朝3時30分に起床する。
事務室へ降りると、閉まったシャッターの向こうから、濡れた道路を走るクルマの音が聞こえてくる。早くも天気が崩れ始めたかと気にして通用門から外へ出ると、いまにも止みそうな弱い雨が見える。とりあえずは安心をする。連休中の降雨は、はなはだ迷惑だ。
珍しくウェブペイジからの注文が無い。
朝1時30分に起床する。
事務室へ降り、ウェブショップ の注文を受ける。昨日の日記を作成し、数通のeメイルを送受信する。諸方のpatioに8通の返信をする。
大企業のホワイトカラー系社員にはこの時期、10日間の休暇が与えられるという。僕がたったひとりでそれだけの休みを持てたなら
朝5時に起床する。事務室へ降りてシャッターを開けると、店舗の駐車場にクルマが3台、停まっている。中に人の寝ている気配はない。どこかへ遊びに行ってしまったのだろうか。困ったことだと思う。
eメイルによる注文をこなし、確認書を送付する。中の1件が、支払い方法の選択をしていない。確認書に質問を添える。きのうの日記を作成し、朝日新聞の書評欄に目を通す。
「ONとOFF」 という本について、それを書いたソニーの出井伸之にインターヴューをした記事がある。「ONとOFF」 は、6年前から出井が社内向けウェブペイジに書いているメッセイジの、直近4年分を集めた本だという。
ライターが企業や周辺に取材をして書いたビジネス書には、案外ウソが多い。取材された側がライターの質問に対して事実でない答えを述べれば、そこにひとつのウソが発生する。ライター自身にも、筆の滑りはあるだろう。
ウソはハードカヴァーや派手な惹句、無知な評者などによって本物らしい衣をまとい、書店に平積みされていく。
「ONとOFF」 は、本人が社内に発表したものの 「ほぼ原文」 だという。「ほぼ」 が 「完全なる」 の何パーセントにあたるかは知らないが、第三者が書いたリポートよりもこれは、真実に近いものだろう。今朝はこのコーナーを、興味を持って読むことができた。
朝飯は、牛肉のそぼろ煮、温泉玉子、茹でたグリーンアスパラガス、水菜の炒め煮、納豆、メシ、豆腐と三つ葉の味噌汁。
9時すぎ、宇都宮の丘の上にあるゴルフ場へ、顧客の注文により商品を配達する。来た道を引き返して日光街道へ出ればコトは簡単であるにもかかわらず、知らない山道を抜けて帰ろうと企てる。
濃い緑の樹海に、薄紫の藤の花が垂れて、そこだけが幾分か明るくなっている。なだらかな山に針葉樹と広葉樹とが、深い緑と浅い緑のまだら模様を作っている。大百姓の豪壮な門が、暖かそうな日の光に映えている。
渋滞を避けて例弊使街の杉並木を上がってくると、日光街道との合流点に何十個もの赤いテイルランプが見える。住宅地へ折れて裏道をたどり、昼前に帰社する。
昼食後に次男が、「宇都宮へはいつ行くのか?」 と訊く。きのう宇都宮のユニクロ行きを中止したことを受けての発言だろう。「宇都宮へは、なにをしに行きたいのか?」 と訊くと 「ご飯を食べに行きたい」 と答える。
「ご飯は、なにを食べたいのか?」 と訊くと 「しゃぶしゃぶ」 と答える。
数年前に行った、東京の有名和食屋が展開するチェーン店を、いまだに覚えているらしい。次男の、こういうことについての記憶力は驚くばかりだ。
ただし、このしゃぶしゃぶ屋は安くて美味いかわりに、掃除の行き届いていないこと、アルバイト社員の質の低さ共に、目をそむけさせるものがある。
「あの店は、好きじゃないんだよ」
「じゃぁ、とんかつ」
「とんかつだったら、今市で食べるのが1番美味いよ」
「じゃぁ、電話で予約したら?」
6歳になる次男のこういう世間知にもまた僕は驚き、失笑を禁じ得ない。
夕刻の店舗には行楽客が絶えず、閉店時間が30分ちかく延びる。販売の社員と 「週間粗利総額対前年度比表」 の検討をして解散する。
「とんかつあづま」 へ電話をして、カウンターの3席を予約する。徒歩で行こうとの提案を、家内に却下される。クルマにておよそ600メートルを移動し、つくばいの横の硝子戸を引く。
小振りなサラダにて、燗酒を飲む。僕はロースカツ、家内は盛り合わせ。おとなのとんかつを分け与えられる次男には、メシと味噌汁のみをとる。
2本の燗酒を飲み終わった僕は、お店の人に 「子どものお残しを食べますので、ゴハンはいりません。味噌汁のみをいただきます」 と、著しく計算の難しい注文をする。
大きくて分厚いカツ、ほかほかの白いご飯、色鮮やかなぬか漬け、豆腐と長ネギの熱い味噌汁。とんかつ屋に求められるすべてが、ここにはある。
帰宅して入浴し、アミールSと、何に効くのか分からないイチョウ葉エキスを6粒飲む。9時前に就寝する。
朝2時30分に起床する。
事務室へ降りてメイラーを回す。毎年5月の連休前には、ウェブショップ のアクセスカウンタが早く上がる。これは 「日光」 「漬物」 などというキーワードを検索エンジンに打ち込む人が多くなるからだろうか。
長い休みに入ると、それとは反比例をするように、注文件数も少なくなる。コンピュータに触れる機会が少なくなるためだろう。
ウェブショップの注文を受け、顧客その他にeメイルを書き、諸方のpatioに19通の返信を送り、きのうの日記を作成しても、いかんせん2時30分の起床では、時間は多いに余る。
朝3時30分に起床する。ウェブショップ のメインテナンスをし、また受注をこなす。顧客からの質問に答えるものを含めて数通のeメイルを書き、きのうの日記を作成する。
"Olympus Camedia C-700 Ultra Zoom" から取り出したスマートメディアが、コンピュータに認識されないことがある。時間をおいて何度も試すと、そのうちに認識されたりもする。そういうときにはスマートメディアの金属部分をティッシュペイパーで入念に拭くと良いということを、カトーノさんから聞いた。
今朝もその方法にて、きのうの画像が無事 "ThinkPad s30" に吸い込まれる。
朝飯は、豆腐の卵とじ、ほうれん草のおひたし、ジャコ、納豆、焼き鯖、メシ、大根と三つ葉の味噌汁。
1.地方発送を申し込んだ顧客の 「送り先」 と 「商品」 のデイタベイスを作る。
2.そのデイタから注文書を作成する。
3.そのデイタからヤマト運輸の荷札を印刷する。
このシステムが果たして マイツール 上に具現化できるかどうかを "Computer Lib" へ問うための資料を作成する。僕は、こういう際の準備だけは怠りなくする人間だ。
3.については、僕は既に自作のマクロを7年前から動かしている。2.についても、自力で構築が可能だろう。しかし1.については、かなりのイマジネイションの飛躍が必要になると思う。これは、ウチの商品のアイテム数の多さに、その要因を求めることができる。
ウチではお客様から 「これをこうしてこういう形で送れ」 と依頼を受けたら、どのような構成の商品でも作り上げる。全36アイテムを順列組み合わせしたら、一体どれだけの数の商品になるだろう? 「コード化を激しく拒んでいる商品」 と呼ぶこともできそうだ。
この仕事は納期を設けず、作り手にひらめきが浮かぶまで、ゆっくり待つ種類のものだろう。僕は拙速を嫌う。
ことし小学校へ入学した次男には、入学祝いとして自転車を送った。それまで次男は、補助輪付きの幼児用自転車を、多くは人に押してもらって乗るばかりだった。
新しい自転車は、本酒会 のイチモトケンイチ会長が経営する 「市本サイクル」 にて購った。
イチモトケンイチ会長の唱える 「もっとも早く自転車に乗れる方法」 とは、自転車のペダルを外して、先ずは足で地面を蹴って進むことから始める、というものだ。果たして次男はこの方法で、たった数日間にて自転車に乗れるようになった。
僕は自分が、大きな自転車を何度も大きく転倒させ、ほとんど潰すまで練習をして、やっと乗れるようになったときのことを思い出した。
初めてオートバイを操縦したときの喜びを、忘れることはない。しかし初めて自転車に乗れるようになったときの喜びは、オートバイの比ではない。次男はそのとき僕が感じたと同じ喜びを、いま感じているのかどうなのか。
茄子と豚肉の油炒め、ナムル、冷や奴にて、泡盛瑞泉を飲む。
アミールSと、何に効くのか分からないイチョウ葉エキスを6粒飲み、9時前に就寝する。
朝2時に起床する。いつもの仕事をし、きのうの日記を作成し、数通のeメイルを送受信する。諸方のpatioに19の書き込みをする。
朝飯は、焼き鯖、若竹煮、ニンジンとゴボウのキンピラ、ジャコ、筍メシ、天ぷらと万能ネギの味噌汁。
きのうの夕刻 「日光わんわんの森」 のカトーノさんから紹介のあった、旅行雑誌の記者が来る。取材は、20分ほどにて完了した。
「紙面にURLは記載しないんですか?」 と訊くと
「えぇ、それはないんです」 と答える。
取材対象のURLを添えた方が読者の利便性に寄与し、結果、雑誌の販売部数も上がると僕は考えるが、先方には先方の物差しがあるのだろう。
所用にて、栃木県の中心部までクルマで下る。事務のシミズハナコさんより、"Computer Lib" から連絡があった旨の電話が入る。適当な場所へ停車し、社長のナカジママヒマヒ社長に電話をする。
来月の4回の打合せについて、自分の力では完成の難しいソフトの開発について、製造の中止された "ThinkPad s30" についての意見交換をする。その場で、RAMメモリを265MBまで引き上げたものを1台、発注する。
"IBM" は、日本市場でしか売れないB5ノートから手を引くという。撤退などせずに、使い勝手と耐久性に劣る、他社製コンピュータのシェアを食って生き延びる手段を、"IBM" は採用しなかった。
220から始まったB5 "ThinkPad" の輝かしい歴史は、s30を以て終焉を迎えることになる。
夕刻に帰社する。
冷やしトマト、ジャコ、ニンジンとゴボウのキンピラ、ほうれん草のおひたし、納豆の油揚げ包み焼き を肴に
朝3時に起床する。事務室へ降りて、ウェブショップ の受注作業をする。
1週間に何度かは、無線のアクセスポイントがスタックする。1度コンセントを抜き差しすると復旧したりもするが、どういうわけかすぐには元に戻らないこともある。そういうときにはきのうの日記を作成し、あるいは紙の手紙を書いて切手を貼る。
ようやくアクセスポイントが働き始める。日記をサーヴァーに転送し、メイラーを回す。
きのう京都のモリカゲシャツ に、生地見本を送るようeメイルを送った。2時間後のタイムスタンプを持つ返信が、モリカゲマイコさんから届いている。
素早く的確なレスポンスを受け取ると 「じゃぁシャツを2枚ほど、買わなきゃいけねぇな」 などと考える。こういうことをしているから、いつになっても銀行残高が増えていかない。
朝飯は、スペイン風の目玉焼き、しらすおろし、ほうれん草の油炒め、納豆、メシ、厚揚げ豆腐と万能ネギの味噌汁。
体内の中性脂肪を減らすため、数年前までは毎日のように食べていたベイコンエッグを、朝飯のメニュから外した。そのため、たまに目玉焼きが出てくると 「おっ」 と思って、すこし嬉しい。
曇っていた空が、9時すぎから晴れてくる。販売の社員が、店舗の駐車場に散水をする。
仕事の一部ということになるのだろう、昼どきに "Casa Lingo" にて、人と待ち合わせをする。相手は外に立って待っていた。いまだ12時前だというのに、店内はランチの客であふれていた。カウンターに座る。
パスタのコースには、2種類のスパゲティと1種類のラザニアが用意されていた。スパゲティのひとつは 「カツオと江戸菜のビアンコ」、もうひとつは 「サーディンとブラウンマッシュルームのトマトソース」 だった。僕は前者に興味を持ったが、とりあえず相手の希望を訊くと、カツオの方を選んだ。必然的に、僕はサーディンの方を注文する。
たとえば "Computer Lib" のナカジママヒマヒ社長と昼飯を食べながら、自分の頭の中にあるソフト開発の可能性について話し、ハイノート、ハイテンションな声による 「そりゃできますよ」 という返事をもらう。双方の会話はテニスボールのように往復し、より具体性を帯びて発展していく。こういうメシは、楽で楽で仕方がない。
ところが今日のような頼まれごと、交渉ごとの絡んだメシは、どうにも気の重いものだ。そしていくら気を重くする仕事でも、する必要のあることであれば、これをしないわけにはいかない。
酒抜きのイタリア料理を摂取し、小一時間後に帰社する。
夕刻、「日光わんわんの森」 のカトーノさんから電話が入る。「取材に来た雑誌記者が情報を求めているので、明朝、そちらを訪問してもらってもよいか?」 という内容のものだった。了承をして電話を切る。
日光の山が、徐々に暮れていく。タシロケン坊んちの豆腐を用いた冷や奴にて、泡盛を飲む。ニンジンとゴボウのキンピラ、筍と山椒葉、桜エビと玉ネギの天ぷら、鯖の開き にて、更に泡盛を飲み進む。
入浴し、9時に就寝する。
朝4時30分に起床する。数通のeメイルを送受信する。いつもの仕事をして、きのうの日記を作成する。
朝飯は、しらすおろし、トマトとジャガイモとハムのサラダ、納豆、温泉玉子、厚揚げ豆腐とミツバの炊きもの、筍メシ、筍とワカメと万能ネギの味噌汁。
隠居の庭に、シャクナゲの花が咲いている。キウイの花は、いまだ蕾のままだ。ケヤキの樹上に、何種類かの鳥がうるさく鳴いている。
昨夕、春日町1丁目町内会のタケダ会計係が持参した、手書きによる平成13年度の決算報告書を清書する。「収入の部」 に対して、「支出の部」 が、1万円以上も少ない。タケダ会計係に電話をし、予備費を増やして調整することとする。
本酒会 でも町内会でも、帳面の誤りを指摘するのはいつも会計監査ではなく、コンピュータだ。
事務のシミズハナコさんのプリンタを借りて、右と左がピシリと合った決算報告書を印刷する。それを持って外へ出る。タケダ会計係が経営する竹田線香店の引き戸を開け、案内を請う。
竹田線香店は日光街道に3間半の間口を持つ、古色蒼然とした線香屋だ。間口は3間半だが、奥行きは50メートルもある。
入ってすぐ左手にある包装場からタケダ会計係の奥さんが土間へ降り、僕を案内してくれる。
「やだくってまぁ恥ずかしい、おらっちの裏の方さお客さんに来てもらうなんて」
「どうして? オバチャンのブラジャーでも干してあんの?」
「ハハハ、幅の広れぇやつか? そんなんじゃねぇけどさ、こんな汚ねぇとこ」
「そんなことないよ、すごいよ。小学生の見学にも使えるじゃない」
細い通路をたどると自宅の奥に線香の乾燥場があり、更に進んだ先に製造場が現れる。タケダ会計係は杉葉の粉などを攪拌している最中だった。
「これ、印刷できました。なにか間違いがあったら言ってください、すぐに直しますから」
「いやぁ、すいません、どうもどうも」
旧市街の中心部に、線香を作って売る店がある。家内工業のあるところに文化は発生する。家内工業のないところには、文明はあっても文化はない。竹田線香店は、我が春日町1丁目の誇る貴重な財産だ。
夜7時前から、冷や奴、筍の炊きもの、トマトサラダ にて、生の泡盛を飲む。
トマトサラダの皿に溜まったオリーヴオイルとバルサミコを冷や奴にかけたら、若い女の人が好むヌーベル居酒屋風の味になって、いささか後悔をする。僕はもともと、女の客の多い飲み屋を好まない。飲み屋こそは、オヤヂの殿堂であるべきだ。
仕上げに、すり鉢で当たったほうれん草のカレーを、メシにかけて食べる。
入浴してアミールSを飲み、8時に就寝する。
4時に起床する。事務室へ降りていつもの仕事をする。
"Ukulele Wave" Herb Ohta SCCA-29 \2,548 をCDプレイヤーに入れる。1曲目の "Wave" が流れる。ハワイにいる脳天気なオヤジに 「相変わらず良いじゃない、オオタサン」 と、声をかけたくなる。
顧客から 「26日に出荷、27日に必着と希望を伝えたのに、本日出荷する旨のメイルが届いた。どういうことなのか?」 という問い合わせがある。
顧客がペイストして送ってきた問題のメイルを読む。
クロネコ@ペイメント でクレジットカードの決済をするとき、その手続き中に入力した顧客のメイルアドレスへ向けて 「本日出荷」 という知らせが、デフォールトにて送られてしまうことが判明する。ヤマトの本社に問い合わせると、このようなときには、顧客のメイルアドレスをフォーマットへ入力しないよう示唆される。
ウチのように、注文主へ懇切な確認書を送るシステムにおいて、クロネコ@ペイメントからの自動メイルは二重の知らせとなり、顧客にとっては煩わしいだけだろう。
今日以降、カード決済の顧客に対しては、ウチのみから確認書を送付するよう改めることとし、会社のpatioにその旨をアップする。
朝飯は、胡麻豆腐、しらすおろし、小イワシの甘辛煮、納豆、温泉玉子、ほうれん草のおひたし、メシ、豆腐とワカメとミョウガの味噌汁。
あれやこれやそれやと、仕事をする。
夜7時30分より 本酒会 へ行く。コバヤシハルオ会員により、本年3本目の 「一時」 が開けられる。「一時」 は秋田県能代市の喜久水酒造が生んだ、僕がこれまで知る中で最高の発泡酒だ。コレを飲めばフランスのうるさいオッサンも、陶然となること必定だろう。
計10本の酒を飲み、僕は
午前1時30分に起床する。
"patagonia" の分厚いキャンバス地のパンツ3本を洗濯機へ入れ、事務室へ降りる。ウェブショップのメインテナンスと受注をし、洗濯場へ戻ってパンツを脱水機に入れる。
毎週日曜日には、僕が運営している 上澤梅太郎商店・日光みそのたまり漬、清閑PERSONAL、本酒会 のアクセス解析をする。アクセスログをブラウザからコピーして秀丸に貼りつけ、カトーノさんが作ったマクロにてCSV形式に変換する。それを僕が作ったマクロにて マイツール 上にデイタベイス化する。
洗濯場へ戻ってパンツを乾燥機に入れる。事務室へ降りてきのうの日記を作成する。
朝飯は、小イワシの甘辛煮、ジャコ、広島菜、梅干し、昆布の佃煮によるお茶漬け。
心配された空模様は、どうにか曇りのままに推移している。小学1年生の次男の手を引いて2時間ほど外に出る。アスファルト色の目立つ町なかを過ぎ、警報機のない小さな踏切を渡り、道ばたにたくさんの雑草が見える場所まで散歩をする。
昼飯の後に、乾燥機から出したしわだらけのパンツにアイロンをかける。
午後、次男の友達が遊びに来る。別の幼稚園から小学校へ上がり、同じクラスになったという。友達はふたり分のお菓子と、自宅へ緊急連絡をするときのための携帯電話を持参してきた。そんなに気を遣うこともないのに。
むかしある人に、寸借した金を返したことがある。その人はうんざりした顔をして 「こんな金、返すこともない」 と言った。そして 「人に借りを作ることも、人に貸しを与えたままにしておくことも大切だ」 と続けた。
これもまた理解できないではないが、なかなか難しい作法、あるいは文化だ。
閉店後、販売の山田poohさんが作成した 「週間粗利総額対前年度比表」 を前に、短いミーティングを行う。昨年はこの週に日光MGがあり、2日間の休みを持ったため、単純な比較はできない。
冷や奴、ほうれん草のおひたしにて、常温の泡盛を飲む。レタスとピーマンとジャガイモのサラダ、鶏手羽の酢煮と共に、更に泡盛を飲み進む。
入浴し、8時30分に就寝する。
朝3時に起床する。先週の木曜日に "patagonia" にて購入した、分厚いキャンバス地のパンツ3本を素洗いし、乾燥機にかける。きのうから数えてこれが4回目の洗濯乾燥になる。
普段ジーンズを買うと、5回は水通しと乾燥を繰り返した後で、裾上げに出す。ところがここに、お決まりの、マーフィーの法則が発生する。これ以上は縮むまいと裾上げをした直後から、なぜかふたたびジーンズは縮みはじめ、結局数ヶ月の後には、ツンツルテンのみっともない長さになっている。
"patagonia" のパンツではそれを避けるため、5回以上は洗濯乾燥を繰り返そうと考えているが、どうせまたいつもの法則が発生するのだろう。
ウェブショップ の注文を受ける。数通のeメイルを送受信する。きのうの日記を作成する。
朝飯は、胡麻豆腐、刻みオクラの鰹節かけ、温泉玉子、納豆、しらすおろし、昆布の佃煮、メシ、大根とオクラの味噌汁。シラスの釜揚げが、特に美味い。
なぜか最近、店舗駐車場の植え込みに砂利が多く見られる。なにかの工事の際に紛れ込んだものだろうか。朝のうちに、社員とこれを取り除く。お稲荷さん前の小庭にも、このところ砂利が目立つ。こちらもいずれ、綺麗にする必要があるだろう。
晴天の助けもあり、店舗は賑わう。昨年の同じ曜日と比較しても格段に、商品のさばける速度が高い。明日の完成投入量を増やすことにしたと、現場から報告がある。明日はできるだけ店に立とうと考える。
ウェブショップの 「街の美味しいもの屋さん」 というペイジには、実は現在、テキストだけのものも含めて13のお店が掲載されている。定休日や営業時間の詳細を調べたり、実際におもむいて料理の写真を撮りながら、徐々にコメントタグを外していくことにしている。
夕刻、資料集めの目的もあって、その中の一軒 「うなぎの魚登久」 へ行くと、これが日光高等学校の同窓会の予約にて満席の張り紙があった。
「魚登久、今日、やってるかな?」
「土曜日よ、開けてないわけないじゃない」
と、電話連絡をせずに店の前まで来てしまったのは、僕らしくない行いだった。
オフクロや家内と相談し、大沢地区の 「菜もん」 へ行くこととして、予約の電話を入れる。8Kmの道のりを走って、藪の中の一軒家へ達する。
凝りに凝った二重扉を開き、中へ入る。この時世に閑古鳥の鳴く飲食店も多い中で、ここだけは連日、老若男女、おしゃれな人から普段着のおじちゃん、おばちゃんまでの、幅広い客層で賑わっている。
サーモンのサラダ、温泉玉子ドレッシング、牛のしっぽのコンソメ蒸し、黒ソイのポアレ、サーロインステーキ。
「結果を語らせたら日本一」 という競馬評論家がいる。「結果を語らせたら日本一」 という外食産業評論家がいたとしたら、この店の繁盛ぶりを、どう分析するだろう。
帰宅して入浴し、アミールSを飲む。9時に就寝する。
朝4時に起床する。僕は好きな時間に寝て、好きな時間に起きている。このことひとつが、僕の人生をどれだけ楽にしているだろうかと考える。目覚まし時計の音で目覚めるのは、イヤなものだ。
いつもの朝の仕事をこなし、数通のeメイルを送受信する。きのうの日記を作成し、patioの巡回をする。
洗面所の窓から北西を臨む。山は晴れているが、いまだ春の霞が残っている。隠居の庭の桜は、すっかり葉のみになった。
朝飯は、オクラと鶏挽肉の炊きもの、昆布の佃煮、温泉玉子、納豆、若竹煮、ジャコ、巻き湯葉、メシ、豆腐とミョウガの味噌汁。
留守中に届いているものがある。それについての礼状を、絵はがきを選んで書く。eメイルで礼状を出せば即、相手側に到着するが、万年筆で書き、郵便局員の届けるアナログ式の方が、手紙は丁寧な感じがする。
僕は気が短いため、相手に
「今しがたハガキを投函したけれど、これが着くまでには2日はかかるでしょう。とりあえず品物は受け取っているから安心してね、ありがとう」
というeメイルを同時に送りたくなるが、それもしつこいだろうかと思い、無理にその欲求を抑えつける。
初更、春雨スープ、各種点心、タコのマリネ にて
朝5時に起床する。8時間も眠り続けていたことになる。いつもの朝の仕事をこなし、数通のeメイルを送受信する。きのうの日記を書き、諸方のpatioに10通の返信をつける。
近所の食堂 「たつみ屋」 へ行き、ハムエッグス、ポテトサラダ、冷や奴、メシ中盛り、ワカメと油揚げと長ネギの味噌汁 の朝食をとる。
この店のレシートを見ると、皿の種類によって料金が分けられている。藍川100円×1、織部流し150円×2、ライス普通190円、日替味噌汁100円。「織部流し」 が2皿ということにはなっているが、お盆の上に同じ器は無い。なにがなんだか分からないが、いずれにしても計690円とは、良心的な価格だ。
地下鉄丸の内線にて池袋へ移動する。35番の出口から地上に上がる。僕が高等学校のころからあるビルを眺め、僕が高等学校のころからある路地を抜けて、きのうとおなじ池袋文化会館へ行く。
「プレミアム・インセンティブショー」 にて、"D2 Communications" 社長の藤田明久のセミナー 「最新モバイル広告&モバイルプレミアム事情」 を受講しようと会場にて待ちかまえていると、演壇に 「宝珠山卓志」 という名札が置かれる。出演者に突然の変更があるのは、小さなジャズクラブだけのことではない。
ThinkPad s30 にて、速記を取る。
・ 話すケータイから使うケータイへ。
・ i-modeが61%超を占める現在のシェア争いは、画像の扱いにある。
・ i-modeを保有する男女の比は現在、男対女で6:4。今後は五分五分か?
僕は五分五分ではなく、女性の比率が高まると考える。
・ 2000年6月の1億ペイジヴュー/日が、2002年3月には3億ペイジヴュー/日へ。
・ コンピュータによるブラウジングとは異なり、週末の利用が高い。1日のピークは、正午と夜10時
つまり僕の睡眠中に、i-modeのペイジ利用はその日2度目のピークを迎えるということだ。
・ コンピュータよりも更にパーソナル性の高いケータイでは、情報を送る時間と内容に留意する。
確かに、起き抜けに酒の宣伝を受け取っても、購買意欲はそれほど湧かないだろう。
・ 顧客がフロアや会場にいる数時間のみの、ケータイへの情報配信
これは、情報配信エントリーツール "X-navi" を顧客のケータイの尻に差し込むだけで、決められた時間内でのみ、顧客へ情報を配信するものだ。顧客は会員登録の煩わしさを必要とせず、配信側も顧客のメインテナンスを不要とし、商品広告、顧客サーヴィスにのみ力を注ぐことができる。
・ ケータイと一緒に持ち歩くもの 1.500CCのペットボトル 2.ポータブルオーディオ 3.化粧品
この結果は、やはりケータイが若い世代により多く持たれていることを示している。若い世代は、自らを飢えさせることによってメシを上手く食べ、飲み物を美味く飲もうという考えを持たない。常に少しずつ食べ、少しずつ飲む。
・ 広告の対費用効果は、テレビや雑誌によるものよりもはるかに、ケータイによるものが上回っている。
このことは、社会のパーソナル化がより早く、より極端に進行していることを表している。これからは広告代理店も、広告を打つメディア別の料金体系ついて、組み換えを余儀なくされるのではないか。
結果として、このセミナーはとても興味深く、ためになるものだった。受講料の4000円は安い。唯一の瑕僅は、講師の変更が直前まで受講者に知らされなかったことだろう。
栄養の取りすぎを避けるため、また大量の朝飯によって腹も減っていないため、昼飯を抜く。
午後、地下鉄丸の内線で淡路町へ移動し、"Patagonia御茶ノ水店" にて丈夫なパンツを2本買う。これは、今はいているリーヴァイス501XXがきつすぎて、それでなくても高い血圧が、余計に上がりそうだからだ。7年ほどはいたスタンダップショーツがそろそろすり切れてきたため、同じ生地による短いパンツも買う。
淡路町から再び丸の内線に乗って、東京駅へ向かう。八重洲口から外へ出る。上出来の飲み屋 「俵や」 の角を曲がり、田賀亮三展を開催中の、日本画廊の路地を抜ける。
2月下旬に、高島屋1階のベルト売場に見本として1本のベルトをあずけた。3月末に完成品を受け取り、しかし見本はそのまま置きっぱなしにしてしまった。電話にてそのことを知らされ、ようやく今日、見本のベルトを女店員より受け取る。
問題は、ベルトの完成品を僕がどこかに保管し、その場所を忘れてしまったことだ。
地下鉄銀座線にて浅草へ至る。先日、急ぎ足にて街を歩いていたときに発見した串あげの店 「光家」 へ入る。
この店を見つけたときには、本当に 「だったらオレに教えてくれよ」 と、思った。「教えてくれさえすれば、毎回、寄るんだからさ」 と、思った。
ナス、玉ネギ、イワシ、レヴァ、ハス、シシトウ、アスパラガスを2本ずつ計14本と、それを肴に焼酎のオンザロックスを3杯飲む。無料のキャベツをバリバリと噛む。「はせ川」 に回って ワンタンメンを食べる。
浅草駅18:00発の下り特急スペーシアに乗る。8時前に帰宅し、9時前に就寝する。
朝4時に起床する。いつもの仕事をし、いつものようにeメイルの送受信をし、いつものようにきのうの日記を作成する。ウェブペイジからの注文が多い日に、4時の起床は遅すぎる。
朝飯は、カマボコ、納豆、タコのマリネ、厚揚げ豆腐とコマツナの炊きもの、小イワシの甘辛煮、昆布の佃煮、メシ、シジミの味噌汁。
下今市駅9:01発の上り特急スペーシアに乗る。車内で諸方のpatioに18通の返信を書く。東京は蒸し暑く、スモックを脱ぎスカーフを取り、半袖のTシャツ1枚になる。昼前に池袋へ着く。
池袋文化会館での 「プレミアム・インセンティブショー」 にて、上田正也のセミナー 「変わる広告ビジネス」 を受講する。これは広告業者のための勉強会だが、僕が出て役に立たないということはない。
古来、権力者は情報の拡散を抑制し、それを小出しにし、あるは歪曲して流布した。「リンク」 「フラット」 「シェア」 のインターネット的世界において、情報は統制され得ないものになったかのように思われるが、それは事実だろうか? あるいは錯覚だろうか?
また、このような現在における宣伝広告とは、どうあるべきか?
「パーソナル」 と 「群れ」 とは、これまで通りに相反して定義づけられるものなのだろうか? あるいはいまや、単純に左と右に分けては考えられないものになってきているのだろうか?
池袋から地下鉄丸の内線で本郷三丁目に戻る。甘木庵にて顧客へeメイルを1通送り、会社のpatioに必要事項をアップする。シャワーを浴び、スモックもスカーフも身につけずに外へ出る。
雲と雲のあいだに青い空は臨めるが、霧のような雨がときおり降りかかる。本郷三丁目から地下鉄大江戸線に乗り、牛込神楽坂で降りる。
神楽坂から軽子坂へ抜け、飯田橋北側の斜面を更に東へと移動する。路地の舗装はいよいよ荒れ、大郷木材から木の香りが届くあたりに 「てっ平」 という串焼き屋を見つける。折しも外のぼんぼりに灯りをともしたところにて、僕は店の中へと吸い込まれていく。
厚焼き玉子、筑前煮、生野菜の突きだしを肴に、「黒龍」 の純米吟醸を飲む。焼酎のオンザロックスに切り換え、8本の焼き鳥を食べる。焼きおにぎりにて締める。
ここは昨夜の割り箸が床に落ちたままになっているようなところもあるが、緑濃いエントランス、数十年も時を遡った風情の建物、セロリを叩き込んだ香り高いつくねなどが、裏を返すことを強く促す店だ。
20席に満たない店内は徐々に混み合い、外の縁台で飲み始めている常連客もいる。勘定をし、外へ出てふたたび建物を眺める。僕はあざとい演出にて売る店を厭う。意図によらずあらわれる情趣を好む。
遠回りにはなるが、神楽坂を下りて飯田橋から総武線に乗る。御茶ノ水駅で下車し、聖橋を渡る。蔵前橋通りを横断し、小川軒の角から狭い道に入り込む。
おでんの 「こなから」 は、今夜も繁盛しているようだ。はす向かいのスタジオから、4拍子を刻むウッドベイスとミュートをかけたトランペットの音が、絡まり合って漏れてくる。
人の体に筆で引いた線のように、どこまで行っても決して平坦になることのない道を歩き、曲がり、また歩いて甘木庵に帰着する。
本日の日記を書き始めたが眠気に抗しきれず、9時に就寝する。
目を覚ますと夜中の0時30分だった。そのまま起床し、事務室へ降りる。
ウェブショップ の注文を受ける。数通のeメイルを送受信する。きのうの日記を作成し、諸方のpatioに17の文章をアップする。
例大祭の後かたづけをするため、朝6時に春日町1丁目の公民館へ行く。前立腺肥大による頻尿にて明け方前には起きてしまう老人、夕刻から酒を引っかけて寝てしまう職人、僕のような前倒しの昼夜逆転人間に合わせたスケデュールは、とてもではないが、一般の社会に受け入れられるものではないだろう。
会所の献灯を分解して倉庫へしまう。日光街道沿いのしめ縄をすべて外して、処理係の竹田線香屋の前にまとめて置く。これらの作業を40分間で済ませ、自宅の居間へ戻る。
朝飯は、ワカメと玉ネギのスライス、ホウレンソウの胡麻和え、納豆と山かけ、小イワシの甘辛煮、ジャコ、メシ、豆腐とワカメと長ネギの味噌汁。
宇都宮の 「明倫社」 が、昨年から準備を始めた地図の最終校正を持ってくる。これを夏のノヴェルティである 「うちわ」 へ入れることとして、発注を為す。
明倫社の社長に 「うちわの表裏の紙質が異なると、骨が反り返って、扇ぐ際にパタパタとうるさい」 とクレイムをつけると、「右腕で強く扇ぐから音も出る。ここは左うちわで優雅にやってくれ」 と言う。
「ハハハ、なるほど」 などと納得してしまう僕も情けない。
静岡市のタキマサヒデさんという未知の方から、醤油のレッテルを送ってくれとの手紙が届く。日本全国の醤油とソースのレッテルを収集するのが趣味だという。醤油屋やソース屋にはたしかに零細企業が多く、レッテルの数もかなりのものになるのだろう。
何十年も前から使っていないレッテル、つまり不良在庫の棚を見に行くと、残念ながら一升瓶時代のレッテルは既にして無かった。そのかわり、それ以前の、一斗樽に貼りつけたレッテルと、樽に木槌で打ち込む式の金属製のフタが見つかる。現在の小さなレッテルと共に、それを5点ずつタキマサヒデさんへ送る。
去月の健康診断において、中性脂肪の値が昨年の3倍にもなっていた。不審に思い、親戚の関根耳鼻科で血液の再検査をした。その結果を訊きに行く。
今回の報告書では、中性脂肪値がいきなり4分の1に落ち、昨年のそれを下回っている。動脈硬化指数に至っては、基準範囲よりもはるかに低い数字が示されている。
「なんだか油断して、また堕落しそうですね」 と言うと、セキネケイイチ医師は
「ハハハ、もう少し脅かしときゃ良かったかな」 と、笑う。
いずれにしても、我慢できる範囲の節制はしていく必要がある。我慢できない範囲の節制は不可能だ。
晩飯は、マグロのタルタル、タコのマリネ。ワインは飲みかけの "Chablis Premier Cru Les Vaillons BILLAUD-SIMON 1999" を干して、これまた飲みかけの "Beaujolais Nouveau 2001 Jean Saint Honore" に移る。
鶏肉、エリンギ、トマトとルッコラのオリーヴオイル焼き、ニンニクと唐辛子のスパゲティ。
入浴してアミールSを飲み、9時に就寝する。
朝5時に起床する。
いつもの仕事をし、いつものようにeメイルの送受信をし、いつものようにきのうの日記を作成する。事務室のシャッターを上げると、瀧尾神社の春の例大祭を彩る提灯が、店舗前に飾られている。僕が不在にしていた週末に、提げられたものだろう。
朝飯は、おにぎりと豚汁。
仕事をしているとお囃子が聞こえてきたので、日光街道へ出てみる。彫刻屋台が、旧市街の下手から瀧尾神社へ向かって上がっていく。
春日町1丁目の会所前まで行くと、イワモト区長が立っている。屋台を引く当番町の面々に、茶菓酒のたぐいを供する手伝いをしてくれと言う。竹田線香屋の土間へ踏み込み、準備されていた飲み物と軽い食べ物を受け取って、会所前へ運ぶ。
役員、稚児、屋台引き、お囃子たちは、10時すこし過ぎに春日町1丁目を通過し、下手へ向かってふたたび歩き出した。我が町では日光東照宮の方向を 「上」、それとは逆に江戸城の方向を 「下」 と呼びならわす。
会社へ帰ると、自由学園最高学部のアケタミツヒコ君から、封書が届いている。僕はこの学校の 「ネパールワークキャンプ」 に対して、過去2度ほど商品の寄付をしたことがある。アケタミツヒコ君からの手紙はその礼状で、ターリーと共にたまり漬を食べる学生の写真も添えられていた。
僕の好きな匂いはふたつあって、ひとつはタイの、香菜、麺を湯がく湯気、2サイクルエンジンの排気ガスが混じり合ったもの、もうひとつはネパールの、砂埃、薪を焚く煙、2サイクルエンジンの排気ガスが混じり合ったものだ。
ものごとや事例は、いつの場合にもふたつでは収まりが良くない。もうひとつの好きな匂いに出会うべく、長い旅へ出たい気分だ。
終業後、「市之蔵」 へ行く。
マグロの刺身、鶏手羽煮、焼き茄子の煮浸しにて、紅乙女のオンザロックスを飲む。山菜の天ぷら、牛筋の辣いスープ。「頼まなくても出てくるもの」 がほとんどで、まるで会席料理屋へ行ったような塩梅だ。
冷や奴にて締め、7時すぎに帰宅する。
入浴して高血圧に良いという 「アミールS」 を飲み、8時30分に就寝する。
朝5時に目が覚める。ウェブショップ へ5件の注文が入っていることは、それが転送されたi-modeのディスプレイによって、昨夜のうちから知っていた。ThinkPad s30を電話線に繋いで注文を取り込むと、同じ顧客がそのつど内容を変えて注文ボタンを連打したものも含まれていた。
顧客に、3度のボタン連打のうち、最後の注文内容にて確定する旨のeメイルを書く。きのうの日記を作成し、patioに1本の返信をつける。
空は晴れた。東京大学のイチョウが、小さな若い芽を吹き出しつつある。どのような種類のものなのだろうか、八重の花びらを鞠のように固めて咲いている桜を見る。8時前に岩崎の屋敷の裏を通って、切り通し坂の途中から春日通りへ出る。
御徒町から山手線にて品川へ至る。プラットフォームからコンコースへ上がって朝飯を食べる。ふたたび山手線で大崎へ移動し、MG会場へ入る。
「これ、きのうの日記」 などと言いながら、クマダナツコさんに駄文の閲覧を強請する。
第4期初の経費に対して、前期末からの繰り越し金が不足している。借り入れ可能枠は、既にして残ってはいない。資本金の3分の1にあたる特別融資を受ける。
結局この期で僕は損益分岐比率88%の成績を上げ、累積損を大きく減らした。ただしいまだ自己資本は、第1期初のものを超えてはいない。
決算を早く終わり、四苦八苦している初心者の後ろへ回って質問を待つ。どうして初心者に親切にするかといえば、初回の苦しさに耐えて次の機会にもぜひ来て欲しいということが第一だが、初心者から学ぶところも大いにあるからだ。
第4期が終わり、弁当を食べる。マダム石島の弁当は美味い。
A卓からは6人のうちふたりが下のテイブルへ去り、代わりに下のテイブルから2人が上がって第5期を迎えた。この雰囲気は、将棋の順位決定戦によく似ている。
第5期の勝負は、44分間の制限時間をすべて使って白熱した。僕の損益分岐利率は74%にて累積損を一掃し、自己資本は創業時の20%増となった。しかしもちろん、第5期の到達自己資本が782などという、長崎のササキタツヤさんの成績には、及びもつかない。
到達自己資本、次期繰り越し資産によって決定される4月東京MGの最優秀経営者賞は ササキタツヤさんに、優秀経営者賞は タカハシヨシユキさん と クスヤマユミコさん の得るところとなった。
本日の西順一郎先生による1時間の講義は、受講者が提出した質問に沿って話を進めるという、当意即妙のものだった。600字ほどのリポートを書いて提出する。
10人ほどの集団で、大崎の駅から山手線に乗る。僕のみ新橋にて下車し、地下鉄銀座線に乗り換える。
浅草駅19:00発の下り特急スペーシアに乗り、9時前に自宅へ戻る。
MGを終えた後には、1日スキーをしてホテルへ戻り、ロビーの大きな窓から針葉樹の森を眺めているような気分が残る。入浴してビールは飲まず、ナガシマシゲオが宣伝をしている、血圧が高めの人にお薦めという乳酸飲料を摂取する。
10時に就寝する。
朝5時に起床する。ウェブショップ の注文を処理し、顧客へ確認メイルを送る。自分の運営するpatioに4本の返信を書く。
夕刻の日は延び、朝の日は早く上がるようになった。きのう午前の雨が、湿気となって葉の裏や土に残っている。それが却って、今朝の爽やかさを際だたせているような気がする。
学生のころから本郷三丁目の駅にて何度乗り降りをしたか数えることはできないが、駅より南へは、ほとんど行ったことがない。7時に甘木庵を出て、そのあたりを散策する。
書店と製薬会社の入る、なかなか良いデザインのビルがある。銀行や信販会社の裏に、意外や小体な飲み屋がひっそりとたたずんでいる。所狭しと植木鉢を置いた下町風の家も、ちらほらと見ることができる。
帰路をたどると、東京大学龍岡門の脇に、ツツジが大きく花を開いていた。
早く起きると、時間はもてあますほどにある。高橋義孝の 「実説百閒記」 を読む。
「下谷の飲み屋」 と説明されているのは多分、根岸の 「鍵屋」 だろう。これより帰宅の折に、百鬼園は 「隅田川を縫おう」 と言い出す。白鬚橋から始まって勝鬨橋までの11の橋を、西から東へ、また東から西へと渡りながら、ついにタクシーは麹町六番町の内田百閒の自宅に到着する。
そして高橋義孝は、こう結ぶ。「円タク代は私が払うのである」
知らずにいたわけではないけれど、やはり内田百閒というのは、大したキチガイだ。そうしてこういう文章は、美味い物を食べながら箸が停まらないように、およそペイジを繰る手を止めること能わない。
しかしながら、いつまでもそうしているわけにもいかない。8時45分に甘木庵を出て、湯島の切り通し坂を下りる。御徒町から山手線の外回りに乗る。9時20分に大崎で降りる。3分歩いて東京MGの会場へ入る。
MG(マネジメントゲーム) は、2日間で5期の経営を盤上に展開する。第1期が終わり、弁当を食べる。マダム石島の弁当は美味い。
第2期の成績により、売上高の最も高いA卓へ上がる。ゲイムの弱い僕には珍しいことにて、記念写真を撮る。
A卓のゲイム展開はさすがに早く、僕はこの 「市場」 へ来ると、いつも脳が酸素欠乏を起こしてボーッとする。3期末の成績も、第4期のA卓を確保するものだった。しかし売上高ばかりが上がり、経常利益が確保できない。累積損は増大し、借り入れ可能枠もなくなる。
夕食後、西順一郎先生による "strategy accounting" についての講義を1時間ほど受け、軽い交流会を締めとして、4月東京MGの第一日目は9時すぎに終了した。
出席者に声をかけ、大崎駅前の飲み屋にて、第2の交流会を持つ。僕にはひとり遊びを好む孤独癖のある一方、大勢で飲むこともまた嫌いではなく、自分で自分の性格を把握することができない。
11時すぎに、山手線にて大崎から御徒町へ戻る。湯島の裏路地に、昭和30年代初期を思わせる、モルタルの好もしい建物ができている。
切り通し坂を上がり、0時に甘木庵へ帰着する。入浴して1時に就寝する。
朝4時30分に起床する。小雨が降っている。ウェブショップ の仕事をこなし、昨日の日記を書き、諸方に数通のeメイルを書く。
朝飯は、ワカメと玉ネギのカツオブシかけ、生湯波とミツバの炊きもの、ニンジンとゴボウのキンピラ、納豆、メシ、ジャガイモとワカメと玉ネギの味噌汁。
7時30分に事務室を出て、雨の日光街道を下る。
下今市駅7:46発の上り特急スペーシアに乗る。車内にて諸方のpatioに14通の返信を書く。この列車は春日部には停まらないようで、いきなり 「次は北千住」 のアナウンスが流れる。急いでコンピュータの電源を落とし、荷物をまとめる。
地下鉄千代田線にて湯島天神下へ移動する。切り通し坂を上って裏道へ入り、甘木庵に至る。荷物を置き、本郷三丁目から地下鉄丸の内線で池袋へ出る。
西武池袋線のひばりが丘駅には、11時すぎに着いた。今日は 自由学園 の中等科、高等科の入学式があり、その後、新入生父母歓迎会が開かれる。
正門を入り、男子部の校舎前 から 紅葉坂を下る。先ほどまでの雨に濡れた木々の間から、大芝生が見えてくる。会場の女子部食堂前には、いましがた入学式を終えた新入生の父母が、集まっていた。
僕よりも1年先輩の、タカハシケータ君がいる。
「タカハシ君、おめでとうございます、息子さん、ご入学ですね」
「おぉ、ありがとう。ところでウワサワ、今日はなに?」
「このあと新入生父母歓迎会があるでしょ、それに来たんですよ」
「おぉ、それはわざわざ、遠いところからご苦労様」
「いやぁ、いいんですよ、どうせこれが終われば、後は遊んでるんですから」
「まぁ、それはそうだろうけど」
最後の 「それはそうだろうけど」 だけは、余計だと思った。
食堂に入る。僕の席は右奥の角だった。正面よりも外の景色が、よく見渡せる。
歓迎昼食会のメニュは、在校生の父母によって作られた、ポーククリームシチュー、レタスと玉ネギと二十日大根のサラダ、チーズフィンガーとロールパン、アーモンドケーキ、イチゴだった。
ポーククリームシチューは僕の大好物で、特に今日のこれには、なにか思い出すことのできない香辛料が加えられていて、とても美味い。隣の在校生母に 「熱いうちに、お代わりはいかがですか?」 と声をかけられる。更にたっぷりのクリームシチューを、喜んで食べる。
教師の自己紹介を以て、新入生父母歓迎会は終わった。
池袋へ向かう西武線の中で、高橋義孝の 「春の弥生は」 という短い文章を読む。
高橋義孝に、酒と町歩きの好きな年上の友人がいた。ある春の暮れ方、ふたりは新橋駅前の一杯飲み屋に、あたかも 「それが天の命令ででもあるように」 入る。友人は、あさつきのぬたをふたり分注文し、木の芽和えを追加した。ふたりは口にこそ出さないが、「あぁ、春だなぁ」 と、思っている。
そして高橋義孝は、こう続ける。
「それは、春の宵の気分を楽しんでいるというようなものではない。あさつきのぬたと木の芽和えを前に置いてコップ酒を呷っているわれわれふたりがつまり春そのものなのである」
甘木庵へ戻り、シャワーを浴びる。会社のpatioにウェブショップの注文を転載し、顧客にeメイルを書いて送る。
別段、高橋義孝にそそのかされたわけではないが、燈刻より神楽坂の路地を上り下りして初めての店に入る。ホタルイカの釜揚げ、若筍煮、カツオのたたきにて、コップの燗酒を飲む。
8時に甘木庵へ戻り、10時に就寝する。
夜半に目覚めると、隣の部屋で家内はいまだ起きていた。時計を見る気もせず、そのままかなりの時間を寝床の上に過ごす。起床して服を整えると、1時30分だった。
事務室へ降りて、きのうの日記を作成する。
ウェブショップ の 「たまり漬を使ったメニュ」 に2つの料理と、「街の美味しいもの屋さん」 に12軒のお店を、3時間ほどかけて掲載する。こうして準備さえしておけば、適当な期間をおいて一件ずつ小出しにすることにより、繁忙期の更新を乗り切ることができる。
朝飯は、広島菜、薄切りトマト、納豆、ミツバの辛子和え、ワカメと玉ネギのカツオブシかけ、メシ、豆腐とミョウガの味噌汁。
これだけ健康的なものを食べながら、中性脂肪値が昨年の3倍という先般の検査結果には、どうにも得心がいかない。酒の量はそう多くもない。運動不足が問題なのだろうか。
小学校へ初登校する次男を、集合場所であるタノベタカオちゃんの家の前まで送っていく。
"amazon" で特定の本を画面に出すと、「この本を買った人はこんな本も買っています」 という案内が、その下方に表示される。AとBの本を買った人が何人以上になれば、その関係はリストにアップされるのだろうか?
商いの少ない株は、1対1の取引にても、大きく値を動かすことがままある。僕のように、ほとんど売れない本ばかりを買う顧客のデイタも、このリストに反映されるのだろうかと思い、調べてみる。
その結果、川本三郎訳の 「ジャック・ロンドン放浪記」 にも、入矢義高訳注の 「臨済録」 にも、「この本を買った人はこんな本も買っています」 は、表示されなかった。やはりある程度の 「出来高」 が、必要のようだ。
それはそうだろう。教育書と同時にたとえばヌード写真集が購入されることは充分にあり得るが、これが即ブラウザに反映されたとしたら、"amazon" の利益にならないことは明白だ。
隠居に植木屋が入っている。南西の門を入った左側のモミジが枯れたという。早くも新たなモミジが植えられている。鉄線も植えられている。バラの蔓を巻きつかせるための垣根もできている。
ほとんど誰も足を踏み入れない庭に、ほとんど誰に見られることもない植物が、また増えていく。これからはせいぜい僕だけでも、マメに隠居へ通おうと思う。
水路の面に点々と顔を出す苔むした石に、小さく白い花が咲いている。
今朝0時すぎに目覚め、1時30分に起床したにもかかわらず、夕刻になってもなぜか眠気は覚えない。
6時30分より、牛肉の煮物と大根おろし、ニンジンとゴボウのキンピラ、キュウリとワカメとトマトの酢の物、生湯波とミツバの炊きもの にて、久米仙を飲む。
これだけ健康的なものを食べながら、中性脂肪値が昨年の3倍という先般の検査結果には、どうにも得心がいかない。酒の量はそう多くもない。運動不足が問題なのだろうか。
次男は朝7時35分までに、タノベタカオちゃんの家の前へ集合する必要がある。幼稚園時代よりも起床時間は60分も早くなる。次男にあわせ、僕も8時30分に就寝する。
朝3時30分に起床する。事務室にて、いつもの仕事をこなす。数通のeメイルを書き、きのうの日記を作成する。
去月の29日に会社の健康診断があった。中性脂肪の値が前年の3倍にもなっていた。診断書に要精密検査との記載があった。朝飯を抜いて親戚の関根耳鼻科へ行き、とりあえず採血をしてもらう。
これでふたたび同じような値が出れば、食べ物、酒、運動についての生活慣習を改めるよう、医者から示唆を受けるだろう。問題は、節制の利かない僕の性格にある。
入学式を迎える次男の荷物を持ち、小雨の中、傘をさして今市小学校へ向かう。
僕がここへ通っているとき、1学年には7つのクラスがあった。今は僅々2クラスだ。校舎もずいぶんと棟数を減らし、その分、校庭は広くなった。
家内と次男を残して校門を去る。裏道をたどって帰る。隠居のソメイヨシノが、雨に花びらを落としている。
昼ちかくに、次男のランドセルを持ってミヤギ写真館へおもむく。式を終えた家内、次男と落ち合う。次男の記念写真を撮る。最近は撮影の際に 「はい、チーズ」 とは言わず、「はい、ハワイー」 と発声することを知る。
ミヤギ写真館の奥さんは綺麗で明るい人だったが、早くに亡くなった。奥さんの存命中とは異なり、僕がこまめに次男へ近づき、服の襟や帽子の具合を直す。
小雨は霧雨に変わり、夕刻にはそれも上がった。
終業後に空腹を覚えたため、次男の入学祝いとして社員に配った 「久埜」 の最中の残りを食べる。小豆の香りが馥郁として美味い。酒だけではなく甘いものも好きになったら、それこそ僕のからだは安全でない。
マグロの刺身とホタルイカの釜揚げ、広島菜にて、室温の久米仙を生で飲む。ブタの薄切り肉と水菜のしゃぶしゃぶを食べる。
食前の最中のおかげか、久米仙は1杯しか飲めず、豚肉もそう多くは食べられなかった。これから毎日、晩飯の前には糖分を摂取して食欲を落とそうかとも考えるが、それはやはり、毒を以て毒を制すのたぐいだろう。
あしたから6時30分には起きる必要のある次男を、8時30分に寝かしつける。一緒に僕も就寝する。
朝5時30分に起床する。事務室へ降り、ウェブショップ からの受注をこなす。数通のeメイルを書いて送り、昨日の日記を作成する。
シャッターを開き外へ出て空を見ると、ツバメがコウモリのように飛んでいる。僕は日本では、コウモリが群れて飛ぶ様を見たことはない。ただしその景色を憶えているということは、インドかネパールで、目の記憶に焼き付けたのだろう。
南の国へ行くと、自分が小さかったころに1、2度見たのみにて廃れたもの、本でしか読んだことのない古い自然や習俗に触れることができる。夕刻の空に舞うコウモリも、そのひとつだ。
近所を歩くと、ハガエイスケさんの資材置き場に 多くのツバメが巣を作り、ひっきりなしに出入りを繰り返している。子どものころ、隣のホシノジンちゃんの家の2階に捕虫網を持って上がり、ツバメを生け捕りにしようと目論んだことを思い出す。
朝飯は、ヒノナの漬物、カレイの煮付けと焼いた万願寺唐辛子、納豆、メシ、豚汁。
早い昼食の後に、16歳の長男が 自由学園 の寮へ帰るべく家を出る。僕はいまだ食事中だったため、下今市駅まで送ることはしなかった。次の帰宅は、夏休みになるだろう。
夜7時ころより、「久米仙」 を飲む。生の泡盛や焼酎に、今はなき我が町の飲み屋 「土佐」 でもらった分厚いグラスはとても似合う。
肴は、広島菜、冷やしトマト、ホウレンソウの胡麻よごし、筑前煮、湯豆腐。
寝床で 「新・精選・東京の居酒屋」 を読みながら眠り、それがバタリと床に落ちる音で目を覚ます。
9時30分に就寝する。
0時15分に目が覚める。居間へ行くと、家内と長男はいまだ起きていた。寝室へ引き返して横になり、二度寝をする。
5時30分に起床し、事務室へ降りる。ウェブショップ の、通常の受注を処理して会社のpatioに転送する。注文ボタンを3度クリックし、そのたびに異なるお支払い方法を選択している顧客に、確認書を送付する。
ことし1月27日の日記 「長楽?極」 が検索エンジンにヒットしたのだろう、
本酒会 の3人と行った銀座 「三平酒寮・舟甚」 の経営者から、eメイルが届いている。丁寧に返事を書く。
朝飯は、ヒノナの漬物、海苔、広島菜、アナゴの佃煮、ジャコ、ぶぶ味噌によるお茶漬け。
午前中、顧客に夏のギフトをご案内するDMの文を作る。成文社印刷のオグリオサム社長に来てもらい、これを手渡す。
春先に故障した長男の "Vaio" は、修理の際にハードディスクをイニシャライズされた。3月末にこの初期設定を外注SEのカトーノさんに依頼したが、京都から戻ると、完成品は既にして事務室へ届けられていた。
長男に、新しい "Nifterm" の使用方法、スマートメディアからの画像の取り込み方、"Ulead Photo Explorer" による画像管理、"Digital Photo Arts" の "Resize" による画像の加工方法などにつき、短い教室をする。
Niftermによるメイル送受信の試験をしようとすると、ポートからモデュラーの先がポロリと抜けてしまう。仕方なしに、その部分を手で押さえて通信をする。ソニーのファンはイタリア車のファンに似て、ちと自虐的なところがありはしないだろうか。
晩飯のおかずはステーキだという。ワイン蔵へ行き、15本ある "Castillo de Molina Cabernet Sauvignon Reserva SAN-PEDRO 1999" の1本を棚から抜き出そうとするが、これは高くない割に力の強いワインで、しかもあと何年か寝かせた方が確実に美味くなることは分かっている。
6本買って2本残っている "Beaujolais Nouveau 2001 Jean Saint Honore" を、今夜は飲むことにする。
子どもふたりはサーロインを食べさせてもらっているにもかかわらず、僕の前にはフィレが届く。家内に文句を言うが、「それ以上、体の脂を増やしてどうするつもりか」 と、取り合ってもらえない。
入浴後、長男の書いた文章を読んで、10時に就寝する。
朝3時30分に起床する。事務室へ降り、いつもの仕事をこなす。
朝飯は、広島菜、ミツバのおひたし、納豆、ジャコ、メシ、豆腐と桜エビと長ネギの味噌汁。
9時より春日町1丁目の公民館へおもむき、タケダショウジさんより2巻きの荒縄を受け取る。サカイヒロシさんとカトウヨシハルさんとの3人組にて、日光街道に沿った春日町1丁目東側の家の軒先に、2本の荒縄を張っていく。
これは今週末から瀧尾神社にて行われる、春の例大祭の準備だ。
東側の縄張りを済ませ、日光街道を西側へ横断する。ウチの店の前には、特に念入りに縄を張る。
縄張りをしながら公民館へ戻り、提灯台を組み立てる。提灯は、宵祭りの始まる今週末に下げられるという。自分が配る戸数に応じた 幣束 を受け取り、今日の町内の仕事を終える。
数時間の労働を為した役員9名にて、繁盛する喫茶店 「毘沙門」 へおもむき、昼食をとる。
午後より、隠居の庭を散策する。
八重の椿が、いよいよ最期を迎えようとしている。水仙は開きすぎて、もう鉢には飾れないだろうか。しだれ桜はいまだ多くの蕾を残し、ソメイヨシノの古木はその幹をツタに覆われながら、今年も淡い色の花を咲かせている。
終業後、ワイン蔵にて残り24本となった "Chablis Premier Cru Les Vaillons BILLAUD-SIMON 1999" のうちの1本を、棚から引き出す。
イナダのタルタル、ニンニクと唐辛子のスパゲティ、イナダのオリーヴオイル焼きバルサミコソース、エリンギと茄子のソテー にて、晩酌を為す。
「新・精選・東京の居酒屋」 を読みながら、9時30分に就寝する。
朝5時30分に起床する。事務室へ降りていつもの仕事をし、昨日の日記を作成する。
朝飯は、錦市場で買った万願寺の焼きびたし、タシロケン坊んちのお徳用湯波とミツバのおひたし、納豆、錦市場の 「高倉」 で買ったヒノナの漬物、アナゴの佃煮、メシ、ワカメとジャガイモと長ネギの味噌汁。
これまた錦市場の 「有次」 で買った 携帯用の庭ばさみ を尻のポケットに入れ、隠居の庭へ行く。
桜も随分と開いてはきたが、目立つのはいまだ椿だ。何本かある椿を渡り歩き、良さそうなところを枝を少し長めに残して切り取っていく。
数日前に山総美術の展示会場から発送を頼んだ "Plus Garden" の鉢を水で満たし、その椿を盛り込んでみる。
この器の妙は、外側の濃い茶色と内側の翡翠色のコントラスト、その境界の薄いキャラメル色のウェッジだが、今回のアレンジでは、その美しいところがまったく見えない。
後日また、別の花で遊んでみることにしよう。
晩に、ワサビ菜のおひたし、湯豆腐、かき揚げ、金目鯛の塩焼き、大根おろし、京都と広島の漬物 にて
朝2時30分に目が覚める。こたつの上の明かりを点け、暖房のスイッチを入れる。
ウェブショップ からの受注を処理し、昨日の日記を途中まで書く。何時ころかは知らないが、我慢できないほど眠気が募ったため、再び横になる。
6時前に起床して手水場へ行くと、今日も晴れた空が臨める。ひさしとひさしとの細い隙間から、新橋通りのものだろうか、桜の花びらが風に乗って迷い込んでくる。
朝飯は、漬物、焼いた万願寺唐辛子の鰹節和え、白魚の釜揚げとホウレンソウのおひたし二杯酢、若竹とフキの炊きもの、東寺湯葉とカブとミツバの炊きもの、魚素麺、メシ、シジミの味噌汁。
家へ送るトランクと段ボール箱の荷札を書き、3泊4日分の精算を頼む。宿泊代は大人が9,500円、6歳の次男が3,000円だった。女主人と亭主に見送られながら縄手通りを渡り、川端通りへと出る。
鴨川を西へ渡り、錦天満宮で次男にお守りを買う。
「有次」 で家内に 出刃包丁と刺身包丁をプレゼントし、自分には 湯豆腐用のさじと携帯用の庭ばさみを買う。無料で名入れができるとのことにて、包丁には 「梨衛」、庭ばさみには 「清閑」 の文字を刻んでもらう。
四条河原町駅から阪急京都線に乗る。隣のからすま駅にて地下鉄烏丸線に乗り換え、京都駅へ至る。移動にはタクシーよりも公共の交通機関を用いる方が、その土地の諸々が見られて面白い。
京都駅11:34発の新幹線に乗る。錦市場にて購った、「三木鶏卵」 の 出汁巻き玉子、「ひらの」 の タケノコ煮、筑前煮、里芋煮、「中央米穀」 の かやくご飯、タケノコご飯 を、昼の弁当とする。
快晴の東海道を飛ぶようにして東へ進み、午後2時すぎに東京駅へ着く。
有楽町駅から銀座へ出る。数日後に小学校の入学式を迎える次男に、伊東屋で下敷きを買う。家内の実家の子どもふたりと落ち合い、お土産を手渡す。そのまま6人で2丁目まで歩き、「小柳画廊」 にて開かれている 堂本右美の個展を見る。
4丁目の 「木村屋」 でサンドウィッチやアイスクリームの軽食を取る。家内の実家の子どもたちとは、地下鉄銀座線の乗り場にて別れる。
隅田川の桜は、既にして葉のみになっていた。季節は早くも、春から初夏へ移ろうとしている。
午後8時に帰宅するが、あれやこれやと話し込み、ようやく11時に就寝する。
5時30分に起床する。昨夜の雨はごく短い時間のみにて上がったようだ。宿の二階から、晴天を背景にして狭い東山を臨む。
朝飯は、大豆と川エビの炊き物、漬物と釘煮、菜の花の辛子和え、ひろうずとブロッコリーの炊き物、湯葉と里芋と干し椎茸とミツバの炊き物、メシ、シジミの味噌汁。
僕が京都で食べる第一等に美味いものは、「みつの家」 の女主人による朝飯かも知れない。
家内の希望により地下鉄とバスを乗り継いで、上賀茂の 「菓欒」 へ行く。たかだか菓子ごときに小一時間の行程とは馬鹿馬鹿しくも思えるが、僕も欲しい物を手に入れるためなら、それにかかわる距離や時間を厭わない。文句を言わずに同行する。
再びバスで北大路堀川まで戻り、タクシーに乗り換えて 堂本印象美術館 へ行く。堂本印象は自らイニシャライズを繰り返して、新しい作風に果敢に挑んだ画家だ。僕は特に、戦後から昭和30年代初期の、彼の明るくモダンな人物画を好む。
立命館大学前から1時間ほどバスに乗り、京都市を南下して四条河原町にて降りる。「志る幸」 には、16歳の長男が3歳のとき、とても親切にしてもらった思い出がある。塩ウニを肴に燗酒を飲み、次男の利休弁当の残りを食べる。ここのメシは、いつでも美味い。「こんな料理屋が東京にもあったらなぁ」 と、つくづく思う。
四条大橋を東へ渡り、「何必館」 にて、良寛と村上華岳、魯山人と山口薫を見る。4年前の冬、僕はここで アンリ・カルティエ・ブレッソンの名前を知った。
四条通り八坂神社ちかくの 「三浦照明」 にて若干の買い物をし、宿へ戻って小憩する。
夕刻、三条大橋を西へ渡り、寺町の雑踏から御幸町通りへ入る。6歳の次男が便意を訴えたため、毎日新聞社の古いビルを改造したカフェに入り、トイレを借りる。「俵屋」 の備品を売る 「ギャラリー遊形」 から戻った家内が合流して、短い喫茶の時間を持つ。
長男が民族楽器の 「こいずみ」 にて、インド製のラッパと太鼓を買う。
寺町通りを南へ下る。新京極の 「眼鏡研究社」 にて、この店で購った証拠の英国製眼鏡ケイスを取りだし、
「こちらで買った眼鏡のフレイムがゆがんだので、直していただこうとして・・・」
と言いながらそれを開くと、そこには銀座にて購った、別の眼鏡が入っていた。
僕はこういうオッチョコチョイを、頻繁に繰り返す。
路銀もいよいよ寂しくなれば、京都宝塚劇場奥の安価な鮨屋 「金兵衛」 に入る。冷酒、酒肴と共に、4人で推定100貫ちかくの鮨を食べる。握ってくれたのは、8年前に来京したときも、僕と家内、長男の前に立ってくれたオジサンだった。
三条大橋を東へ渡り、宿へ帰る。ひとりで 「新シ湯」 へ行き、ヨモギ風呂と電気風呂に入る。「ガスライト京都」 でオールドパーベイスのロブロイを2杯、飲む。
11時に就寝する。
朝、5時30分に起床する。旅先で真っ先にすることは、i-modeのチェックだ。ウェブショップ に注文の入っていることをこれにて確認し、ThinkPad s30のメイラーを回して受注をダウンロードする。
顧客と諸方へ数通のeメイルを書き、注文を会社のpatioにアップする。
朝飯は、ホウレンソウの胡麻よごし、漬物、出汁巻き玉子、若竹煮、メシ、シジミの味噌汁。別途、桶の底に炭火を仕込んだ湯豆腐。
4年ほど前にもこの湯豆腐を出され、思わず燗酒を頼んで、午前中をうだうだと布団の上に過ごしたことがある。今回は、朝の飲酒を自重する。
宿から新門前通りを東へ歩くと、「たん義」 と 「菱岩」 前のクランクに、「味芳」 という小さなジャコ屋がある。京都ではウチはここでのみ、ちりめんじゃこを買う。後日の発送を約して店を出る。
昭和30年代にいまだ学生だった伯父が亡くなって以来、知恩院には家の者3人の遺骨が納めてある。徒歩にて知恩院へ至り、供養を申し出る。その際、新しく納骨を希望する人に応ずる係員の口から、永代預かり料の額を聞く。家内に、僕の分骨は不要と伝える。
山門から出たところで家族と別れる。楠の大木が涼しい木陰を作る道を北へたどり、神宮道の坂を下る。本日の晴天は初夏の気温をもたらして、半袖のTシャツにても薄く汗ばむほどだ。
友人カトウケイコさんが経営する "Plus Garden" の花器を展示中の山総美術にて、厚い陶製のボウルをひとつ、家へ送るよう手続きをする。
山総美術の展示室に隣接のカフェ "ROLLOT" のカウンターで冷たい紅茶を飲んでいると、偶然、カトウケイコさんが店に入ってくる。若い営業係のニムラさんも交えて、小一時間ほども歓談をする。
昼過ぎ、疎水の岸を歩いて地下鉄東西線の東山駅へ至る。西に2駅移動して京都市役所前駅で下車し、鳩居堂裏のマンション2階にある 「アスタルテ書房」 へ行く。
牧逸馬の 「浴槽の花嫁」 を棚から取って開くと、6,000円の価が付いている。僕は、古書稀覯本のたぐいに高い支払いを為す趣味を持たない。売り上げカードが残ったままの
朝、5時30分に起床する。乏しいバッテリーを心配しつつコンピュータを立ち上げ、メイラーを回す。
ウェブショップ から、いくつかの注文が入ってくる。きのう呉のホテルにて本日の出荷を約した顧客から、到着日の変更を求めるメイルが届いている。
昨夜23:24に注文を下さった顧客からは、その31分後に 「急いでいる。明後日に商品が到着するのか否かの返事を直ぐにくれ」 との督促が入っている。
23時24分には、僕は既にして眠っていた。なにも手を加えないテンプレイトによる返信ならともかく、顧客が希望する納期の確約は、いくら優秀なCGIを組んだとしても、コンピュータにできる仕事ではない。
ただし、顧客の要求を満たすシステムは、「できません」 ではなく、できるだけその実現に向けて努力し、考えていく必要はある。
すべての受注、問い合わせに対して返信を書き、会社のpatioへその処理に当たるよう、要請をアップする。
夕刻、新幹線にて京都へ達する。タクシーには乗らず地下鉄にて、祇園にほどちかい宿に旅装を解く。
暖かい外気の中を1分ほど歩き、「たん義」 の2階へ上がる。窓を開けると、狭いクランクに速度を落とすクルマの音、お茶屋へ仕出し料理を運ぶ下駄の音、自転車のブレイキの音、酔客の笑い声が耳に届いてくる。
くつろいで美味いものを食べ、ゆっくりと飲酒を為す。
食後、6歳の次男を伴ってちかくの銭湯 「新シ湯」 へ行く。ヨモギの湯へ入り、体中にヨモギの匂いが染みつく。ここの電気風呂も、4年ぶりのことになる。ピンク色の次男に冷たいものを飲ませ、宿へ帰る。
わざと路地をたどって白川南通りへ出る。東京の桜はすっかり散ったが、京都の桜はいまだ絢爛として、多くの目を楽しませている。
縄手通りのバーへ入る。奥の窓から、川端通りを繁く行き交うクルマの明かりと鴨川の闇冥を介して、先斗町の燈火が臨める。オールドパーベイスのロブロイを、オンザロックスにて2杯、飲む。
カウンターの隣席に、プロではあるが、若くてカジュアルな女を同伴した男が座る。バーテンダーに、先日あったなにかの催しに欠席した理由として、さる皇族と夕食を共にしていたことを挙げ、詫びを述べている。
こういう行動や物言いは、青年会議所のメンバーに多く見られるところのものだ。
"SKYY" というウォッカによるブラッディマリーを注文する。塩、胡椒、ウースターソース、タバスコ、レモンも含めてシェイクするスタイルで、簡素なグラスからセロリの茎が鋭く立ち上がる景色は、まるで北欧の家具を見るようだ。
極上のポタージュを思わせるその最後の1杯を飲み、新橋通りをたどって宿へ帰る。
ウェブペイジからの受注を一件処理し、11時30分に就寝する。
甘木庵にて、朝5時30分に起床する。今日から数日間は、一般的な就寝と起床の時間を守る必要がある。
昨夜は0時すぎに、既に更新してあった ウェブショップ の 「街の美味しいもの屋さん」 と、その日のうちに書き上げた日記をサーヴァーに転送した。
今朝は、3月の日記を 清閑日記のインデックス部分に移し、4月の日記は トップの 「清閑日記・最新版」 から直にリンクを付ける。
身支度を整えて、家族4人で7時すぎに甘木庵を出る。丸の内線にて東京駅へ至り、8:37発のひかり110号に乗る。家族連れや研修に向かうらしい新入社員、新任挨拶のサラリーマンなどで、車内はほぼ満席に近い。
神戸に差しかかる手前にて、「播州赤穂・討入太鼓寿司」 なる弁当を購う。昼あんどんを装って楼上に遊ぶ大石内蔵助と、雪の降りしきる中、討ち入りを果たす四十七士が共に、箱にはデザインされている。
「オレも時さえ至れば」 などと考えつつ、おおかたの人が昼あんどんにて一生を終わることは、言うを待たない。
とかく退屈しがちな6歳の次男をなだめつつ、午後1時15分に広島駅へ到着する。13:29発の呉線快速に乗り、海沿いの線路を走ること約30分にて、呉駅に着く。家内の親戚に迎えられ、とりあえずは駅前の呉阪急ホテルに荷物を置く。
このホテルはインターネットを経由して予約をしたとき、驚くほどの値引きをする。"amazon" のように高度なシステムを備えるウェブショップ以外は、従来の受注方法にてもインターネット経由の受注にても、それにかかわる経費に差はないだろう。むしろインターネットを経由した方が、経費は多くかかる傾向にある。
受注の際に得た顧客情報を元に、今後の販売促進活動ができるとの意見もあるが、値引き以上の実利を上げているウェブショップが、どれだけあるだろうか?
インターネット経由の注文、即値引きという仕組みは、経常利益を上げるためのものではなく、ただ世の傾向に流されているだけのように、僕には思われる。
山上の墓地に参ずる。桜はいまだ散らず、眼下はるかに市街地が霞んで見える。
新幹線の車内にて発信音を消しておいた携帯電話をふと見ると、昼をはさんだ2時間に、3件の注文が入っている。長男と次男は親戚宅へ、家内は饅頭の美味い 「つるや」 へ、僕はホテルへと、三手に分かれる。
甘木庵から運んできたトランクを探るが、僕のモバイル道具一式は、どうも京都の旅館へ送ってしまったようだ。モバイルデータカードが無いため、部屋の電話器を通じて注文をダウンロードし、顧客へは礼状を、会社のpatioには本日の出荷を請う発送伝票を送る。
夕刻、家内の親戚宅へ徒歩にて向かう。10年前にこの家へ来たときのことを思い出しつつ歩く。
生きた白魚、小イワシの刺身、ヒラメの刺身 などなど、写真を撮っているといつまでも料理に箸が付けられないほどのご馳走を供してくれる。この町にある相原酒造の 「雨後の月」 は、上出来の酒だ。
それにしても驚いたのは、家内の叔母の作るグラタンが、家内の作るそれと同じ味をしていたことだ。その家の食べ物についての文化は、簡単には変わらないものと思われる。
謝して親戚宅を辞し、10時ちかくにホテルへ戻る。入浴して10時30分に就寝する。