2020.11.19 (木) 大丈夫
「ステーキだよ」と、夜になってから言われても困る。僕の持つ赤ワインは古いものばかりで、寝かせてある瓶の下側に、帯状に澱が溜まっている。丸1日ほど瓶を立て、底まで澱を沈めないことには飲めないのだ。
きのう会社から上がると、家内はビーフシチューの調理を始めた。明日の夜のためのものだろう。そう考えて僕はワイン蔵へ降りた。そしてボルドー産のあれこれの並ぶ場所を見ていきながら、首に付箋の貼られた1本のあることに気づいた。付箋には「2008.12.26 FROM市本」と書かれていた。
イチモトケンイチ本酒会長は、飲み会の会長にもかかわらず、月に1度の例会日にしか酒は飲まない。4本、5本と飲んでも、その総量は毎回、1合以下である。付箋の貼られらワインは多分、イチモト会長がどこかから贈られ、しかし自分には不要ゆえ、僕に回してくれたものだろう。
底の「ギザ」がテーブルを傷つけないよう、瓶は折りたたんだハンカチに載せる。アルミニウムの封を丸く切り抜き、栓を抜く。ワインを飲まない人から到来したワインは保存の悪さから、既にして死んでいることが少なくない。しかし今日のこれは大丈夫だった。
そうしてトマトソースで煮込まれた牛肉を肴にして、この赤ワインを静かにゆっくりと飲む。
朝飯 納豆、菠薐草と榎茸のおひたし、大根おろしを添えた厚揚げ豆腐の網焼き、切り昆布の炒り煮、温泉玉子、ごぼうのたまり漬、メシ、若布と揚げ湯波と蕪の葉の味噌汁
昼飯 きのう「やぶ定」から持ち帰った豚カツによる弁当
晩飯 トマトのサラダ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、トマトと雪菜のスパゲティ、ビーフシチュー、Chateau Beauregard Pomerol 2003、“LE COFFRET”の焼きメレンゲのケーキ、Old Parr(生)