手間はかけないけど、
美味しいものをしっかり食べる。
それが「上澤の朝食」です
朝食の準備にかける時間は10分ほど。
忙しいから手間はかけません。
──美味しそうな朝食写真が、毎日ウェブサイトに公開されていますね?
上澤が2001年頃から自分の日記に朝食写真を公開するようになりました。
最初は食事の中身を皆に見られるなんて恥ずかしくて、やめてくれないかなって思ったこともあったんです(笑)。でも、これがきっかけでお客様など、いろいろな方から朝食について声をかけられるようになりました。
──写真を見た方からどのような言葉をかけられることが多いですか
一番多いのは味噌汁の具についてかしら。他のお宅ではあまり味噌汁に入れないような具が多いみたいで、よく驚かれます(笑)
料理の中身より朝食の見た目というか、スタイルについて驚かれることも多いです。1人分を小鉢に取り分け、それをお盆にのせているスタイルが珍しいと言われます。
時には「朝からすごく手をかけて作ってるんですね」って言ってくださる方もいらっしゃるんですが、全然そんなことないんですよ。
うちは商売をやっていて朝は大忙しですから、手間は本当にかけられないんです。
朝食の準備はパパッと10分程度ですませるようにしています。
ただ、手間はかけないながらも、できるだけ美味しく食べてもらいたいので、そのために気をつけていることはあります。
工夫と言うと大げさですが、自分なりに心がけていることというのでしょうか。
【上澤の朝食の手引き】
~頑張らなくても美味しい朝食を作るために~
りえさんが普段から朝食作りで感じていること、心がけていることの一部をご紹介します。
手間はかけないけど、品数多く豊かな上澤の朝食を作るコツがここにあります。
- (1)セロリのサラダ
- (2)茄子と豚挽き肉の炒りつけ
- (3)ジャガイモと玉葱のサラダ
- (4)たまり漬「おばあちゃんのホロホロふりかけ」
- (5)納豆
- (6)オクラとズッキーニの味噌汁
- (1)しもつかり
- (2)未知の野菜のソテー
- (3)たまり漬「刻みザクザク生姜」を薬味にした納豆
- (4)生のトマト
- (5)なめこのたまりだき
- (6)アスパラガスの天ぷらの味噌汁
- (1)じゃこ
- (2)トマトサラダ
- (3)しいたけのたまりだき
- (4)ハムとほうれん草のソテー
- (5)ワカメとエノキダケと三つ葉の味噌汁
【朝食づくりの7か条】
①あたたかい味噌汁とごはんがあれば、おかずは「あるもの」で大丈夫
上澤の朝はごはんと味噌汁が定番です。ごはんと味噌汁がアツアツで、これに漬物があれば、あとはどんなおかずでも不思議とバランスが取れます。洋食や中華のおかずだって合います。だからおかずはバランスを気にしてわざわざ用意しなくても、前日の夕飯の残りやそのときあるものをパパッと並べるだけで大丈夫。あとはたまに簡単な焼き物を添えるくらいです。
②漬物は「切り方」で味わいが変わります
義祖母は手先が器用で、よく大根のたまり漬を細く切ってくれました。
大根の繊維に沿ってごくごく細ーく切るんですが、これが口当たりがふわふわですごく美味しいんです。
他の人ではなかなかこうはならなくて、義祖母が来るとたまり漬切ってくれるのを家族皆で待ったほど(笑)。
上澤梅太郎商店の「ふわふわ大根」は、この義祖母の切り方を形にしたものなんです。
③「常備菜」は時間のあるときに作り置きします
夜や休日など時間のあるときに、ひじき煮などの常備菜を作り置きしておくこともあります。自分が食べたいと思うものを作るから、それほど苦にはなりません。
④バランスは「色」で見ます
おかずの組み合わせも難しく考えません。ただ、色合いだけは気にしています。
色合いがいいと見映えがよくなるのもありますが、いろいろな色の素材を使うことを意識すると、自然とバランスがよくなります。
⑤味噌汁の具は「冒険」します
私は味噌汁の具というと、つい豆腐などの定番を考えてしまうんですが、上澤はすごくアイデアが豊富なんです。「トマトを入れて」と言われたときはびっくりしましたが、いただいてみると美味しいんです。
味噌は味が濃い調味料と思われがちですが、実は素材の味をよく引き出す引き立て役。だから同じ味噌でも、具によって全然違う味の味噌汁になります。
また、味噌は油との相性も抜群です。うちは天ぷらを具にすることもよくありますが、味噌と組み合わせることで、油もさっぱりした後味になります。
具のバリエーションの数だけ味が増えますから、具は冒険するようにしています。
⑥新鮮な野菜は切って盛るだけ
新鮮な野菜はそのままで十分美味しくいただけますよね。だから切って盛るだけです。特にトマトは彩りも良くなるのでよく使います。
⑦「香味野菜」で見た目や味にアクセント
ネギや三つ葉、ミョウガ、大葉などの香味野菜は、見た目にも味にも簡単にアクセントがつくのでよく使います。納豆に添えたり味噌汁に加えたりして楽しみます。
料理好きが多い環境の中で、
自然と皆が食べるのも作るのも大好きに
──【上澤の朝食の手引き】を見ると、手間をかけずに効率よく工夫されているように感じます。
こうしたコツは誰かに習ったのでしょうか?
面と向かって習ったことはないのですが、考えてみるといろいろな人から自然と教えてもらったように思います。
実家の母は料理が得意で、お友達に頼まれて料理教室を開いていたこともありました。なんでも手作りする人で、お誕生日のケーキも毎年母が作ってくれたんです。だから子供の頃は「一度でいいから不二家のケーキを食べてみたい!」なんて思っていました(笑)。
母は料理が大好きで本当に楽しんでやっていました。そんな母の手伝いをするのが私も楽しくて、台所にいるのが大好きな子供でした。
小学生の頃は毎夏、親戚そろって伊豆に遊びに行ったのですが、そのときは叔母が子供たちに料理を教えてくれました。毎年教えてもらっていたので、だんだん子供たち中心で食事を作るようになりました。私も小学校2先生くらいのときには、もう魚を三枚におろして調理に参加。皆でワイワイ作るのがとっても楽しかったです。
──ごはんと味噌汁を中心とした朝食スタイルになったのは、いつくらいでしょう?
私が嫁いで来たときにはもう今のスタイルでした。ごはんと味噌汁と漬物が基本で、おかずを小鉢に1人分ずつ入れる形です。義母は料理屋の娘だったので、とても料理好きで上手でした。器にも凝る人でしたから、義母が1人分ずつ小鉢に取り分けて出すことを始めたのかもしれません。
といっても、料理に関して私が細かく言われたことはありません。義母も料理が好きで、楽しんでやっていたと思います。私もそれを自分で楽しみながら作るようになりました。
上澤の味を教わったという意味では、私にとって義祖母の存在が大きいです。嫁いで来たときからとてもかわいがってくれて、料理もたくさん習いました。地元の伝統料理「しもつかり」の作り方も義祖母が一から教えてくれました。
義祖母はとても手先が器用で、丁寧な料理をする人でした。決して贅沢はしない人で、昔ながらの工夫をたくさん知っていました。いろいろな料理を教えてもらう中で、自然と美味しく食べるコツや工夫も教わっていった気がします。
こうして考えてみると、実家も上澤の家も料理好きの女性がたまたま多かったんですね。その影響でしょうか、上澤も息子の佑基も美味しいものを食べるのが大好きで、自分でもよく作っています。朝食を食べている時に「今日の昼食は何にしよう?」という話題があがったりすることも。うちは食べることが大好きな家族なんですね(笑)
朝食だけは家族そろって。
顔を合わせるから自然と会話もふえます。
──食べることが大好きな上澤家にとって「朝食」とはどういうものでしょう?
うちは朝食だけは皆そろってとるんです。言葉にして決めたわけではないのですが、いつの間にかそれが当然に。息子も昔から朝はちゃんと自分で起きてきて、皆と一緒にご飯を食べます。
皆が集まるから、自然と会話もよくします。あまり意識したことはありませんでしたが、振り返って考えてみると、朝食の時間は家族のコミュニケーションの時間でもありますね。
だからでしょうか、うちは皆、朝食を抜いたことがないんです。「今日はいらない」って言うのを聞いたことがありません。もしそう言ったとしても、絶対食べさせますけどね(笑)。だって食べなきゃ仕事できないでしょう。
朝食は1日の始まりです。美味しくもりもり食べて、家族が顔を合わせて話をして、そこからスタートすれば、今日もまたきっと良い1日になり、頑張れると思うんです。
現代は朝食をとらない人が増えて来ていると聞きます。毎朝作るのが大変というお母さん達の声も耳にします。確かに大変だと毎日続けられませんよね。
だから、大変なことをしなくてもいいんだと思います。あれもこれも買ってこなくちゃとか、頑張って何品も作らなくちゃとか、そんな風に思わずに、あるもので美味しく食べる、それで十分だと思います。
大変だと思っている方々の負担を、上澤の朝食で少しでも減らすことができたら、本当にうれしいです。