2017.3.12 (日) タイ日記( 4日目)
現在のプレーの気温は30℃をすこし超えるくらい。そして夜は、冷房を必要としないところまで凌ぎやすくなる。
タイでは街にも駅にも、朝の8時と夕方の18時に国王賛歌が流れる、という話は耳にしていた。しかしその場面に出くわすことは無かった。昨年2月、列車でスンガイコーロクへ行く途中のハジャイの駅でたまたま、ちょうど午前8時になった。タイ国民は、この歌が流れているときには、たとえ自転車に乗っていても、降りて立ち止まらなくてはならないとは、どこかで目にしたか耳にしたかで知っていた。しかしハジャイ駅構内の、それほど目立たないとろには、結構、いい加減なタイ人もいた。
次に国王賛歌に気づいたのはこのプレーの街でのことだ。その時間にベランダから外の様子を窺っていると「たとえ自転車に乗っていても」は嘘であることが分かった。
夕食にはそれほどの量は摂らない。朝は日本にいるときとおなじく、夜明けの何時間も前から起きている。腹の減らない道理がない。宿の朝食は、8時から10時のあいだに食堂に来るよう言われている。その8時、国王賛歌の流れている時間に2階から降りようとすると、宿の掃除のオバチャンだけは真面目に起立をしていた。よってその邪魔をしないよう、僕も階段の上で、同様に起立をして音楽が止むまで待つ。
「今日のご予定は」と朝食の席でオカミに訊かれ「午前は日記を書いて、午後からは水泳ですね、きのうとおなじメーヨムパレスに行こうと思って」と答えると「もっと良いところ、ありますよ」と、僕がテーブルに置いた、チェックインをしたときにもらった絵地図に”PHOOMTHAI GARDEN”と、書き入れてくれた。それはきのうの夕刻、目的もないまま自転車で足を延ばしたあたりだったから、付近の風景まで目に浮かんだ。無駄な行いも、たまには報われるものである。
明日のノックエアのチェックインをiPhoneで済ませてから、Patagoniaのショートパンツの上にタイパンツを穿く。そして自転車にまたがり、先ずはチャロンムアン通りを南下する。数百メートルを往くと右側に、客で鈴なりのクイティオ屋が目についた。すかさずUターンをし、店の前に自転車を停める。
2、3段の階段を上がってガラスケースの中を覗くと、豚の挽き肉はじめ材料はどれも新鮮そうだ。その脇にはワンタンもある。「バミーナムギァオ」とお運びらしいオバチャンに告げて、先客が2組ほどいる大きなテーブルに相席をする。
間もなく届いたワンタン麺は、調理職人の矜持と善意がありありと窺われる盛りつけで、味も良かった。食べ終えて値段を訊くと、田舎の水準に照らしても安い30バーツ。流行る店にはやはり、それなりの理由のあることをあらためて知る。
“PHOOMTHAI GARDEN HOTEL”はすぐに見つかった。自転車を停め施錠をしてフロントに上がる。民族衣装の制服を身につけた女の子に声をかけると、すぐに、金色の名札を付けたオネーサンを裏から呼んできてくれた。
「いま泊まっている宿のオカミが、ここのプールがすごく良いと教えてくれたので来ました。お金、払えば泳げますか?」
「お客様は、これからこのホテルにお泊まりですか」
「いえ、それはありません。明日はバンコクに戻るので」
「ここにお泊まりになれば、プール代は無料なのに…」
「まぁ、それはそうでしょう」
「次にこの街にいらっしゃったときには必ず、ウチに泊まってくださいね」
「勿論、約束しますよ」
と、出だし以外は定型文のような会話をする。オネーサンの、笑いを含んだなじるような目つきもまた、テレビのドラマなどで良く目にする、いわゆる既定のそれである。
それはさておきこのホテルは、チェンライのブティックホテル”Le Patta”をすこし大きくしたような、やはり趣味の良さで、プールも小さめながら申し分のないものだった。そしてここの寝椅子で17時まで本を読む。南の国に旅をすれば、その時間が僕はどうしても欲しいのだ。
宿に戻ると、朝食の際に頼んだ洗濯物が部屋の外に届いていた。少ない着替えでも充分に着まわしの効く点において、洗濯の面倒を見てくれる宿は本当に有り難い。
今日は日の落ちる前から外へ出る。そしていつもの屋台街の、2日目の晩からずっと来ている注文屋台に行く。注文屋台とは、品書きなどはなく、注文すれば大抵のものは作ってくれる屋台を指す。そして2種の料理を肴に飲酒活動をし、数十分で席を立つ。
日曜日の今日は、屋台街の客もことのほか多く感じられた。帰り道の、古い木造の家と、それよりは新しいだろうけれど、これまた年季の入ったコンクリートの家のあいだに丸い明かりが見える。「あれは高いところにある電灯だろうか、それとも月だろうか」と判断のつかないまま、とりあえずはカメラを向ける。
朝飯 “Gingerbread House Gallery”のサラダブレックファスト其の一、其の二
昼飯 チャルンナコン通りの繁盛店のバミーナムギァオ、薬味盛り合わせ
晩飯 「勝利の門」前の屋台街の注文屋台のミーラートナー、豚肉とトマトと2種の葱の強火炒め、シンハビール、ラオカーオ”Black Cook”(生)