2018.2.9 (金) 安全第一
一体全体、どれくらい前のものか見当もつかない阿弥陀如来の立像が仏壇の下の空間に存在したことを、昨年、叔母に教えられて初めて知った。それは、何代か前の女の人がウチに嫁に来るときに持って来たものだという。その女の人の名は叔母から聞いたものの、すぐに忘れた。僕はそういうことは、覚えられないタチである。それはさておき傷みの激しかったその阿弥陀如来は、叔母との話し合いにより、京都の仏師に預けることとした。
修復を終えた阿弥陀如来は先月、叔母が京都まで受け取りに行ってくれた。
届けられた箱を開け、緩衝材を解いていくと、先ずは蝶番を調整された厨子があらわれた。更にその内側の阿弥陀如来は、いにしえの地震により失われたという右手をはじめその全体に、また光背や蓮台にも極めて精緻な修復がほどこされ、以前の姿を思い出せないほど綺麗になっていた。
阿弥陀如来は、仏師が添えた画像付きの修復説明書や請求書、また代金を振り込んだ際の明細書と共に箱に収め、ふたたび仏壇の下に仕舞おうと考えた。ところがそこにはモノが多く、箱に入れられた、つまり元よりかさの増した仏像を納めることができない。そこで今日は、その空間を片付けることにした。
先ずは兎に角、そこからすべてのものを出すことだ。そうして畳の上に並べられたものが以下である。
・この家の人が亡くなったときの香典帳が多数
・この家の亡くなった人の写真が複数
・この家の人の腕時計や笛などの遺品が複数
・僕の知らない4人の連名による、むかしの1,000円札2枚の入った香典袋
・「記念品」と印刷したのし紙のかかった知恩院の手拭いが複数
・おなじく知恩院に寄付をしたときのお返しのテレフォンカード
・「記念品」と印刷したのし紙のかかった新品の数珠が複数
・僕の同級生がネパールに新婚旅行をした際の土産のマニ車
・何に用いるのか分からない、多分、仏具であろうものが複数
・仏壇の埃を払うための化学繊維の布巾が複数
・おなじく化学繊維のはたきが複数
・大量のマッチ
・お墓で線香に火を点けるためのライターが複数
・普段に使える長さの線香が少数
・普段には使えない形の線香が多数
・普段に使える長さの蝋燭が多数
・普段には使えない太い蝋燭が多数
・香木が複数
・小さすぎて使えない高月
・仏壇を新調したときに付いてきたらしい使わない線香立てが一対
・同じく使わない燈篭と、その電球が一対
・同じく使わないリンと、その台
そのうち、おじいちゃんがインドから買ってきたと思われる、だから半世紀ちかく前の線香や、普段使いに適さない形の線香は、捨てるため紙袋に入れた。布巾もはたきもその紙袋に入れた。長いあいだに溜まった冊子もまた、その紙袋に入れた。2013年秋のリフォーム以来、モノを捨てることは得意なのだ。
そうして仏壇の下の、整理整頓の行き届いた空間の一番奥に、阿弥陀如来の入った箱を納める。「せっかく綺麗になった仏像なのに、勿体ないではないか」と言われても、仏壇のある4階は、地震のときにはひどく揺れる。安全が第一である。
朝飯 ほうれん草のソテー、納豆、塩豆の卵とじ、巻湯波の淡味炊き、しもつかり、大根の麹漬け、たまり漬「おばあちゃんのホロホロふりかけ」、メシ、豆腐と万能葱の味噌汁
昼飯 うどん
晩飯 “TIO PEPE”、トマトと玉子のスープ、生ハムのムース、ブラックオリーブとアンチョビのムース、パン、”Petit Chablis Billaud Simon 2015″、チーズ、チョコレート、”Old Parr”(生)