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清閑 PERSONAL DIARY

2021.4.22 (木) 苦く笑う

大きな朝食会場を持つホテルに泊まるたび目にする悲しい風景がある。それは、定められた時間より早く来て、入口に長い列を作っている老人たちの姿だ。老人は早起きで、多くはせっかちだ。あまりに早く起きるから時間をもてあまし、腹を空かせ、決められた6時30分や7時よりも前に食堂に来てしまう。あるいは「メシにあぶれたら一大事」という気持ちがはたらくのかも知れない。

新型コロナウイルスの流行る前は、年に一度、町内の役員でバス旅行に出かけていた。泊まるのは大抵、大きな温泉ホテルだ。上に書いたようなことを僕は同行の皆に話す。皆は「アハハ」などと笑う。そのうちの何人かは翌朝、きのう笑ったことを忘れて自分もおなじことをしてしまう。ときには部屋まで追い返されてくる。「だから言ったじゃないですか」と顔をしかめても「やっぱりダメだったわ」などと屈託が無い。

きのう留守にしてるあいだに「新型コロナウイルス感染症ワクチン接種のご案内」と書かれた黄色い封筒が届いていた。中味を取り出しながら、封筒に大書してある番号に電話を入れる。混み合って繋がらないだろうとばかり思っていたが、応答は意外や早かった。

「ウワサワと申します。ワクチン接種の書類が届きましたので、電話をしました」と話しかけると「その中の、ピンク色の紙を見ていただけますか」と、女の人は僕をうながした。当該の紙には「予約受け付け開始は5月10日(月)です」の文字。「初日は混雑すると思いますので、すこし日を空けていただいた方が…」と、女の人は、あくまでも優しかった。

そうして「なんだ、オレも温泉旅館のジジーと同じじゃねぇか」と受話器を置きながら気づいて苦く笑う。


朝飯 榎茸と菠薐草のおひたし、厚焼き玉子、独活のきんぴら、薩摩芋とタラの芽の天ぷら、らっきょうの甘酢漬け、メシ、筍と若布と万能葱の味噌汁
昼飯 “TULLY’S COFFEE”のボールパードッグラタトゥーユ&マスカルポーネ、ロイヤルミルクティー
晩飯 マカロニサラダトマトとキウイのサラダポテトとマッシュルームのグラタングリーンアスパラガスのソテーを添えたハンバーグステーキ、Chablis Billaud Simon 2015、NUITS SAINT GEORGES EN LA PERRIERRE NOBLET MACHARD DE GRAMONT 1983


美味しい朝食のウェブログ集は、こちら。

  

上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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