2021.4.14 (水) 気持ち
「35万円が2億円」と、その骨董商は自宅に戻るなり奥さんに告げた。骨董商の頬には緊張と興奮が浮かんでいる。奥さんは唖然としたまま目を見開いている。小さなオークションで落札した鐔が、その後、2億円の価値を持つものと分かったのだ。金による象嵌などは持たない、傘にも富士山にも見える透かし彫りを施された地味な鐔である。居合わせた僕は許可を得て、朝食の膳の右手に畳まれたナプキンの真ん中に、その鐔を乗せた。
そういう夢を見ながら目を覚ます。時刻は4時すこし前だった。
「本物のワインで漬けた本物のワインらっきょうリュビドオル」の瓶の蓋に貼るシールがいよいよ少なくなってきた。馴染みのシール屋はデザイン部門を廃し、現在は外注に頼っている。その外注先は偶然、上澤梅太郎商店が昭和30年代に出した手拭いを復刻するときに使った会社だった。
新型コロナウイルスが流行って以降にわかに勃興した「リモート」という仕事の形態を、僕は好まない。かねてより約束の時間に宇都宮のデザイナーを訪ねる。たたき台ができたらもう一度、顔を合わせてすり合わせをする必要があるだろう。「気持ちこの曲線を緩やかに」とか「気持ち隙間を空けて」というときの「気持ち」の説明は特に、リモートの不得意な部分と思う。
朝飯 納豆、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、切り昆布の炒り煮、「なめこのたまり炊」のフワトロ玉子、生のトマト、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と菜花の味噌汁
昼飯 「タリーズ宇都宮駅東店」の厚切りトーストツナチーズメルト、ロイヤルミルクティ
晩飯 榎茸と菠薐草のおひたし、刺身湯波と小松菜の餡かけ、焼き鮭、刺身湯波、薩摩芋とタラの芽と舞茸の天ぷら、麦焼酎「麦っちょ」(前割のお燗)、自由学園のクッキー、Old Parr(生)