2019.2.24 (日) 定形外
30年ほども前に築地の場外で鮨を食べていたときのこと、隣席の、いかにも本職らしい人が、いわゆる「下駄」に山葵を山盛りにさせているのを目にした。この人は、あらかじめ鮨を山葵抜きで注文し、山葵の量は「種」により自分で調整をしていたのだ。
場内には、ライスにカレーとハヤシを半々にかけるとか、カツ丼のごはん抜きとか、キャベツの代わりにケチャップスパゲティを多めに添えた豚カツとか、客の要望に応えるうちメニュの品数が異様に増え、メニュに無い特別注文に至っては数え切れないほどに膨れあがった洋食屋もあった。
やはり場内の吉野家には、常連客500人の好みをすべて覚えている店員がいると聞いたことがある。食べ物の本職には「定形」では満足できない人が多いのだ。
実はウチにもそのようなお客様が存在する。「らっきょうのたまり漬」の「浅太郎」は「あまりたまりに漬けるな」というご要望にお応えしたものだし「黒太郎」は逆に「もっとたまりに漬けろ」というご要望にお応えした結果の商品である。
本日の昼すぎに入ったご予約は「大根のたまり漬」についての風変わりなご注文で、そのお好みの特殊さから、コンピュータに「大根」と打ち込めば即、そのお客様の情報があらわれる仕組みになっている。ご来店は14時くらいとのことだったが「社長はそのとき、いるのか」とおっしゃるので「いるようにします」とご返事をして、昼食の時間はいつもの半分に削った。
お客様は14時20分にいらっしゃった。僕はほとんどつききりでご対応をした。僕は多分、そのお客様のことが好きなのだ。お客様は日光味噌梅太郎白味噌1パックと、包装係のサイトーヨシコさんが特別に計った大根のたまり漬5袋をお買い上げくださった。次のご来店は、初夏のころになるかも知れない。
朝飯 大根と人参と厚揚げ豆腐の淡味炊き、生玉子、すぐきを薬味にした納豆、ふきのとうのたまり漬、なめこのたまり炊、メシ、トマトと揚げ湯波と二十日大根の葉の味噌汁
昼飯 パン、マーマレード、ヨーグルト、コーヒー
晩飯 トマトとピーマンのサラダ、おとといの夜に残った鮭とほうれん草とマカロニのグラタン、“TIO PEPE”