2025.2.2(日) 山を降りていく
勢いはそれほどではないものの、雪が降っている。その、いまだ暗い国道121号線沿いの歩道を伝って家内を隠居へ送る。
冬の早朝の「汁飯香の店 隠居うわさわ」は冷え切っていて、畳の上でさえ歩けば足の指先が凍える。開店の8時30分までに部屋を暖めるため、6時過ぎから暖房絨毯の電源を入れ、石油ストーブにも火を入れる。不凍栓は地中にあるから、その開閉には地面に膝と手をつくことになる。家内の脚が良くなるまでは、この手伝いを続けることになるだろう。
朝礼を済ませて後はふたたび隠居へ行き、庭の状態を見る。雪景色をお楽しみになれる点において、今日のお客様は幸運だと思う。以前、やはり雪の日に、その雪に四合瓶を埋めて冷やし、お召し上がりになったお客様がいらっしゃった。池田弥三郎も書いたように、朝のおかずは妙に、日本酒に合うのだ。
ところで今日は節分。数年前までは、僕が二宮神社まで豆を受け取りに行っていた。しかし今は嫁のモモ君と孫たちがその役を担ってくれる。夕刻には彼らが家中、会社中に豆を撒いてくれた。
齢を重ねるに連れて、自分のすることが徐々に減っていく。とても楽だ。「禅とは山を降りること」と言った禅僧がいた。寺務所の脇にはチェロキーXJが駐められていたから、いまだ物欲からは解放されていなかったようではあるけれど、なかなか良い言葉だと思う。
朝飯 なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、人参とズッキーニとウインナーソーセージと玉子の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 カビ付きのソーセージ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、”SMIRNOFF VODKA”(お湯割り)、スパゲティナポリタン、Chablis Billaud Simon 2018、「クドウ」の「レーズンクッキー」、Old Parr(生)
2025.2.1(土) ぱーふぇくとまっち
目を覚ましていつもの場所を手探りしても、iPhoneは無い。多分、きのうの入浴後はそれを卓上に置いた食堂に寄らないまま寝室に入って寝てしまったのだろう。現在の時刻は不明ながら、起きて服を着て洗面所へ行く。低い棚に置いた電波時計には”02:08″の数字があった。SNSなら「カッコ苦笑」である。きのうの夜の、ダブルのウイスキーをお湯で割って3杯、が効いたことは間違いない。
払暁に家内を「汁飯香の店 隠居うわさわ」へ送り、不凍栓を開く。明日は九州から四国、東海から首都圏へ帯状に雪が降ると、テレビの気象予報士は列島の地図上に指示棒を走らせた。週明けからは寒さがぶり返すとも伝えている。不凍栓は今しばらくは、開け閉めを繰り返す必要があるだろう。
9時に植木のカシワギさんが来て、長男と共に隠居の庭を見てまわる。冷蔵庫、とはいえ家庭用のそれではない、人が住めるほどの棟のちかくに育った松の大木を伐ることを、長男にも納得させる。伐るべき木は他にもあって、それが無くなれば寂しくなる。追加で植える木につきカシワギさんに問えば「それは追々」と言うので「そうですね」と答える。
夕刻「なめこのたまり炊」の食べ方を、お客様に訊かれる。ご説明をすると即、それと「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」を買い物カゴに入れてくださった。お顔は勿論のこと服装や持ち物からも日本人とばかり思っていたが、海外の方だった。
「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」には、その使い方を記した紙を添えている。そこに「バツグンです」の文字を見つけて、閉店の間際に店に来た長男に「バツグンじゃぁ、文字の画像翻訳はしてくれねぇんじゃねぇか」と疑問を呈する。長男はその場でiPhoneを取りだし、説明書を撮った。ややあって、日本語の活字はすべて英語に訳された。AIは前後の日本語を勘案したらしく「バツグンです」の部分には”Perfect match”の文字が現れたから「あー、大丈夫だ」と、ふたりして笑う。
朝飯 切り昆布の炒り煮、白菜漬け、生玉子、揚げ湯波の甘辛煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布とズッキーニの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 蒲鉾、赤魚の粕漬け、薩摩芋の甘煮、沢庵、白菜漬け、「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(燗)