2022.3.4(金) 団体旅行考(上)
小学校の修学旅行は東京だった。下今市から特別列車で浅草、浅草から隅田川を船で下って浜離宮。その浜離宮の芝生で弁当を食べ、今度はバスで羽田空港へ向かった。浅草へ戻る途中に国会議事堂でも見せようとしたのだろうか、隼町ちかくを通過中、TBSの電波塔に気づいて「あっ、東京タワー」と叫んだ者がいた。
この修学旅行については後日、調査が行われた。いくつかの質問のうち「もっとも楽しかったところ」に、大多数の児童は「行き帰りの電車の中」と答えた。僕の意見もおなじだった。担任だったエダタダシ先生の困惑顔を、今も思い出す。
僕はここで、大人になってからの団体旅行をふたつ、みっつと思い返さないわけにはいかない。町内役員の親睦旅行、業界の親睦旅行、趣味を同じくする仲間の旅行と、道連れは変わっても「もっとも楽しかったところ」は「行き帰りの道中」や「飲み食い」や「夕食後、ひと部屋に集まっての二次会」ではなかったか。そして名所、旧跡、景勝地についての記憶は曖昧である。
とはいえ名所、旧跡、景勝地の見物を目的とした団体旅行は、これからも続くだろう。たとえそれらが大して面白いものでなくても、特に旅行社が募集する団体旅行には、旗印や名目がなければ人は集まらないからだ。
朝飯 揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、三つ葉の玉子とじ、切り昆布の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、菜の花漬け、春子漬け、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 トマトとベビーリーフのサラダ、スパゲティミートソース、チーズ、Nuits Saint Georges Les Hauts Poirets Machard de Gramont 1983、プリン、Old Parr(生)
2022.3.3(木) 好きな仕事
おとといの日記に書いた、タカクコータロー君の調べたところに僕が取捨選択を加えた作業手順書はコンピュータに記録した。その内容を紙に出力したもの、コンピュータ、10キー、メモのための紙、数本のペンを手提げに入れて4階へ上がる。そしてそれらを食堂の丸テーブルに、ある規則を以て配置する。電話が鳴り、いきなり人の来る事務室ではできない仕事もあるのだ。
日本橋高島屋での催し、新宿高島屋での催し、日本橋と新宿での催しが2ヶ月ほどしか間を置いていないとき、あるいは平時ではなく緊急事態宣言下での催しと、催しには様々な時と場合がある。その都度、お知らせをお送りするお客様を特定する方法は異なる。3月30日から4月5日までの、柏高島屋での販売における商圏は、東京でのそれにくらべて広くない。ご案内のお送り先の特定は、これまでにくらべれば隨分とはやく完了した。
さて今日は桃の節句。というわけで、夜は蛤のお吸い物とちらし鮨が食卓に上った。それを前に孫のリコが「うれしいひなまつり」を歌う。それにしても、この歌を耳にするたび「どうしてこれほど寂しい調子の曲を作ったか」と不思議に思う。「今日は楽しいひな祭り」と詞にはあるものの、まったく楽しそうではないではないか。
朝飯 菠薐草の胡麻和え、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、切り昆布の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、春子漬け、メシ、山菜の天ぷらの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 松前漬け、納豆、菜の花漬け、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、春子漬け、蛤の吸い物、ちらし鮨、「天鷹酒造」の「ふるさとの絆大吟醸」(冷や)、ロールケーキ、Old Parr(生)
2022.3.2(水) 買おうか買うまいか
下今市09:33発の上り特急スペーシアが荒川の手前で緊急停止したときには「長引かなければ良いが」と心配をした。何が原因だったかは不明ながら、列車は4分後に動き出した。夜のことを考えれば、昼は食べ過ぎないことが肝要だ。このところ、出先の昼食はトーストとコーヒーにすることが多い。
上出来のハムトーストを作ってくれたマスターに、店を出しなに「これから木馬亭なんです」と告げると「浪曲ですね。で、お目当ては」と訊かれて「奈々福です」と答える。大きなチェーン店を好む人の気持ちは分かる。しかし昔ながらの店にはそれぞれの接客があって、それはそれで心地よい。
出色は奈々福と太福。他にも色々と我が身に蓄積をして、銀座線に乗る。
今月16日に買おうか買うまいか迷って買わなかった姫碗2客を神宮前の器屋で買う。銀座まで戻り、ウェブ上で買おうか買うまいか迷っているシャツを実際に見る。そして「あぁ、買わなくて良かった」と、その店を去る。
目と鼻の先の蕎麦屋では燗酒を頼んだ。東京の桜は、もう2週間ほどもすれば咲き始めるのではないか。季節は明らかに、春に変わった。
朝飯 春菊のサラダ、牛肉と牛蒡の「しいたけのたまり炊」のすき焼き風、大根おろしを薬味にした納豆、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、春子漬け、メシ、三つ葉の味噌汁
昼飯 「珈琲アロマ」のハムトースト、コーヒー
晩飯 「よし田」の鮪の刺身、玉子焼き、牡蠣南蛮蕎麦、菊正宗(燗)
2022.3.1(火) 新しいところ
3月30日から4月5日までの7日のあいだ、柏高島屋では初めてとなる出張販売をさせていただく。同店の商圏にお住まいのお得意様には当然、ご案内のハガキをお送りすることになる。しかしてその範囲はどのように決めるべきか。頼りになるのは製造係のタカクコータロー君である。
「鉄道ヲタク」は現在、20から30に細分化をされている。タカク君はその中でも「時刻表鉄」の傾向が強い。
今朝、タカク君は1週間ほどもかけて作った報告書を手渡してくれた。そこには数十におよぶ行政区と駅名および鉄道の路線図があった。僕はそそくさと席に着き、赤ペンと2色の蛍光ペンを用いて、その数十に取捨選択を加えた。続いてコンピュータに向かう。
間もなく、ご案内のハガキをお送りすべきお客様が特定された。タカク君が帰宅後の1週間を使って仕上げた仕事に僅々数十分で結果を出すのは申し訳ない気もするけれど、役割の分担とはそんなものだ。タカク君には大いに感謝をしたい。
朝飯 豆腐の玉子とじ、鰤と大根の味噌煮、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、蕪と胡瓜のぬか漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、若布と揚げ湯波とトマトの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 めかぶと松前漬けの混ぜ合わせ、菠薐草の胡麻和え、菠薐草のおひたし、春子漬け、天ぷら其の一、天ぷら其の二、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)
2022.2.28(月) 別の切手
「社長を、とおっしゃるお客様がいらっしゃってます」と、販売係が事務室まで僕を呼びに来ることが月に幾度かある。先日も、そのようなお客様と、しばし店頭で話をさせていただいた。そのお客様からは数日後に丁寧な葉書をいただいた。葉書は引き出しに仕舞うことはせず、事務机の上に目立つよう置いた。
年賀状にはなかなか反応できない僕ではあるけれど、こちらについてはそれほど遅くならないうちに返信をお送りしようと考えた。
今日は複数の銀行を回る用事がある。郵便局まで行かなくても、ポストは銀行のそばにある。常に切らさないようにしている日光の絵はがきから1枚を選び、ペンのキャップを外す。
お客様からの葉書は少なくない文字で埋められている。そうであれば、僕も同じくらいの文字数を連ねる必要がある。そうして先日のお礼から始め、あらかじめご連絡をいただければ、よりゆっくりご対応できる旨を記して文章を締めた。
きのうの強い風を境として、季節は春に向かいつつあるらしい。葉書には雪の結晶と雪ぞりの図案の切手を貼った。そろそろ別の切手を買う必要があるだろう。
朝飯 揚げ湯波の泡味炊き、牛肉と牛蒡と「しいたけのたまり炊」のすき焼き風、すぐきを薬味にした納豆、菜の花漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、牡蠣の醤油煮、メシ、蕗のとうの天ぷらの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 ポテトフライ、トマトとレタスと胡瓜のサラダ、カレーライス、らっきょうのたまり漬、チーズ、Old Parr(水割りのお燗)
2022.2.27(日) 春一番
今月16日は表参道まで足を延ばし、食器6客を買った。内訳は磁器1客に陶器5客だった。それらは軽く洗ってすぐに使い始めた。しかしこれは、あまり良い手ではない。陶器は使う前に、米のとぎ汁で煮ることが必定である。それを知りながら10日を経てしまった。今朝はようよう、米のとぎ汁ではないものの、糠を溶かした水に5客の陶器を沈めて煮た。このような未明の行いは、僕に小さな楽しさ、小さな喜びをもたらしてくれる。器は、明日からは心おきなく使っていこう。
午後、南から強く風が吹く。地面の舗装されていないところには砂埃が舞う。直しても直しても片側に寄るノレンを遂に、屋内に仕舞う。
その風の収まった14時40分に「汁飯香の店 隠居うわさわ」へ行く。家内はようやく食器を洗い終えたところだった。換気のために開けられた硝子戸の隙間をすこし狭めて事務室に戻る。
夕刻、午後に感じた懸念を隠居係のタカハシリツコさんに伝える。畳は既にして完璧に拭き上げたと、タカハシさんは報告をしてくれた。今日の風こそは「春一番」だったのだろう、多分。
朝飯 牡蠣フライ、ウインナーソーセージのフライ、菜の花漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐とブロッコリーの芽の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 めかぶと松前漬けの混ぜ合わせ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、生のトマト、鱈と豚三枚肉のキムチ鍋、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)、「久埜」の桜餅、Old Parr(生)
2022.2.26(土) 検分と入力
倉庫の棚には掛け軸が無造作に積まれていた。2020年3月、「汁飯香の店 隠居うわさわ」を開店するに当たってそこからめぼしいものを見つけようとした。しかし最初に引き出した箱の中味をなかば開いたところで「こりゃ、ダメだ」と、思わず声が出た。横にいた長男は同意をするように笑った。
それでも箱で70数合、双幅、三幅を含めて80余の掛け軸を、そのまま放っておくわけにもいかない。それからほぼ1年を経た2021年の春にようやく骨董商を呼び、鑑定をしてもらった。
80余軸のうち贋作は1軸と双幅一対の3軸のみだった。残りはすべて真作。そのうち「まぁまぁ」と骨董商が選り分けたものは30余軸。そこに無名の人によるものでも「これは悪くない」と僕が感じたものを加えると、双幅三幅もあわせて38軸になった。
80余は無理としても、せめてこの38軸に限ってはコンピュータにデータ化したい。そう考えて、今日は午前よりその作業に取りかかった。
いちいち床の間に掛けているヒマは無いから鴨居に釣り具を取り付け、そこに軸を1本ずつ長男が掛けていく。入力するのは通し番号、作者、題、季節、備考、評価の6項目。評価は僕と長男の話し合いによりABCに分けた。話し合いとはいえ時間は1軸あたり数秒から数十秒である。それでも開いた軸を綺麗に巻き戻すには時間がかかる。本日、検分できたのは17軸のみだった。
それら17軸を評価別にまとめてみれば、Aが3作、Bが5作、Cが11作となった。とにかく当方の琴線に触れるものは非常に少ない。残る21軸は来月4日に入力の予定である。
朝飯 グリーンアスパラガスの焼きびたし、牡蠣の醤油煮、牛肉と牛蒡と巻湯波の炊き合わせ、納豆、菜の花漬け、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、若布と長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 チーズ、TIO PEPE、トマトと胡瓜と玉葱のサラダ、マッシュドポテトと自家製ステーキソースを添えたビーフステーキ、VOSNE ROMANEE Jean Gros 1985、「久埜」の草餅、Old Parr(生)
2022.2.25(金) 春季小祭
春季小祭は秋の五穀豊穣を祈念するお祭で、毎年2月の下旬に瀧尾神社で催される。しかし昨年の日記には、それについては何も書かれていない。新型コロナウイルスに関連して国や県から出された通達を調べてみる。昨年は1月8日に発出された緊急事態宣言が、2度の延長により3月21日まで続いていた。その最中にあったお祭は多分、宮司と当番町に関係する方々のみで行われたのだろう。
今年の春季小祭および初会議の報せは今月の頭に届いた。「二月二十日までに返信願います」と記された往復ハガキには、参加することを記してすぐに投函した。
小祭は10時からの催行。一の鳥居は9時45分にくぐった。責任役員は5名のうち僕を含む3名の参加だった。挨拶は歳年長のワタナベマモルさんがしてくださった。
平町のキタムラヒロシさんが「当番町を考える会」の議長として骨を折ってくださったことにより、瀧尾神社のお祭りは大きく簡素化をされた。それは時代の要請だった。2019年、我が春日町1丁目は、その簡素化されたお祭を仕切る最初の当番町になった。本日の直会は、猪口に1杯の日本酒を干して完了した。これはこれで悪くない。
引き続いて社務所に移動をし、前年度当番町の川原町の決算、そして今年度当番町の朝日町による予算案が、各町内の自治会長を前に報告される。
現在、栃木県に出されているまん延防止等重点措置は、2月13日までの予定が3月6日まで延長された。朝日町は現在のところ、4月9日に予定されている春季大祭の中止を決めていない。直前まで開催の可能性を探りたいとの意向を、朝日町自治会長のオーモリカズオさんは述べた。
当番町が巡ってくるのは十数年に1度。よってこれを中止すれば空白は20数年に及び、祭典に必要な記憶、知識、技術を町内に遺せない可能性が高くなる。朝日町の判断は、地域の伝統を守るためのものだ。尊いこと、有り難いことと思う。
朝飯 なすのたまり漬のカラシ和え、大根のたまり漬、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬、胡瓜のぬか漬け、茗荷の酢漬け、塩鰹のふりかけによるお茶漬け
昼飯 ラーメン
晩飯 刻みキャベツを添えた牡蠣フライ、Chablis Billaud Simon 2015、苺の羊羹、Old Parr(生)
2022.2.24(木) ご隠居さん
起床は2時台。おとといときのうの、ほぼ書けていた日記を完成させて時刻は3時40分。材料を調えてあったにもかかわらず、きのうの朝は予定していたステーキソース作りをし忘れた。よって4時前よりその調理に取りかかる。レシピは2019年7月13日のものとほぼおなじ。ただし今朝は玉葱が小ぶりだったため、その分は大根おろしで補った。できた量は、ネスカフェの大瓶ほどの容器に1本とすこし。道具を洗い終えると時刻は4時24分になっていた。
さて今日はウェブサイトの新しいページのための写真撮り、また秋に改版するパンフレットのための商品撮影がある。ディレクター、デザイナー、フードコーディネーター、カメラマンの4人組は、きのうの午後に来て下見をした。
4人組は、今朝は8時に現れた。撮影は3階の食堂で始められた。午後からの移動に備えて、僕は花瓶や皿を隠居に運んだ。夕刻には、保育園から戻った孫ふたりのお守りをした。僕のした仕事はそれくらいのものだ。立ち会いは家内、長男、嫁に任せた。
僕も段々と、ご隠居さんのようになってきた。喜ばしいことである。
朝飯 冷や奴、菠薐草のおひたし、納豆、オムレツのトマトソースがけ、酢蓮、菜の花漬け、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、揚げ湯波と若布の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 社員が試作した弁当、他あれこれ、大根の味噌汁、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)
2022.2.23(水) 正念場
1泊以上の外出にはかならずコンピュータを持参した。その、パソコン通信以前から四半世紀以上も続けた習慣を、昨年、止めた。体力はできるだけ温存すべしと考えたこと、もうひとつは、日記の書き溜めが上手になったことによる。ついでにカメラも持たなくなった。
トートバッグは、からだの片側に負担のかかるところから、これを好まない。泊まりの荷物はすべて、バックパックに納めてきた。しかしコンピュータとカメラを持たなくなった今、バックパックの必要はほとんど無くなった。とすれば、これからはどうすべきか。
僕は道具においては「大は小を兼ねる」を嫌う。「帯に短したすきに長し」も勿論、気分が悪い。そしてちょうど良い大きさのものを求めるうち、バッグの数は「売るほどある」状態になってしまった。しかしその「売るほどある」バックパックとショルダーバッグの中に「1泊分の荷物からコンピュータとカメラを除いたものを運ぶにちょうど良いもの」は無い。果たして僕のバッグは、またその数を増やしてしまうのだろうか。「正念場」という気がしている。
朝飯 納豆、生のトマトを添えたオムレツ、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、酢蓮、蕪のぬか漬け、菜の花漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布と玉葱の味噌汁
昼飯 「やぶ定」のカレー南蛮蕎麦
晩飯 トマトとレタスとモッツァレラチーズのサラダ、カレーライス、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、Old Parr(水割りのお燗)