2024.6.2 (日) リンゴの国
お湯で湿らせた頭にシャンプーを垂らす。そして指で髪の毛をかき回す。しかし一向に泡立たない。シャンプーを追加しても、髪の毛が泡立たないことは先ほどと変わらない。「おかしいな」といぶかしみつつ夢から覚める。
外はいまだ明るみを帯びていない。iPhoneは銀座のアップルストアに預けたままだから起きて洗面所へ行き、低い棚の時計に目を遣る。時刻は3時23分だった。
仏壇のことを済ませてから荷作りの仕上げにかかる。細かい説明は省くが、今回は持ち物が多い。割れ物を持ち帰るためのエアキャップ、通称プチプチの、60センチメートル角のものを2枚入れると、いつもの機内持込用リモアより6リットルだけ容量の大きなPROTEX FP-32Nは酒蒸しにされたハマグリのように口を開けたまま閉まらなくなった。仕方なく、エアキャップはグレゴリーのデイパックに移す。
ようよう閉めたスーツケースを持ち上げると、その重さは僕の旅行史上、かつてないほど重くなった。重量はスコータイで更に増すかも知れない。とにかくバンコクまでは我慢の一途だ。
それにしても、荷作りにこれほどの日数がかかるとは予想しなかった。繁忙により昼は働きづめだった。自由になる時間は早朝に限られた。それが荷作りの遅れたもっとも大きな理由である。
町内を掃除する勤労奉仕「クリーン大作戦」のため、7時に町内の公民館前に集まる。僕は店の前、国道121号線の真ん中の、クルマから投げ捨てたらしい空き缶その他の食べかすを公民館へ運び、分別をする。街の中心部には、ゴミは大して見あたらない。奉仕の作業はすぐに終わった。
17:30 数時間前に17時35分の迎えを予約したタクシーが事務室の前に停まる。普段なら後部座席に置くスーツケースを、今回はトランクルームに入れる。弱くない雨の降る中、運転手は外に出てトランクルームのドアを開けてくれた。
17:33 下今市駅着。運転手には50バーツ、もとい釣銭の200円を心付けとする。
17:38 「東急線内で発生したホームドア点検の影響により、東武スカイツリー線は押上と曳舟のあいだで不通」とのアナウンスがプラットフォームに流れる。
17:52 スペーシアX12号が下今市駅を発車。先代のスペーシアでは遅くて使い物にならなかったwifiだが、スペーシアXでは随分と早くなっていた。よってそれを使って今日の日記のここまでを書く。
19:35 スペーシアX12号が無事、浅草に定刻に着く。スーツケースが重いため、浅草では松屋のエレベータを使って地下に降りる。
19:48 地下鉄銀座線の車両が浅草を発車。
20:02 新橋に到着
20:15 傘を必要としないほどの雨の中を歩いてアップルストアに入る。
「きのうお見積もりをしたディスプレイの交換では、今回の不調は治らないことが分かりました。本体まで手を入れますと修理代は見積もり高くなりますため、今回はこのままお返しします」と、今日の緑のシャツの人は信じがたいことを口にしたから「いや、それは困る」と強く抗議をする。僕は今夜のうちに海外へ行こうとしているのだ。
ガラケーという言葉がある。iPhoneも実は「リンゴの国」というガラパゴスの中に存在しているのではないか。我々は、顧客と連絡を取ろうとすれば、携帯電話、固定電話、メール、手紙など、様々な通信手段を確保している。アップルストアの場合、iPhoneで連絡がつかなければ肩をすくめて両手を広げ、それでお終い、というところがありはしないか。
「お客様、そうなりますと、本体を交換するしか方法は無くなりますが」と言う相手に「そうしてください」と、間髪を入れず答える。いくらお金がかかろうが、iPhoneを欠いてはいかにも旅はしづらい。僕のようにコンピュータとiPhoneの二本立ならともかく、iPhone一丁の人ならその場で「頓死」だろう。
真新しいiPhoneは機種がSEの第二世代ということもあり、意外や安い37,400円。ガラスの強固な液晶カバーは6,800円だったから、双方を合わせても44,200円で済んだ。「やれやれ」である。
20:49 アップルストアを出る。雨が強くなっている。
21:04 快特羽田空港行きの車両が新橋を発車。車内にてとりあえず、使い慣れたカメラのアプリケーションをiPhoneにダウンロードする。
21:28 羽田空港第三ターミナルに到着。
21:33 タイ航空のチェックインの列に並ぶ。
21:45 チェックインを完了。スーツケースの重さは18.0キログラムだった。
21:52 保安検査場を通過。
21:55 出国審査場を通過。
今回の搭乗場所は、いつもとは反対側の105番ゲートだった。しかしそちらの方に飲食店は少ない。よって逆の、出国審査場を出て左側へ向かう。昨年の4月はいまだ「コロナ」の余波が残っていたから22時で閉店してしまった鮨の「魚がし日本一」に近づく。そして握り鮨を注文すると、いまの時間にそれは作れず、すべて丼になると言われた。それでは食べる気がしない。目と鼻の先のバーへ移動し、ホットドッグを今夜の食事とする。
来た道を戻って、とはいえ羽田空港も結構、広い。もうすぐ105番ゲートというところの右側にプライオリティパスのラウンジを見つけて大いに驚く。自分のカードと搭乗券を示して中に入り、料理や飲物を検分する。「だったら先ほどのホットドッグ代は使わずに済んだわな」と、損をした気になる。なおシャワーは1時間以上の待ちとのことだった
その更に先の、ビタミンCを買うため当てにしていたコンビニエンスストア”BOOKS & DRUGS”には残念ながらシャッターが降りていた。張り紙には「新型コロナウイルス蔓延防止のため」などと数年前の決まり文句があったから、長く閉まったままなのかも知れない。
22:55 105番ゲートに達する。乗客の数は意外や少ない。昨年の4月に目立った、タイから日本に遊びに来た人たちが帰る姿も見えない。彼らの旅は、桜の季節に集中するのかも知れない。
23:30 「間もなく搭乗」のアナウンスが肉声で伝えられる。
23:35 搭乗開始
23:41 窓際3列の通路側55Cの席に着く。窓際に人はいるものの、真ん中は空席らしい。すこし嬉しい。
朝飯 2 種5個のおむすび、らっきょうのたまり漬、サラダ菜と長葱とズッキーニの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 “BAR RAGE”のチェダーチーズペッパーソーセージドッグ、コカコーラ(カロリーゼロ)