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清閑 PERSONAL DIARY

2024.9.27 (金) タイ日記(2日目)

目を覚ましたのは2時台。起きたのも2時台。

数学の好きな人は、解答にいたるまでの過程に感心があるだろう。プログラミングに興味のある人は当然、コマンドラインを読みたくなるだろう。「東京を深夜に発ち、チェンライへはおなじ日の午前に着いた」という移動の経過を欠いた紀行文を僕は好まない。だから僕の、旅の初日の日記はどうしても長くなるのだ。そしてこれを書くうち空が明るんでくる。

朝食の後はプールサイドに降りる。僕の海外でのホテル選びは、第一は日除けと寝椅子を備えたプールがあること、第二は便利な場所にあること、あるいはその場所への便利な交通手段が確保されていること。第三は価格、ということになる。このホテルの部屋は大したこともないけれど、プールサイドの寝椅子の本の読みやすさは天下一品だった。

持参した本は2冊。その1冊目は6月にタイに来たときからのもので、ドナルド・キーン編「昨日の戦地から」。いまだ20代だったドナルド・キーンやオーティス・ケーリたち日本語将校が第二次世界大戦直後のアジアに来て、観たこと、聞いたこと、また、したことを手紙で知らせあった書簡集である。今朝は、294ページまで読み進んだ6月の最終ページから、その28章「東京のオーティス・ケーリから青島のドナルド・キーンへ」の冒頭に戻って読み始める。

この本の醍醐味は、中国、朝鮮、日本をはじめとする東アジアの第二次世界大戦直後の姿、また日本のいわゆる”Big Name”から無名の人々に到るまでの戦中戦後の様子、それらが生の形で知れるところにある。また、いまだ感受性豊かな若い将校たちの、習得した言語が実際に使われている地域へ来ての個人的な感想も興味深い。

インターネットが身近になって以降は、本を読みながら調べごとができる。スマートフォンが発明されて以降は、その調べごとがプールサイドに寝転んだままでできる。まこと便利な世の中になったものだ。

朝食を充分に摂っていたこともあって、昼に到っても腹は空かない。権利落ち日にもかかわらず、日経平均は謎の大上昇。そのうち「自由民主党の次期総裁は石破茂に決定」のニュースが飛び込んでくる。とすれば株価は一旦は下げ。以降は神のみぞ知る、だ。

15時を過ぎたところできのうとおなじ”PAI”に出かけ、2時間のオイルマッサージを受ける。ナイトバザール周辺のマッサージ屋とは異なって、ここに観光客はほとんど来ない。よってマッサージのオバサンは英語を話さない。今日のオバサンは終わりがちかくなるころに到って「ごはんはどこで食べるか」と訊いてきた。「まさかメシをおごれと言っているわけでもないだろうな」と考えつつ「このちかくで」と答える。オバサンには100バーツのチップ。

夕刻の行動としては、マッサージにかかり、その足でメシを食べに行く、という順序が好きだ。そこには気分の楽さ、気分の自由さがある。

“PAI”のある目抜きのパホンヨーティン通りからジェットヨット通りへ。そこから夜の一人歩きはいかにも危なそうなカンクルントンホテル通りを経て、広いサナムビーン通りに出る。サナムビーンとは空港の意で、ここを南下すればむかしの空港に行き当たる。その通りを渡って、いまだ混み合う前の食堂のオニーチャンに声をかける。席は指された奥ではなく、道に面したところにした。

2013年の秋、暮らしている4階に、タンスは中味ごと捨てるような断捨離をほどこし、ほぼ全面を改装した。住んでいる環境が簡素化されると「自分の本当に好きなことは何だろう」という疑問が浮かんだ。結果はすぐに出た。「美味いメシと酒」、「本読み」、「日本語の通じないところへの旅」が、すなわちそれだった。タイの田舎へ来れば、その3つが同時に達成される。特にチェンライとは、なぜか相性が良い。

月がとても青かったから、というわけでもないけれど、帰りは遠回りをする。第一、今夜のチェンライには月も星も出ていない。

ホテルへ戻り、フロントで部屋の鍵を受け取って廊下へ向かおうとすると、その入口のガラスのドアに「静粛に」という意味の、タイ語、英語、中国語、ミャンマー語による張り紙があった。そういえば今日の午後、ロビーで男3人による大声のやり取りがあった。そのような行いへの、この張り紙は牽制なのだろうか。そしてその注意書きの中の「喧嘩」の2文字に特に関心を持ちつつ部屋への階段を上がる


朝飯 “Blue Lagoon Hotel”の朝のブッフェ其の一其の二其の三
晩飯 「ジャルンチャーイ」のガイサップルートロットマラパットカイヤムウンセンムーサップラオカーオ”BANGYIKHAN”(ソーダ割り)


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上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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