2021.1.11(月) 気にしているのは
「汁飯香の店 隠居うわさわ」の営業日は毎週の土、日、月で、開店は8時30分だ。調理係の家内は早くから隠居に入る。おとといは8時30分に複数人様のご予約をいただいていた。よって僕は夜と変わらない空の下、家内を隠居の柴折り戸まで送っていった。
隠居が営業する週末から週初にかけての3日間は、僕はひとりで朝食を調える。味噌汁は元より自分が好き好んで作っているから、特に問題はない。
そのような日の朝食の準備法は、日によって様々だ。時にはお盆にあらかじめ器を配置し、その器に常備菜を盛っていく。常備菜はすべて冷えている。しかし汁飯香のうちの汁が熱く、飯が温かければ、痛痒はまったく感じない。
今朝の味噌汁の具はブロッコリーと玉葱。このところ多い組み合わせだ。茹でてあるブロッコリーと生の玉葱を同時に鍋に入れては具合が悪い。できるだけ早く熱が通るよう、玉葱は薄く刻む。そのあたりの工夫もまた、味噌汁づくりの楽しいところだ。
「腹が減っては戦ができぬ」のことわざは英語圏にもあって、それは”An army marches on its stomach.”だという。いつでもどこでも兵站は大切なのだ。もっとも僕の場合、気にしているのはメシのことばかりではあるけれど。
朝飯 牛肉のしぐれ煮、納豆、鰯の生姜煮、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、ブロッコリーと玉葱の味噌汁
昼飯 「金谷ホテルベーカリー」の2種のパン、ミルクティー
晩飯 チョロギの梅酢漬け、たたき牛蒡、人参と椎茸と絹さや豆の炊き合わせ、菠薐草と榎茸のおひたし、巻湯波と根菜類の淡味炊き、紅白なます、刺身湯波、広島菜漬け、メシ、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)
2021.1.10(日) 粛々と
来月10日から16日までのあいだ日本橋高島屋で開かれる「老舗名店味紀行」に、上澤梅太郎商店は出張をする。よってその準備は、怠りなくする必要がある。お知らせをお送りするお客様の、顧客名簿からの抽出も、そのひとつだ。
この仕事は手順に従えば、小一時間ほどで完了する。しかし途中でつまずくこともある。あるいはより良い方法が見つかれば、いったん立ち止まって、手順を書き換える。今日は「つまずき」と「より良い方法の発見」により、2時間とすこしを4階の食堂で費やした。仕事場を離れてするのは、静かな環境が必要だからだ。
15時30分に道の駅「日光街道ニコニコ本陣」へ行くと「らっきょうのたまり漬」が売り切れていた。即、関係者用の通路へ出て蔵へ電話をする。そして急遽これを用意するよう、製造係のイトーカズナリ君に伝える。
蔵へ行くと、包装係のタカクコータロー君とスギヤマアイカさんが「らっきょうのたまり漬」を通い箱に納めているところだった。それをホンダフィットに積んで即、道の駅へと戻る。
首都圏に緊急事態宣言が発令されても、その宣言の対象に栃木県も加えるべしと知事が政府に働きかけても、経済活動は粛々と進めていかなくてはならない。来週からは、いよいよ「なめこのたまり炊」の仕込みが始まる。仕込みは春彼岸まで続ける予定である。
朝飯 メシ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、きのうのキムチ鍋の残りを具にした味噌汁
昼飯 柴漬け、塩鰹のふりかけ、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、ごぼうのたまり漬のお茶漬け、なめこのたまり炊のお茶漬け
晩飯 ポテトサラダ、茹でたブロッコリーを添えたメンチカツ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、SAS DU CHATEAU HAUT BAILLY ROSE 2004
2021.1.9(土) 氷点下摂氏10度
きのうの日記にも書いたように「汁飯香の店 隠居うわさわ」は朝ごはんの専門店で、開店は8時30分だ。その隠居から「お湯が出ない」と8時40分ころ電話が入った。水は出るというから、お客様にご迷惑をおかけすることは、とりあえずはない。しかしお湯が出なければ、特に食器洗いに支障を来す。先ずは出入りのハヤカワ設備に長男が電話をする。
「市内各所で水道管が凍結し、社員は各現場に散って対応に追われている、本職が行っても、できることは水道管をストーブやお湯で温めるくらいしかない、だから何とか自分で対処して欲しい」というのがハヤカワさんの返事だった。
隠居のお湯は、隣接する蔵の給湯器から来る。お湯が出ないとは、その給湯器に水を送っている管が凍りついているのだろう。そう考えて、蔵の中の石油ターボヒーターを隠居に運ぶ。そして地面から立ち上がる当該の管へ向けてスイッチを入れる。一方、蔵の内側からは、おなじ管にハロゲンヒーターを向けてスイッチを入れる。時刻は9時を10分ほど過ぎたところだった。
「お湯が出た」と家内から事務室に電話が入る。時刻は9時40分。というわけで、隠居の敷地に建つ味噌蔵の水道凍結については、今朝、その解決法が見つかった。今年の大寒は今月20日。「どんと来い」である。
朝飯 鰯の生姜煮、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、牛肉のしぐれ煮、めかぶの酢の物、柴漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、ブロッコリーと玉葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 広島菜漬け、キムチ鍋、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)
2021.1.8(金) 朝ごはん屋のしごとはじめ
新しい年にはじめて運ぶ荷物は初荷、はじめて物を売る行いは初売り。だったらはじめてお客様に食事を供することは何と呼ぶのだろう。上澤梅太郎商店商店が運営する朝ごはん専門店「汁飯香の店 隠居うわさわ」は、明日がことしはじめての営業になる。既にしてご予約をくださっているお客様もいらっしゃるが、空席もある。ここはひとつSNSに告知を上げようと、写真を撮るため隠居へおもむく。
その門の前には門松がある。門松をいつまで置くかは地方や家により様々だ。上澤梅太郎商店は関東としては遅めらしい15日まで置く。経費や手間ひまのかかったものであれば、できるだけ長く飾っておきたいではないか。
隠居の床の間には鏡餅がある。その脇には長男が調えた松、竹、椿がある。庭はすっかり冬景色でも、屋内は暖かい。今週末のお客様には朝食と共に、その暖かさも楽しんでいただければ幸いと思う。
「汁飯香の店 隠居うわさわ」は毎週、土、日、月の営業。開店は8時30分、オーダーストップは12時30分、閉店は14時。電話番号は0288-25-5844(日光ごはん良し)。本店の電話番号0288-21-0002(08:30~17:30)なら毎日、ぐるなびなら24時間、ご予約を承れます。
朝飯 納豆、めかぶの酢の物、大根おろしを添えた厚揚げ豆腐の網焼き、ごぼうのたまり漬、茹でたブロッコリー、広島菜漬け、メシ、大根と玉葱の味噌汁
昼飯 牛肉のしぐれ煮、なめこのたまり炊、塩鰹のふりかけ、柴漬け、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」で漬けた松前漬け、めかぶの酢の物、生のトマト、鰯の生姜煮、ごぼうのたまり漬、水餃子、「松瀬酒造」の「松の司生酛純米酒」(冷や)
2021.1.7(木) カワラセンネン
2011年3月11日の午後に大地震が起きたとき、上澤梅太郎商店の蔵の屋根には何人もの人がいた。
出入りのイナバ塗装には、そもそも店の破風を、新築以来35年ぶりに塗り直すよう注文していた。高所作業車に乗ったイナバ社長はそこで、屋根瓦にも手を入れた方が良いことに気づいた。僕は本職の意見には従うたちだから、そのまま屋根のことも頼んだ。
瓦職人も加わった一団は、やがて店の屋根から蔵の屋根まで調査と調整を進め、そこで地震は起きた。南東と北東にそれぞれ面した屋根の、そのとき彼らは北東側にいた。盛大に瓦を滑り落とした南東側にいたら、何人かは命を落としていたかも知れない。
イナバ塗装の社長には、これこれの金額を用意してくれれば即、材料の確保に入ると言われた。信じがたい大惨事がテレビを通して伝えられ続けていた。「屋根をステンレスで葺き直せば、瓦が落ちるなどは、もうないではないか」とも思った。そして2日のあいだ考えて、屋根はやはり瓦のままでいくことを決めた。資金の出しどころについては、スズキトール税理士に報告、確認をした。
そこここで資材が急騰、欠品する中、上澤梅太郎商店の瓦屋根はいち早く元の形を取り戻した。「瓦千年、手入れ毎年」とは、そのとき知ったことばだ。
昨年末、その蔵の庇に不揃いな瓦が見つかった。2011年には手を着けなかった場所だった。修理は松の内最終日の本日に行われた。「手入れ毎年」とはいえ、しばらくは安心していられると思う。
朝飯 巻湯波の淡味炊き、納豆、牛蒡の牛肉巻き、めかぶの酢の物、茹でたブロコリー、ごぼうのたまり漬、広島菜漬け、メシ、小松菜の味噌汁
昼飯 「大貫屋」のタンメン
晩飯 マカロニサラダ、パン、ロールキャベツ、Petit Chablis Billaud Simon 2016
2021.1.6(水) 手並み
アスファルトの割れ目から芽吹く雑草がある。「雑草」という名の植物は存在しない。しかし様々な要因から、それらは「雑草」と十把一絡げに呼び習わされている。地面にしゃがみ込み、しげしげと眺めてみれば、しかしそれらにも、それぞれ味わいのあることがわかる。
googleのAIは、世界の森羅万象について予想をしているらしい。日本における新型コロナウイルスの新規感染者数も、そのひとつだ。それによれば、今月末には全国の新規感染者は6,000名を超えるとのことだった。しかし本日の発表は6,001名だから、新年6日にして、早くもそれを超えてきたことになる。AIはまた、東京の1日あたりの新規感染者は1,500名で高止まりと予想していたという。それに対して本日のその数は、1,591名と発表をされた。
不要不急の場合を除いては、嵐が収まるまで蟄居、閉門せよと、官は民に対して言い始めた。そのような中で気づくべき、見つけるべきは、雑草の持つ味わいではないか。熊谷守一は20年ものあいだ家から出ることなく、あれだけの画業を遺したのだ。
もっともほとんどの人は、熊谷守一並みの極貧には耐えられない。ほとんどの人は、熊谷守一の何十倍も複雑な環境に生きている。蟄居閉門などは、実際には、できることではない。ひとりひとりの手並みが問われている。
朝飯 牛肉のしぐれ煮、納豆、巻湯波の淡味炊き、「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」による松前漬け、ごぼうのたまり漬、広島菜漬け、メシ、豆腐と海老の頭と長葱の味噌汁
昼飯 “Denny’s”の日替わりランチ
晩飯 三つ葉のおひたし、冷や奴、牛蒡の牛肉巻き、「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」による松前漬け、蛸のマリネ、広島菜漬け、「秋田酒造」の「雪の美人純米大吟醸」(冷や)、大根おろしを添えた焼き鮭、「松瀬酒造」の「松の司生酛純米酒」(冷や)
2021.1.5(火) ヤクのバターの茶は美味い
「印刷屋に頼んだありきたりの、あるいは年賀状作成アプリケーションで作成したこれまたありきたりの、自筆のどこにもない年賀状は要りません」と、そのような年賀状を寄こした人に電話をしたところ「オタク、評判、悪いよ」と叱られた、そういう夢を見ながら目を覚ます。
きのう菅総理大臣は年頭の会見にて、首都圏1都3県への緊急事態宣言の発令を示唆した。時期については明言を避けたものの、どうやら今週中には出されるようだ。それを受けて長男は、あちらこちらに電話をかけはじめた。事態は忙しく動いている。
「動いているのは旗なのか、それとも風なのか。いいえ、動いているのはあなたの心です」と、ネパールのある高僧は言ったという。ネパールの、山の上の尼僧院で飲ませてもらったバター茶は美味かった。しかし今はとにかくバター茶よりも対コロナだ。
きのうの長男の電話により、今日は入れ替わり立ち替わり3人の人が来た。それらの人たちと、取り急ぎの打合せをする。各部の長を集めての場長会議は、今月は11日に予定をされている。最終の決定は、そのときになされるだろう。
旅先で窮地に陥ったときとおなじ気分がする。決して嫌いではない気分である。
朝飯 巻湯波の淡味炊き、納豆、茹でたブロッコリー、スクランブルドエッグ、広島菜漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、大根と大根の葉の茎の味噌汁
昼飯 海老の天ぷらと大根おろしと「なめこのたまり炊」の雑煮、黒豆
晩飯 蛸のマリネ、鶏とマカロニのグラタン、チーズ、イチゴ、TIO PEPE、きのう”Finbec Naoto”から持ち帰ったBourgogne Pinot Noir Domaine Billard 2018
2021.1.4(月) 返信の書きどころ
銀行は今日から業務を開始。大晦日から昨日までの売上金を、日別に預金する。この、売上金額を日ごとに分けて銀行に入れるとは、山形県で会計のソフトウェアを開発しているウノヒロシさんに教えられて始めたことだ。これを神奈川県に住む会計の先生サトーマサヒデさんに伝えたところ「ウノちゃんもたまには良いことを言う」と笑った。税務署員にも褒められる、現金の取り扱い方である。
ところで昨年末に、年賀状はいつどこへ届けるべきかと、郵便配達の人から訊かれた。初売りの2日に事務室へ、と僕は答えた。きのう届いたその束は、そのまま家内の事務机に載せた。家内はそこから僕宛のものを選り分けて僕に渡す、それがこれまでの習いだった。しかし今回のそれらは、ほとんどそのまま僕の事務机に回ってきた。
僕宛の年賀状の、特に自筆による文字のあるものについては、いずれ返事を書く必要があるだろう。返信の葉書はこれまで海外の、特に田舎から書き送ってきた。今の様子からすれば、今年は海外へ行くことの叶わなそうな雲行きである。よって返事は明日から書き始めようと思う。
朝飯 ツナとブロッコリーのサラダ、巻湯波の淡味炊き、黒豆、ハムエッグ、柴漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、菠薐草の味噌汁
昼飯 焼き鮭、広島菜漬け、塩鰹のふりかけ、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 “Finbec Naoto”のポテトとレタスと人参のサラダ、エスカルゴのブルゴーニュ風、海老芋のスープ、カレーライス、きゅうりのたまり漬とらっきょうのたまり漬、アップルパイ、チーズの盛り合わせ、コーヒー、ブルゴーニュの赤の中でもっとも安かったワイン
2021.1.3(日) 変えない予定
それにしても静かな正月だ。午前のお客様の数は、冬の平日なみではないか。きのう事務係のカワタユキさんは、机の脇に発送伝票の控えをうずたかく積み上げた。そして12月12日から溜まり続けたそれを、たった1日で、すべてコンピュータに入力してしまった。電話も鳴らないゆえの、能率の高さである。
おなじきのう、東京、神奈川、埼玉、千葉の知事4人は緊急事態宣言の再発令を求めて、西村経済再生担当大臣と3時間も会談をしたという。菅総理大臣は明日の記者会見で、どのような決定を述べるか。それによって上澤梅太郎商店も、直近ひと月ほどの計画を急遽、練り直す必要がある。
お客様の数は幸いにも、午後になって伸びてきた。僕も事務室から店に移動をし、販売の手伝いをする。ふたつ残った福袋のうちひとつは、販売係のタカハシカナエさんがお客様にお勧めをして、お買い上げいただけた。夕刻に外を掃除していると、最後のひとつを手に提げたお客様がクルマに乗り込むところだった。とても有り難い。
秋の紅葉時期には釣り銭を準備するため、週に1度は銀行に通った。しかしこれから春彼岸までは、それも月に1度で済んでしまうかも知れない。きのうの日記にも書いた通り、長期の製造計画は例年と変えずに突進する予定である。
朝飯 雑煮、黒豆
昼飯 会社支給の「琥侍」の弁当
晩飯 蛸のマリネ、トマトと鯖のスパゲティ、焼き林檎、TIO PEPE、Petit Chablis Billaud Simon 2016、Old Parr(生)
2021.1.2(土) 初売り
12月30日に活けた花を仕上げるため、カワムラコーセン先生は7時30分に店に入った。先生は以降もたびたび訪れて、手入れをしてくれることになっている。花は、2週間ほどはお客様の目を愉しませてくれることと思う。
コーセン先生を追うようにして、続々と社員たちが出勤をしてくる。その各々と、新年の挨拶を交わす。7時55分より、おなじ挨拶を第一声として朝のミーティングを始める。
今朝のニュースによれば、初詣を受け入れることを決めた神社の人出は、おおむね例年の9割減とのことだった。その数字はまた、きのう瀧尾神社で目にした風景に一致をしている。
昨年1月、未知のウイルスの、武漢から世界への広がりを耳にしたときには、3月くらいには収まるものと、安易に考えていた。その子ネズミが、1年を経てゴジラかキングギドラのように巨大化してしまうとは、いったい誰が想像し得ただろう。
日光の二社一寺への、大晦日から元旦にかけての参拝客は昨年の8割減、周辺の商業施設の元日の売上げは6割減と、情報が入ってくる。それを受けて、今日から明日にかけての生産計画に変更を加える。超短期の計画は変えても長期のそれは変えない。年明けからの厳冬期は、仕込みの季節だ。「強気で行きますよ」である。
朝飯 雑煮
昼飯 会社支給の「コスモス」の弁当
晩飯 蛸のマリネ、パン、茹でたブロッコリーを添えたマッシュルームの牛肉巻きトマトソース、チーズ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、MONTESOLE TAURASI D.O.C.G 2O11