2019.7.7 (日) 多分、馬鹿だと思われている。
僕の耳には欠陥がある。会社の健康診断では、小さな音も、また高い音も低い音も聞こえる。欠陥は、すこし変わったところにある。
1980年が明けていくらも経たないころに、カルカッタからカトマンドゥに移動をした。そして現地に住む人の家でダルバーツをご馳走になった。ひとりの女の人が”How is this taste?”と訊いた。その”this taste”が僕には”distaste”に聞こえた。「distaste、distaste、distaste… dislikeの”dis”が”taste”の頭に付くと、一体、どのような意味になるのだろう」と考えあぐねるうち、日本に留学経験のある別の女の人が「味はいかがですか」と日本語で訊きなおしてくれて「あ、美味しいです」と、ようやく僕は答えることができた。
あるいはもう10年くらい前のことになるだろうか、製造係のタカハシアキヒコ君が帰り際に商品を求めた。金額を告げるとタカハシ君は戸惑いの色を顔に浮かべつつ「シャワリー」と言葉を発した。シャワーは風呂場にある、ジョウロのように水の出る装置だ。その”shower”に”ly”が付けば”shower”の形容詞形だろうか、しかしそんな言葉があるだろうか。「showerlyって、何」と訊くとタカハシ君は先ほどと同じ困惑の顔つきで「あの、シャワリー」と、またも繰り返す。
そのときには多分、近くにいた他の社員が気を利かせたような気がする。「シャワリー」とは「社員割引制度」を短縮した「社割」のことと、その社員は僕とタカハシ君のあいだで通訳を務めてくれた。
そういうわけで、僕の耳には欠陥がある。否、欠陥は耳ではない、耳と脳のあいだの回路、あるいは脳そのものにあるのだと思う。人はときどき僕を馬鹿と感じるだろう。まぁ、仕方がない。
朝飯 塩鮭、納豆、「なめこのたまり炊」のフワトロ玉子、ほうれん草のおひたし、たまり漬「七種刻み合わせ・だんらん」、胡瓜のぬか漬け、メシ、大根とのげ海苔の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 ラタトゥイユと人参のサラダを添えた鶏もも肉のソテー、ジャガイモのグラタン、“Pain Au Sourire”の2種のパン、2種のジャム、Petit Chablis Billaud Simon 2016