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お買い物かご

清閑 PERSONAL DIARY

2022年3月の日記31本

2022.3.31(木) 静かに、一気に

僕は、焼酎にはうるさい注文をつけない。日本酒は、好みはあるものの、あちらこちらのものをあれこれ飲む。しかし白ワインだけはBillaud Simonに限りたい。この蔵の酒のどこが好きかといえば「無味の味」というか、これ見よがしの香りを持たないところが自分には好もしい。

Billaud Simonのワインは、すこし前までは、どこにでもあるものではなかった。しかし3年前の春に、まとまった数を扱う店を見つけた。そのとき手に入れたものが、いよいよ1ダースを切った。よって久方ぶりに、その店も含めてウェブ上に在りかを探してみた。

新型コロナウイルスによる経済の落ち込みを防ぐため、世界中に大量の貨幣が供給された。そのせいなのかどうなのか「コロナ慣れ」したここ数ヶ月は、隨分と物価が上がってきた。そこに泣きっ面に蜂のようにして、東欧の資源国で戦争が勃発した。これにより諸物価は更に上昇の一途を辿っている。果たしてワインについてはどうなのか。

Billaud Simonの2018年物の価格は、2015年物の約1割高で落ち着いていた。相次ぐ「宣言」や「措置」により、外食の需要が落ち込んだことが関係しているのかも知れない。

僕は夜遊びはしない。家で飲む酒は外で飲むそれと等しく美味い。そしてこれを言ってはおしまいかも知れないけれど、家で飲む酒は安い。そういう次第にて今回も、静かにメールを送り、返事を待ち、一気に買った。これでしばらくは、こと白ワインに関しては、心穏やかに過ごすことができるだろう。


朝飯 菠薐草のおひたし、納豆、ミートボールのケチャップ煮、コールスロー、しもつかり、沢庵、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、豆腐と絹さやの味噌汁
昼飯 「CoCo壱番屋」のポークカレー、野菜サラダ
晩飯 人参と八朔の酢の物、菠薐草のオリーブオイルかけ、しもつかり、沢庵、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、蛸のマリネ、鶏とコンニャクの炊き合わせ、「福禄寿酒造」の「一白水成槽垂れ純米吟醸」(燗)

2022.3.30(水) ほぼ全快

出版系なのか音楽系なのかは不明ながら、とにかくインディーズ、といえば聞こえは良いものの、素人の出店といった趣のブースから離れようとしている。ノベルティは1枚の半紙だった。二つ折りにして額にかざし、日差しを避けるためのものだという。僕は帽子を被っている。半紙1枚でも不要なものは持ちたくない。さてゴミ箱はどこだろうかと、あたりを見まわす。

そういう夢を見ながら目を覚ます。喉の痛みはほぼ全快していた。

日曜日の夜の風呂上がり、半裸のまま食堂へ来て水を飲むうち椅子で眠ってしまった。目を覚ますと喉の左奥に痛みを感じた。

数時間後の未明、その痛みは「これはまずい」というところまで達していた。過去にセキネ耳鼻科で処方された鎮痛解熱剤を飲み、ふたたび眠った。以降は、やはりセキネ耳鼻科から処方された消炎剤を飲んで凌いだ。

1日おいたきのう火曜日になってセキネ耳鼻科を訪ねた。喉の痛みは左奥から右奥に移っている。服用している薬の処方箋を見せると、だったらそれを飲み続ければ良いと、先生は指示してくれた。

子どものころ勉強を教えていただいていたナガシマリサブロー先生の家には「一日不作、一日不食」など、みずからを戒め鼓舞する標語が、半紙に墨書していくつも貼ってあった。うたた寝を防ぐ良い標語は無いか。あってもついしてしまうのがうたた寝、というものだろうけれど。


朝飯 鶏とコンニャクの炊き合わせ、切り昆布の炒り煮、納豆、人参と八朔の酢の物、蕪と胡瓜のぬか漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、トマトと若布と菠薐草の味噌汁
昼飯 「ふじや」の雷ラーメン
晩飯 「やぶ定」のカツ煮盛り蕎麦「末廣酒造」の「末廣」(常温)

2022.3.29(火) 古書の効用

春日町の交差点はす向かいでガソリンスタンドを営む同級生オーハシタダオ君の家には、勝海舟の見事な書がある。それが今年の正月にテレビで紹介をされた。細かいことは避けるが、日光は勝海舟に、隨分と世話になった。それを先日、あれこれ調べるうち、未知の人のウェブログに行き当たった。「勝海舟の氷川清話は必読の一冊」と、そこにはあった。

僕は歴史に弱い。NHKの大河ドラマは、ぼんやりと眺めているだけだ。「三国志」は登場人物の名を覚えることができず、すぐに読み進むことを諦めた。歴史に関するものはほどんとすべて、右から左へと抜けてしまう。それでも聞き書きなら読めるだろうと、amazonから「氷川清話」を取り寄せた。もちろん古書である。

届くなり荷をほどき、ページを繰るにつけ「これならオレにも読める」と感じた。難題は元号である。
……
これは安政三年のことだが、その秋はちやうど海軍伝習所の学年代りで、生徒も教師もたいてい代わつたけれど、おれはなほ残って居つたので、その際三日ばかり休日があった。
……
と言われても、その安政と文化、文政、嘉永、文久、元治などの関係が分からない。第一、勝はそのとき何歳だったのか。いちいち検索エンジンに当たっていては、頭が文章から離れてしまう。

そういう次第にてウェブ上に江戸末期から明治にかけての元号と西暦の対照表を探し、使い慣れたソフトに取り込んだ。そこに、各年における勝の満年齢を加え、更にそのとき将軍は誰だったかを添えた。そしてそれを印刷して講談社学芸文庫版の「氷川清話」の裏見返しに貼った。

以降は読む速度が格段に上がった。文章を早く読むことを戒めたオフクロも、このようなたぐいの速度向上であれば、反対はしなかっただろう。

それにしても、今回、僕がしたようなことは本来、編集者がしておくべきことではなかったか。なお、裏表紙を繰り返し圧して完全に開き、そこに自作の年表を貼るなどは、古書だからこそ、惜しげなくできたことだ。古書の効用とは、そのようなところにもあると思う。


朝飯 納豆、菜花のおひたし、刻みキャベツを添えたハムエッグ、しもつかり、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、胡瓜と蕪のぬか漬け、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 うどん
晩飯 蛸のマリネ、TIO PEPE、スパゲティナポリタン、Chablis Billaud Simon 2015、エクレア、Old Parr(生)

2022.3.28(月) チキュー

「味の手帳」の出版元である「株式会社味の手帳」は、毎年「味のカレンダー」という日めくりカレンダーを出す。ウチにはこれがなぜか毎年、届く。

日めくりカレンダーを日々めくるのは面倒だ。それが部屋の、自分が位置するところから遠く、しかも高いところにあったりすると、面倒さは更に増す。しかし「味のカレンダー」は卓上や食器棚に置いてちょうど良いようにできている。しかも毎日毎日、食べものについてのことが150から180文字ほどで書かれている。書いているのは複数の料理人や食いしん坊だ。だからこの日めくりカレンダーは例外的に、めくることに喜びがある。

3月28日のそこには伊藤章良という人が鮪について書いていた。彼が最も美味く感じた鮪は東京の高額鮨屋ではなく、ボストンの和風居酒屋で出された大西洋ものだったという。文章は「漁法やエリアではなく地球は一つと感じた瞬間だ」で閉じられていた。

行きつけだった銀座の「鮨よしき」のあるじは、ウェブ上の情報によれば、鮪の産地を客に訊かれて「チキュー?」と答えたらしい。僕と同様、商売が下手だった割に激戦地で生き延び、現在はビルの建てかえによりお休み中だという。どこかで仕事を再開したら教えて欲しい。

ところでボストンといえば、レッドソックスよりロバート・B・パーカーの方が僕には馴染みがある。スペンサーシリーズは隨分と読んだ。そして月並みな意見だろうけれど、とどめを刺すべきは、やはり「初秋」と思う。


朝飯 切り昆布の炒り煮、キャベツとポテトのサラダ、焼き鮭、豆腐干絲と青葱の油和え、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、沢庵、メシ、蕗のとうの天ぷらの味噌汁
昼飯 焼き鮭、ごぼうのたまり漬、沢庵、梅干のお茶漬け
晩飯 めかぶの酢の物、蕪のぬか漬け、「旭酒造」の「獺祭純米大吟醸磨き二割三分」(冷や)、菠薐草と赤パプリカの白和え、菜花のおひたし、しもつかり、人参と八朔の酢の物、鶏とコンニャクの炊き合わせ、「福禄寿酒造」の「一白水成槽垂れ純米吟醸」(冷や)、“Briest”のパリ・ブレスト「ブリエスト」、Old Parr(生)

2022.3.27(日) to buy or not to buy.

服飾関係の、興味の惹かれるものをウェブ上に見つけると、とりあえずそのURLをエディタに保存する。そしてそれをときおりクリックしては、いまだそこにあるかどうかを確かめる。

ベイズリー模様の紅色の絹のスカーフも、そのように保存したひとつだ。本日、数ヶ月ぶりでそのURLをクリックすると、それは果たして売り切れていた。これほど良さそうなものが、セール価格で、これほど長く市場に存在し続けるのは解せないと感じながら、手を出さずにいた。それは、買っても身につけるのは年に1度くらいのものだろう、そのうち年に1度どころか箪笥の肥やしになるに違いない、という考えによる。しかしいざ売り切れてみれば、後悔の念が沸き上がる。

そのスカーフの下の、アロハのURLをクリックする。数ヶ月を放置するうち、こちらもまた売り切れていた。その商品名を検索エンジンに入れてみると、他の店にはいまだ在庫がある。買うべきか、あるいは退くべきか。

アロハは大きすぎでも小さすぎても格好が悪い。エディタにURLを保存したアロハとおなじメーカーのそれを寝室の箪笥に探す。それを取り出し着てみると、いまだウェブ上に存在する”M”で問題ないことが分かった。それにしても、アロハは既にして、プラスティック製の衣裳ケースに満杯の数がある。僕が死んだら社員に形見分けしてもらいたいと思う。


朝飯 切り昆布の炒り煮、生玉子、納豆、豆腐干絲と青葱の油和え、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、沢庵、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 「コスモス」のトマトとモッツァレラチーズのサラダマカロニグラタンドライマーティニ

2022.3.26(土) 松に鶴、梅に鶯、月に雁

「汁飯香の店 隠居うわさわ」は朝食に特化した飲食店だ。朝のおかずは炊きたてのごはんは無論のこと、酒肴としても、まことに具合が良い。とはいえ営業時間が朝から昼にかけてであること、またお客様のほとんどがクルマでいらっしゃることにより、お酒を所望されることは珍しい。

今朝の8名様は懇意にしている方からのご紹介ということもあり、時間を見計らって隠居へ赴き、ご挨拶をさせていただいた。飲み物の注文を承るのは係のタカハシリツコさんの仕事だ。彼女が帳場に戻ってくると、自家製発酵飲料「ミキ」の他に燗酒3合と冷酒3合が伝票に書かれていた。

家内に教えられるまま冷蔵庫から未開封の四合瓶を取り出し、湯島天神下の「シンスケ」ばりに、正一合を徳利に満たす。薄手のオールドファッションドグラスにも満たす。日本酒の在庫が見る間に減っていく。冷や汗ものである。

「汁飯香の店 隠居うわさわ」は当初、ビールも置いていた。しかし問屋が定めた最低配達数を賞味期限内にさばくことができず、品書きから外した。それもあって、今日の8名様は僕が隠居を去って以降も、お酒をお代わりしてくださったと、後から聞いた。

隠居の、現在は3種をご用意している地酒の在庫は、明らかに増やすべきだ。四合瓶が残り3本を切ったら新たに1本を買い入れる、というような基準を設けても良いかも知れない。


朝飯 焼き鮭、めかぶの酢の物、煮奴、納豆、沢庵、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、トマトと白菜の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 トマトと文旦とベビーリーフのサラダパンパンのための生ハムのムースきのうのポークソテーの残りと「ポポラマーマ」の生スパゲティ三河赤鶏手羽元のスパイシーカチャトーラソースチーズChablis Billaud Simon 2015

2022.3.25(金) 団体旅行考(下)

団体旅行は「見物」を廃して「道中」と「飲み食い」のみで構成しても差し支えはない、あるいはその方が却って思い出に残ると、今月4日および10日の日記に書いた。そこから更に「道中」のみ、「飲み食い」のみにしてしまったら、それでも楽しいか、ということを今日は書きたい。

日本ヒッチハイカー連盟会長の和智香による「親指一本の旅」という本がある。年に2度の国内大会を催してきたこの団体は1976年、東京発アテネ着の国際大会を実現させる。参加を表明したのは300名の会員のうちの11名。彼らは7月25日、上野の西郷隆盛像の前に集合する。以降は離合集散を繰り返し、期限の10月までにアテネに辿り着いたのは10名。1名はパキスタンで病気に罹り、ペシャワールで療養をしていた。この旅が楽しいか否かといえば、参加した人たちは間違いなく楽しかっただろう。ほぼ「道中」のみの旅である。

2016年6月、僕は第1回バンコクMGに参加をした。講師のタナカタカシさんによれば、参加を表明した第1号は僕だったらしい。バンコクMGは年に4度の開催。僕は2020年3月まで、毎年1度は顔を出し続けた。

新型コロナウイルスの出現により海外への渡航が自由でなくなる直前の2020年3月、僕は羽田からウドンタニーへ飛んだバンコクに南下をしたのは4日後。その日は日本の各地、タイの各地から集まった人たちと夕食を共にした。翌日と翌々日の2日間は、朝から夕方までマネジメントゲーム。僕は諸般の事情により、ゲーム後の食事会は2日目のみ参加をする

日本ヒッチハイカー連盟の「東京からアテネ」が「ほぼ道中」の旅なら、このバンコクMGは、マネジメントゲームを除けば「ほぼ飲み食い」の旅といえる。「楽しいか」と問われれば、コロナ騒ぎが収まった暁には、次のバンコクMGの日程を、僕はただちにタナカさんに問い合わせるだろう。

結論。団体旅行は、その内容を削ぎ落として「道中」と「飲み食い」のみに絞ると面白さは倍増する。更に「道中」と「飲み食い」のどちらかを省いても、それはそれで楽しい。そのような旅は、旅行社では企画が難しい。しかし個人であれば、どうにでもなる。「一度、やってみたらどうですか」と、強く思う。


朝飯 切り昆布の炒り煮、ブロッコリーのオムレツ、筑前煮、納豆、沢庵、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、若布と菠薐草の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 チーズ、TIO PEPE、ポテトサラダ焼きトマトとスナップエンドウを添えた豚肉のソテーマッシュルームソースChablis Billaud Simon 2015

2022.3.24(木) 安全余裕

日記は原則として一昨日のものを、早朝に公開することにしている。今朝は目を覚ますなり文章を思いつき、1、2分のうちに頭の中でまとめた。それを起きてから、きのうつまり3月23日の日記として書いて保存した。それからおもむろに、きのうのうちに書けていた一昨日の日記を公開した。この時点で日記の在庫は5日分。多少の増減はあるものの、在庫がゼロになることは珍しい。

在庫は、それが不良在庫になる前に使うことが肝要なことは言うまでもない。5日分のうち特に特定の1日分は、今月のうちに公開しようと考えている。

仕事中は仕事用の帽子をかぶる。いまだ寒いうちは、外出時にも私用の帽子をかぶる。つまり現在は、自宅にいるとき以外は頭を露出をしていない。更にマスクもしているから、人に見られるのは目と耳くらいのものである。いきおい床屋へ行く回数は減る。しかしいつまで伸び放題、というわけにもいかない。そういう次第にて、きのうの夕刻、昨年の正月から通うようになった「スティング」へ電話をして、今朝の9時30分に予約を入れた。

数十年も行きつけだったカトー床屋のオヤジさんが引退して以降、あるいは引退をする前から、タイでは「2番」のバリカンで髪も髭も丸刈りにしてもらい、東京の大衆床屋では、4ミリのバリカンでおなじく丸刈りにしてもらっていた。しかし昨年からはその4ミリを3ミリにした。1ミリ分だけでも長く保たせようという魂胆である。

と、ここまで書いたのが3月24日の朝食前。というわけで、日記の在庫は限りなく6日分に近づいた。この場合の在庫は”buffer”あるいは「安全余裕」と言い換えても良いかも知れない。


朝飯 独活のきんぴら、納豆、豆腐干絲と青葱の油和え、菠薐草のおひたし、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、沢庵、メシ、豆腐と若布と長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 チーズ、ブロッコリーのニンニク焼き、鶏とコンニャクの炊き合わせ、いぶりがっこ、クリームコーンスープ、ポテトとレタスとゆで玉子のサラダ「ポポラマーマ」の生スパゲティラタトゥイユソース、TIO PEPE、「御門屋」の揚げまんじゅう、Old Parr(生)

2022.3.23(水) サーランギ

毎年5月になると、かならず南方へ出かける人がいた。特に苦手とする花粉が5月に飛ぶ、それを避けるための旅とのことだった。

僕は、子どものころは湿疹と運動性喘息に悩まされた。走ると気管支の狭まった感じがして苦しくなる。そのことを僕は親にも言わなかった。誰でもそうなると思い込んでいたからだ。湿疹について、当時かかっていた医者は「やくざな肌だね」とか「何とかならんもんかね」とか「大人になったら治る」と言うばかりで、大して頼りにならなかった。

そういうアレルギー体質の僕ではあるけれど、花粉症にだけはならなくて、それが自慢だった。しかし2000年4月のことと記憶するけれど、ある風の強い日に杉林の中にいて、一瞬で花粉症になった。生まれてこのかた風邪ひとつひいたことのなかった人が、ある極寒の日に薄着で外に立っていたら肺炎になった、というようなことなのだろうか。

僕の花粉症は幸いなことに、日に幾度か目薬を差せば済むほどの軽いものだ。ただ、目を覚ませばただちに今日の天気を当てられる、くらいの敏感さはある。違和感が強ければ晴れ、それほどでもなければ雨で、大抵は外れない。

サーランギという、バイオリンの原型のような楽器がネパールにある。これを弾くのは、若いころの髙橋竹山や瞽女のような門付けの芸人である。カトマンドゥの郊外で農道を歩いていると、このサーランギの音が向こうの土手から聞こえてきたものだ。

ネパールで谷を渡るのはサーランギの音色でも、いまの日本で山や谷を越えるのは花粉の黄色い雲である。早く夏にならねぇかな、と思う。


朝飯 菠薐草のおひたし、蒲鉾の網焼き、独活のきんぴら、スペイン風目玉焼き、ひじきと人参と揚げ湯波の炒り煮、沢庵、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、シメジと椎茸と白菜の味噌汁
晩飯 豆腐干絲と青葱の油和え、チーズ、いぶりがっこ、TIO PEPE、4種の野菜を添えたコロッケChablis Billaud Simon 2015「御門屋」の揚げまんじゅう、Old Parr(生)

2022.3.22(火) 或る童話

朝礼は、最初は7時55分から始められたように記憶をしている。しかし徐々に早くなって、現在は、その2分ほど前には、みな指定の場所に集まっている。朝礼を終えると僕はすぐに水拭き用のタオルを手提げに入れて道の駅「日光街道ニコニコ本陣」へ向かう。今朝はいつもの掃除に加えて納品もある。

道の駅の開店は9時だから、掃除と納品はそれまでに済ませればよい。時間を見計らって出かければ、そこから直に、開店直後の銀行に回れる。しかしせっかちな性格が、その合理的な行動を阻む。道の駅へは8時すぎに出かけ、銀行へは9時を過ぎてから、今度は徒歩で出かけた。早朝からの雪は一時、雨に変わった。しかしまた雪になり、今は積もりつつある。五輪真弓の「冬ざれた街」の聞こえてきそうな風景である。

14時30分、雪の一つ一つが大きく、まばらになり始める。15時過ぎよりNTTの営業係サトーさんと、ビジネスフォンの主装置について商談をする。サトーさんを見送るため外へ出ると、雪はいつの間にか上がっていた。

いまだ降っているとばかり思っていたものが知らないうちに止んでいる、それに気づいたときの気分には、名状しがたい感興がある。ある童話を読み終えたときの気持ちに、それは似ているような気もする。何という題名の童話だったかは思い出せない。


朝飯 茄子とピーマンとパプリカの味噌炒り、グリーンアスパラガスのソテーを添えた目玉焼き、納豆、独活のきんぴら、胡瓜と蕪のぬか漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 「やぶ定」の海老天ぷら蕎麦
晩飯 鶏とコンニャクの甘辛煮、めかぶの酢の物、蒲鉾の網焼き、刺身湯波、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」豚肉と白菜と厚揚げ豆腐の鍋、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)、「翠園」の杏仁豆腐、Old Parr(生)

2022.3.21(月) 不思議なことも

「汁飯香の店 隠居うわさわ」の朝一番、8時30分に予約をいただいていた7名様が、時間どおりに来店をされた。お車をお停めになったのは上澤梅太郎商店の駐車場だったため、そこから隠居までは僕がご案内をした。

片手でノレンを持ち上げ、開いた三角形の隙間を、お客様にくぐっていただく。皆様が石の橋をお渡りになったあたりで僕が先頭に出る。飛び石を踏んで右へ左へ。そして玄関の戸を引く。すると正面の個室には、おなじ時間にご予約くださった別のおふたり様が、既にしておくつろぎになっていた。

玄関を上がってすぐの6畳間は帳場で、庭に面した座敷にくらべると「陰影礼賛」のような薄暗さだ。この部屋の長押には、営業許可証と食品衛生責任者の札が掲げてある。営業許可証は長押と壁の溝に嵌まっている。しかし食品衛生責任者のプレートは、長押の幅1センチほどの上縁に「触れなば落ちん」という風情で立てかけられただけだ。

先週水曜日の夜の地震により、鉄筋コンクリート造りの製造現場ではLEDの照明1本が天井から垂れ下がり、4階では花瓶が倒れ、仏壇の位牌と高台が落ちた。しかし築推定150年の隠居では、長押に立てかけられたプレートが微動だにしていない。

「不思議なこともあるものだ」と、思う。


朝飯 ひじきと人参と揚げ湯波の炒り煮、はんぺんの網焼き、焼き鮭、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、沢庵、メシ、トマトと若布と長葱の味噌汁
昼飯 「ふじや」の雷ラーメン
晩飯 “FLYING GARDEN”のマッシュルームのサラダハンバーグドリアカラフの赤ワイン

2022.3.20(日) 啓蟄から15日

1年のあいだには、いくつかの区切りがある。大晦日から元日にかけては、もっとも大きな区切りだろうか。役所や学校においては、3月31日から4月1日にかけてが、年末年始より大きな区切りになるかも知れない。個人としては、春の彼岸は無視できない区切りである。年明け以降の雌伏から、諸事がむくりと首をもたげる、その節目、という意識が強い。

土曜日からの3日間は、社員が企画した「花のおたよりべんとう」を店にお出ししている。ご予約の他、当日ご来店のお客様にもお買い上げをいただき、きのうは完売をした。そして今日もまた完売の評価をいただいた。さて明日は、どうなるだろう。

きのうの夕刻には「汁飯香の店 隠居うわさわ」への、本日のご予約が相次いだ。そのころ席は既にして全時間において埋まっていたから、それらのお客様は残念ながら、すべてお断りせざるを得なかった。啓蟄から15日が経っている。隠居の座敷から間近に望まれる白梅は、月末には見ごろになるだろう


朝飯 ハムとキャベツとポテトのサラダ、ひじきと人参と揚げ湯波の炒り煮、納豆、めかぶの酢の物、沢庵、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 蒲鉾、いぶりがっこ、TIO PEPE、胡瓜とトマトのサラダ、大根の味噌汁、焼売肉まん、花豆、春子漬け、らっきょうのたまり漬、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)

2022.3.19(土) リブレット

「女房が後ろを向いているあいだが勝負。その一瞬の隙を突いて、コレで仕事をするわけです」と、むかし電子会議室に書いた人がいる。「コレ」とは東芝が1996年に発表した極小コンピュータ”Libretto 20″だった。そのころ”ThinkPad 530″を使っていた僕は「それは流石に無理でしょ」と感じた。”Libretto 20″は画期的なWindows機ではあったものの、いかにも小さすぎて操作性が悪かった。その人の発言も、9割方は冗談だったように思う。

活字中毒でありながら、僕は本は、ほとんど家の外でしか読まない。読む機会が少ないにもかかわらず、本は次から次へと買う。それでは糞詰まりである。今朝は2日分以上の日記を書いて、いまだ時間は5時台だった。前述の人が「女房が後ろを向いているあいだが勝負」なら、僕は「家内が起きてくるまでが勝負」だ。

2月2日から読み始めていまだ読み終えない「三島由紀夫紀行文集」を、本棚から食堂に持ち来て開く。後々調べ直したいページを折りながら読み進むうち、残りのページは呆気なく尽きて「解説」に至った。しかしてこの佐藤秀明による解説が29ページもある。「ウンザリか」と問われれば、とんでもない、大いに得をした気分である。

今朝のうちに読み終えることのできなかった解説は、明日の朝から、また読もうと思う。


朝飯 ハムとキャベツとポテトのサラダ、焼き鮭、納豆、ひじきと人参と揚げ湯波の炒り煮、沢庵、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、きのうのキムチ鍋の残りを具にした味噌汁
昼飯 うどん
晩飯 いぶりがっこ、TIO PEPE、キウイと苺とベビーリーフのサラダ浅蜊と蛍烏賊と菜花のスパゲティChablis Billaud Simon 2015チーズパン、TIO PEPE

2022.3.18(金) 春彼岸

朝食前に家内と如来寺のお墓へ行く。氷雨とばかり思っていたが、降っているのはミゾレだった。

「寒さは必ずぶりかえす。隠居の暖房絨毯は、梅雨が明けるまで片付けるべきでない」と、数日前に長男が言っていた。僕はダウンベストから毛糸の帽子にいたるまで、すべて洗濯屋に出してしまった。考えてみれば、おととしは桜の花に雪が積もったのだ。

妹が病没した1972年に新しくしたお墓、また昨年に亡くなった叔父のお墓に線香と花を供える。いずれミゾレであれば、墓石を布で拭くまではしなかった。

9時を過ぎたところで花も売るテーラーシマダヤへ行く。そして叔母が頼んであった9対の花を受け取る。それを持ってふたたび如来寺のお墓へ行く。先ずは1972年以前のお墓のうち花立てを持つ7基にそれぞれ1対ずつ花を供える。今朝、お参りしたばかりのふたつのお墓にも1対ずつ花を供える。ミゾレは有り難いことに、こぬか雨に変わっていた。

お彼岸の連休に遊べる人は、どんどん日光へ来てください。僕のお彼岸は、墓参りと仕事である。


朝飯 目玉焼き、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、納豆、ひじきと人参と揚げ湯波の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツと若布の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 めかぶの酢の物、ステーキソースで食べる鰹の刺身、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、キムチ鍋、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)

2022.3.17(木) ガーベラ

きのうの夜の地震は強くて長かった。目を覚まして布団の中で収束を待つものの、揺れはいつまでも止まない。寝室から廊下に出る引き戸は揺れの最中だから、いつものように軽くは開かない。応接間では、飾り戸棚の一輪挿しが倒れたため、横にしたまま床に落ちない場所に置き直した。仏壇の中で、気になる音がする。ようよう揺れの落ち着いたところで扉を開けば、菓子を載せた高台1客と位牌1基が落ちていた。

2月24日に引き続いて、今日は隠居で2度目の撮影がある。写真は5月の設定だから床の間の「筑後途上五絶」は朝のうちに外して今井アレクサンドルの「ガーベラ」に掛けかえる。この、50号のキャンバスに描かれた絵は2011年3月、東日本大震災の見舞いとして今井が僕にくれたものだ。

きのうの地震により製造現場では、天井から照明が1台、外れて垂れ下がった。その照明を取り付けた業者に連絡をすると、30キロの道のりを数十分で駆けつけてくれた。隠居での撮影は、僕が見に行く前に首尾良く終わった。

銀行まわりなどが一段落した16時に隠居へ行く。そして「ガーベラ」を外して「筑後途上五絶」をふたたび掛ける。木造の古い家は、地震に強いところがある。隠居の食器や調度は何ひとつ落ちず、ずれてもいなかった。


朝飯 温泉玉子、ひじきと人参と揚げ湯波の炒り煮、納豆、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布と菠薐草の味噌汁
昼飯 うどん
晩飯 胡瓜とセロリとレタスとルッコラのサラダ2種のトースト鶏とリガトーニのグラタンChablis Billaud Simon 2015

2022.3.16(水) 無味の味

数ヶ月先の、ある日の日記を書きつつ「無味の味」と検索エンジンに入れてみた。すると昭和6年の日付のある、魯山人の文章が出てきた。それによれば「無味の味」の海における究極はふぐであり、山におけるそれはわらびであると、あった。

僕は魯山人の言う「徳島、下関、出雲あたり」の人ではないから、ふぐを常に食べる習慣は持たない。わらびは、これを好むうちマメな人は自ら山で採り、茹で、灰汁を抜く。僕はそれを予期せずいただいて賞味する。今年、その機会は訪れるだろうか。ちなみに魯山人は、わらびは酢醤油で食べるという。僕なら酢と「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」を合わせて使うだろう。「朝露」は浅漬けの素ではあるけれど、味の淡いものに差しても、また佳、なのだ。

「人はパンのみにて生くるものにあらず」という言葉がある。ところが僕にはパンのみにて生きているようなところがある。「今夜あたり、鮪を朝露で漬けたやつが食いてぇな」と思う。


朝飯 鶏とコンニャクの炊き合わせ、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、蓮根のきんぴら、納豆、切り昆布の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 揚げ湯波とひじきと人参の炒り煮、鮪の「朝露」漬け、うずら豆、雲呑、「栗林酒造店」の「春霞純米吟醸」(冷や)

2022.3.15(火) 健康診断

歯医者では口の中で道路工事まがいのことをされても平気だ。伊豆の治療院での、拷問のような治療にも絶えられる。鼻から入れる細いスコープが開発される以前の、喉から入れる胃カメラも苦にしなかった。ただ、血管注射だけが怖い。その怖さは、不気味さと言い換えるべきかも知れない。皮膚を透かして青黒く見えている血管に針を刺される、その不気味さは、たとえば蛙の活き作りがあったとして、そのいまだピクピクと動いている内臓を生で食えと無理強いされる気持ちに近い。

会社の健康診断は、総勢10名の医療関係者を社内に迎え、8時より始まった。視力、聴力、心電図。身長、体重、レントゲン。自分の問診票を手に、あちらこちらを巡る。そして最後に回したのが採血である。

血管注射を恐れる気持ちのあることを伝えると「でしたら細い針にしますね」と係の女の人は言ってくれたけ。その心遣いは有り難いものの、血管に針を刺される事実は変わらない。しかし今日の人は上手かった。文章が長くなるから細かくは書かないが、日進月歩する採血用の器具も、不気味さの軽減には大いに役立っている。

ところで9年ほど前より漸減を続けている体重は、昨年からまた2キロ減った。2キロも減れば漸減でもないと、この日記を検索してみた。どうやら昨年はすこし太ったらしく、そこからまた元に戻っただけのようだ。BMIは19.58で、適正体重より7キロ少ない。加齢と共に太る人もいるけれど、僕のような例も、またあるのだ。

午後、琴平山の手前の空を、雲のようにかたまった花粉が風に運ばれていくところを目撃する。視線を南に転ずれば、例幣使街道の杉並木が大量の花粉を吹きだしている。花粉の季節は、5月のなかばごろまでは続くらしい。


昼飯 「ふじや」の広東麺
晩飯 人参と夏みかんのサラダトマトと玉葱のサラダ、TIO PEPE、エリンギと菠薐草のソテーと自家製のソースを添えた2種のビーフステーキチーズそのチーズを塗ったトーストNuits Saint Georges Les Hauts Poirets Machard de Gramont 1983

2022.3.14(月) コロモガヘ

冬から春に向かうに連れ、僕はこれまで以下のように、着るものを軽くしてきた。

冬:長袖ヒートテックタートルネックT+長袖フリースセーター+ダウンベスト
春:長袖ヒートテックタートルネックT+長袖フリースセーター
晩春:長袖ヒートテックタートルネックT+長袖Tシャツ

ところが上記のうち、ユニクロの長袖ヒートテックタートルネックTは終売になり、9分袖のもののみになってしまった。仕方なく昨晩秋は、それを超極暖ヒートテックに買い換えた。超極暖は、冬のあいだは有り難い。しかし以降においては、いかにも過重装備だ。

よっておととい、きのうとこれからの季節にふさわしいものを探し、結局はワークマンのファインアシスト裏綿長袖ハイネックを森友地区の店舗で手に入れた。今朝はこれに長袖Tシャツを重ね、服装は真冬から春、晩春を飛び越えて、一気に薄くなった。

このファインアシスト裏綿長袖ハイネックは、秋からもまた必要になるだろう。きのう買ったのは1着のみだった。残りはウェブショップで注文し、実店舗で受け取ろうと思う。


朝飯 鶏とコンニャクの炊き合わせ、生玉子、納豆、切り昆布の炒り煮、蓮根のきんぴら、すぐき、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、蕗のとうの天ぷらと若布の味噌汁
昼飯 「食堂ニジコ」の麻婆丼
晩飯 チーズ、TIO PEPE、トマトサラダキャベツとコンビーフのスパゲティChablis Billaud Simon 2015

2022.3.13(日) 検分と入力(続)

隠居に「汁飯香の店 隠居うわさわ」を開いたのは2020年3月。最初に掛けた軸は「三友争研」の題を持つ、椿椿山による松竹梅図だった。倉庫の棚から適当に抜き出したもので、決めたのは「松竹梅ならめでたかろう」くらいの理由による。

母屋にも床の間はあるものの、軸を掛けるなどは晩秋の恵比寿講を除いてまったくしてこなかった。しかしこれからは、隠居を飾る必要がある。季節に応じた軸を掛けるためには、先ず、どのような軸があるかを知らなくてはならない。そういう次第にて先月26日には、このところの日記に書いている「38軸」のうちの17軸をコンピュータに整頓した

今日はその続きにて、残りの21軸を13時30分より長男とあらためていく。予定が詰まっていたこともあり、14時50分までに確認できたのは3幅のものも含めて12軸。そのうち「これなら隠居に掛けても良かろう」と思われたものは3軸。歩留まりは良くない。

さて、残る9軸を検分できるのは、いつになるだろう。そして夏に掛けられるものは、いまだひとつも出てきていない。


朝飯 牡蠣の醤油煮、蓮根のきんぴら、納豆、鶏とコンニャクの炊き合わせ、すぐき、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、トマトと若布と長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 「板門店」のあれやこれや、他あれこれ、済州マッコリ、林檎のシャーベット

2022.3.12(土) 筑後途上五絶

ウチにある80余の掛け軸のうち「まぁまぁ」と専門家に言われたもの、そこに「これもまた悪くない」と僕が感じたものを加えると38軸になる。このうちの17軸を、先月26日にコンピュータに整頓した。

80余軸を倉庫の棚に見たときからうすうす気づいていたことではあるが、季節は秋のものが圧倒的に多い。日本では、秋こそ絵になる季節なのだろうか。あるいはこれらを集めた4代、5代前の人の好みを映してのものだろうか。

「汁飯香の店 隠居うわさわ」の庭には梅が咲き始めた。庭に梅、床の間も梅では何やら季重なりのようで具合が悪い。小杉放菴による「梅花」を下げたとして、他には何があるだろう。そして先月26日に入力したばかりの一覧を見る。春に関わるものは、果たして野村素軒の「筑後途上五絶」のみがあった。書道教室を営む先輩タケムラキヨシさんに助けていただきながら解読した文字は、以下の通りである。

行尽連山険
如看平野長
天鵯聲不絶
十里菜花黄

1982年2月20日、早朝ポカラを出発したバスがいくつも山を越え、夕刻、最後の峠に達すると、眼下のカトマンドゥには一面に菜の花が見えた。野村素軒が九州に遊んだのも、おなじく2月の終わりごろだっただろうか。

日光に菜の花は、いまだ咲かない。「筑後途上五絶」は、きのう白木屋に頼んだ「佳更」の額装が成るまで掛けておけるだろう。


朝飯 牡蠣の醤油煮、納豆、しもつかり、蓮根のきんぴら、すぐき、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 「CoCo壱番屋」のポークカレー、野菜サラダ
晩飯 じゃがいもと人参とピーマンのサラダ、たたき胡瓜のにんにく風味、春子漬け、冷や奴水餃子、「紅星」の「二鍋頭酒」(生) 、林檎のゼリー、TIO PEPE

2022.3.11(金) 益子

小さなころ、おじいちゃんと益子へ行った。クルマはおそらく会社のもので、とすれば運転手はツカゴシヤスオさんだった可能性が高い。ツカゴシさんは製造にも営業にも属さず、クルマの運転だけを仕事にしていたような気がする。

登り窯の焚き口のあたりに、僕は無言で立ち尽くしていた。その脇を通りながら「ここにいる人間がみな真っ黒だから驚いているのか」とういう意味のことを発しつつ、オバサンが笑って通り過ぎたことは覚えている。

その日の買い物は、素焼きの土管のようなもので、藁に包まれていた。「割れないから平気だ」とおじいちゃんには言われたが、僕は心配で、それに足をのせることを躊躇った。「土管のようなもの」と書いたが、まさか益子まで出かけて土管を買うわけはない。

午後、長男の運転により、60数年ぶりに益子を訪れる。中心部の通りは整備され、その両脇には窯元の店やお土産屋が整然と並んでいた。長男は共販センターの駐車場で方向を転ずると、街から出て山の方へハンドルを向けた。

グンジツネヒサさんケーコさんの工房は、山の斜面にあった。グンジさんは作業場兼応接場にいた大きな犬を外へ出した。そして我々は1時間ほども話をした。

益子からはまっすぐに帰らず宇都宮を経由した。そして画材の白木屋に寄り、大きく重い額に納められている書画の、現代的で軽快な額への入れ替えを頼む。相手をしてくれたのは社長のサイトーさんだった。

「2代前の方でしょうか、おじいさんにはたびたび来ていただきました」と、サイトーさんは教えてくれた。おじいちゃんには文人画を描く趣味があった。「穏やかな方で」と続けるサイトーさんに「それは、ここだけのことだったと思います」と僕は応じた。

額装は、1ヶ月弱で完成するという。書画には右から読むのだろうか「佳更」の文字に土筆と桔梗が金彩で描かれている。土筆と桔梗の季節は異なるものの、額装が完了したら即、隠居の床の間に掛けようと思う。


朝飯 オムレツ、しもつかり、納豆、生のトマト、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布と大根の味噌汁
昼飯 「やぶ定」の大もり蕎麦
晩飯 めかぶと松前漬けの混ぜ合わせ、蓮根のきんぴら、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、菜花のおひたし、切り昆布の炒り煮、鯛の煮付け、「栗林酒造店」の「春霞純米吟醸」(冷や)

2022.3.10(木) 団体旅行考(中)

今月4日の日記「団体旅行考(上)」を書きながら、ある年の、町内の親睦旅行を思い出した。「さて、あれはいつのことだったか」と、この日記の検索窓に「メリージェーン」と入れてみる。果たしてそれは、2004年1月25日のことと知れた。

この日帰り旅行を企画したのは、当時の青年会長カワナゴヨシノリさんだった。上りの特急は下今市09:02発。駅へ向かう途中で買った酒を朝から飲むのは昭和の遺習だろうか。隅田川の遊覧以外はすべて未定。特急スペーシアの車内で喧々がくがくの議論の結果、夕食の場所は「駒形どぜう」と決まった。

神田川から隅田川に出た屋形船が舳先を南へ向ければ、早くも宴会の開始である「酔っ払う前に」とカミムラヒロシさんは競馬の予想を始めた。お台場まで下ったとき、タノベタカオさんがカラオケで歌った歌こそ「メリージェーン」である開け放った障子の向こうにはフジテレビの社屋が見えていた

屋形船が柳橋に戻ったのは14時前。浅草の場外馬券場へ急ぐ者、上野のアメヤ横町へ向かう者、とにかく皆が好き勝手に移動をする中、僕はひとり予約係として浅草橋から地下鉄に乗った。そして「駒形どぜう」の前まで来てみると、昼を大きく過ぎた今も、店に入れない人たちが路上に溢れていた。店員によれば、夜も満席とのことだった。すかさずカワナゴ青年会長に電話を入れ、ドジョウなら「飯田屋」もあると提案して諒承を得た。

あちらこちらに散らばっていた面々は、夕刻、浅草六区のROXの前にふたたび集まった。いまだ携帯電話を持たなかった、よって夕食の場所の変わったことを知らないカミムラヒロシさんは、シバザキトシカズさんとカワナゴ青年会長が「駒形どぜう」で見つけて「飯田屋」まで連れてきた。カミムラさんの予想に乗ったユザワクニヒロさんの手元には、3,000円分の外れ馬券が戻ってきた。泥鰌鍋をつつきながらの宴会は、もちろん大いに盛り上がった

浅草の松屋デパートで土産を物色するうち19時発の下り特急に乗り遅れたタノベタカオさんに付き添うべく、次の北千住で下車したカワナゴ会長の男気には驚いた。特急スペーシアは、20時42分に下今市に着いた。そこから更に、居酒屋に引っかかる者もいた。

この旅行を構成していたのは「道中」と「飲み食い」だけで、それ以外は各々に任された。だから、と言って良いかどうかは分からないが、思い出に強く残るものになった。

今はコロナにより無理としても、これから団体旅行の幹事を引き受けようとする人は、行き帰りの交通、飲み食いの場所、泊まりなら部屋を決め、それ以外はすべて自由とすれば、楽しい旅になること請け合いと思うが、どうだろう。


朝飯 しもつかり、春子漬け、納豆、切り昆布の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、じゃこ、メシ、トマトと長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 ブロッコリーとニンニクのソテーじゃがいものグラタントマトのサラダ4種のパンハムステーキ夏みかんChablis Billaud Simon 2015

2022.3.9(水) 伊豆治療紀行(3回目の2日目)

「オレはボケでしまったのではないか」と懸念されることを、今朝は立て続けに3度も経験した。

ひとつ目。3階の風呂へ行こうとして廊下のエレベータの前まで来て、扉の脇にある、いまエレベータが何階にいるかを示す板の「3」の部分を押してもエレベータはウンともスンとも動かない。「風呂は6時からとのことだったが、今日は何かの具合により、いまだ開かれていないのだろうか」と、部屋へ戻った。わざわざ書くこともないが、エレベータは、先ず、上へ行くか下へ行くのかのボタンを押さなければ、今いる階へは来てくれない。

ふたつ目。エレベータの前から部屋へ戻る際に、部屋の外にある部屋番号の「表札」まで手を伸ばしてカードキーをかざした。カードキーは、ドアノブ直下にあるセンサーにかざさなければ、解錠はされない。

みっつ目。部屋の洗面所にあった歯ブラシのセットを持って3階の風呂へ行く。歯ブラシとチューブは脱衣所で袋から取りだした。その歯ブラシとチューブを持って洗い場に入り、ひとりずつ仕切られた洗体場の正面、シャンプーなどの並べられた台に置いた。そして頭とからだを洗ってその歯ブラシとチューブを見た瞬間「誰だ、使った後の歯ブラシとチューブをこんなところに置きっぱなしにしたヤツは。オレが奉仕の精神を発揮して片付けてやろう」と、それを浴場の隅にあるゴミ箱に捨てた。

とんでもない勘違いをする、ということが、ごくたまにある。これまでは「ごくたまに」だったけれど、今朝はちと頻度が高すぎた。認知症の始まりでなければ幸いである。

ところで定宿の1室2名の宿泊料は、朝食込みが23,760円のところ、素泊まりなら15,400円。つまり朝のブッフェの価格が8,360円、ひとり4,180円とは、帝国オークラならいざ知らず、どうにも自分の間尺に合わない。よって今回は素泊まりにして、朝食は外で摂った。価格はふたりで1,208円だった。

電子ペンによる治療は、1日目にくらべれば2日目の方が、辛さは幾分か弱まる。それは、1日目の治療により症状が改善するからだ。しかし辛いことに変わりはない。1個所あたり2、3分。その電子ペンの患部への「押し当て」を左右の膝の周辺数十個所に受けて伊豆高原を去る。次はひと月後に来るように、先生には言われた。いまだ楽観はできない、ということだ。

東京駅から日本橋に移動をして夕食を摂る。そして浅草18:59発の下り特急に乗って21時前に帰宅を果たす。


朝飯 「ガスト伊豆高原店」の目玉焼き&ベーコンソーセージセット、トースト
晩飯 「玉ゐ日本橋本店」の穴子の酢の物あ巻き箱めし小箱あなご酒

2022.3.8(火) 伊豆治療紀行(3回目の1日目)

先月23日の日記に書いた理由により、僕の、泊まりの荷物は激減した。同日の日記に書いたように、僕はバッグは売るほど持っている。しかしこれまたその日の日記に書いた性格により、新しいバッグを買った。スペイン革のブーツではなく、馬革のショルダーバッグである。

その、直径17センチ、長さ35センチの円筒形のバッグにきのう、コンピュータから紙に出力した一覧表を確認つつ必要なものを詰めた。具合はすこぶる良好である。

骨や筋肉を整えるため伊豆まで通う理由は、昨年4月6日の日記に書いた。今回はその3回目にて、下今市09:05の上り特急に乗る。伊豆高原には13時09分に着いた。現地の交通事情により、ここへ来たときにはいつもレンタカーを借りる。

「伊豆高原痛みの治療院」には13時45分に入った。そして家内に続き、5,000ボルトの電子ペンによる治療を腰と膝に受ける。背中や腰のように面積の広いところはまだしも、膝への刺激は耐えがたいほど辛い。上半身の皮膚が、シャツの中で冷や汗を発する。額に浮かぶ脂汗はハンカチで拭いところだが、痛みに耐えながらでは、それをズボンのポケットから取り出すことができない。

1時間30分ほどを要して、今日の治療がようよう終わる。「こっちも楽じゃないんだよ」と、ワタナベ先生はぼやく。すっかり開放された気分になって、定宿の赤沢温泉ホテルにクルマを走らせる。

夜はホテル併設のビストロで夕食を摂り、満足をして21時前に就寝する。


朝飯 しもつかり、菠薐草のおひたし、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮を薬味にした納豆、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、春子漬け、蕪と胡瓜のぬか漬け、メシ、蕗のとうの天ぷらの味噌汁
昼飯 3種のおむすび
晩飯 「ビストロ赤沢伊豆高原」のカプレーゼレタスのサラダビーフステーキグラスの白ワイン、グラスの赤ワイン、イチローズモルト(生)

2022.3.7(月) しもつかり

家内はしもつかりを、おばあちゃんから教わった通りに作るという。僕ならあれこれ自己流で手を加えそうだ。僕が物作りや技芸に上達しないのは、ひとえに「教わった通りにやらない」性格によるものと思う。

「お父さんがゴルフをしないのは、仕事やつきあいの側面が強いからでしょ」と長男に訊かれたことがある。「いや、基本に則って練習しなくては上達しない、というものごとすべてがオレは嫌いなんだよ」と答えると「だったら、ほとんどのことがダメじゃん」と、長男は笑った。

しもつかりは、できたての温かい状態では食べる気がしない。というか、不気味でさえある。むかしの台所は寒かった。その時代には、しもつかりはしばしば凍ったという。僕はきのう、しもつかりの大鍋を、生活している4階ではもっとも寒い、廊下の北西側の机に置いた。

6時30分、小鉢とお玉を手に廊下のどん詰まりへ行く。そして大鍋の中味を小鉢に盛る。今年のしもつかりが塩気に欠けるのは、今年たまたま選んだ塩鮭の頭が塩辛くないからだという。教わった通りに作っても、しもつかりの味は時代と共に変わっていくのだ。


朝飯 納豆、ポテトサラダ、しもつかり、めかぶと松前漬けの混ぜ合わせ、すぐき、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、蕗のとうの天ぷらの味噌汁
昼飯 ハムと長葱のスパゲティ
晩飯 二十日大根と紫キャベツのサラダカレーライスらっきょうのたまり漬TIO PEPEドーナツ、Old Parr(生)

2022.3.6(日) 初午

家内により、しもつかりは一昨日の午後から昨日の夜にかけて作られ、赤飯は今早朝に蒸し上げられた。本日は旧暦の初午にて、このしもつかりと赤飯に日本酒を添えて、朝、6時30分にお稲荷さんにお供えする。

しもつかりは塩鮭の頭、鬼おろしでおろした大根と人参、大豆、そこに酒粕を加えて煮た栃木県の郷土食だ。僕はその得体の知れない見た目を恐れ、長く食べず嫌いを通してきた。それを覆したのは並木蕎麦の当時の店主アオキウイチさんである。

「こういうものを食わねぇから体が弱いんだ」と、アオキさんは鉢に盛ったしもつかりを差し出した。父親の同級生にそこまで言われれば仕方がない、ひと箸すくって食べてみれば、それは得も言われず美味かった。その27歳からこのかたは、しもつかりの作られる今の季節を楽しみにしている。

この時期にはまた、日光の居酒屋ではしもつかりをお通しにすることが珍しくない。いちど、関西から出張で来た人が市内の居酒屋でいきなりしもつかりを出され、それを躊躇うことなく口にする様子を目撃した。僕は心の底から感嘆し、且つ、その人を畏敬した。しつこいようだが、食欲をそそる見た目では、決してないのだ。

今年のウチのしもつかりは、大根の質によるものか、甘い。塩気も少なく、だからごはんのおかずにはなりそうもないけれど、取りあえずは朝食の膳に載せてみた。しもつかりは、これから1週間ほどは楽しめると思う。


朝飯 牡蠣の醤油煮、納豆、切り昆布の炒り煮、しもつかり、牛肉と牛蒡と「しいたけのたまり炊」のすき焼き風、すぐき、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、トマトと長葱の味噌汁
昼飯 梅干、揚げ玉、すぐき、ごぼうのたまり漬、塩鰹のふりかけのお茶漬け
晩飯 刻みキャベツとポテトサラダを添えたハムエッグトースト、TIO PEPE、Chablis Billaud Simon 2015

2022.3.5(土) 梅一輪

隠居の梅が1輪のみ咲きそうだと隠居係のタカハシリツコさんから聞いたのは数日前のことだった。それを確かめるため、お客様がいまだいらっしゃらない時間に柴折り戸を押す。

箒目のある土に足跡を付けないよう、飛び石を踏んで裏手から庭へと出て行く。門から玄関に至る飛び石には水が打ってあった。もはや冬ではない、ということだ。

庭の隅にある梅の木はおしなべて小さい。そのうちの1本に、確かに紅い花が認められた。花は既に開いて黄色いおしべまで見える。さてふたつ目みっつ目の花は、いつほころぶだろう。

「昼は満席」との連絡が家内より電話で知らされる。いまだ10時を過ぎたばかりであれば、既にして複数のご予約をいただいていたところに、更に別のお客様からも予約が入ったに違いない。今しばらくすれば座敷にほど近い白梅も咲き、それが散らないうちに桜も芽を吹きそうだ。

「汁飯香の店 隠居うわさわ」の庭は、春がいちばんよろしいように感じられる。夏の緑も秋の紅葉も、そして冬の雪景色も捨てがたい。それでも春のそれがもっともよろしいように感じられるのは、人間の本能に拠るものかも知れない。床の間の梅の軸は、週明けにも外そうと思う。


朝飯 牡蠣の醤油煮、牛肉と牛蒡と「しいたけのたまり炊」のすき焼き風、納豆、生玉子、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、切り昆布の炒り煮、メシ、レタスの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 春子漬け、「両関酒造」の「翠玉特別純米」(冷や)、モッツァレラチーズのたまり浅漬け、ゴルゴンゾーラチーズのオムレツ、生のトマト、セロリとキャベツのたまり浅漬け、豆腐と炒め茄子の味噌汁鶏つくね団子「栗林酒造店」の「春霞純米吟醸」(冷や)蒸しパン、Old Parr(生)

2022.3.4(金) 団体旅行考(上)

小学校の修学旅行は東京だった。下今市から特別列車で浅草、浅草から隅田川を船で下って浜離宮。その浜離宮の芝生で弁当を食べ、今度はバスで羽田空港へ向かった。浅草へ戻る途中に国会議事堂でも見せようとしたのだろうか、隼町ちかくを通過中、TBSの電波塔に気づいて「あっ、東京タワー」と叫んだ者がいた。

この修学旅行については後日、調査が行われた。いくつかの質問のうち「もっとも楽しかったところ」に、大多数の児童は「行き帰りの電車の中」と答えた。僕の意見もおなじだった。担任だったエダタダシ先生の困惑顔を、今も思い出す。

僕はここで、大人になってからの団体旅行をふたつ、みっつと思い返さないわけにはいかない。町内役員の親睦旅行、業界の親睦旅行、趣味を同じくする仲間の旅行と、道連れは変わっても「もっとも楽しかったところ」は「行き帰りの道中」や「飲み食い」や「夕食後、ひと部屋に集まっての二次会」ではなかったか。そして名所、旧跡、景勝地についての記憶は曖昧である。

とはいえ名所、旧跡、景勝地の見物を目的とした団体旅行は、これからも続くだろう。たとえそれらが大して面白いものでなくても、特に旅行社が募集する団体旅行には、旗印や名目がなければ人は集まらないからだ。


朝飯 揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、三つ葉の玉子とじ、切り昆布の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、菜の花漬け、春子漬け、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 トマトとベビーリーフのサラダスパゲティミートソースチーズNuits Saint Georges Les Hauts Poirets Machard de Gramont 1983プリン、Old Parr(生)

2022.3.3(木) 好きな仕事

おとといの日記に書いた、タカクコータロー君の調べたところに僕が取捨選択を加えた作業手順書はコンピュータに記録した。その内容を紙に出力したもの、コンピュータ、10キー、メモのための紙、数本のペンを手提げに入れて4階へ上がる。そしてそれらを食堂の丸テーブルに、ある規則を以て配置する。電話が鳴り、いきなり人の来る事務室ではできない仕事もあるのだ。

日本橋高島屋での催し、新宿高島屋での催し、日本橋と新宿での催しが2ヶ月ほどしか間を置いていないとき、あるいは平時ではなく緊急事態宣言下での催しと、催しには様々な時と場合がある。その都度、お知らせをお送りするお客様を特定する方法は異なる。3月30日から4月5日までの、柏高島屋での販売における商圏は、東京でのそれにくらべて広くない。ご案内のお送り先の特定は、これまでにくらべれば隨分とはやく完了した。

さて今日は桃の節句。というわけで、夜は蛤のお吸い物とちらし鮨が食卓に上った。それを前に孫のリコが「うれしいひなまつり」を歌う。それにしても、この歌を耳にするたび「どうしてこれほど寂しい調子の曲を作ったか」と不思議に思う。「今日は楽しいひな祭り」と詞にはあるものの、まったく楽しそうではないではないか。


朝飯 菠薐草の胡麻和え、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、切り昆布の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、春子漬け、メシ、山菜の天ぷらの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 松前漬け、納豆、菜の花漬け、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、春子漬け、蛤の吸い物ちらし鮨、「天鷹酒造」の「ふるさとの絆大吟醸」(冷や)、ロールケーキ、Old Parr(生)

2022.3.2(水) 買おうか買うまいか

下今市09:33発の上り特急スペーシアが荒川の手前で緊急停止したときには「長引かなければ良いが」と心配をした。何が原因だったかは不明ながら、列車は4分後に動き出した。夜のことを考えれば、昼は食べ過ぎないことが肝要だ。このところ、出先の昼食はトーストとコーヒーにすることが多い。

上出来のハムトーストを作ってくれたマスターに、店を出しなに「これから木馬亭なんです」と告げると「浪曲ですね。で、お目当ては」と訊かれて「奈々福です」と答える。大きなチェーン店を好む人の気持ちは分かる。しかし昔ながらの店にはそれぞれの接客があって、それはそれで心地よい。

出色は奈々福と太福。他にも色々と我が身に蓄積をして、銀座線に乗る。

今月16日に買おうか買うまいか迷って買わなかった姫碗2客を神宮前の器屋で買う。銀座まで戻り、ウェブ上で買おうか買うまいか迷っているシャツを実際に見る。そして「あぁ、買わなくて良かった」と、その店を去る。

目と鼻の先の蕎麦屋では燗酒を頼んだ。東京の桜は、もう2週間ほどもすれば咲き始めるのではないか。季節は明らかに、春に変わった。


朝飯 春菊のサラダ、牛肉と牛蒡の「しいたけのたまり炊」のすき焼き風、大根おろしを薬味にした納豆、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、春子漬け、メシ、三つ葉の味噌汁
昼飯 「珈琲アロマ」のハムトースト、コーヒー
晩飯 「よし田」の鮪の刺身玉子焼き牡蠣南蛮蕎麦菊正宗(燗)

2022.3.1(火) 新しいところ

3月30日から4月5日までの7日のあいだ、柏高島屋では初めてとなる出張販売をさせていただく。同店の商圏にお住まいのお得意様には当然、ご案内のハガキをお送りすることになる。しかしてその範囲はどのように決めるべきか。頼りになるのは製造係のタカクコータロー君である。

「鉄道ヲタク」は現在、20から30に細分化をされている。タカク君はその中でも「時刻表鉄」の傾向が強い。

今朝、タカク君は1週間ほどもかけて作った報告書を手渡してくれた。そこには数十におよぶ行政区と駅名および鉄道の路線図があった。僕はそそくさと席に着き、赤ペンと2色の蛍光ペンを用いて、その数十に取捨選択を加えた。続いてコンピュータに向かう。

間もなく、ご案内のハガキをお送りすべきお客様が特定された。タカク君が帰宅後の1週間を使って仕上げた仕事に僅々数十分で結果を出すのは申し訳ない気もするけれど、役割の分担とはそんなものだ。タカク君には大いに感謝をしたい。


朝飯 豆腐の玉子とじ、鰤と大根の味噌煮、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、蕪と胡瓜のぬか漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、若布と揚げ湯波とトマトの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 めかぶと松前漬けの混ぜ合わせ、菠薐草の胡麻和え、菠薐草のおひたし、春子漬け、天ぷら其の一天ぷら其の二、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)

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上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

蔵見学