2020.12.14 (月) ハンコ仕事
僕は活字中毒ではあるけれど、家ではほとんど本は読まない。読むのは公共交通機関の中、喫茶店、飲み屋などに限られる。ここしばらくは吉行淳之介の「人工水晶体」を読んでいる。裏表紙の見返しには「1989.9.28-9.30」と、万年筆の跡がある。この残りのページがいよいよ少なくなってきた。活字が無くてはいられないから、おなじ作者による「ヴェニス光と影」を本棚から取り出し、この2冊をPatagoniaのショルダーバッグに納める。
事務室へ降り、今度はそのバッグに会社の横判や実印を納める。ふと気づいて自動車運転免許証も、そこに加える。社員が退出をする前に戻るつもりだから、鍵は持たない。そして下今市10:05発の上り特急で東京へ向かう。
「拡大地域へ外出自粛を 新型コロナ 31日まで、知事要請」の文字が、今月10日の下野新聞第1面に大きくあった。そうは言われても、まさかハンコを宅急便で相手に送って「テキトーに捺しておいてください」と電話で頼む、というわけにもいかない。
「人工水晶体」は、吉行淳之介が1984年に白内障の手術を受けたときの、いわば記録である。あるいはこの病に悩む人への指南書にもなっている。それから34年後の2018年に、僕はおなじ手術を受けた。おなじ手術とはいえ34年も経てば、その方法も目に入れる「人工水晶体」も、まったくの別物である。
「人工水晶体」は、関東平野を南下する車両が栃木県を出る前に読み終えた。よって今度は「ヴェニス光と影」を取り出し開く。こちらの裏の見返しには「1991.10.21」の文字がある。2度目については書かれていないが、この日記によれば2003年10月。本の中味は読んだそばから忘れる。よって3度目とはいえ、つまらなさは感じない。
そうして帰りは浅草16:00発の下り特急に乗り、18時前に会社に戻る。
朝飯 メシ、らっきょうのたまり漬、ごぼうのたまり漬、豆腐と天ぷらと油揚げとブロッコリーとキムチの味噌汁
昼飯 「室町砂場」の天とじ蕎麦
晩飯 コールスロー、「にんにくのたまり漬」を添えたビーフステーキ、CHATEAU DUCRU BEAUCAILLOU 1982、チョコレート、Old Parr(生)