2016.9.26 (月) もったいなくて
「アラキとアミとパリ」と題された、大竹昭子による文章に目が留まった。載っていたのはきのうの、日本経済新聞の文化面である。視野をすこし広くすると、その題字の左に「旅の目的はパリで開催中の荒木経惟の写真展を見ることだった」とあったから「これは朝の忙しい時間に流し読んでは勿体ない」と、四折にして温存した。それを読んだのは1日を置いた、今日の昼食時のことである。
「彼の写真で唯一、理解に苦しむのはこれだったから」と大竹が書いているのは、女を荒縄で縛り天井から宙づりにする、荒木が繰り返し用いる形式についてで、それには僕もおなじ感覚を持っていたから「ふんふん」と、興味深く先に進んだ。
荒木の写真には長く、頻繁に接してきたに違いない大竹に対して、しかし今回、その写真を初めて目にした、パリで大竹が親しくしている若い女性、そして会場に展示された巨大な緊縛写真のそばに毎日、何時間も座り続ける若い男性の監視員は、前者は直感により、後者は何日もかけて積み重ねられた内省により、等しく称揚する。そしてそこから大竹の、自らに対する問いかけが始まる。
僕はこの、日本経済新聞の第40面を切り取った。そして本棚まで歩き、これを荒木のどの写真集に挟み込むかを考えて、しかし結論は出なかった。アラーキーの写真の中では、ヨーコとの共作とも言える、いわゆるセンチメンタル系が僕は好きで、緊縛系は一切、持っていないのだ。
そしてふたたび食堂へと戻り、夕食のためのスープを仕込み始める。
朝飯 ゆかり、たまり漬「七種きざみあわせ(だんらん)」、青唐辛子の炒め煮、山椒の佃煮、胡瓜のぬか漬け、ベーコンのソテー、メシ、長葱とピーマンの味噌汁
昼飯 胡瓜のぬか漬け、明太子、梅干し、青唐辛子の炒め煮し、ゆかり、山椒の佃煮、たまり漬「七種きざみあわせ(だんらん)」によるお茶漬け
晩飯 パン、ソーセージと野菜のスープ煮、チーズ、“Chablis Billaud Simon 2014”