2017.2.12 (日) しもつかり
「明日の朝のお味噌汁の具は、ここにシジミが用意してあるからね」と家内に言われて、しかしそれを忘れ、いつものように煮干しでだしを引いた。それから1週間も経ってはいないと思われるきのうは「浅蜊が用意してあるからね」と言われ、しかしまたまたそのことを忘れ、やはり煮干しでだしを引いた。これもいわゆる「ダブルだし」の一種なのだろうか。シジミの味噌汁も、また浅蜊の味噌汁も、風味は至極良かった。
鮭の頭、鬼おろしでおろした大根と人参、節分に撒いた大豆の残り、そして酒粕。これを大鍋でグツグツと煮た「しもつかり」は、いかにも、海から遠く隔たった土地の貧しさが生んだ食べ物である。その、猫の吐瀉物のような見た目も手伝って、僕はこの郷土食を27歳まで食べられずにいた。
その27歳のある晩に蕎麦の「並木苑亭」を訪ねたところ「こういうものを食べないから体が弱いんだ」と、あるじのアオキウイチさんにしもつかりを無理強いされた。しもつかりが滋養強壮に役立つとも思えないけれど、出されれば食べないわけにはいかない。そうして恐る恐る口に運んだそれは意外や美味かった。
しもつかりは不思議なことに冷たいほど舌に心地よい。酒の肴としても、またごはんのおかずとしても重宝する。「しもつかり」は初午に、赤飯と共にお稲荷さんに供えるものとして作られる。ウチの初午は旧暦に則って行われるため、今日のしもつかりは日光市塩野室地区のサイトートシコさんにいただいたものだ。
「しもつかりと赤飯の組み合わせは最高」と家内は言う。そのあたりについては僕は良く分からないけれど、夕食にはやはりサイトーさんによる赤飯を僕は隨分と食べた。明日の朝のしもつかりも大いに楽しみである。
朝飯 揚げ湯波と小松菜の淡味炊き、納豆、じゃこ、生のトマトを添えた目玉焼き、ひじきと人参と揚げ湯波の甘辛煮、メシ、浅蜊とレタスの味噌汁
昼飯 「ふじや」のタンメン(バターのせてね特注)
晩飯 菜の花のおひたし、しもつかり、胡瓜の古漬け、ししゃもの燻製、筑前煮、赤飯、「名手酒造店」の「黒牛純米」(冷や)、“Chez Akabane”のコルネ、”TAMURE RHAM”(生)