村上 「江戸庄」

「江戸庄」 は、僕のeメールの先輩tadさんのお店です。僕はこのお店のある新潟県村上市に行ったこともなければ、tadさんに会ったこともないのに、ウワサを聞きつけて村上牛なるものを取り寄せました。以下はtadさんに送付した、その村上牛の印象です。

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tadさん、お世話になります。

> ご注文ありがとうございます。真空パックって無酸素状態なので
> 赤い発色が当然ありません。なんやこれと怒る人もお出でです。

いやぁ、異常に旨かったです。色については、私はむしろ、木綿で堅く保護された熟成充分の牛肉を思い浮かべました。

SOINTU氏、おぼっちゃま氏、TOSCANA氏、マヒマヒ氏とご一緒した浅草の弁天山美家古のマグロのヅケも、周辺部は濃いめの茶色で、中心部にいくにしたがって地味な赤色となります。

> ーキ一枚分とりその以後は刺身でいけます。
> まあ、表面を焼いてたたきにすればそれもいけますね。

あの肉なら、刺身でもタタキでも、充分にいけるでしょうね。ところで村上牛の印象。物理的なこととしては、普通、牛肉を焼くと台所から廊下から部屋まで例の牛の匂いが充満します。村上牛にはそれが皆無ですね、どうしてでしょう。

そして抽象的なイメージは、以下。

●村上牛の抽象的イメージ、その1

煉瓦の建物が生み出す迷路の街カトマンドゥで、10数年前のある夜、1軒のミルク屋に迷い込んだことがあります。かの地では牛の糞を多く燃料に使いますので、この煙がたなびいて、街はまるで濃い霧に覆われた印象です。そのミルク屋には数脚の椅子と小さなへっつい、そこにかけられた鍋が、ひとつあるきりでした。私のホットミルクの注文に答えてくれたのは、大きな瞳を持った寡黙で内気そうな娘。娘はミルクの表面に浮いた膜を、何度も掬っては私のコップに入れてくれました。

翌日もこの店に行こうと、意識的にもやのかかった迷路に迷い込みました。しかしついぞ、この店を見つけることはできませんでした。村上牛の脂身は、このカトマンドゥのミルク屋です。淡雪のようにそこはかとなく溶けていって、舌には不思議な寂寥感が残るばかりです。

●村上牛の抽象的イメージ、その2

これはスケベな肉です。衣紋を抜いた着こなしの、色白でちょっと脂肪の柔らかい、年のいった女ですよね。子供にこういう物件を食べさせても良いのか、どうなのか。遊亀は村上牛ということで、最初から自分で大根をテンコ盛りにおろし、それを肉と共に食べていました。美味かったのでしょうね、いつもよりもかなり早いペースで完食しました。

優れたものは決まって、それまでの普遍的な印象を覆しますね。"something other" という感じ。メルセデスのゲレンデ・ワーゲンに乗った年長の友人・横田柔道の第一印象 「これは何か別のものだよ。宇宙から飛来したような」 を思い出します。

 ともあれ、ごちそうさまでした。(^^)/

1997.1231(Wed) 17:12 清閑 uwasawa.takuya@nifty.ne.jp

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村上 「江戸庄」
江戸庄
〒958-0842 新潟県村上市大町2-17 TEL.0254-50-1181
1997.1230