2023.1.26 (木) 夾雑物を退けて
自由学園男子部高等科2年に在学中、女子部中等科の生徒の作ったミニコミ誌を瞥見したことがある。興味を引かれたのは、女子部中等科の広い範囲に行われたと想像されるアンケートの結果だった。そして意外だったのは、そのうちのひとつ「もっとも好きな作家」の第1位に司馬遼太郎の挙げられていたことだった。
そのころ家には「坂の上の雲」の、箱入りの立派なひと揃えがあった。それはおばあちゃんの持ち物だったような気がする。そしてそれを借りて読むことは、僕はしなかった。先週金曜日の日記に書いた週刊朝日には、当時、おなじ著者による「街道をゆく」が連載されていた。しかしその文体はどうにも自分には馴染みづらく、読まずに飛ばすことが多かった。だから女子中学生にもっとも人気の作家が司馬遼太郎ということに、僕は驚いたのだ。
これまたこの日記を遡れば、今月12日の日記に司馬遼太郎の「殉死」について書いた。これを僕は前日の11日に城ヶ崎海岸駅の本棚に見つけ、上りの列車を待つ15分ほどのあいだにそのさわりを読んだ。そしてなにがしかの感慨を覚え、記憶に留めた。
城ヶ崎海岸駅の「殉死」は文春文庫の古い版で、文字が小さかった。帰宅して調べると、新しい版もあった。amazonの書評には「この一作を以て司馬ファンを止めた」とか「嘘だらけの作家」という、嫌悪感に満ちたものも少なくなかった。そういう他人の意見に僕はほとんど左右されない。自分の読書欲が満たされれば、それで良いのだ。
この、文字の大きな新版はすぐに届いて、早速、先週土曜日の伊豆行きの列車内で読み始めた。僕は活字中毒ではあるけれど、家ではほとんど本は読まない。それは、インターネットが運んでくる絵や文字を見るためのブラウザが家にはあるからだ。しかし「殉死」は、それら夾雑物の一切を退ける力を持っている。そして今早朝も、また夜も読書灯を枕元に引き寄せて、この本を開く。
朝飯 納豆、刻みキャベツを底に敷いた目玉焼き、煮奴、鱈のコロッケ、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬、ごぼうのたまり漬、メシ、ブロッコリーの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 「やぶ定」の酒肴あれこれ、鰻重、6種の日本酒(冷や)