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清閑 PERSONAL DIARY

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2020.2.19(水) 冬は冬

冬は嫌いな季節ではない。むしろ好きかも知れない。冬に困るのは、服を重ねなくてはならないところだ。そして春は、花粉が飛ぶとはいえ、冬よりはよほど過ごしやすい。着るものが徐々に減って、遂にシャツ1枚で足りるほどの気温に達したときには、大変な嬉しさを感じる。

学生のころ頻繁に通った黒姫に、ことしは雪が無いと知って、心底、驚いた。それほどの暖冬である。しかし本日、植木屋の入っている隠居に、その仕事ぶりを見るため行ってみると、玄関のひさしの雨を受ける鉢には氷が張っていた。暖冬とはいえ、やはり冬は冬なのだ。

ところで先週の火曜日からきのうまでの8日のあいだ、夕食は自炊をしていた。その8回のうち7回は、洋食だった。それには、僕の最も好む酒がワインということと、夜は洋食を多く食べていただろうかという、遠い記憶が関係しているように思う。日本にいる限り、朝は和食でなくては我慢がならないというのもまた、子供のころからの習慣による。

今夜は家内がいて、久しぶりに焼酎を飲む。


朝飯 こんにゃくの煮つけ、コールスロー、鮭の焼き漬け、牛蒡と人参のきんぴら、生のトマト、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、メシ、大根と若布の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 レタスとベビーリーフのサラダ、鮭の昆布巻き、唐辛子の味噌漬け、牛タンと大根と白菜のスープ「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」を注した白菜漬け牛タンのソテー、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)、松露饅頭、Old Parr(生)


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2020.2.18(火) おなじ活劇でも

起きて食堂に出ると、食器棚の電波時計は5時を1分、過ぎていた。「深夜を1分、過ぎていた」なら格好はついても、5時を過ぎてからの活動には著しい「損した感」を覚えざるを得ない。

「深夜プラス1」を「ハードボイルド小説の金字塔」と激賞するのは内藤陳だけではない。僕も大変な意気込みを以てこれを読み始めた。しかしまったく面白く感じられなかった。むしろ退屈だった。僕には多分、ハードボイルドという分野は合っていないのだ。国境を越えての逃亡劇に、シトロエンのDSを使うあたりにも違和感を覚えた。いかにも逃げ遅れて捕まりそうなクルマではないか。

「ジャズに最も似合いの食べ物は天ぷらだ」という原田芳雄の発言を「自分の好きなものを並べただけ」と茶化してみせたのはタモリだ。ギャビン・ライアルは洋の東西を分かたず売れた作家だから「シトロエンのDSが好きだっただけ」ではないだろう。もちろん、ここにメルセデスを持ってきても面白くも何ともないことは僕も分かっている。しかし「それにしても」の感は拭えない。

本棚の最上段、つまり「2度は読まないかも知れないものの、捨てるには惜しい」という中に、やはりクルマを使った活劇の、景山民夫による「虎口からの脱出」がある。それを取り出し、裏表紙から数ページを戻ってみると「1987.5.31-6.3」の記録があった。二段組248ページを4日で読み終えたのだから面白かったのだろう。「深夜プラス1」の方は処分をしてしまったのか、どこにも見あたらない。

ところでこの日記を書きながら「深夜プラス1」は、2016年に新訳の出ていたことを知る。「だったら」と一瞬、考え「でもな」と、その気持ちを打ち消す。


朝飯 鮭の焼き漬け、コールスロー、目玉焼き、菜花と小柱の辛子和え、牛蒡と人参のきんぴら、ごぼうのたまり漬、メシ、菠薐草の味噌汁
昼飯 バターとママレードとブルーベリージャムとらっきょうのたまり漬のトースト、ヨーグルト
晩飯 レタスと生のトマトとコールスローと玉子焼きとハムのソテースパゲティナポリタンPetit Chablis Billaud Simon 2016


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2020.2.17(月) どちらが先かは分からない

中華人民共和国の武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の、感染経路を明らかにしない患者が、国内の各所に発生し始めた。市場からマスクが一斉に消えたことは、今月8日の日記に書いた。その日記にはまた、一般的なアルコール、それも一斗缶入りのものであれば、いまだ購入できることも書いた。

蔵でしその実の選別をしているタカハシリツコさんに、不織布による使い捨ての帽子が少なくなっていることを知らされたのは、おとといの朝だった。即、町なかの、それの置いてありそうな店へ行く。店主に確かめると、見慣れた箱は棚にあって、胸をなでおろした。

すると今朝は、使い捨ての手袋が残り1枚と、またまたタカハシさんに知らされた。そこで研究開発室の、キッチンペーパーや塩素消毒薬の納めてある場所を覗いてみる。そこには幸いなことに、いまだ1箱の買い置きがあった。しかし1箱100枚入りであれば、50回の使用で枯渇する。

使い捨ての帽子のときと同じくホンダフィットに乗り、しかし今回は別の、郊外型の大型薬局へ行く。店の入口には、マスクの入荷の無いことを報せる大きな張り紙が目立つ。店内で、商品を陳列中の人に手袋の空き箱を見せ、おなじものがあるか訊く。案内された先には僕の求める手袋が幾箱もあった。

どうもこのところ、衛生に関する品を求める際には決まって「売り切れているのではないか」と、及び腰になる。しかしマスクのように騒がれているもの以外は、案外、市場にしっかりと流通しているようだ。

マスクは「騒ぎになった」から「売り切れた」のか、それとも「売り切れた」から「騒ぎになった」のか、については、僕の知見の及ぶところではない。


朝飯 牛蒡と人参のきんぴら、春雨サラダ、スクランブルドエッグ、紫玉葱のマリネ、小柱と菜花の辛子和え、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツと若布の味噌汁
昼飯 バターとママレードとブルーベリージャムとらっきょうのたまり漬のトースト、ヨーグルト
晩飯 紫玉葱のマリネ、ポテトサラダ、TIO PEPE、ハムとトマトとピーマンのスパゲティ、チーズ、Petit Chablis Billaud Simon 2016


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2020.2.16(日) 明確でも気づかない

目を覚まして枕の下からiPhoneを取り出し見る。時刻は2時台。起きるにはいかにも早すぎる。次に気がつくと、4時がちかくなっている。またまた眠りに落ちれば寝過ごしの恐れがある。よって即、起床して食堂に出る。時刻は4時15分。朝はやはり、これくらいの余裕は欲しい。

ところで「これくらいの余裕は欲しい」と書きながら、その空いた時間を何に使うかといえば、ほとんど何もしない。ことによると僕は、早朝の、何もしない時間を捻出するために規則正しい生活を送っているのかも知れない。

午前、すこし困ったことにつき、昨秋、コンピュータに記録した人に電話を入れる。話し合いは穏やかに進み、心配ごとは、とりあえず解決した。その結果を、本日は3名全員が出社した事務係に伝える。

ささやかなものではあるけれど、解放された気分を感じつつ4階の食堂に上がる。そしてお茶を淹れる。目の前の棚に、これまでその上に封筒が重ねられていたため気づかなかった、昨年に買ったバンコクの案内本が見える。amazonに注文をしたものの、届いてみれば、自分には用の無い本だった。僕は旅先では、ほぼ何もしない。何もしない人間に案内は不要である。それほど明確なことに、僕はなぜ気づかなかったのだろう。


朝飯 豚三枚肉と切り昆布の炒り煮、人参と牛蒡のきんぴら、トマトと南瓜とレタスのサラダ、菜花と小柱の辛子和え、ごぼうのたまり漬、沢庵の油炒め、メシ、大根と若布の味噌汁
昼飯 バターとママレードとブルーベリージャムとらっきょうのたまり漬の焼きバゲット、ヨーグルト
晩飯 トマトとモッツァレラチーズのサラダTIO PEPE刻みキャベツを添えたメンチカツチーズCHATEAU DUCRU BEAUCAILLOU 1982苺のシュークリーム、Old Parr(生)


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2020.2.15(土) お彼岸まで5週間

「こんなに明るくなっても、閉めちゃっていいんでしょうかね」と販売係のササキユータ君に訊かれたのは、記憶は定かではないけれど、10日か2週間ほども前のことだ。明るかろうが何だろうが、ウチは昨年の9月21日から、閉店時間は17時30分と決めた。野球の投手の登板間隔と同じく、このようなことは、決めたからには守らなくてはならない。それに、10日か2週間ほども前といえば2月のはじめで、17時30分の空は、いまだ夜に近かったはずだ。

僕の日程管理に検索をかけてみれば、国道121号線に沿って立つ看板の照明は、10月10日に電源を入れるよう記してある。しかしその電源をいつ切るかについての覚え書きは無い。10月10日といえば、秋彼岸の2週間後。とすれば、看板の電源を落とすのは春彼岸の2週間前、というあたりが順当かも知れない。

日本橋高島屋で2月12日から18日までの7日のあいだ開かれている「老舗名店味紀行」は、今日で中日を越えた。準備日から現場に詰めていたハセガワタツヤ君は本日、ササキユータ君と交代をする。そういう次第にて、15時45分にササキ君を東武日光線の下今市駅までホンダフィットで送る。

閉店直前の17時25分に、外へ出て空の具合を確かめる。看板の照明はやはり、いまだしばらくは、点けておく必要があるだろう。


朝飯 蕗と姫竹とグリーンピースの炊き合わせ、菠薐草のソテー、厚揚げ豆腐の網焼き、豚三枚肉と切り昆布の炒り煮、こんにゃくの煮つけ、ごぼうのたまり漬、メシ、菜花と茎若布の味噌汁
昼飯 バターとブルーベリージャムとらっきょうたまり漬のトースト、ヨーグルト
晩飯 春雨サラダ、なめこのたまり炊によるなめこおろし、河豚の唐揚げ、ごぼうのたまり漬、麦焼酎「安心院蔵」(お湯割り)、「岡埜栄泉」の大福、TIO PEPE


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2020.2.14(金) タクシーでシンガポールへ行く話

警察の催しにオヤジと出かけて、町内の自動車整備工場「エガワ自動車」の脇まで戻ってくる。今日の移動手段はタクシー。オヤジはこのまま宇都宮へ行くという。それなら渡りに船だ。僕は夕刻の便で香港へ行く。宇都宮からは、羽田空港までのバスが出ている。

タクシーの運転手が、宇都宮へ向かう旨を会社に無線で知らせる。ところがタクシー会社の社長はそれを許さない。これほど陽気の良い日に宇都宮まで足を延ばすとは、ピクニックあるいはドライブで、それは仕事ではなく遊びだ、と言い張っているらしい。おかしな理屈もあるものだ。僕は怒り心頭に発し、その社長に電話を入れようとするが、うまく繋がらない。

事を荒立てる必要はない、運転は自分ですればいいのだと、オヤジはタクシーの運転席に着く。僕はスーツケースをトランクに収め、助手席のドアを開く。運転は自分でしながらタクシー料金は払うということに、僕はいまだ、釈然としない気持ちをかかえている。

タクシーはやがて宇都宮の街に達する。そこで小休止のため喫茶店に入る。強い日差しを避けるため、店のひさしは低い。薄暗く古ぼけた店の、簡素なテーブルに着く。客は白人ばかりだ。テーブルの真ん中には大きなガラス瓶があって、中にはバゲットが立ててある。左手ふたり目の女の人が、1本だけ残っていたそれをそこから取り出す。左隣の男の人は、そのバゲットに太く長いソーセージを挟み込んだ、巨大なホットドッグ状のものを食べている。

場所は、数十年前のシンガポールだった。喫茶店のオバサンが僕に近づいてくる。僕は熱いお茶を、なぜかタイ語で注文した。

眠りと覚醒の境界が薄れていく。枕の下でiPhoneが鳴る。時刻は5時。そこで、今日は製造現場に早朝の仕事のあったことに気づく。そして着替えて食堂に出て、先ずは湯沸かしの電源を入れる。


朝飯 鮭の焼き漬け、細切り人参の炒り煮、豚三枚肉と切り昆布の炒り煮、筑前煮、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐とクレソンの味噌汁
昼飯 バターとブルーベリージャムとらっきょうのたまり漬のトースト、ヨーグルト
晩飯 トマトとクレソンとマカロニのサラダ刻みキャベツを添えた牡蠣フライと鶏の唐揚げPetit Chablis Billaud Simon 2016チョコレート、Old Parr(生)


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2020.2.13(木) あの時代の旅行

「私は来年五月までニ渡米、南米からロオマのオリンピツクなどと考へて居ますがどうなりますやら」とは、昭和34年、つまり1959年10月13日の日付を記した、川端康成から三島由紀夫への手紙の一部だ。このとき川端は60歳。

今、1960年のローマオリンピックについて調べてみれば、開会式は8月25日とある。大作家の旅行なら、行く先々に案内役がいて、世話をしてくれることは間違いない。それにしても、5月にアメリカに入って南米に下り、そこから大西洋を横断して8月にイタリアとは大旅行で、川端はよほど体力に自信があったとみえる。

新潮文庫の「川端康成・三島由紀夫往復書簡」の巻末にある川端の年譜の、1960年には「五月、アメリカ国務省の招きで渡米。続けて七月に、ブラジルのサンパウロで開催された国際ペンクラブ大会に、ゲスト・オブ・オナーとして出席し、八月帰国」とある。川端は、本当に行ったのだ。

日本が海外への渡航を自由化したのは1964年。その4年前であれば、行く先々での不便は想像してあまりある。しかし逆に、面白いことも多々あったに違いない。同文庫の三島の年譜に目を移してみれば、こちらもまた、一旦海外に出れば、その旅程は数ヶ月に及ぶ。滅多に得られない機会ゆえ、それを最大限までしゃぶり尽くそうとしたのだろう。

「あの時代に小型のビデオカメラがあって、動画と音声が残されていたらなぁ」と、つくずく思う。川端や三島のそれに、ではない、あの時代の旅行というものに、興味があるのだ。


朝飯 蕗と姫竹の炊き合わせ、生玉子、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、牡蠣飯、菜花の味噌汁
昼飯 バターとブルーベリージャムとらっきょうのたまり漬のトースト、チーズ入りパン、ヨーグルト
晩飯 トマトとクレソンとマカロニのサラダハムエッグPetit Chablis Billaud Simon 2016蓮根餅、TIO PEPE、チーズ、Old Parr(生)


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2020.2.12(水) 隠居の厨房

3月下旬に開業する、朝食に特化した「汁飯香の店 隠居うわさわ」に、今日は厨房器具が設置をされる。企画担当の長男および調理担当の家内は日本橋高島屋へ出張中のため、現場監督は僕に託された。

昼食を早めに済ませて事務室で業者を待つ。13時に冷蔵庫が運ばれてくる。「職人さんは…」と、運転手が言う。「職人さんと言われても…」と困惑しているところに厨房機器の会社「タニコー」のトラック2台が到着をする。「なるほど職人さんとは彼らのことだったか」と、先ずは3人を隠居に案内する。

現場にもっとも近い駐車場を教え、隠居にトラックを後退で入れられる戸を開く。彼らはすぐに要領をのみこみ、次の行動に移った。そのうち厨房を設計した「リビングカマトク」のアキザワマサアキさんも到着する。

家庭用のそれよりはるかに大きな冷蔵庫やガス台や調理台が、果たして築150年の伝統家屋の、狭い隙間を縫って奥まで入れられるものだろうか。しかしさすがは本職、4時間と少々という時間は要したものの、すべては真新しい厨房に隙無く収まった。

一方、僕はその4時間と少々のあいだに家屋の内外をくまなく回り、これから解決すべきこと30件弱を箇条書きにした。試験操業は、1ヶ月の後に迫っている。


朝飯 茹でたブロッコリー、鮭の焼き漬け、豚三枚肉と切り昆布の炒り煮、細切り人参の炒り煮、沢庵の油炒め、ふきのたまり漬、メシ、若布と菠薐草の味噌汁
昼飯 バターとらっきょうのたまり漬とブルーベリーのジャムのトースト、ヨーグルト
晩飯 生のトマト、白菜漬け、Petit Chablis Billaud Simon 2016、ハッシュドビーフのソースをかけたスパゲティCHATEAU DUCRU BEAUCAILLOU 1982チーズ、TIO PEPE


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2020.2.11(火) 心ゆたかに

2月12日から18日までの7日のあいだ、日本橋高島屋で「老舗名店味紀行」という催しがある。場所は本館の地下1階。上澤梅太郎商店は、ここに参加をさせていただく。

準備は先月から怠りなく進められた。そして本日できたての品を載せて、長男と販売係のハセガワタツヤ君は14時に、使い初めのトヨタハイエースで会社を出発した。ハセガワ君は土曜日まで現場に詰め、日曜日からは代わってササキユータ君が売場に立つ。家内は昨年から東京に泊まり込むことを止め、日光と日本橋のあいだを通勤することになった。

これから8日か9日のあいだは、僕は夕食はひとりで摂る。暖冬とはいえ2月であれば、夜に外へ出る気はしない。出来の良し悪しは別として、自炊は一向に苦にならない。残り物や自作のあれこれに、ワインか焼酎さえあれば、心ゆたかに過ごせるというものだ。

終業後、ひと気のない製造現場に、明早朝に使う白衣や帽子やマスクを運ぶ。それから4階へ上がって湯船にお湯を溜める。タイマーは14分。そしていそいそと、夕食の準備に取りかかる。


朝飯 豚三枚肉と切り昆布の炒り煮、菠薐草のおひたし、厚揚げ豆腐の網焼き、細切り人参の炒り煮、鮭の焼き漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、大根と大根の葉の茎の味噌汁
昼飯 玉葱と若布のうどん
晩飯 トマトのサラダおとといの夜に残った鶏肉とマカロニのグラタンPetit Chablis Billaud Simon 2016、チーズ、Old Parr(生)


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2020.2.10(月) 冬の景色

1982年から行きつけだった、住吉町のカトー床屋が昨年、店を閉めた。行きつけの床屋を換えるとは、行きつけの飲み屋を換えるよりも、ことによると難しい。オヤジさんが店を休みがちになった最後の1、2年から、新橋の大衆床屋をしばしば使うようになった。僕の仕事はほぼ年中無休で、決まった休みは無い。東京まで出てしまえば電話がかかってくることもなく、心も落ちつこうというものだ。

下今市07:45発の上り特急スペーシアに乗る。幾駅か過ぎたところで、すこし後ろの席の老人が、電話で誰かを責め始めた。「自分は4号車が良かったのに、そこは満席と、5号車に回された。しかし乗り込んでみれば、4号車には空席がたくさんあるではないか」と、くどくどと駅に苦情を述べ立てている。列車内での電話による通話は、デッキ部分に限られている。老人は、自分の正義にのみ忠実な人なのだろう。というか、こういう手合いは老人にこそ多い。

10時すぎに大衆床屋へ行く。待ち客は8人。ここできびすを返せば、次の機会は数週間後になるだろう。30分ほども待ってようやく僕の番になる。散髪は、カトー床屋の半分以下の、40分ほどで完了。そこから有楽町、銀座、日本橋と経由をして、夕刻に北千住に至る。それらいずれの場所でも空は晴れ上がり、太陽の光は建物や人に直射して、目に見えるすべてを平板にしている。とても美しい、冬の景色だ。


朝飯 豚三枚肉と切り昆布の炒り煮、納豆、なめこのたまり炊によるフワトロ玉子、細切り人参の炒り煮、茹でたブロッコリー、ごぼうのたまり漬、沢庵の油炒め、メシ、菜花の味噌汁
晩飯 「天七分店」のあれやこれや、他あれこれ、チューハイ、それを濃くするための「ナカ」、日本酒(燗)


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上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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