2022.3.23 (水) サーランギ
毎年5月になると、かならず南方へ出かける人がいた。特に苦手とする花粉が5月に飛ぶ、それを避けるための旅とのことだった。
僕は、子どものころは湿疹と運動性喘息に悩まされた。走ると気管支の狭まった感じがして苦しくなる。そのことを僕は親にも言わなかった。誰でもそうなると思い込んでいたからだ。湿疹について、当時かかっていた医者は「やくざな肌だね」とか「何とかならんもんかね」とか「大人になったら治る」と言うばかりで、大して頼りにならなかった。
そういうアレルギー体質の僕ではあるけれど、花粉症にだけはならなくて、それが自慢だった。しかし2000年4月のことと記憶するけれど、ある風の強い日に杉林の中にいて、一瞬で花粉症になった。生まれてこのかた風邪ひとつひいたことのなかった人が、ある極寒の日に薄着で外に立っていたら肺炎になった、というようなことなのだろうか。
僕の花粉症は幸いなことに、日に幾度か目薬を差せば済むほどの軽いものだ。ただ、目を覚ませばただちに今日の天気を当てられる、くらいの敏感さはある。違和感が強ければ晴れ、それほどでもなければ雨で、大抵は外れない。
サーランギという、バイオリンの原型のような楽器がネパールにある。これを弾くのは、若いころの髙橋竹山や瞽女のような門付けの芸人である。カトマンドゥの郊外で農道を歩いていると、このサーランギの音が向こうの土手から聞こえてきたものだ。
ネパールで谷を渡るのはサーランギの音色でも、いまの日本で山や谷を越えるのは花粉の黄色い雲である。早く夏にならねぇかな、と思う。
朝飯 菠薐草のおひたし、蒲鉾の網焼き、独活のきんぴら、スペイン風目玉焼き、ひじきと人参と揚げ湯波の炒り煮、沢庵、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、シメジと椎茸と白菜の味噌汁
晩飯 豆腐干絲と青葱の油和え、チーズ、いぶりがっこ、TIO PEPE、4種の野菜を添えたコロッケ、Chablis Billaud Simon 2015、「御門屋」の揚げまんじゅう、Old Parr(生)