2016.11.10 (木) 世界一、手間のかからないスープ
朝焼けの様子を飽かず眺めている。その空から紅い色が徐々に引き、薄い青に満たされたところでテレビのスイッチを入れる。晴天の続いていた列島には西から徐々に、雨雲が押し寄せてくるらしい。
カレー文化圏の、ホテルではなく民宿まがいのところに泊まったり、あるいは路上で煮炊きをするかたわらを歩けばすぐに、調理に従う女たちの、食事の何時間も前から香辛料を石臼で擂りつぶす姿を見ることができる。その、何十年も前に見た風景が網膜によみがえるたび「味噌汁は世界一、手間のかからないスープ」という事実を再認識する。その「世界一、手間のかからないスープ」でさえ、これを作ることを面倒がったり、更には作れない人のいることが、僕にはどうにも信じられない。
「ウチの味噌汁は毎朝、僕が作っているんですよ」と言うと「ホントですか」と目を丸くする人がいる。「味噌汁は数分でできます」と言うと「いやー、ウチは女房でさえ、味噌汁は作ったこと、ないですね」と、驚くべき事実を、しかしその人にとっては日常のことだから、こともなげに言ってのける人もいる。
自営業に定年は無いけれど、もしも第二の職業に就くとしたら、僕は定食屋の味噌汁係になりたい。
朝飯 細切り人参の炒め煮、揚げ湯波と小松菜の淡味炊き、茄子の「辛ひしお」炒め、スクランブルドエッグ、納豆、大根のぬか漬け、メシ、豆腐と揚げ湯波と三つ葉の味噌汁
昼飯 「大貫屋」のタンメン
晩飯 「ばんどう太郎」の牡蛎フライ、貫太郎セイロ、「釜屋」の「坂東太郎吟醸」(冷や)