2018.6.3 (日) 日本でも海外でも
01:20 遠州森町P.A.で10分の休憩。外へ出て背を伸ばす。
03:50 目を覚ます。きのうの日記にも書いたように、外の様子は窺えない。iPhoneのgoogleマップによれば、バスは新名神高速道路の草津田上I.C.あたりを走っているらしい。
03:56 モテナス草津P.A.で10分間の休憩。
05:18 カーテンの隙間をすこし開く。素晴らしい天気だ。バスは神戸港を左に巻きつつゆっくりと進む。船の白い連なりの向こうに神戸タワーが見えている。
05:24 定刻より16分はやく三宮に着く。「お客様、走り出してからで結構ですので、カーテンは元にお戻しください」と、運転手が腰を低くして僕に頼む。降車する以外の乗客は、眠っているのか動かない。
06:01 定刻より14分はやく明石に着く。
06:35 定刻より15分はやく加古川に着く。
07:04 定刻より26分はやく終点の姫路に着く。
今回のバスは「3列独立のびのびシート」とのことで、ほとんど眠ったまま目的地まで運んでくれると考えていた。しかし案に相違して、バスは意外と揺れる。途中、横浜駅東口で客を拾う。高速道路では何回か休憩のために停まる。「のびのびシート」とはいえ、足は大して伸ばせない。寝るなら飛行機のエコノミー席の方がよほど楽と、今回はじめて知った。
蕎麦とかごはんとか、朝は何か日本のものが食べたい。姫路の駅前をしばらく徘徊して、しかし店を開けているのはチェーン系のドーナツ屋やハンバーガー屋ばかりだ。仕方なく駅に戻り、姫路08:36発、智頭09:42着のスーパーはくと1号の切符を買う。僕の趣味からすれば鈍行で行きたいところだが、智頭線の歴史的経緯もあって、それはできないダイヤ組みになっている。
山あいにある智頭駅のプラットフォームに降りると予想外に、暑さが押し寄せてきた。即、きのうのバスの中で着たウィンドブレーカーを脱ぎ、半袖シャツ1枚になる。
改札口を抜けて駅舎を出る。駅前左手に木造の観光協会が見える。そこで、この街随一の見ものと思われる石谷家住宅への道を含む地図をもらう。外へ出て、そこに貸し自転車のあることに気づく。中に戻って3時間分の500円を支払う。
駅に背を向けて先ずは土師川、次いで千代川を渡る。空は青く、山と田は緑、そして川の水はどこまでも澄んでいる。海外でも日本でも、首都から遠く離れた小さな町を、自転車で流して歩くことが僕は好きだ。
同級生ヨネイテツロー君の家の系図を辿ればそこに行き着くという石谷家の豪壮な屋敷に、僕は1時間ちかくもいただろうか。石谷家住宅の門前には木造の消防屯所がある。その風情に惹かれて近づくと、出入り自由の表示が出ている。僕は喜んでその戸を引き、2階に上がってむかしの地図や写真を観覧する。
昭和16年だから77年前に建てられた、木造の貴重な建物に出入り自由とは、隨分と気前が良い。「火の不始末で燃えてしまったらどうするか」とか「浮浪者が住み着いたらどうするか」と普通なら考えそうなものだが、人口1万数千人規模の町であれば、そのような心配も薄いのかも知れない。
古い商家の庭先に足を踏み入れる。奥にこぢんまりとした洋館が建っている。その「西河克己映画記念館」には、後に智頭町と合併する土師村に生まれ、大衆娯楽映画の監督として大成した西河克己の軌跡が残されている。フロントに掲示してある携帯電話を呼び出せば管理人が来るようだ。しかし折角の空間であれば、僕は一人で楽しみたい。
住む人は「何も無い」と謙遜をするけれど、この智頭町には、実はたくさんの資源がある。それを活かすも殺すも地元の人次第、地元の行政次第なのだろう。
昼時に邪魔をしてはいけないと考え、駅ちかくの喫茶店で昼食を済ます。そして観光協会に自転車を返す。借りたときから、ちょうど3時間が経とうとしている。
iPhoneのgoogleマップはヨネイ君の家を正しく示さない。よって電話を入れ、僕が歩いている道筋までクルマで迎えに来てもらう。そのクルマには、きのうから来て準備を手伝っているウエキコータ君も乗っていた。今夜はヨネイ君の家で、自由学園男子部35回生の同窓会が開かれるのだ。
ヨネイ君の自宅に着くなり僕は居間へ上がり、安楽椅子に足を延ばした。そしてヨネイ君の奥さんに冷たいお茶をもらい、それから2時間ほどは新聞を読んで過ごす。ヨネイ君とウエキ君は、午後のきつい日差しの中で、ピザ窯に火を熾している。僕は大したナマケ者である。
やがて日本のあちらこちらから鉄道で、飛行機とレンタカーで、あるいは自家用車で、同級生たちが続々と集まってくる。僕は持参した一覧表とつき合わせつつ、各自より参加費を徴収する。その金額は酒を飲むか飲まないか、またヨネイ君宅泊か旅館泊かにより異なるため、集金作業はなかなかにややこしい。
同窓会は最後のふたり、つまりアケミツシ君とヤハタジュンイチ君が到着した17時から始まった。ヨネイ君はこの日のために、20人が着けるテーブルを作り、頭上にはストリングライトを吊ってくれた。料理は、今月の23日に「ローカルダイニング・山のブラン」を開業する若い夫婦がヨネイ君の家まで出張をして、整えてくれている。ワインは僕が手配した赤と白、ビールは「タルマーリー」の生である。
夕食は、有志の弾く楽器の音と共に和やかに進む。庭は牛臥山を背にして濃い緑の中にある。しかし中国地方の日は長く、19時30分を過ぎても暗くはならない。
気づくと時刻は22時30分。僕は首を後ろにがっくりと折って眠っていた。無理せず旅館に引き上げるよう誰かが言う。それもそうだと立ち上がり、居間に上がってザックを背負う。そしてふたたび靴を履き、今夜の宿「新林館」を徒歩で目指す。
朝飯 「えきそば姫路駅店」の天ぷら蕎麦とおむすびのセット
昼飯 「樹里」のパチパチナポリタン
晩飯 「ローカルダイニング・山のブラン」のあるじによる其の一、其の二、其の三、其の四、其の五、他あれこれ。ヨネイ君の奥さんによるピザマルゲリータ、チリ産のスパークリングワイン、同2種の赤ワイン、「タルマーリー」の生ビール、ヨネイ君の家のシングルモルトウィスキー(生)