2018.3.26 (月) タイ日記(4日目)
目を覚ましてしばらくしてからベッドを降り、すぐちかくにあるデスクの灯りを点けると、きのう外してそこに置いてあった腕時計は2時40分を指していた。可もなく不可もない時間である。
朝食は7時からにて、その前に大部分の荷造りは済ませておく。きのう買った2本のラオカーオの片方は、2本の空のペットボトルに移して荷物を軽くする。
8時20分にベルボーイを呼ぼうとして、しかし部屋に備えつけの電話機は、その使い方がまったく分からない。説明書も見あたらない。よってふたつのスーツケースは部屋に残し、ロビーに降りる。そして愛想良く笑いかけてきたベルのオジサンに、部屋から荷物を運ぶよう頼む。
「あー、もう帰るのかぁ」と、家内は未練がましい。日程はいまだ、ちょうど真ん中にさしかかったばかりだ。しかしこの、フアヒンでもっとも古いホテルの別世界ぶりを振り返ってみれば、その慨嘆も分からなくはない。
フロントからベルの場所を振り返ると、オジサンは黄緑色の陽光を背負いつつ、クルマは既に来ていることを教えてくれた。早い分には有り難い。即、そのクルマをロビーの真下まで呼んでもらい、荷物を載せてもらう。
08:47 ホテルの正門を去る。
09:13 運転手がコーヒーを買うため小休止をする。「眠気を抑えるため」という弁明が僕を不安にさせる。
09:30 ペチャブリーを通過
10:00 パクトーを通過
タイの幹線道路は僕が知る限り、片側三車線の広いもので、山間部でもない限り、どこまでも真っ直ぐに続いている。その広くて真っ直ぐな道を、クルマは時速120キロほどで走る。
このようなタイの道路は、ドミノ的に共産化するインドシナの現状を恐れたアメリカの援助によるとの文章を読んだことがある。しかしそれを、複数の資料により確かめたことはない。
10:08 サムットソンクラー県でメークローン川を渡る。
10:15 出発してはじめての渋滞に遭う。「ポリー」と運転手が苦笑いをする。左手に台貫所が見える。警察の検問らしい。
10:27 サムットサコーン県の、多分タージーン川を渡る。当方は詳細な地図を持たないため「多分」としか書けない。
11:00 バンコク県に入って高速道路に上がる。
11:05 チャオプラヤ川を渡る橋の上からバンコクのビル群が見えてくる。
11:08 BTSの高架とブアアットステイトタワーが間近になる。
11:10 いつも賑わっているチャルンクルン通りに入る。
11:15 マンダリンオリエンタルホテルに到着する。運転手はここに来る2時間30分のあいだ、シートベルトは締めず、あくびを繰り返していた。よってチップは300バーツに留める。
チェックインは素早く終わる。
このホテルではむかしから、客を部屋に案内するのはコンシェルジュだ。彼女の説明が終わる前にベルボーイが荷物を運んでくる。ベルボーイが去ると、客室係が冷たいお茶を持って来る。そのたび100バーツのチップを手渡す。「オリエンタルホテルでも、他のホテルとおなじくチップは20バーツで構わない」とウェブログに書いた人がいた。しかしそれは、僕の流儀ではない。
チャルンクルン通りとオリエンタルホテルのあいだにある、初めて訪ねた1991年から数年前までは、籐の大きなカゴなどが埃をかぶったまま積み上げられていたから「乱雑屋」と密かに呼んでいる店で少々の買い物をする。それから部屋に戻り、ズボンを”Patagonia”のバギーショーツに履き替える。プールまでガウン姿で公共の場所を歩きたくない人は、プールサイドの地下にある部屋を使うことができる。
午後のほとんどは、そのプールサイドで本を読む。そして部屋に戻り、シャワーを浴びて服を着る最中にドアをノックされる。客室係が届けに来たものは、綺麗な色をしていたため菓子のたぐいとばかり考え口に入れると、それは小さな海老を使った洒落た酒肴だった。一瞬、家から持参したシェリー酒で口を漱ごうとして、しかしそれは止めておく。
ロビーから朝食の会場へと続く、つまりバンブーバーなどのある廊下を抜けて舟の乗り場へと向かう。ホテルの舟は具合の良いことに接岸をしたばかりで、我々が乗り込むとすぐに岸を離れた。その舟でサトーンの桟橋までチャオプラヤ川を下り、ここですこし待って、今度は同級生コモトリケー君の住むコンドミニアムの舟で川をさかのぼる。
そのコンドミニアム「バーンチャオプラヤ」に着いて知った道を歩いて行くと、我々の到着を待ちかねたコモトリ君が夕陽を背に近づいて来た。そして3人で、いつもの料理屋の席に着く。
数ヶ月前に、シンガポールからのお客様で店の賑わったことがある。その団体さんが大量に買ってくださったのが「日光味噌ひしお」だった。伺ったところ、これを魚の清蒸に添えることを教えてくださった。そのときから、今回の旅先には「ひしお」を持ち込むことを僕は決めた。
真っ先に注文したのは、鱸の柑橘蒸しである。テーブルに届いたそれに「ひしお」を添えて食べてみれば、なるほど美味い。しかし「ひしお」は、タイの香辛料や香草の効いた蒸し魚より、やはり広東式の清蒸にこそ、より似合うだろう。
オリエンタルホテル横の公共の桟橋には、バーンチャオプラヤ19:30発の舟で戻った。そしてシャワーを浴びてガウンに着替え、枕元に本とメガネを用意して、しかしその本は開かないまま眠りに落ちる。
朝飯 “Centara Grand Beach Resort & Villas Hua Hin”の朝のブッフェの1皿目、2皿目、コーヒー、パン
晩飯 “YOK YO MARINA & RESTAURANT”のプラーガッポンヌンマナーオ「ひしお」添え、クンオップウンセン、トードマンクン、緑貝のミント炒め、”TIO PEPE”