2022.2.22 (火) 出会い
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ある晩、旅の女に一夜の宿を請われる。男は気の毒に思い、女の願いを聞き入れる。翌朝、女は一宿の礼として、この世のものとは思えないほど美味い汁を作ってくれた。女はその後も居着き、男は毎朝、上出来の汁にありついた。
ある夜、男がふと覗くと女は大きなお椀の中で湯浴みをしていた。汁の出汁は、その湯浴みの湯だった。女は男の視線に気づくと突然、鮭に姿を変えて、消えた。
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その風貌や物腰からして、とてもではないけれど、特上の美味を創出するようには見えない人がいる。しかしその人の作ったものは確かに美味い、ということがある。ことによると体のどこかから美味の素のような粘液や漿液が滲み出ていて、店主はそれを匙で掬っては品物に混ぜているのではないか、と想像することがある。
店主の姿は知らず、先ずはその美味にのみ触れる人もいる。そしてこれほどの美味を生み出す人を見てみたいと、万里の波頭を越えてその店に行く。その結果「いや、何だ、どうした、これは」と驚いて店を去る。とにかくその人の作るものを買って家に持ち帰り、食べると、やはり美味い。
10年か20年に一度、そのような出会いがある。「新しい天体」というよりも「異形の天体」との遭遇である。出会いは大切にしたい。
朝飯 酢蓮、納豆、春菊のおひたし、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、胡瓜と蕪のぬか漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、トマトと大根と若布の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 ポテトサラダ、ブロッコリーと3種の茸のソテーを添えたハンバーグステーキ、TIO PEPE、VOSNE ROMANEE Jean Gros 1985