してくる。
「こらや」 の、妙な味のマーティニを飲む。きのう焼き鳥を食べたくせに、飽きずに串焼きの盛り合わせを取る。石鍋のニンニクスープに生玉子を落とし、メシを投入して食べる。
複数杯のワインを飲んでいるにもかかわらず、ひとり2000円に満たない晩飯を終え、日光街道の杉並木を下って帰宅する。
入浴してキリン一番搾りを135CC飲む。「斷腸亭の経済学」 を読み、10時に就寝する。
朝1時30分に起床する。事務室へ降り、ウェブショップ の受注をこなす。数通のeメイルを書いて送り、きのうの日記を作成する。
首尾よく深夜に目が覚めたため、4月に入ってからしようとしていた顧客名簿の手入れを、3時から行う。
顧客の注文をコンピュータへ入れるようになってから9年になるが、その過去帳はすべて、壊しようのないところへ保管してある。僕が数ヶ月に1度する名簿の手入れとは、その最新デイタのみを社員がいつも取り出せる場所に置くということだ。
この作業は、途中で1度ミスをすると、また振り出しに戻ってやりなおさなければいけないものだ。電話や来客などにわずらわされない環境にて、行う必要がある。
コンピュータが僕の手を離れ、自分で処理を行えるところまでくれば、あとは楽なものだ。忙しく動くディスプレイをよそに、「斷腸亭の経済学」 を読む。
朝飯は、納豆、タコとレタスのサラダ、温泉玉子、ポッサムキムチ、しもつかり、メシ、ダイコンとニンジンと長ネギの味噌汁。
僕は 商用ペイジ と 個人ペイジ に、それぞれリンクのペイジを持っている。その中の 日光・鬼怒川・那須のリンク集 を調べて、行き先の切れたものをかなり発見する。
検索エンジンにて新しいURLの判明したものについては、これを書き換え、無くなったり長く更新が止まっているものについては、これを削除する。
午後、自分が運営する patio に15通の返信を書く。
夜7時から、家内が町なかのホテルに、明日の幼稚園の謝恩会のための飾りつけに行かなくてはいけないと言う。夕刻からなにかとせわしなかったため、既製品の焼き鳥、しもつかり、自分の家で固める豆腐 にて、紅乙女のオンザロックスを飲む。
そのまま食卓の横で寝入り、帰宅した家内に起こされると、10時になっている。入浴してキリン一番搾りを135CC飲み、10時30分に就寝する。
朝6時に起床する。決められた仕事を朝飯の前にすることは諦める。甘木庵にいるときとは異なり、目が覚めた直後から、花粉による違和感を眼球におぼえる。
朝飯は、オヤジや社員からもらったポッサムキムチとタラの内臓のキムチ、烏骨鶏の玉子、韓国海苔、メシ、豚汁。
昼前に店の マイツール を見ると、先週よりも明らかに高い速度で商品が売れている。このままの調子で行ってくれと思いながら、事務室へ戻る。
昼休みに
5時30分に起床する。朝の仕事をこなし、昨日の日記を作成する。2、3通の短いeメイルを書いて送る。
7時40分に甘木庵を出る。池袋駅8:15発の、西武池袋線下り快速に乗る。 ひばりヶ丘駅には、8時35分に着いた。
5分ほど歩いて 自由学園 の正門を入る。生徒が埋設した、ところどころが地上に露出しているLANケイブルを見ながら 男子部へ至る。
自由学園に成績表はない。成績報告会において、担当の教師が授業の感想を述べ、今期を反省し、来期についての抱負や示唆を示す。クラスの性格や傾向を考察し、あるいは個々の生徒の成績を発表する。
長男のいる高等科1年の成績報告会は 9時に始まり、10時30分に終わった。
池袋から丸の内線にて本郷三丁目へ帰る。11時15分、定食の 「たつみ屋」 にて棚から幾皿かの総菜をとり、カウンターにてメシと味噌汁を受け取って、早めの昼飯をゆっくり食べる。
甘木庵へ戻る。テイブルの上のコンピュータや雑品を整理し、部屋を片付ける。窓から見える東京大学のイチョウは、いまだ冬の風情を残したままだ。
湯島の切り通し坂を下り、上野広小路から銀座線にて浅草へ出る。浅草駅15:20発の、下り快速に乗る。隅田川の桜は濃いピンク色のつぼみが認められるのみで、いまだ開花には至らない。
夕刻、冷や奴、しもつかり、カニのキムチを肴に、紅乙女のオンザロックスを飲む。細切りにしたダイコンとニンジン、油揚げとミズナの豚鍋にて、更に焼酎を飲み進む。
入浴後、キリン一番搾りを135CC飲み、10時に就寝する。
4時30分に起床する。いつでもどこでも、コンピュータを前にして朝の決まった仕事をする。きのうの日記を作成し、数通のeメイルを書いて送る。
自由学園 では大正時代の創立直後から、生徒の昼食は母親が交代で作り続けてきた。後に女子部は自分たちで準備をするようになったが、男子部は1週間に1度の調理実習を除けば、いまだ親の手になる昼食を食べ続けている。
近年は母親だけでなく、父親も昼飯作りに参加をするようになった。今日は僕が、その食事当番にあたる。
6時30分に甘木庵を出る。池袋駅7:02発の、西武池袋線下り準急に乗る。
A4の紙13ペイジにわたる 「食事当番の心得」 を目で追うが理解できないため、これをザックへしまい、かわりに 「マイルス・デイビス自叙伝?」 を取り出して読む。
7時30分すぎに、ひばりヶ丘駅へ着く。
学園町の正門通りを歩く。自分が生徒のころには勝手放題をしていたくせに、親の立場になると、正門を入ったとたんに背筋の伸びる思いがする。
「ドジを踏んで恥をかくなよ」 と、自らに注意を促す。
広葉樹の疎林を歩き、男子部に至る。
7人の当番によるミーティングが、8時から始まる。僕が白衣を身につけると、モスレムの肉屋のような風体になる。調理場に降りて、長靴を消毒する。肘まで石けんで洗い、各自が各々の持ち場に着く。
器械で皮をむかれたジャガイモの芽をとり、適当な大きさに切る。普段ならお近づきになれないような真面目な母親たちと、学園の近況などを語りながら作業をするのも楽しい。
ドレッシングに使うタマネギを切る。「オレ、なかなか上手めぇじゃん」 と思いながらスライスをしていると、突然、母親Aから 「ウワサワさんは、鶏肉の処理に当たってください」 と、配置転換を求められる。
母親Bにより丁寧に下処理をされた鶏肉の皮と筋に、包丁を入れていく。300枚ちかい鶏肉に、工夫をしながら加工を施す。
コンピュータにさせる仕事を頭の中でマクロに変換し、秀丸で目に見える形にしていくことと同じく、あるいはタグを積み重ねてウェブペイジを作ることと同じく、料理もまた、とても面白い創作の行為だ。
あっという間に時が過ぎていく。下味のつけられた鶏肉28枚を、1枚の鉄板に載せる。この鉄板が10枚、積み重ねられる。
10時30分より、1度に5枚ずつ、この鉄板をオーブンに入れていく。母親Cからオーブンのクセを教わり、タイマーに従って、途中で鉄板の位置を入れ替える。
焼き上がった鶏肉を、ステインレスの大皿に6枚ずつ並べていく。母親Bが手際よくソースをかけていく。
大量のキャベツと格闘していた母親Dと母親Eが、ようやくサラダを完成させる。プティトマトがサラダの皿に、精密にその個数を数えられ、添えられていく。
大きな寸胴からやかんに紅茶を移し替えている母親Fに近づき、その作業を交代する。
11時30分すぎに、男子部の生徒が厨房に入ってくる。無駄のない動きで食堂に料理を運ぶ者もいれば、両頬がふくらむほどつまみ食いをしている者もいる。
昼食当番の親たちは、羽仁吉一記念ホール の最も厨房寄りのテイブルに着く。今朝8時から4時間ちかくを費やして作った、鶏のバーベキューソース、ポテトと春キャベツのサラダ、パン、紅茶、牛乳、伊予柑 の昼食を、有り難く戴く。
隣の母親Dとパンを分けて食べるべく 「これ、ひとりじゃ食えませんよね?」 と言うと 「いいえ、食べられます。あ、ウワサワさん、ご飯党でいらっしゃいましたね」 と、返される。
委員や教師の報告、あるいは普段、別の部署にいらっしゃる先生の自己紹介などを経て、3月15日の昼食は無事に終了した。
食事の後に親のテイブルへ来て、余った料理を片付けていく生徒がいる。
大きなパンをガブリと口にくわえたまま、松葉杖をついて去っていく者がいる。ナイフに突き刺した鶏肉を丸ごと口へ入れ、苦労して咀嚼をしている者もいる。
僕の在学した1970年代の昼食風景が、今日もなお、変わることなく再現されている。
あしたの昼食材料を検品し、タマネギの皮をむく。当番全員で反省会を行い、今日の作業を終える。正門を出たところで、家内に報告の電話を入れる。
甘木庵に帰って ウェブショップ の注文を会社のpatioへ飛ばし、シャワーを浴びる。
夕刻より小さな会合に参加する。湯島の裏通りに、丈の低い桜が咲いている。
10時に甘木庵へ帰着し、11時に就寝する。
3時30分に起床する。4時に事務室へ降り、朝の仕事をこなす。きのうの日記を書き、諸方に数通のeメイルを送る。
朝飯は、山で採ってきたキノコの生醤油煮と大根おろし、ジャコ、塩鮭、納豆、タシロケン坊んちのつまみ湯波の炊きもの、たらこ、オクラのカツオブシかけ、メシ、豚汁。
きのう一昨日にくらべて、発送受注の数が著しく減る。どうして人は木曜日に、その行動を鈍らせるのだろうか。
「どうしても15日の午前中に着けてくれ」 という地方発送の荷造りをする。事務室を出るときには、こまめに留守番電話のスイッチを入れる。
荷造りを終えて事務室へ戻り、Jos Van Beest Trio の "Everything for you" を聴きながら、ときおり入る注文を受け、発送伝票を作成する。
日光のペンションから電話が入る。ウチへご来店になりたいという宿泊客がいらっしゃるという。本日の休みを伝えると、受話器がお客様の手に渡る。代引き着払いにて、商品をお送りすることになる。
午後、ふたたび製造現場におもむき、あした販売する商品の手入れを、1時間ほどかけてする。
夕刻、「本日お休み」の大きな看板を店の正面から駐車場の端へ移動し、裏表を返して 「日光みそのたまり漬」 の側が見えるようにする。舗道に乗り上げた四輪駆動車から、人が降りてくる。
「休みとは知らなかった、なんとか売ってくれ」 と、おっしゃる。駐車場と店舗のあいだを通用門を介して往復し、商売をする。
「トイレ、開けてくれます?」 などともおっしゃるので、トイレの鍵を開ける。
店の構造をご存じということは、いつもお買い上げ下さっている常連さんということだ。お金を儲けさせていただいて、その上 「あぁ、良かった、売っていただいて」 と、感謝してくださるのだから、有り難いことだ。
社員のいない日に、ぎりぎりの時間設定をすると、計画はかならず破綻する。それが分かっていたため、東京へ向かう特急スペーシアは、下今市駅18:52発という、遅めのものを選んでおいた。
半袖Tシャツの上に長袖Tシャツを重ね、その上にスモックを着るという、どうでもよい恰好にて特急スペーシアに乗る。腹は減っているが、ワゴンサーヴィスには手を出さない。中途半端な飲食は、落ち着いた店で飲む酒を不味くする。
湯島の 「鶴亭」 にて小酌を為し、「マイルス・デイビス自叙伝?」 を読む。
気がつくと、10時を回っている。文庫本と "Olympus Camedia C-700 Ultra Zoom" をエディバウアーのザックにしまい、勘定をして店を出る。
湯島天神に沿った長い切り通し坂を上がって本郷に達する。10時20分に甘木庵の戸を開ける。社員が無事に旅行から帰ったことを、電話で家内に確認する。入浴して11時に就寝する。
5時ちかくに起床する。
事務室へ降りるが、家内が朝早くに家を出るため、昨日の日記を書いている最中の ThinkPad s30 を持って、6時30分に居間へ上がる。
朝飯は、山で採ってきたキノコの生醤油煮、たらこ、塩らっきょう、カキの佃煮、塩鮭によるお茶漬け。
8時30分に6歳の次男が目を覚ます。朝食とお茶を用意し、ふたたび事務室へ降りる。ビル管理会社の清掃係を店舗内に入れ、また居間へ戻る。
ひとりで朝食を済ませていた次男の手を引き、歩いて幼稚園へ送る。
先日、坊主にしたばかりの次男の頭を触って、幼稚園の先生は 「気持ちいー」 と、言ってくれたという。
「オレも先生に頭、触ってもらおうかな」 と言うと、次男は 「えー、ほんとー?」 と笑う。
帰社して留守番電話のスイッチを切る。正午までに、今月に入って最も高い地方発送受注高を、電話とファクシミリと封書と ウェブショップ にて達成する。
清掃係は昼過ぎに帰った。店舗の床はワックスがけをされて、見違えるように綺麗になった。
午後はずっと、静かになる。事務室に誰もいないときに限って、CDプレイヤーが動かなくなる。CDを回す軸の部分に精密機械用のジェットクリーナーで空気を吹きかけ、復旧させる。
昨年の秋、「澤野工房」 のCDを買う際に運が良ければ "Three Minutes Sumplers" という試聴盤を手に入れることができた。ここには3分ほどに短縮された何人もの演奏が収められているが、曲数が多いため、合計の演奏時間は60分を超える。
異音もなくなり、なめらかに動きはじめたCDプレイヤーに、その "sawano trios sampler" を入れる。
1曲目は Vladimir-Shafranov の "I remember Clifford"、5曲目は Georges-Paczynski の "The drive"、7曲目は Rob-Van-Bavel の "I walkd Bud"、12曲目は Antoine-Herve の "My foolish heart"。
「澤野工房20周年記念」 の豪華な視聴盤を3回、立て続けに聴く。
夕刻、事務室にシャッターを下ろし、オフクロ、僕、次男という変則的なメンバーにて、"Casa Lingo" へ行く。
なぜか先付けのようにして 生ハム が出てくる。ワカサギのマリネ、ルッコラのサラダ。
そんなに辛いものはよせと言うのに、次男がどうしても欲しがる チョリソーの盛り合わせ、ベイコンとタマネギと黒ごまのスパゲティ。
チョコレイトとチーズのマーブルケーキ を食べ、デキャンタに残った赤ワインを飲む。
帰宅して次男と入浴をする。風呂から出ると、次男はまっすぐ寝室へ向かう。僕は居間でキリン一番搾りを135CC飲む。
籐椅子に座って寝入ったところを、帰宅した家内に起こされる。寝室へ移動し、9時前に就寝する。
3時前に起床する。自室から事務室へ降りるあいだに、早くも鼻が詰まる。今日は花粉が多く飛んでいるようだ。
いつもの朝の仕事をし、昨日の日記を作成する。eメイルを2、3通ほども書いて送り、"amazon" に、5、6冊の本を発注する。
朝飯は、ジャコ、烏骨鶏の目玉焼き、塩らっきょう、たらこ、キノコの生醤油煮と大根おろし、塩鮭、メシ、ミズナと油揚げの味噌汁。
誰もいない会社にて、電話番をつとめる。回線をひとつだけ開き、あとは受話器を外す。電話番とはいえ、ただ電話を受けているだけでは済まない。地方発送の注文が次々と入る。電話を切ったとたんに、次の注文が入る。
宛先不完全のため、北海道で配達不能に陥っている荷物の扱いについて、ヤマト運輸から連絡が入る。差出人の留守番電話に伝言を残し、受話器を置くと、次の電話が鳴る。
先ほど受注した顧客から、追加の注文が入る。既に作成した発送伝票を廃棄し、新たな伝票を作成する。しばらくすると同じ顧客から、また追加の注文が入る。2枚目の発送伝票を廃棄し、3枚目の伝票を作成する。
10時すぎに、ことし入社するふたりの高校生が来る。シャッターの下りた店舗にて、家内が "on job training" の前段階を施す。
午後になると電話の数も減り、僕はすこし楽になる。
銀座6丁目の飲食店から、はじめての注文を戴く。店の名前が、僕好みの営業形態であることを示している。
「良さそうなお店ですね、こんど寄らせていただきます」 と、傍目には外交辞令のようなことを言う。しかし僕は、行くと言ったら必ず行く。享楽的な約束に限り、僕は必ず果たす。
夕刻、自分が運営する patio に13通の返信を書いて送る。
気がつくと、普段の閉店時間を過ぎている。事務室のシャッターを下ろし、居間へ戻る。
タシロケン坊んちの刺身湯波、タラコ、ウドの炒り煮を肴に、紅乙女のオンザロックスを飲む。油揚げ、厚揚げ豆腐、豚肉、ミズナ、エノキダケ の鍋にて、更に焼酎を飲み進む。
便利な場所へ出て売り方を講ずれば、行列の店になること必定の 「久埜」 の 桜餅と草餅を食べる。
ソウルの料理屋から、オヤジが電話をしてくる。その携帯電話が、社員のあいだを次々と回る。賑やかで楽しげな空気が、細い電波を通じて明確に伝わってくる。
食卓の横でそのまま寝入り、9時に目が覚める。入浴してキリン一番搾りを135CC飲み、10時に就寝する。
目が覚めてしばらくは、そのまま静かにしている。しかしずっと静かにしていると、これは時間の無駄になる。頃合いを見計らって起きだし、居間へ移動して時計を見ると、2時30分になっている。
事務室へ降り、決められた仕事をこなす。
朝飯は、柿の葉鮨、塩鮭、ジャコ、納豆、烏骨鶏の目玉焼き、厚揚げ豆腐とコマツナのおひたし、メシ、豆腐とワカメと長ネギの味噌汁。
8時すぎに加藤床屋へ電話をし、「いますぐに行くから」 と伝える。僕はおよそ、蕎麦屋ラーメン屋のたぐいは別として、連絡もなしにいきなり店を訪ねるということをしない。
帰社すると、事務のシミズサチエさんが 「社員旅行のお知らせ」 を複数枚、書き上げておいてくれた。これを 店の外 と 内側 とに張り出す。
社員を成田のホテルまで運ぶバスが、夕刻4時に到着する。本日休暇を取った社員が、飲み物や弁当の積み込みをする。5時前に、添乗員のトバヤシヒロシさんが来る。
社員旅行の行き先は韓国だが、僕はこの国へ旅行をしたことがない。今回の付き添いは、オヤジがつとめる。
6時に参加者全員の乗ったバスを見送り、店舗駐車場の鎖を手早く締める。
今月の末に、親戚を集めた昼食会がある。それと同じメニュを出してくれるよう予約しておいた "Finbec Naoto" へ、オフクロ、家内、次男との4人で行く。
フォアグラのムース、3種の貝とウニのサラダ。
鯛のポアレ、オマール海老のソース、羊のロースト、マッシュルームと菜の花ソースの平麺添え。
イチゴとアイスクリームのミルフィーユ、エスプレッソ。
これで4000円とは、いかにも安い。いま、食べて最も得をした気分にさせてくれるのがフランス料理だ。それとは逆に、最も高く感じるのは蕎麦屋の酒だ。
僕はしばしば、酒代を安く上げようとしてグラスワインを頼み、しかしそれを飲み過ぎるため、結果としてフルボトルで注文した方が安かったという、本末転倒を発生させる。
今日はそのあたりに留意し、ワインは白2杯、赤1杯の、計3杯に留める。
およそ90分の食事を終え、8時すぎに帰宅する。入浴してキリン一番搾りを135CC飲み、9時に就寝する。
朝2時30分に起床する。事務室へ降りて Becky! を回すと、未知の方からのeメイルが届いていた。
「今月8日の日記に、酒肴として最も優れるのは朝食のおかずだと言ったのは慶應大学の高橋義孝とあるが、これは高橋義孝がその著書の中で、同僚だった池田弥三郎の言葉として引用したものではないか?」
というのが、その内容だった。
昨年6月22日の日記で、僕は同じことについて
「むかし慶應大学の高橋義孝だか池田弥三郎が、酒の肴には朝飯のおかずがよく似合うと言った」
と書いて、慶應大学を卒業した同級生から 「あれは高橋義孝だ」 とのeメイルを受け取っている。
どちらが正しいのか、しばし考える。僕は高橋義孝の随筆なら、1970年代に何冊も読んだことがある。池田弥三郎の著作については、本棚にはあっても読んだ記憶はない。
僕はこの話の種を、高橋義孝の文章から得たに違いない。ということは、同級生よりもeメイルを下さった未知の方の意見の方が、確率からすると正しいことになる。
「酒肴として最も優れるのは朝食のおかずだと言ったのは、慶應大学国文科の教授だった池田弥三郎」 を正解として、今後は用いることにしよう。
朝飯は、プティトマトのオリーヴオイルかけ、納豆、塩らっきょう、厚揚げ豆腐とコマツナのおひたし、たらこ、鰺の開き、メシ、ダイコンとシイタケの味噌汁。
日中、店舗はこの季節としては賑わい、今週前半の不振をすこしは取り戻す。僕は雑役夫として店の内外をこまめに清掃し、袋詰め部門へ足を運んで在庫の確認をし、製造現場で仕掛品の手入れをする。
閉店後しばらくしてから、カキの佃煮、たらこ、茹でたホタルイカとマグロの刺身にて、「山田錦大吟醸 大津屋 三割五分精米」 を飲む。
「佃権」 の種を用いたおでんを、僕としては大量に食べる。
7時から、酔った頭とデジタルカメラを携えて、春日町1丁目公民館における 育成会新年総会 へおもむく。僕は監査だから、黙ってボンヤリ座っていれば良い。
総会は8時すぎに終了した。子どものころから顔を見知っているオヤヂ連中に飲み屋へ誘われるが、「もう寝る時間だからさぁ」 と断り、まっすぐに帰宅する。
入浴してキリン一番搾りを135CC飲み、9時に就寝する。
朝4時30分に起床する。事務室へ降りて、顧客からのeメイルに返信を書く。会社のpatioへ必要な知らせをアップする。昨日の日記を作成する。
自室に戻ってヴェランダを見ると、杉の花粉が黄色いまだら模様を作っている。僕の花粉症は1週間前の土曜日に最もひどく、そのあとはごく軽い症状が出るのみだ。
朝飯は、ジャコ、めんたいこ、カキの佃煮、塩鮭、塩らっきょうによるお茶漬け。
血液型と携帯電話番号の入った社員旅行名簿を作る。それぞれの部屋を示すアルファベットの入ったコラムに繰り越し演算をかけ、部屋ごとに空白行を挿入する。
いつかカトーノさんは、マイツール を使う僕の後ろに立ちながら 「マイツールって、文字も計算できるんですね」 と、言った。
町なかのコンピュータ屋シバタサトシさんは 「マイツールって、ブラウザの内容をデータベースに落とすなんてことが、簡単なマクロでサクサクできるんですね」 と、言った。
頭の良い人は、頑迷さとは無縁にして飲み込みが早い。
次々と出勤してくる社員に、できあがったばかりの名簿を渡す。
会社を留守にした2日間に届いた郵便物や見積もり、訪問者の名刺を整理する。急ぎの用件を伝えようと2ヶ所に電話をするが、どちらの営業所にも、人はいなかった。
終業後、仲間内の会合に出席をする。9時前に帰宅し、9時30分に就寝する。
暗闇の中で目を覚ます。僕の寝室に時計は無い。枕元の携帯電話を見ると4時になっている。夏には遠いこの季節に、窓の外はいまだ未明の藍色を保っている。起きて居間へ移動する。
会社のpatioに社員宛の連絡事項を送り、きのうの日記を作成する。商用サイトのトップ を少し更新し、サーヴァーに転送する。
8時すぎに、先日、三菱デリカを運転しているときに見かけた本郷3丁目の定食屋へ出かける。これからチェーン展開をしていこうとしている店なのか、入り口にかかった清潔な白いノレンには 「定食屋 深川 たつみ屋」 の文字があった。
店に入ってすぐ右側の棚から、冷や奴とポテトサラダとメカブを選び、お盆に載せる。既にできあがったおかずを選ぶ形式の定食屋に入るのは、1986年に大阪ミナミの大黒家へ行って以来のことだ。
そのまま奥へ進み、メシと味噌汁を頼む。女の人が、メシは普通盛りと大盛りのどちらにするかと訊く。朝はいつも、大きめの茶碗で2杯はメシを食う自分の日常を考え、大盛りを頼むと、これがとんでもない量のものだった。
朝日の当たるカウンターに、お盆を運ぶ。大盛りを頼んでそれを残すほど、恰好の悪いこともない。必死になって、大量のメシを胃に収める。
壁には、50円から数百円までの総菜が、数十枚の板に書かれて下がっている。
「酒肴として最も優れるのは朝食のおかずだ」 とは、慶應大学独文科の教授だった高橋義孝の言葉だ。この店は夕刻から飲み屋に変わるらしく、4種類の日本酒が客席中央の冷蔵庫に保管されていた。
きのうに続いて東京ビッグサイトへ行く。会議棟の長いエスカレイターに乗って、建物の逆三角形部分に上る。6階の会議室にて、"murauchi.co jp" の村内伸弘社長による 「新時代の顧客戦略とIT活用」 を受講する。
掲示板の積極利用による顧客からの情報収集、商品説明のすぐ近くに置かれた、その商品を購入した顧客による 「お客様の声」 へのボタンなど、「お客がお客を呼ぶシステム」 「お客による商品の需要拡大」 の仕組みには、参考になることが多くあった。
浅草駅18:00発の下り特急スペーシアにて帰宅する。
僕が不在のときのおかずの定番ハンバーグステーキ、ポテトサラダ、タイ風の海老サラダ、梅干 にて、紅乙女のオンザロックスを2杯飲む。
10時に就寝する。
朝4時30分に起床する。複数の顧客から届いているeメイルに返信を書き、きのうの日記を作成する。
朝飯は、オフクロがきのうの昼飯に食べようとして食べきれなかったベイコンエッグ、納豆、塩鮭、梅干、ジャコ、メシ、豚汁。
下今市駅9:01発の、上り特急スペーシアに乗る。浅草へ着くまでに、自分が運営するpatioに11件のレスポンスをつける。
11時すぎ、新橋で地下鉄をゆりかもめに乗り換え、昼近くに国際展示場正門へ至る。天気予報は今日の風の冷たさを伝えていたが、東京ビッグサイトに集まる人々の服装には、陽光の暖かさを受けて半袖のシャツも見受けられた。
日本経済新聞社主催の "RETAIL TECH 2002" は今月の5日から開かれているが、僕はそのフォーラムの中から、7日と8日に行われるふたつに、狙いを絞っていた。
会場内の、情報技術を用いたさまざまな流通のあり方を示したブースを歩いた後に、縣厚伸とティム・ロビンソンによる 「新世紀 - 流通業のIT戦略最前線」 を受講する。
情報技術を用いた、販売管理、商品管理、顧客管理、一般管理、経営統治を同時に載せる共通基盤を2004年までに完成させるとする、イオングループの壮大な事業計画について、縣厚伸が述べる。
その実現へ向けての細部について、ティム・ロビンソンが解説するという形のプレゼンテイションは、3時間にもおよんだ。
外へ出ると既にあたりは薄暗く翳って、海からの強い風に、地面からのワイヤーで支持された芝生の上の木々が、大きく揺れている。
新橋から銀座へ移動し、最も京橋よりの出口から地上へ出る。
1丁目の三州屋銀座一丁目店にて、燗酒と鶏豆腐の小酌を為す。「マイルス・デイビス自叙伝?」 を、かなりのところまで読み進む。
5丁目に下り、近藤書店の守衛室をすり抜けた奥の便所で小便をする。ただで便所を使っては申し訳が立たないため、裏の階段から2階の売場へ上がる。3階のイエナ洋書店が1月17日に閉店をしたため、ここへ至る上りのエレヴェイターは閉鎖されていた。
クラフトエヴィング商會の本と荒木経惟の本が、並んで置かれているのも珍しい。荒木経惟の 「東京日記」 を買おうとして手に取ると、これがかなり分厚いため、荷物嫌いの僕は他に目を移す。
2時30分に起床する。
事務室へ降り、ウェブショップ の受注をこなし、顧客へeメイルを書く。顧客以外にもeメイルを書く。きのうの日記はきのうのうちにそのほとんどを書き終えていたため、今朝の時間の余裕はとても大きい。
Jos Van Beest Trio の "Everything for you" を聴く。僕は多くのCDを聴かない。気に入った少数を、くりかえし回すのみだ。
居間へ戻ってはじめて外を見る。雨が降っている。今日は花粉も強くは飛ばないだろう。
朝飯は、タクワン、鮭の味噌漬、ジャコ、梅干、メシ、豚汁。
手塚工房のテヅカナオちゃんが、店内に設けた飾り棚の改修に来る。あちらこちらに電話をし、あれやこれやの打ち合わせや調整をする。
プレゼント企画 の当選者から、続々と 「商品到着」 のeメイルが入る。1年で最も寒い時期に、現場の社員が神経を張りつめて仕上げた味を、充分に楽しんでいただきたい。
身内に祝い事があったため、家族5人で外へ食事に出かける。"Casa Lingo" にて、それほどにも高くない "Rosso di Montalcino" をとる。
フルーツトマトとモツァレラチーズのサラダ、鯛のカルパッツィオ、頼まなくても出てくる 豚肉とラードのムース。
小さなキャベツとアンチョビのスパゲティ、ピッツァ・マルゲリータ、ムール貝とアサリと小エビのスパゲティ 等々。
このあたりで腹が満たされ、その先に進むことがあたわない。
砂糖をたっぷりと入れたエスプレッソ を少しずつ飲みながら グラッパを舐めていると、蕎麦湯を肴に冷や酒を飲んでいる気分になる。
8時に帰宅し、9時に就寝する。
目を覚まし、しばらくじっとしてから起きだして時計を見ると、2時30分になっている。そのまま着替えて事務室へ降りる。
今年の春に入社するふたりの高校生に手紙を書く。
高島屋へ出張していたため、のびのびになっていた紙の本酒会報を作成し、封筒に詰めてタックシールを貼る。出品一覧のデイタベイスをつくり、文章を考え、それを会員に同報メイルで送り、あるいは ペイジを作るよりも、手紙を出すことはよほど面倒な仕事だ。
朝飯は、納豆、アジの干物、井上のカマボコ、自分の家で固める豆腐、メシ、ダイコンとミツバの味噌汁。
8時すぎ、関根耳鼻科の受付に保険証を置く。9時前に改めて行き、診察室へ一番乗りをして花粉症の治療を受ける。
10時から11時30分まで、健康福祉センターの 「食品衛生講習会」 へ出席をする。会社へ帰るとカトーノさんが来ていた。
ウェブペイジの動作確認などを行い、昼食をとる。午後は数時間にわたり、大学ノート7ペイジを埋めるレクテュアを受ける。
毎週月曜日になると、カトーノさんが来て朝から夕方まで僕に、ウェブペイジ作成法などコンピュータの使い方を教えてくれた、1998年の夏と秋の数ヶ月を思い出す。
最後に、しばらくのあいだ壊れていた、アクセスログを マイツール にコンバートしてデイタベイス化するマクロを復旧したところで、今日の勉強を終える。
勉強とは 「自ら勉め強いること」 と、聞いたことがある。僕は今日のような勉強なら、自らを強いることなくサクサクできる。好きなことは楽なこと、楽をするということは、好んでするということだ。
きのう連絡を入れるよう取引先に伝言を頼みおいた担当者が、いまだに電話をしてこない。いささかいぶかしんでこちらから電話を入れると
「きのうと今日、2度おじゃまいたしましたが、生憎とお留守でいらっしゃいまして」
と、恐縮をする。僕は来てくれとは頼まず、連絡が欲しいと言っただけだ。
日本の営業マンが、相手の所在も確かめずに、とりあえず訪問をして無駄にする時間と労力の集積は、いったいどれくらいになるものだろうか。
夕刻、鮭の味噌漬とお多福豆にて、紅乙女のオンザロックスを飲む。
タシロケン坊んちのお徳用湯波、ミツバ、エリンギ、エノキダケの鍋 には、次男@6歳の注文により、豚肉も入れた。湯波のみを食べた方が体には良いと認識しつつ、僕も豚肉に箸を伸ばす。
入浴してキリン一番搾りを135CC飲み、9時30分に就寝する。
延々9時間も眠り続けて、7時に起床する。朝飯前の仕事は、ままならない。
朝飯は、丸赤の激辛塩鮭、なめこのたまり漬によるスクランブルドエッグ、井上のカマボコ、小松屋のジャコ、ホウレンソウの油炒め、メシ、豆腐とワカメと長ネギの味噌汁。
2月19日以来、ずっと手つかずのままできた 第105回本酒会報 および 過去の出品一覧 を整え、同文のメイルマガジンを本酒会員に送付する。
日中は、なにかと気ぜわしく仕事をする。振り返ってどのような成果を上げたのか判明しないところが、気ぜわしく行った仕事の特徴だ。
閉店後、高島屋へ出張した社員を集め、30分間ほどの反省会を持つ。若いメンバーから、作業と経理の双方について、これをより合理化するアイディアが出る。早速その意見を、来年に向けてのデイタベイスに追加する。
すべての社員が帰った後に、長い帳票を打ち出す仕事を行う。プリンターから紙がすべて吐き出されるまでのあいだに
目が覚めてからしばらくして起床し、時計を見ると2時だった。
事務室へ降り、ウェブショップ からの受注をこなし、かなりの数のeメイルを書く。nifterm を回し、受注を会社の patio へアップする。
日中、キーボードに触れながら眠ってしまうということが、しばしばあった。眠りながらする仕事はろくな結果にならないかというと、そうでもないところが面白い。
終業後、週間のアイテム別粗利総額の前年度対比をあらわす表を前にして、販売の社員たちと軽い話をする。みなに "teuscher" のチョコレイトを配る。クルマで帰宅する必要のない僕のみ、"tio pepe" を飲む。
6時30分より春日町公民館にて、春と夏のお祭りにおける役割分担を、アミダクジにて決める。「東照宮に振り当てられると大変だ」 と言っていたスズキ下駄屋のオヤジが、よりによって東照宮の係りを引き当てる。
「東照宮の御神輿は重くて大変なんだよ、肩がパンパンになっちゃってよ。だけど昔は日当が500円でたかんな、そのころ日光にはコレがあったから、帰りに寄ったんだ」
と言いながら、手の人差し指と中指のあいだから親指を突き出して見せる。
「日光に女郎屋、あったんですか?」
「あったよ、東武日光駅からずっと上に上がってきたとこ」
誰かが 「稲荷町だよ」 と、口をはさむ。
「だけどな、そこへ寄ると、御神輿の疲れがサーッと消えるんだ」
「ハハハ、重くて大変だって、そういうことをする元気は、あったんじゃないですか」
場所を洋食屋の 「金長」 へ移して、夕食会が始まる。
「おめぇ、疲れたらクエン酸が良いぞ。ペットボトルの水に溶かして飲むんだ」
と、アンザイ畳屋のオヤジが言う。
「クエン酸? どこに売ってるんですか?」
「もみじ屋」
「じゃぁ、もみじ屋に行って、『アンザイ畳屋のオヤジから聞いて来たんですけれど、チンポの立つクエン酸ください』 と言えば良いんですか?」
「そうそう。グヒャヒャヒャヒャ」
1時間以上も酒を飲み続けて、まともな話がひとつも出ないというのも、ずいぶんと洒落たことだ。昨夜に引き続いて、トンカツにて締める。
帰宅して入浴し、キリン一番搾りの135CC缶を1本飲んで10時に就寝する。
朝4時30分に起床する。「澤野工房」 の
朝6時30分に起床する。8時間以上も眠り続けたことになる。朝飯前の仕事をすることあたわず、そのまま居間へ居続ける。
朝飯は、イカのめんたいこ和え、たらこと昆布の佃煮、丸赤の激辛塩鮭、東山区新門前通り味芳のジャコ、ハクサイの漬物、メシによるお茶漬け。
高島屋での1週間に使った費用を精算する。週間決算については一部の経費が明日にならないと出ないため、今日のところは持ち越しにする。
書くべき文章、しなくてはいけないことが混在して積み上げられ、しばし頭が酸欠になる。片端からひとつずつ片付けていけば良いものを、気力に劣ってそれができない。
自転車に乗り、「ラーメンふじや」 へ昼飯を食べに行く。食べ終えて帰社する。
なぜか、自転車を置いたまま帰ってきてしまったような気がして、歩いて 「ふじや」 へ戻ると、そこに自転車は見あたらない。
ふたたび会社へ戻って駐輪場を見ると、問題の物件はしっかり施錠して停めてあった。
自転車で行って自転車で帰ってきたにもかかわらず、ほんの1分前の自分の行為が思い出せない。どうもに頭が回転しない。
終業後、「マイルス・デイビス自叙伝?」 を携えて 「市之蔵」 へ行く。引き戸を開けると、入れ込みに4人のグループがいるのみにて、カウンターの椅子はすべて空いている。
「良かった、空いてて」 と言って、店のふたりの女の人に笑われる。考えも無しにそのとき思ったことをすぐ口に出すことは、僕の数多い欠点の中のひとつだ。
カツオの刺身と、頼まなくても出てくるシラスおろしにて、紅乙女のオンザロックスを飲む。ツブ貝の鬼殻焼き を追加する。
入れ込みの4人のうち最も上の立場と思われる人間が、そこにいない同僚部下に対して怒りの言葉を述べている。他の3人は、まるで漫才の相方のように、タイミングの良い相づちを返している。
飲み屋での会話はすべからく、ヨタ話とスケベ話に限定をすべきだ。
頼まなくても出てくるグラタン、頼まなくても出てくる炒りギンナンと漬物 にて、更に紅乙女のオンザロックスを飲み進む。
勘定を頼むと、2000円だという。言われるまま2000円を支払って店を出る。
8時に帰宅をするが、いつになくテレビでニュースなどを見てしまう。今夜の飲み方が足りなかったせいだろう。
キリン一番搾りの135CC缶を2本飲み、10時30分に就寝する。