2022.4.23 (土) 狸ビール
同級生コバヤシヒロシ君の家の別荘は野尻湖の国際村にあった。欧米人ばかりが保養するこの場所の、ほとんどの家は山の斜面に建っている。しかしコバヤシ君の家のそれは23番という区画で湖畔に接していた。そこから両側に熊笹の密生する蛇行した道をすこし登ると「冬はさぞかし寒かろう」と心配されるほど広いガラス戸を湖側に持つ家があった。コバヤシ君によれば、それは伊藤整の別荘とのことだった。
「非常に知的な文章を書く人」とは、高校時代の国語教師ヤマグチヒカル先生の伊藤整評である。教科書に伊藤整の文章は無かったように思う。だからそれは授業とはいえ雑談のようなときに為されたものだったのだろう。僕には人の話は本論に関係のない一言半句、片言隻句のみを記憶に留める癖がある。ちなみに伊藤整の文章を読んだことは無い。
今朝の日本経済新聞の読書欄に、久しぶりに伊藤整の名を目にした。伊藤整の、47歳だった1952年から64歳で亡くなる69年までの日記が完結したというその記事を読むうち「編集した息子でエッセイストの伊藤礼氏は」という下りに行き当たって「あっ、狸ビール」と、腹の中で小さく叫んだ。「狸ビール」の著者が伊藤整の息子だったことを、僕は知らなかった。それを本棚から引き出し裏表紙を開くと、見返しには「1992.7.19-7.21」の覚え書きがあった。
来週の火曜日は諸般の事情により夕食は外で摂る。だったらいま読んでいる「氷川清話」は一旦、脇へ置き、この「狸ビール」を飲み屋へ持ち込もうかとも考える。「狸ビール」の内容は一切、覚えていない。
朝飯 タケノコごはん、生玉子、スナップエンドウのたまり漬、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、鶏肉団子とトマトとピーマンの味噌汁
昼飯 タケノコごはん、ひじきと梅肉のふりかけ、スナップエンドウのたまり漬、しいたけのたまり漬、柴漬け、他社製のフリーズドライ味噌汁
晩飯 トマトとベビーリーフとモッツァレラチーズのサラダ、「月日堂製パン」のパンドカンパーニュ、それに塗るための生ハムのムース、グリーンアスパラガスの網焼きを添えた鶏とマッシュルームのクリーム煮、TIO PEPE、Chablis Billaud Simon 2015