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お買い物かご

清閑 PERSONAL DIARY

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2025.2.10(月) 冬の底

長男は日本橋高島屋S.C.での「冬の味覚市」に出張中。嫁のモモ君は3人の子供のうち下のふたりの見守り。家内は膝を痛めている。そういう次第にて、小学2年生のリコを先週に引き続いて、登校班の集合場所へ送る。そこへ行くまでの、春日町交差点の2本の横断歩道を渡っているときには常に、長男や次男が子供だったころのことを思い出す。

小学生にとっての1年生から6年生までの6年間は、とても長い。しかし大人になってからの6年間は、あっという間、である。リコも多分、すぐに大きくなってしまうに違いない。

日中、店の花が桜とチューリップからラズベリーとアマリリスにかわった。小さな花びらの桜も悪くはなかったが、桜はやはり、ある程度の大きさで見たい。日光の桜は東京のそれにひと月おくれて咲く。「汁飯香の店 隠居うわさわ」の枝垂れ桜にテレビの取材が入ったのは昨年の4月16日だった。今年の開花はいつごろになるだろう。

春という季節は特に好きでもないけれど、アカギレと着ぶくれの冬よりはマシだ。「病牀の匂袋や淺き春」という子規の句を、稲畑汀子の「ホトトギス季寄せ」に見つける。


朝飯 しもつかり、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、大根と人参とトマトと長葱と油揚げとハムの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 「大昌園」のあれやこれやそれや他あれこれ麦焼酎「田苑シルバー」(オンザロックス)


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2025.2.9(日) 雪のその後

雪は止んだ。空は晴れた。家内を隠居に送る早朝の歩道は、きのうよりよほど明るかった。二十数時間ほども降り続いた雪は、上空の気温がよほど低かったのだろう、歩くたびキシキシと音を発した。地中の不凍栓を開くには、先ず地面と同じ高さのフタを開ける必要がある。そのフタが雪により凍りついて、鉄の棒でこじってもびくとしない。勝手口に戻って湯を沸かすよう家内に頼み、その熱湯でどうにか氷を溶かす。

8時の朝礼の後、配達係のイザワコーイチさんが道の駅「日光街道ニコニコ本陣」へ納品に出かける前に、ホンダフィットの窓に積もった雪を、給湯室の洗面器に溜めたお湯で溶かす。電気もガスも水道も、まったくもって有り難い。

開店の準備をしながら外に目を遣ると、事務係のカワタユキさんと研究開発係のマキシマアキコさんが雪かきを始めていた。社員全員で取りかかるかかるほどの雪の量ではないものの、これまた有り難い。

その雪かきのお陰と太陽の光により、9時になるころには、駐車場のあらかたには黒いアスファルトが見えてきた。スマートフォンの天気予報は、明日からの1週間の、ほとんどの日が晴れることを伝えている。台風一過と雪の後の快晴は、日本の天気のひとつの頂点のような気がする。

11時前に蔵見学をご希望になったお客様お二人には、外が寒いことから、先ずは店のお茶飲み場で上澤梅太郎商店の歴史についてお話しをさせていただく。次いで隠居、そして蔵の中にご案内をする。隠居でお食事をなさったお客様、また蔵見学をなさったお客様は、一般のお客様とは異なった商品をお買い求めになる傾向がある。それは「たまり漬」というものを、より深く知ることがおできになったためだろう。

日本橋高島屋S.C.で先週の水曜日から開かれている「冬の味覚市」に出張中の長男からは、初日から好成績が伝えられている。最終日が建国記念の祝日であれば、蔵から現場に送る商品の数量も、いつもとは異なってくるはずだ。できるだけ多くのお客様に、ご希望の品物を、お手渡ししたいと思う。


朝飯 しもつかり、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、大根と人参とトマトと長葱とハムの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 めかぶの酢の物、しもつかり、菠薐草の胡麻和え、揚げ春巻き、らっきょうのたまり漬、おでん、「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(燗)


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2025.2.8(土) 雪

九州から北海道まで大雪のニュースである。僕の住む日光市今市地区の中心部は、天気予報の地図では大抵、雪が積もるか積もらないかの境界線上に位置している。だから雪が降るか降らないか、積もるか積もらないかについては、そのときになってみなければ分からない。

早朝、シュークリームの上の粉砂糖ほどの雪の道を歩いて家内を隠居へ送る。「雪も、このくらいで収まってくれれば良いなぁ」と切に願う。スマートフォンの天気予報には、雪は9時に止み、午後からは晴れとある。

8時の朝礼を済ませ、道の駅「日光街道ニコニコ本陣」への配達から戻って開店の準備にかかる。8時20分に白いSUVが店の駐車場に入ってくる。僕は8時30分の定時より前に店を開け、クルマの中でお待ちのお二人に、もうお入りになれることをお伝えする。

お二人は案に相違して店の前を素通りされて「汁飯香の店 隠居うわさわ」の方へと向かわれた。「さて、今朝は8時30分にお二人のご予約は入っていなかったはずだが」と、その後ろ姿を見送る。

数分後、お二人は雪の中を戻っていらっしゃった。満席により、お入りになれなかったのだ。僕はお二人に「らっきょうのたまり漬」の試食をお渡しし、奧でお茶をお飲みになるよう促す。

今日の「汁飯香の店 隠居うわさわ」はご予約により、きのう満席になった。つまり2日前までにお電話をいただいていれば、お二人は暖かい座敷から庭の雪景色を眺めつつ、温かい朝食をお楽しみになれたのだ。僕は、たとえ街の焼き肉屋でも洋食屋でも、かならず予約をしてから行く。「汁飯香の店 隠居うわさわ」へ予約なしでいらっしゃる方は「満席だったらどうしよう」とか「臨時休業だったらどうしよう」などとは、お考えにならないのだろうか。

県外からいらっしゃったというお二人には、他に朝食の摂れる店について訊かれたものの、いまだ8時40分であれば、ファミリーレストランも開いていない。最寄りのコンビニエンスストアをお教えし、イートインコーナーのあることを添える。

前述のように、朝のスマートフォンは9時に雪の止むことを予報していた。しかし9時になると、雪が止むのは12時と、その時間を遅らせた。正午のスマートフォンは、雪が止むのは16時と、またまたその時間を変えた。次の予報では、雪の止む時間は18時になっていた。そしてその18時を過ぎても雪は降り続いている。降る量の多くないことだけが、助けである。


朝飯 しもつかり、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、大根と人参とトマトとピーマンとウインナーソーセージの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 しもつかり、沢庵、「鈴木酒造」の「龍蟠純米吟醸」(冷や)、おでん「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(燗)


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2025.2.7(金) fabbrica collaboratori

先日、予期せず僕宛に荷物が届いた。荷札の品名にはワインとあった。箱を開けるとビンはブルゴーニュ型で、しかし産地はイタリアだった。その首にはサングラスをかけたエンツォ・フェラーリのおなじみの写真を表紙にした小さな冊子が提げられていた。「親方」はこの赤ワインをこよなく愛し、親しい人への贈りものとしても使っていたという。

即、お礼のメールを荷物の差出人に送った。ランブルスコの農園をたびたび訪れた「親方」は、このワインを飲みつつ、ひと丘を越えたところにあるフェラーリ所有のフィオラーノテストコースから聞こえてくるフェラーリの音を聞いていたと、その方からの返信にはあった。

とても小さなアルファベットだったから読み飛ばしていたものの、その冊子には「親方」の90歳、つまり最後の誕生日に振る舞われた料理のメニュも載っているとのことで、先ずはそれをiPhoneのカメラで撮り、コンピュータに移して拡大してみた。

……
Aperitivo Formula 1
Antipasto di prosciutto,salame.ciccioli,mortadella,
cipalline della nonna con dnocco ingrassato

Tortellini Cavallino alla pannna

Lasagne alla Cardinale

Zampone di Modena con fagioloni

Nodino di vitello con pure e verdure al forno

Torta del compleanno

Caffe

Bianco Malvasia
Lambrusco Ca Berti
Riesling Spumante Martini
……
Colazione in fabbrica collaboratori
della Ferrari S.p.A
per il 90°compleannno di Enzo Ferrari
Maranello 18 febbraio 1988
……
“fabbrica collaboratori”とは、1,740名の社員だという。「流石は親方」のひと言である。


朝飯 スクランブルドエッグ、納豆、菠薐草の胡麻和え、しもつかり、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と長葱の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 じゃがいもと人参の細切り炒めと焼いたズッキーニとたまり漬によるソースを添えたビーフステーキrindo 2006


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2025.2.6(木) 初午

本日は初午にて、家内はおとといからしもつかり、きのうの夜からは赤飯を仕込んだ。しもつかりは鮭の頭、鬼おろしでおろした大根と人参、節分の日に残しておいた豆をひたすら煮て、酒粕で味を調える関東北部の郷土食である。ウチでは「しもつかり」だが、一般には「しもつかれ」と呼ばれることが圧倒的に多い。

「しもつかり」は、僕個人の見解としては、海を持たない地方の食生活の貧しさを凝縮したような食べもので、見た目も悪い。その、まるで猫の吐瀉物のような見た目から、僕は27歳のときまで食わず嫌いを通していた。それを開眼させてくれたのは「並木蕎麦」の、今は亡きアオキウイチさんだった。

「こういうものを食わないから身体が弱いんだ」と、ふた月に1度は高熱を発して寝込んでいた僕に、アオキさんはこの気味の悪い食べものを強要した。こんなものが滋養強壮の役に立つわけはないとは思いつつ、しかし父親と同じ歳の人にそこまで言われれば断れない。恐る恐る口に運んだそれは意外や美味かった。以降、冬という季節はまったく有り難くないものの、これが食べられる初午のころだけは、何やら待ち遠しくなった。

しもつかりは家の中で最も寒いところに置いて、冷やして食べると美味い。朝はごはんのおかずになり、夜は酒の肴になる。

今朝はこれを、家内と孫のリコが稲荷社に供えてくれた。僕はセブンイレブンへ行き、カップ酒を売る棚の前に立った。ワンカップ大関にミニサイズのあることは、今回はじめて知った。形ばかりのものであれば100ミリリットルの「ミニ」でも良いのではないかという考えが一瞬、浮かんだものの、これまた瞬時にそれを否定して普通の1合瓶を買う。そして会社に戻り、栓を開けて稲荷社の、しもつかりと赤飯に並べて置く。

夜はようよう、人のためのしもつかりが小鉢に盛られた。それを肴にして冷えた日本酒をゆっくりと飲む。


朝飯 揚げ湯波の甘辛煮、菠薐草のソテーを添えたベーコンエッグ、里芋の淡味炊き、納豆、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と若布と長葱の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 しもつかり、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、なめこのたまり炊、刻みキャベツと生のトマトを添えたコロッケ赤飯、「鈴木酒造」の「龍蟠純米吟醸」(冷や)


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2025.2.5(水) できるだけ長く

「汁飯香の店 隠居うわさわ」の朝ごはんを紹介する本を、店のお茶飲み場に開いて置いている。先般、これをご覧になったお客様が「味噌汁、漬物、こんなに食べて大丈夫ですか? 私の叔父はこんなものが好きで、早くに亡くなったものですから」とおっしゃるので「食べなければ良いと思います」と、お答えをした。そうしたところ、日光味噌の粒みそを1キログラム、らっきょうのたまり漬を1袋、それに土井善晴の「一汁一菜でよいという提案」を買ってくださった。商売は、いつになっても苦手である。

商売は苦手でも、会社は維持していかなくてはならない。そのすべは子供のころからの経験により、自然と身についたものだろう。

5月17日と18日の2日間にバンコクMGが開催されることを、先月の日光MGに広島から参加してくださったタナカタカシさんから教えられた。ゴールデンウイークと夏の贈答の季節の狭間であれば、時間は割ける。そして本日はそれに参加することを正式に、現場では講師となるタナカさんに伝えた。

僕の考えた日程は、5月11日の夜に羽田空港へ行き、12日発の深夜便に乗る。月曜日から金曜日までの滞在先を田舎にするか、あるいは首都にするかは、いまだ決めていない。バンコクMGの会場は以前のトンローからアソークに移ったという。アソークは地下鉄MRTと高架鉄道BTSの交差する便利な場所で活気がある。ただし頭上に高架鉄道が走るから空は狭い。だったらホテルはどこに選ぶべきか。こういう迷っている時間が楽しいのだ。

ところで冒頭に戻れば、僕のおばあちゃんは「こんなもの」を食べて102歳まで生きた。僕もできるだけ健康寿命を保ち、できるだけ長く遊べることを望んでいる。


朝飯 菠薐草のおひたし、スクランブルドエッグ、納豆、揚げ湯波の甘辛煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布と万能葱の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 パン焼いたブロッコリーを添えた鶏もも肉のトマト煮Chablis Billaud Simon 2018、Old Parr(生)


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2025.2.4(火) 立春をすぎても

文章が書けていても最上部に置く画像が無くては日記を更新できない。雪や曇りの日が数日続いて、しかし今朝は晴れた。その明け方の空を撮るべく屋上へ上がる。階段室のいちばん上の踊り場にはおばあちゃんの草履が置いてある。それを履いてドアを開け、屋上に一歩を踏み出そうとして、降りた霜の凍っていることに気づく。うっかり転んで骨でも折ってはシャレにならない。以降は慎重に歩を進めて南東の空をiPhoneに納める。

きのうは立春だった。しかし旧暦では1月7日だから、いまだ温かくなるはずもない。家の中は、人のいる部屋こそ暖かいものの、それ以外のところは寒い。つまり快適ではない。

そういう冬にも良いところはあって、空気が澄んでいることによるのか、空が綺麗だ。もうひとつは、空にくらべれば極めて細かいことだが、仏壇の花が長く保つ。夏の花はせいぜい4日ほどしか保たない。しかし現在の白菊は昨年末に、正月のための花と共に買ったものだという。とすれば既にしてひと月以上も命脈を保っているわけで、驚く他はない。

とはいえまぁ、春にはできるだけ早く来てもらいたいと思う。


朝飯 生のトマト、ベーコンエッグ、揚げ湯波の甘辛煮、切り昆布の炒り煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、けんちん汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 かまぼこ、薩摩芋の蜜煮、「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(冷や)、キムチ鍋、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)、ロールケーキ、Old Parr(生)


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2025.2.3(月) まるで踊るようにして

活字中毒にも関わらず、どうにも読めないものはある。先ずはビジネス書。僕にとって本を読むとは遊びである。ビジネス書を読むという行為は仕事に他ならないからできない。

地中海地方を舞台にした小説も、なぜか読めない。ロバート・ゴダードの「蒼穹のかなたへ」は文庫の上下を買って、しかし上巻の数ページから先へは進めなかった。ジョン・ル・カレの「リトル・ドラマー・ガール」は分厚いハードカバーを買って、読めたのは数ページ。ちなみに池田満寿夫の「エーゲ海に捧ぐ」も挫折。どうも地中海地方とは相性が悪い。

もうひとつは幻想小説。稲垣足穂はただの1ページも読めない。しかし内田百閒のその手のもの、たとえば「サラサーテの盤」などは読める。と、ここからは記憶違いかも知れないけれど、僕の頭の中にある情景について書いてみる。

……
サラサーテのレコードをかけながら、ふと長いあいだフタをしたままの古い酒瓶に目が留まった。よく見ると中に蜘蛛がいる。「まさか」と思いつつフタを開けると、その蜘蛛はチゴイネルワイゼンに誘われたかのように、まるで踊るようにして瓶の外に出てきた。
……

さてこの不思議な光景は、百鬼園の「サラサーテの盤」に出てきたものだろうか、それともその小説を原案とした鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」の一場面だったのだろうか。あるいはそれらとはまったく関係のないどこかで僕の脳に擦り込まれた映像なのかも知れない。

夕食後、甘いものを肴にウイスキーを飲もうとしたらそれが枯渇していたため、次の1本を取りに行くべく席を立った。そのときにふと思い出したことが上記である。


朝飯 なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、人参とピーマンと玉葱とウインナーソーセージと溶き卵の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 “THE FLYING-GARDEN”のマッシュルームサラダコンビ「笑顔の名人」カラフの赤ワイン家に帰ってからの「クドウ」の「フロレンツァーミレー」、Old Parr(生)


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2025.2.2(日) 山を降りていく

勢いはそれほどではないものの、雪が降っている。その、いまだ暗い国道121号線沿いの歩道を伝って家内を隠居へ送る。

冬の早朝の「汁飯香の店 隠居うわさわ」は冷え切っていて、畳の上でさえ歩けば足の指先が凍える。開店の8時30分までに部屋を暖めるため、6時過ぎから暖房絨毯の電源を入れ、石油ストーブにも火を入れる。不凍栓は地中にあるから、その開閉には地面に膝と手をつくことになる。家内の脚が良くなるまでは、この手伝いを続けることになるだろう。

朝礼を済ませて後はふたたび隠居へ行き、庭の状態を見る。雪景色をお楽しみになれる点において、今日のお客様は幸運だと思う。以前、やはり雪の日に、その雪に四合瓶を埋めて冷やし、お召し上がりになったお客様がいらっしゃった。池田弥三郎も書いたように、朝のおかずは妙に、日本酒に合うのだ。

ところで今日は節分。数年前までは、僕が二宮神社まで豆を受け取りに行っていた。しかし今は嫁のモモ君と孫たちがその役を担ってくれる。夕刻には彼らが家中、会社中に豆を撒いてくれた

齢を重ねるに連れて、自分のすることが徐々に減っていく。とても楽だ。「禅とは山を降りること」と言った禅僧がいた。寺務所の脇にはチェロキーXJが駐められていたから、いまだ物欲からは解放されていなかったようではあるけれど、なかなか良い言葉だと思う。


朝飯 なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、人参とズッキーニとウインナーソーセージと玉子の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 カビ付きのソーセージ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、”SMIRNOFF VODKA”(お湯割り)、スパゲティナポリタン、Chablis Billaud Simon 2018、「クドウ」の「レーズンクッキー」、Old Parr(生)


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2025.2.1(土) ぱーふぇくとまっち

目を覚ましていつもの場所を手探りしても、iPhoneは無い。多分、きのうの入浴後はそれを卓上に置いた食堂に寄らないまま寝室に入って寝てしまったのだろう。現在の時刻は不明ながら、起きて服を着て洗面所へ行く。低い棚に置いた電波時計には”02:08″の数字があった。SNSなら「カッコ苦笑」である。きのうの夜の、ダブルのウイスキーをお湯で割って3杯、が効いたことは間違いない。

払暁に家内を「汁飯香の店 隠居うわさわ」へ送り、不凍栓を開く。明日は九州から四国、東海から首都圏へ帯状に雪が降ると、テレビの気象予報士は列島の地図上に指示棒を走らせた。週明けからは寒さがぶり返すとも伝えている。不凍栓は今しばらくは、開け閉めを繰り返す必要があるだろう。

9時に植木のカシワギさんが来て、長男と共に隠居の庭を見てまわる。冷蔵庫、とはいえ家庭用のそれではない、人が住めるほどの棟のちかくに育った松の大木を伐ることを、長男にも納得させる。伐るべき木は他にもあって、それが無くなれば寂しくなる。追加で植える木につきカシワギさんに問えば「それは追々」と言うので「そうですね」と答える。

夕刻「なめこのたまり炊」の食べ方を、お客様に訊かれる。ご説明をすると即、それと「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」を買い物カゴに入れてくださった。お顔は勿論のこと服装や持ち物からも日本人とばかり思っていたが、海外の方だった。

「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」には、その使い方を記した紙を添えている。そこに「バツグンです」の文字を見つけて、閉店の間際に店に来た長男に「バツグンじゃぁ、文字の画像翻訳はしてくれねぇんじゃねぇか」と疑問を呈する。長男はその場でiPhoneを取りだし、説明書を撮った。ややあって、日本語の活字はすべて英語に訳された。AIは前後の日本語を勘案したらしく「バツグンです」の部分には”Perfect match”の文字が現れたから「あー、大丈夫だ」と、ふたりして笑う。


朝飯 切り昆布の炒り煮、白菜漬け、生玉子、揚げ湯波の甘辛煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布とズッキーニの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 蒲鉾、赤魚の粕漬け、薩摩芋の甘煮、沢庵、白菜漬け、「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(燗)


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上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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