2024.3.13(水) 靴下とピカソ
このところ毎日のように、靴下に穴が開く。日中、たとえば右の靴下から親指が顔を出していれば、左右を履き替えて夜まで凌ぐ。穴の開いた靴下は入浴の前に捨てる。するともう片方が残る。箪笥の引き出しには同じようにして残った片方があるから、それと組み合わせればふたたび左右が揃う。そうして減り続けた靴下が、今日は遂に残り一足になった。
靴下はユニクロの、3足1,000円の黒い色ばかりを一度にふた組、つまり6足を買う。一足のみになった現在のそれはいつから使っているものか。小遣い帳のファイルを検索すると、それは2022年7月14日に買っていた。つまりユニクロの靴下は、僕の使い方では1年と8ヶ月は保つ、ということだ。次の6足は今月の1日に既にして買ってある。つまり在庫は充分である。
書き溜めた日記も在庫なら、預金の残高も在庫と僕は考える。在庫は心に余裕を持たせてくれる。もっとも適正在庫という言葉もあって、どうやら多すぎてもいけないらしい。
今朝の日本経済新聞第40面の「画家の自画像十選」は「青の時代」のピカソのものだった。記事によれば、ピカソは20代の若さで成功し、死ぬまでお金には苦労をしなかった。したがって気に入った作品は売らず手元に残し、その在庫は膨大な数に上った。遺族はそれらを相続税の代わりに物納した。「国立ピカソ美術館」は、それを以て設立をされたという。パリはいささか遠いけれど、ちと観てみたい気はする。
朝飯 「つじむら農園」の長葱「一翠太」の網焼き、納豆、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、牛蒡と人参のきんぴら、蕪と胡瓜のぬか漬け、大根と香り野菜の醤油漬け、なめこのたまり炊、メシ、けんちん汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 紅白なます、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、煮奴のそぼろ餡かけ、大根と香り野菜の醤油漬け、「つじむら農園」の長葱「一翠太」と牛肉のすき焼き風、「黒龍酒造」の「九頭龍燗たのし」(燗)
2024.3.12(火) 赤ペンで
月末にしなければならいことを、昨月はし忘れた。以前にもおなじことがあって、そのときは関係する方面に問い合わせた。「すぐに処理をすれば問題なし」と言われて、その通りにした。過ちを繰り返してはいけない。事務机の左手に提げたカレンダーには、今月から12月までの月末部分に赤ペンで注意書きをしよう。
納税専用の預金通帳を開く。残高は数ヶ月は保つものだった。ということは、数ヶ月後には枯渇をする、ということだ。こちらについては今月の下旬にも、他の口座からお金を移しておくことにしよう。
おとといの日記に書いた、宋胡録の窯跡群から北に1.5キロメートルのモーテルについては、バンコクに住む同級生のコモトリケー君に電話で問い合わせてもらった。クルマで来てクルマで帰る素泊まり客の専用で、食堂は備えず、ちかくにも食堂は無いとのことだった。その返事を受けて即、シーサッチャナーライの宿は、窯跡群から南に7キロメートルのコテージに決める。コテージと窯跡のあいだは自転車で往復をするつもりである。
問題は、スコータイの空港からそのコテージまでの、30キロメートルほどの移動の手段だ。往きは昼の行動だから、心配は少ない。帰りは空港に朝の8時には着いていたい。とすれば7時には宿を出たいところではあるけれど、足は確保できるだろうか。まぁ、何とかなるだろう。というか、何とかしなくてはならない。居残りは御免である。
朝飯 菜の花のおひたし、牛蒡と人参のきんぴら、納豆、トマトのソテーを添えた目玉焼き、大根と香り野菜の醤油漬け、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、けんちん汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 3種のパン、生のトマトと茹でたブロッコリーとベビーリーフのサラダを添えたマカロニグラタンとキッシュ、Chablis Billaud Simon 2018
2024.3.11(月) 梅と桜
起きて服を着て、寝室から洗面所に移動する。うがい薬などを載せた棚の時計は2時42分を指していた。食堂に来てお湯を沸かしつつコンピュータを起動する。「ぐるなび」を経由して「汁飯香の店 隠居うわさわ」に予約が入っている。
「汁飯香の店 隠居うわさわ」の予約は「ぐるなび」をはじめ、隠居への電話、上澤梅太郎商店への電話、更には家族個人への口頭やメッセンジャーを通じてもいただく。それらが集約されているのは事務室の壁に貼られた予約表だ。「ぐるなび」に空席があったとしても、油断はならない。
今朝はそれほど寒くないから上着は着ないまま1階の事務室へ降りる。壁の予約表を外して4階の食堂に戻る。そしてそれを確かめた上で即、お客様には予約を承った旨のご返事をお送りする。
月曜日には、直近1週間の売上金を銀行に入れる。その額が徐々に上がってきた。気温も同時に上がっていってくれれば有り難い。
「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」と言われるものの、隠居の庭では桜も梅も、しばらく前に剪定を受けた。梅の枝の一部はいま、店の大壺に投げ込まれている。その白梅が空気調整器からの温風のせいか、随分と開いてきた。
「這えば立て、立てば歩めの親心」とおなじく、次は桜に期待をしてしまう。桜はやはり、昨年より早く咲くだろうか。
朝飯 蓮根のきんぴら、ブロッコリーのソテーとスクランブルドエッグ、納豆、細切り人参の炒り煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、菠薐草と長葱の味噌汁
昼飯 「やぶ定」のカレー南蛮蕎麦
晩飯 2種のパン、生ハムのムース、ブロッコリーと「つじむら農園」の長葱「一翠太」と豚肉のソテー、Chablis Billaud Simon 2018
2024.3.10(日) 出かけるまでが
ハワイの高層ホテルのベランダから海を望む画像と共に「計画の半分もこなせていない」と、SNSで嘆いた人がいる。知らない仲ではないから「旅の計画は、3分の1が達成できれば上出来らしいですよ」と、僕はコメントを寄せた。人はなぜ旅にあれこれを詰め込むのだろう。日常を離れながら、なぜ、なお忙しさを求めるのだろう。
1週間の家族旅行でかならず2ヶ国を回る人がいる。理由を質したところ「できるだけあちらこちらに行きたいから」とのことだった。国をまたぐだけで丸一日が消える。その1日を勿体ないとは考えないのだろうか。
6月3日から6日まではスコータイのシーサッチャナーライにいる。目的は宋胡録の窯跡群の散策。前回は2019年3月の訪問で、このときはサワンカロークに住む勉強仲間キモトタカヨシさんに改造三輪車サムローの運転手レームさんを紹介してもらった。今回は諸般の事情によりサムローは頼めない。だったら目的地のできるだけ近くに滞在し、できるだけ微視的に行動したい。
問題は、窯跡群の座標を前回は特定しなかったことで、ここ数日は、その場所を探し続けていた。そして本日ようよう、Googleマップの衛星写真を拡大しながら見つけることができた。ここまでくれば、宿も決められる。候補はふたつ。1軒は窯跡群の7キロメートル南にあって、食堂も供え、貸し自転車もあるらしい。インターネットでも予約ができる。もうひつとつは窯跡群の北1.5メートルと近いものの、Googleの画像によればモーテルのような建物で、予約の方法もおぼつかない。
とにかく旅は、出かけるまでが一番、とは言わないものの、楽しい。それがこれから3ヶ月も続くのだ。前回はトリッペンの革靴を泥だらけにした。今回は、捨てても惜しくない靴を持つことにしよう。
朝飯 蓮根のきんぴら、納豆、生玉子、ブロッコリーのソテー、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、沢庵、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 大根と香り野菜の醤油漬け、菠薐草の胡麻和え、細切り人参の炒り煮、和風ハンバーグステーキ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、なめこのたまり炊、「黒龍」の「垂れ口純米吟醸」(冷や)
2024.3.9(土) 虫が知らせて
朝、起きて寝室から洗面所を経由して食堂に来る。そのときの寒暖により、現在の外気温を推し量ることができる。それは誰にも共通することなのだろうか。今朝ほどの室温であれば、暖房は足元に温風を送る小さな器具だけで済む。頭寒足熱とは良く言ったものだと思う。
7時40分に事務室のシャッターを上げる。8時の朝礼までは、店の灯りを点けて冷蔵ショーケースの覆いを外すなどのことをしている。今日は7時45分に電話が鳴った。8時30分までは留守番電話による対応になるものの、今朝ばかりは虫が知らせて即座に受話器を取る。相手は果たして今日の「汁飯香の店 隠居うわさわ」での朝食を希望される方だった。
壁の予約票を外して事務机に戻る。9時からの席には幸い空きがあった。それをお伝えすると「良かったー」と、お客様は安堵の声を洩らした。僕は即、そのお客様のお名前と電話番号、来店時刻、人数を記した紙を手に隠居へ急ぐ。そして勝手口から中に入り、厨房の家内にそれを手渡す。電話を使わないのは、準備の手を止めさせないための配慮である。
9時25分に鳴った電話は隠居からのもので、食後のいちごが足りなくなったという。そういう次第にて10時を回ったところで道の駅「日光街道ニコニコ本陣」へ行き、指定された品種のそれを買ってすぐに戻る。
「汁飯香の店 隠居うわさわ」の予約表を、あらためて確かめる。来週の日曜日は満席をいただいている。当日の室礼は考えてある。床脇には小さく地味なものを置こうと思う。
朝飯 蓮根のきんぴら、日光味噌「ひしお」の肉味噌、ブロッコリーのソテー、鮭の焼きほぐし、沢庵、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、トマトと菠薐草の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 チーズ、沢庵、SMIRNOFF VODKA、トマトとグリーンアスパラガスとマッシュルームのスパゲティ、Chablis Billaud Simon 2018
2024.3.8(金) 浅い地下鉄
前日の終業後に自宅へ持ち帰ったコンピュータは、翌早朝にはバッテリーで動かす。しかし今朝ばかりはACコードをコンセントに繋いだ。今日は東京でコンピュータを使うため、バッテリーの容量は温存したいのだ。窓の外には深夜に降ったらしい雪が薄く積もっている。「止んで良かった」と胸をなでおろしたところにふたたび白いものがちらついてくる。
スマートフォンの天気予報は、東京でも雪の降る可能性を伝えている。朝食の後、それまで履いていた靴下を厚いものに替える。靴は何十年も前に買って、しかし手入れは欠かしていないレッドウイングのアイリッシュセッターを下駄箱から出す。まったく厄介なことである。
デザイナーから指定された場所は兜町で、仕事の開始は11時。東武日光線のダイヤの都合上、1時間ほど前に茅場町に着く。コーヒーでも飲んで時間を調整しようと考えて、昭和通りまで出る。すると緑青を吹いた馴染みのある屋根が道の向こうに見えたから「なんだ、目と鼻の先は高島屋だったか」と意外に感じた。
話し合いは2時間と少々にて完了した。のんびりしていられない仕事にて、僕は来週も、この場所まで来ることとなった。
朝食を多めに摂っていたお陰で、午後になっても空腹は覚えない。日本橋から銀座線を外苑前まで乗る。2008年に買ったトリッペンのかかとは一度、修理をしている。その直したところが残り1ミリメートルほどのところまで減ったため、ふたたび修理に出す。原宿店とはいえワタリウム美術館の先を左に入ったところだから、原宿という感じはしない。
ふたたび銀座線にて今度は新橋を目指す。車内で時間を確かめると14時36分だった。新橋では散髪、神田では皮膚科と、今日の用事はすべて銀座線の沿線で済んで、移動はとても楽だ。末広町に会社を持つ人が「他の地下鉄は深くていけねぇ」と言ったけれど、おっしゃる通りである。
皮膚科を出ると夕刻がちかかったため、飲酒活動に移る。そして浅草18:19発の下り特急に乗る。
朝飯 日光味噌「ひしお」の肉味噌、鮭の漬け焼き、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、納豆、沢庵、なめこのたまり炊、ごぼうのたまり漬、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、豆腐と菠薐草の味噌汁
晩飯 「のんき神田店」のお通しのキャベツ、冷やしトマト、もつ焼きあれや、これや、それや、他あれこれ、のんきボール、それを濃くするための「ナカ」
2024.3.7(木) 航空券の購入
先日、羽田とスコータイを往復する航空券を馴染みの旅行社にメールで注文した。数日を経ても返信がないため、きのう電話を入れてみた。PDFによる書類は間もなく届いた。料金の内訳は以下の通りだった。
海外航空運賃 72,500円
羽田空港施設使用料(税込) 3,050円
国際観光旅客税 1,000円
燃料サーチャージ 34,610円
現地空港税 4,360円
海外航空券発券手数料(税込) 5,770円
計 121,290円。
ちなみに代金は今日の午前にスマートフォンを使って振り込んだ。
羽田を0時20分に発つ深夜便が6時間30分を飛んでバンコクに着くのは現地時間の4時50分。スコータイへ向かう国内線の出発時刻は7時ちょうど。昨年春のハジャイとは異なって、スコータイへの乗り継ぎはタイへ一旦、入国をする必要がある。荷物は到着階の3階で回転台から拾い上げ、出発階の4階でふたたたび預け直さなければならない。羽田からの便が定時に着いたとしても、スワンナプーム空港での余裕は130分。結構な綱渡りにて、両替の時間は確保できない可能性が高い。
朝飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、納豆、牛蒡と人参のきんぴら、梅の実ひじき、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、菠薐草と椎茸の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 蓮根と牛蒡と人参のきんぴら、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、煮奴のそぼろ餡かけ、鮭の漬け焼き、沢庵、メシ、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)
2024.3.6(水) また、雪
暑さ寒さも彼岸まで。その春分の日までは残すところ2週間。昨年までの厳冬期には、仕事着のもっとも外側にはモンベルのダウンベストを着た。それを今年からは同社のU.L.サーマラップジャケットに替えた。体重が減ったことによるものかどうかは不明ながら、寒さをより強く感じるようになった。もっともズボン下は穿かない、いうところは以前と変わらない。
きのうの夕刻からの雨は、数時間を経て雪に変わった。今朝4時すぎに外を見ると、雪は雨に戻っていた。雪が厚く積もらずに助かった。それでも予報によれば、しばらくは寒い日が続くという。
オバサン、あるいはオバーサンといった齢の人と時候の挨拶を交わすことがある。彼女たちの多くは夏の暑さより冬の寒さの方がマシだと言う。「重ね着をすれば凌げるから」と彼女たちは言う、僕はその重ね着が嫌いなのだ。しかしとにかく彼岸までは、冬物はクリーニングには出せない。彼岸を過ぎてもしばらくは、ぬか喜びはしない方が無難だと思う。
朝飯 目玉焼き、納豆、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、牛蒡の人参のきんぴら、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、けんちん汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 菠薐草のナムル風、沢庵、豆腐と椎茸の中華風煮込み、木須肉、日光味噌「ひしお」の肉味噌、メシ、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)
2024.3.5(火) 健康診断
8時に始業する会社に社員を招じ入れるため、7時40分に事務室のシャッターを上げる。真っ先に入ってきたのは製造部長のマキシマトモカズ君でもなければ包装主任のヤマダカオリさんでもなく、医療法人北斗会の事務の人だった。外には既にして、エックス線撮影のためのバスも駐まっている。
10名を超える白衣の人たちのうち、初めての方々を「身長と体重の測定は、こちら」などと、社内の決まった場所に案内する。朝礼はいつも通り8時より行う。普段は9時に出勤するパートタイマーの社員も、今日は早めに来る人が多い。検診は間もなく始まった。
社員が事務室に列を成して受付をしているあいだは店にいる。診察を済ませた販売係のサイトーミホコさんとオバタタキコさんと入れ代わるようにして、僕は受付をする。バリウムを使った胃部のエックス線撮影は、昨年ひどい目にあったため、今年は回避することにした。胃カメラは苦にしないから、いずれ個人でその検査を受ければ良いだけのことである。
苦手なのは採血。歯医者では口の中で道路工事まがいのことをされても平気である。痛みは「伊豆高原痛みの専門整体院」の電子ペンのそれが強烈だ。針を刺される痛みなどは、どうということもない。ただ、皮膚の下に青く浮かぶ血管に針を刺されることに、異常なほどの不気味さを感じるのだ。それでも複数の採血管に血液を取る流れでは、硬いパイプではなく、管が自由自在に曲がる翼状針が採用されるようになってから、恐怖は随分と遠のいた。「やれやれ」である。
結果はおおむね3週間後に届くという。きのうはウイスキーのダブルをお湯割りで、続いてTIO PEPEをシェリーグラスではなくワイングラスで2杯、飲んだ。γGTPの値は、どう出るだろう。
朝飯 「セブンイレブン」の2種のおむすび
昼飯 にゅうめん
晩飯 菜花の辛子和え、沢庵、焼き餃子、メシ、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)、餡巻き、Old Parr(生)
2024.3.4(月) かさねとは
自由学園男子部高等科1年の夏休みの最後の日、我々のクラスは上野駅に集まった。担任のヤマグチヒカル先生は北上する東北本線の車内で「おくのほそ道」を、お配りになった。我々の行き先は、学園が所有する那須の農場だった。
同書でもっとも記憶に残る句は「かさねとは八重撫子の名なるべし」だ。これの詠まれた場所が、正に自分の今いる那須だった、ということも、この句を覚えている理由のひとつかも知れない。
夕刻、上澤梅太郎商店書籍部の棚に「おくのほそ道」のあることに気づいた。ドナルド・キーンによる英語の対訳も付いた、講談社学芸文庫のものだった。思わず手に取り「那須」の段を開く。芭蕉の作とばかり思っていた「かさねとは…」は、曽良によるものだった。無知蒙昧も甚だしい。
気を取り直して英文の方も見てみる。その句は
Doubleーthat must be
The name somebody gave to
A double-petalld pink.
と訳されていた。それを目にした瞬間「えっ、かさねは英文でも”Kasane”じゃないの」と非常に疑問を感じた。しかしドナルド・キーンの訳文に疑義を差し挟むなどは、天に唾をする行いである。ここは大人しく引き下がっておくことにしよう。当たり前の話である。
朝飯 牛肉と椎茸のすき焼き風、ブロッコリーのソテー、梅ひじき、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布とキャベツの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 「コスモス」のトマトとモッツァレラチーズのサラダ、チーズオムレツのカレーライス、Old Parr(お湯割り)、TIO PEPE