2020.12.4 (金) 恵比須講
床の間に軸を掛けるための、先端に二又の金具の付いた棒を何と呼ぶか、それを僕は知らない。とにかくそれを借りるべく、夕刻、暗い中を歩いて柴折り戸から隠居に入る。手探りならぬ足探りで庭石を踏んで歩くのは、うっかりして懐中電灯を持たなかったからだ。灯りの漏れる勝手口の扉を開けると、家内はいまだ、明日のための仕込み中だった。「汁飯香の店 隠居うわさわ」は、明日は朝こそ空いているものの、昼は満卓なのだ。
閉店後に4階へ上がり、和室の床の間に恵比寿と大黒の軸を掛ける。事務室の神棚から持ち来た恵比須大黒の木像も飾る。隠居から戻った家内は、今度は台所で煮魚、紅白なます、菠薐草のおひたし、けんちん汁を整えはじめた。そして昼のあいだに届いていた供え餅や尾頭付きの鯛と共に、それらを床の間に運ぶ。そしていよいよ一対の蝋燭に灯明を上げ、家内安全と商売繁盛を祈念する。
稲畑汀子の「ホトトギス季寄せ」によれば「夷講」は秋10月の季語で、今日は旧暦の10月20日にあたる。ともあれこの、家に連綿と伝わるお祭を済ませれば、あとは年末に向けて一直線、である。今夕の祈りが天に通じてくれれば有り難い。
朝飯 蕨と筍の煮物、じゃこ、焼き鮭、塩鰹のふりかけ、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」のお茶漬け
昼飯 ラーメン
晩飯 菠薐草のおひたし、紅白なます、茄子の揚げびたし、銀鱈の煮付け、けんちん汁、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)、「紫野和久傳」の「西湖」、Old Parr(生)