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清閑 PERSONAL DIARY

2024.9.30 (月) タイ日記(5日目)

目を覚ましてちかくのiPhoneに手を伸ばし、見ると時刻は0時02分だった。幸いにも二度寝ができて、今度の時刻は3時08分。即、起床する。

このホテルのチェックアウトの制限時刻は正午。今日から宿は、川向こうの郊外に移る。景色は広々とするだろうけれど、利便性は著しく落ちる。よって雑用は午前のうちに済ませておく必要がある。

タイバーツは、日本を出るときには12,339バーツがあった。未明にカーテンを開けたまま窓の近くでこんなことをしては危ないのではないかと考えつつ数えた残金は7,724バーツだった。ということは、きのうまでの4日間で使ったお金は4,615バーツ。1日に均せば1,154バーツになる。

川向こうの不便なところへ行けば、これまでのように毎日マッサージを受けることもなくなるだろう。7,724バーツは充分以上と考えて、この街で日本円をタイバーツに換えることは放念する。雑用は朝食の動画撮影と自転車の返却と散髪のみになった。

朝食は、これまで1、2度だけ入ったことのある、目抜き通りの繁盛店へ自転車で出かける。いまだ7時を過ぎたばかりにもかかわらず、席は半分以上が埋まっていた。注文はタイ語に英語が併記された、値段入りの伝票に自分で記入する式だった。僕はカオマンガイを選んだ。そしてその鶏肉は大当たりだった。営業時間が長ければ夜にも来たいくらいだが、多分、午後には閉まるだろう。

ホテルに戻り、今度はホテルの朝食を摂る。川向こうの郊外へ行けば、店は疎らになる。川沿いのリゾートホテルともなれば多分、周囲とは隔絶された環境に違いない。食いだめをしておくことに如くはない。

オートバイと自転車を貸す”NICE RENTAL”の開店する8時が過ぎたことを確かめてから、自転車を通りにこぎ出す。ジェットヨット通りのそこまでの所要時間は2分。1,000バーツの預け金は無事に戻った。次は散髪である。

チェンライに来るたび、ということはないけれど、2015年ころから通っている、その名も”BARBER SHOP”という目抜き通りの床屋には9時10分に入った。先客は3名。何とそのうちのふたりが白髪染めを始めた。「白髪なんて、気にすることねぇじゃねぇか」と考えつつベンチで待つ。待ち時間が発生するとは思ってもみなかったから、本は持参しなかった。

鏡の前の椅子に案内をされたのは9時40分。髪と髭を2番のバリカンで刈り、顔と襟足を剃り、髪を洗い、眉を整え、耳の掃除を終えたのは10時25分。顔のマッサージは断って、料金は260バーツ。雑用のすべてを完了して部屋に戻る。

荷作りは早朝に済ませてある。正午の直前までプールサイドで本を読む手もあるが、これから行く”The Imperial River House Resort”はコック川に面した広いプールが自慢のホテルだ。本ならそちらで読もうと、ザックを背負い、スーツケースを提げてロビーに降りる。

新しいホテルまでの距離は、Googleマップによれば3.7km。ホテルでタクシーを呼んでもらえば200バーツくらいのことは言われるかも知れない。よって外へ出て、ちかくの辻でいつも客待ちをしてるトゥトゥクの運転手に声をかける。彼の言い値の100バーツは、僕には安く感じた。というのも、2013年からしばらく、ナイトバザールのゲート前から2kmの距離にある当時のドゥシットアイランドリゾート、現在のザ・リバリーバイカタタニまでの、トゥクトゥクの夜の料金は80バーツだった。それがいつの間にか80バーツは昼のみで、夜は100バーツになった。それを思えば、まぁ、外人価格ではあるのだろうけれど、3.7キロメートルで100バーツは理にかなっている。

トゥクトゥクは並木道を抜け、タナライ通りを突っ切り、数週間前までは「決して近づかないでください」と警報の出ていたコック川を渡る。しばらく進んで右折。更に右折。しばらく行くと、ホテルの庭なのだろうか、耕す前の田んぼのような、荒れた土の上で仕事をする人たちが見えた。

「さーて、チェンライの後半戦は、川沿いでリゾートライフだ」と勇躍、乗り込んだホテルのロビーは限りなく清潔だった。フロントのデスクには丸メガネの若い女の人がいて、後ろには若いオニーチャンが立っていた。

「予約をしたウワサワです」と声をかけると、オネーサンは怪訝な顔をする。コンピュータの画面を確かめ、僕に向き直って「お客様、当ホテルは洪水の被害により休館中でございます」と言う。「なんと」である。

「予約サイトからはメールでお知らせした筈ですが」とオネーサンは席を立ち、数メートル離れたプリンターから出力された紙を取り「ノーリプライになってますね」と、僕にそれを見せた。

「ホテルの中をご覧になりますか」と、オニーチャンが僕に誘いかける。「そうですね」と立って、オニーチャンに続く。コック川に面した庭の、自慢のスイミングプールは確かに、川と同じ泥の色だった。「ここまで水が来たんですよ」と、オニーチャンは自分のふくらはぎのあたりを示した。

オネーサンに呼んでもらったタクシーは間もなく来た。価格は150バーツと教えられていた。数十分前にチェックアウトしたばかりのホテルの駐車場に着くと、運転手はクルマを降り、後方へまわり、僕のスーツケースを降ろすと、それを曳くための取っ手を延ばすまでしてくれた。僕は財布から100バーツ札2枚を抜き取り「おつりは要りません」と、それを運転手に渡す。チップの習慣のある地域が、僕は大好き、である。

夜から昼にかけてフロントにいる、細身で色白で可愛いオネーサンに、また泊まりたい旨を申し出る。「いつまでですか」とオネーサンは問う。カウンターの上のカレンダーの今月のページを跳ね上げ、10月のページを出す。そして「4日の金曜日まで」と、その部分を指しつつ答える。更に「直に予約するのと、この場でagodaから予約するのとでは、どちらが安いかな」と訊いてみる。「すぐには分かりかねますが、我々の価格は1泊900バーツです」と、オネーサンは即座に答えた。「そんなに安かったのか」と腹の中では驚くも、顔には出さない。「それでお願いします」とオネーサンには伝え、4泊分の3,600バーツはカードで支払った。

スーツケースは初日のオジサンが3階の、数十分前までいた部屋まで運んでくれた。オジサンには50バーツのチップ。僕は全身、汗でずぶ濡れである。

シャワーを浴び、ひと息をついて「待てよ」と考える。オネーサンには金曜日までの4泊と伝え、代金も払った。「しかし」と、コンピュータを起動して日程表を見る。果たして僕がチェンライにいられるのは3日の木曜日までだった。

“Vary Sorry”とフロントのオネーサンに謝って、先ほどの決済は中止にしてもらう。そして新たに3泊分の2,700バーツをカードで払い直す。オネーサンは嫌な顔ひとつせず対応をしてくれた。時刻は12時10分になっていた。

朝に食いだめをしたにもかかわらず、腹が減っている。しかし食べればふたたび汗は滂沱と流れるだろう。汗はかきたくない。しかし腹は減っている。結局は初日の昼の汁麺屋まで数百メートルを歩き、ふたたび大汗をかきつつ部屋に戻る。

ドナルド・キーン編「昨日の戦地から」は、きのう、ナイトバザールの奥のフードコートで読み終えた。次に控えるのはおなじドナルド・キーン著「百代の過客」の上編である。午後のプールサイドには日が差すものの、日の当たる太腿から下にはバスタオルを掛けて、これを読み始める。時刻は13時50分。しかし日は時を追うごとに角度を変える。遂にそれを避けられなくなった14時22分に寝椅子から立ち上がり、以降は部屋で続きを読む。

タイの一食は日本のそれにくらべて量が少ない。だからなのか何なのか、タイ人は間食をよくする、しかし僕はそれをしない。16時を過ぎるころには早くも空腹を覚え始めた。今日の夕食はどこで摂ろう。この街に入って2日目の夜の店などどうか。

ホテルから9分間を歩いて着いたジャルーンチャイは、Googleの情報によれば16時に開店のはずだが、人の姿は無かった。仕方なく大回りをして、結局はナイトバザールの奥のフードコートへ行く。きのうおとといとおかずを作ってもらった店は開いていたものの、酒やソーダや氷を売る店にはシャッターが降りていた。タイでは酒類は、11時から14時、17時から翌朝の8時までしか売ることはできない。15分を待って17時が来ると、シャッターはようやく上がった。しかし今日はなぜか、氷は無いという。

むかし新橋に「チューハイに氷は決して入れない」という店があった。「酒が薄くなるから」というのが店側の理屈ではあったものの、氷を欠くソーダ割りでは、気勢はまったく上がらない。明日以降にこんなことがあれば、セブンイレブンで氷を買って、それを持ち込むことにしよう。

部屋には早くも18時前に戻ってしまった。ラオカーオが捗らなかったせいか、眠気は0時すぎまで訪れず、ただ雷の音を聞く。


朝飯 「ナコンパトム」のカオマンガイ“Blue Lagoon Hotel”の朝のブッフェ其の一其の二
昼飯 「ラーン・ポージャイ・カオソーイガイ」のセンヤイナムニャオ
晩飯 ナイトバザール奥のフードコートのカオパットガイラオカーオ”BANGYIKHAN”(ソーダ割り)


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上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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