2018.2.8 (木) ガス
「自営業の経営者は、いつも会社にいるもの」と世間には認知をされているから、毎日、不意に訪れる人がたくさんいる。昼に麺を茹でているときとか、その麺を食べ始めたときの呼び出しなどは、最悪のタイミングである。しかし「昼食の最中ですので、出直してください」などと言えば、相手の心証を悪くする。よって即、食堂のある4階から1階まで駆け降りて社員用通路を事務室まで走り「いやー、お待たせしてスミマセン」などと笑顔を作る。
今日のいきなりの訪問は、うどんによる昼食を食べ終え、キャラメルを舐めつつ新聞を読んでいたときだから、まだ良かった。
そうしてその来客が去ってしばらくしたところで「ガス臭くないですか」と、事務係のカワタユキさんが言う。もうひとりの事務係ツブクユキさんも、ガスが漏れている場所を探すように、事務室の中を心配顔で歩いている。
事務室に隣接した研究開発室の扉を開いて中を見る。ガスの元栓はしっかり閉められている。「とすれば、試食を作るための、給湯器を備えた小部屋だろうか」と靴を履こうとして、ひらめくものがあった。そしておもむろに「ガス臭いのは、オレの口だよ」とカワタさんに言う。カワタさんは一瞬、身を固くした。
4階の食堂から呼び出されたとき、僕の口にはタイ土産のドリアンキャラメルが入っていた。そのドリアンの臭いがガスの臭いと間違えられたのだ。それを説明するとようやく、カワタさんとツブクさんの顔から緊張の色が消えた。
カワタさんとツブクさんには終業前に、そのドリアンキャラメルを1粒ずつ進呈した。彼女たちがそのキャラメルを食べるかどうかは知らない。
朝飯 しもつかり、ポテトサラダ、巻湯波の淡味炊き、納豆、生のトマト、大根の麹漬け、豚肉の白菜巻き、たまり漬「おばあちゃんのホロホロふりかけ」、メシ、揚げ湯波と三つ葉の味噌汁
昼飯 うどん
晩飯 トマトとベビーリーフとモツァレラチーズのサラダ、パン、林檎ジャム、鶏肉と2種のキノコのクリーム煮、チーズ、“Petit Chablis Billaud Simon 2015”