2017.11.30 (木) めくりたくてもめくれない
隨分と酩酊をしながら飲み屋の引き戸を開けたオヤヂが、おぼつかない足取りで、とにかくカウンターのスツールまで辿り着いて「酒っ」と勢いよく注文した。手慣れたもので女将は一合徳利で燗酒を出した。その途端「バカにするなー、もっとデカいので寄こせー」とオヤヂは大きな声を発した。
酒を売る人の偉さは、そのようなときに如才なく振る舞えるところにある。
「あら、ごめんなさい」と女将は、別に温めた酒を、先に出した一合徳利の中身と合わせて大徳利に移し、あらためて客の前に置いた。
「おぅ」と応じたオヤヂは、しかしその燗酒を猪口1杯しか飲めないまま「タクシー、呼べ」と、カウンターにヒジを突き、野球帽をかぶったままの頭を静かに傾けた。ある雪の晩の想い出である。
猪口に1杯しか飲めないにもかかわらず酒は大徳利で寄こせ、というようなことは、僕は言わない。しかし、いま手に握っている杯をいつまで干せないまま次の酒を欲しがる気持ちは、分からないでもない。
事務机の左に提げた今月のカレンダーを、はやく12月のそれにしたい。しかし今日はいまだ11月の30日だ。そしてその、めくりたくてもめくれない気持ちを胸にしまって終業後の事務室を去る。
朝飯 生玉子、たまり漬「栃木県壬生産のしょうがです。」、メシ、豆腐と小松菜の味噌汁
昼飯 「食堂ニジコ」のラーメン
晩飯 蓮根のきんぴら、マカロニサラダ、人参のぬか漬け、刻みキャベツを添えた豚の生姜焼き、麦焼酎「高千穂零」(お湯割り)、“Chez Akabane”のいちごのケーキ、”Old Parr”(生)