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お買い物かご

清閑 PERSONAL DIARY

2017.2.14 (火) 日本代表

朝、銀行へ行くと、キットカットの小さなチョコレートを女子行員が手渡してくれた。よってそれを受け取りつつ「キャンペーンか何かですか?」と訊いたら「今日はバレンタインデーで…」と、女子行員は控え目に微笑んだ。その微笑みが含羞によるものか、実はそうではなく苦笑に類するものかについては、僕には判断ができなかった。

バレンタインデーが何月何日なのかも知らない、そういう無知蒙昧の徒は、いわゆる専門馬鹿にはたくさんいそうである。しかし専門を持たない僕は、専門馬鹿ですらない。バレンタインデーは2月14日と覚えても、来年になれば、いずれ忘れてしまうのだ。

販売を応援するため店に入っていた事務係のコマバカナエさんが、事務室まで僕を呼びに来る。海外からのお客様だという。結局のところ、そのお客様のお買い上げはかなりの額に上った。そしてお客様はそれに見合うだけの1万円札を僕に手渡し、手洗いへと向かわれた。

その1万円札を数えてみると、1枚、多い。バレンタインデーが何月何日なのか知らない僕も、このような機会を得れば、オリンピックの選手ではないけれど、日本代表の気分になる。お戻りになったお客様には即、その1万円札をお返しした。

客の差し出した高額紙幣が多すぎた場合、そしてそのことに客が気づかないでいる場合、多すぎた分を客に返す国民性を持ち合わせる国が、世界にどれだけあるだろうかと考える。

「国民性などは存在しない。存在するのは個人のみだ」という意見もあるだろう。しかし僕はやはり、国民性というものはあると思う。「いい加減で、しかし正直な人」のたくさんいる場所が世界のどこかにないか。あるならそういうところにこそ旅をしてみたい。

明日から日本橋タカシマヤで始まる販売に伴い、家内と長男は東京へと去った。そのあいだ嫁は実家の世話になる。来週の水曜日まで続く自炊が、なにやら楽しみである。夕食は当面、家内の作り置いたスープにあれこれを投入していく、ブリコラージュ風のものになるだろう。


朝飯 納豆、筑前煮、なめこのたまり炊のスクランブルドエッグ、しもつかり、胡瓜の古漬け、メシ、きのうの夜に残した天ぷらと万能葱の味噌汁
昼飯 「食堂ニジコ」のスーラーメン
晩飯 トマトとレタスとハムのサラダ人参とソーセージのスープ炊き“Petit Chablis Billaud Simon 2015”

  

上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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