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清閑 PERSONAL DIARY

2025.1.27 (月) 新しい喪服

お通夜やお葬式に伺うと、ダブダブのスーツを着た老人をよく目にする。加齢と共に痩せたに違いない。この11年間で13キログラムちかくも体重を減らした僕も、その一員である。そういう次第にて、下今市09:05発の上り特急に乗る。

有楽町の仕立屋には11時30分の予約を入れておいた。テーラーメイドにしては随分と安いスーツを売るその店のことは、SNSにときおり現れる広告で知った。行って分かったことだが、採寸されたのは胴回りのみだった。

その胴回りに合ったパンツを穿かされ、右脚の裾を上げる。裾の長さは右脚でしか計ってもらえなかったため、左脚でも計るよう頼む。裾幅は自分では決められない。多分、現在の標準に照らして無難な設計になっているのだろう。裾は黙っていればシングルになる。

上着はカタログのいくつかから選ぶ仕組みで、礼服としてもっともふさわしいものを指定した。その上着を係が僕に着せる。袖には7ミリメートルほどの間隔で白い線が入っている。それを目安にして裄丈を決める。こちらについても僕は、左右で別々に計るよう頼む。着丈は見本のそれでちょうど良かった。

上着は、ふたつボタンの上ひとつがけなら下のボタンは不要と僕は考えるけれど、それはできないと係は言う。襟穴も僕は不要としているが、それも客の要望は容れられないという。襟の高さ、ゴージの位置は無論のこと、襟幅も自分では決められない。しかし見たところ8.5センチメートルの襟幅は、僕の好みに沿っている。襟かた前裾にかけてのステッチは不要とした。

ベンツはサイドベンツを選ぶ。ベンツの長さは指定できない。袖の本切羽は不要。袖のボタンは3個で重ねは無し。両脇のポケットはフラップ付き。フラップの高さは選べない。ポケットに英国風のスラントは不要。チェンジポケットも不要。胸ポケットはボックスがデフォールト。ボタンは黒の2種からひとつを選ぶ。左右の内ポケットは右にのみフラップとボタンが付き、左は無しという僕の希望が見本にあって、それを選ぶ。左の内ポケットちかくに入れられるネームは不要。仮縫いは無し。できあがりは3ヶ月後で、佐川急便により届くという。縫製工場がどこにあるかは訊かなかった。

有楽町から新橋までは、JRの高架下を往く。コンクリートがむき出して薄暗く、いささか不気味だったそのトンネルは、いつの間にか、きらびやかなアーケードになっていた。

新橋で散髪。そこから山手線で原宿に到る。山手線を原宿で降りるなどは多分、40数年ぶりのことではなかったか。竹下口改札から竹下通り、それが山手通りと交わる竹下口までに溢れているのは、外国人とお上りさんと未成年者。更に直進をすれば人通りはめっきり少なくなり、雰囲気も落ち着いてくる。

目指すジーンズ屋には外国人の客が目立った。手持ちのジーンズのウエストは33インチで、今やからだに合わない。ウェブ上で選んでおいた型番のウエスト32インチを店員から受け取って更衣室に入る。しかしいかにも緩い。次は30インチを手渡してもらい、これも緩い。次は28インチ。これはちょうどよく感じたものの、穿いているうち緩くなるからきつめを選んだ方が良いと店員は言う。しかし27インチとなれば僕の16歳のときのサイズで、とてもではないけれど行きすぎの感じがする。「メシを食って腹が膨れたときに心配だから」と、28インチを包んでもらう。価格はスーツの七掛け。スーツが安いのか、はたまたジーンズが高いのか。

原宿駅の手前、明治神宮前まで戻って千代田線に乗る。湯島天神下の「シンスケ」の開店時間はコロナ以降の引けの早さによるものか、今は16時30分になっている。上出来の肴と共に「タルの熱燗」を正一合の徳利で3本こなす。この店の熱燗は熱すぎないところがいかにも良い。

ふたたび千代田線に乗って北千住に着けば時刻は18時08分。頭上の電光掲示板は18:13発の下り特急を案内している。通路を歩きつつスマートフォンで座席を確保し、20時前に帰宅を果たす。


朝飯 揚げ玉、納豆、牛蒡と人参のきんぴら、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」のお茶漬け
昼飯 「ドトール」のチーズ in ミラノサンド、コーヒー
晩飯 「シンスケ」のあれこれ、「両関」の樽酒(燗)


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上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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