2021.5.16 (日) 生きているか死んでしまったか
お爺ちゃんの祥月命日により墓参りをしたのは4日前の12日。そろそろ水を替えないと、花はみじめに枯れる。そう考えて、朝の仕事の一段落したところで如来寺へ行く。花を引き抜くと、水は花立ての底から5センチばかりがかろうじて残っていた。天気は今日から下り坂という。とすれば、花はいまだ数日は保つだろう。
午前も過ぎるころに郵便物が届く。そのうちの、僕あてのものを開封していく。中に、銀座のワイン屋からのものがあった。手紙には、5月末で店を閉める旨があった。このワイン屋の前身である「ミツミ」を初めて訪れたのは、1980年代も暮れかかるころだった。店長だったか番頭だったか、オジサンは初見の僕に、ワイン蔵の鍵を貸してくれた。そのあまりの大人物ぶりに、僕はひとつ文章を書いた。オジサンは、いまもどこかで生きているだろうか。
午後、昼食を摂るべく自転車で外へ出る。春日町の交差点の横断歩道を直角にふたつ渡りながら「オレが食べたいのはスパゲティだ」と確信する。よってふたたび2本の横断歩道を直角に渡って家に戻る。
家に赤ワインは古いものしかない。そのうちの1本を、数日前より廊下の奥、気温の低いあたりに立てておいた。その栓を19時前に抜き、恐る恐る味を見る。瓶の中味はいまだ生きていた。家で飲む赤ワインは、美味い不味いではない、いまだ生きているか、それとも、もう死んでしまったか、それが唯一の大問題である。肉を焼き終えた長男は、その39年前の酒をひと口すするなり「美味い」と言った。
朝飯 揚げ湯波の甘辛煮を薬味にした納豆、目玉焼き、ハムと玉葱とピーマンのサラダ、トマトサラダ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、白菜の味噌汁
昼飯 にんにくのたまり漬と唐辛子と青葱のスパゲティ
晩飯 玉葱とパテの冷たいスープ、トマトとレタスのサラダ、じゃがいもの素揚げを添えたビーフステーキ、Chateau Leoville Las Cases 1982