テレビに、こぢんまりとして感じの良い、光と風にあふれたフランス料理屋が映っている。その料理屋には、メニュがないという。客は 「きょうは何が食べられるのだろう?」 と、まるで会席料理屋へおもむくように、心を弾ませながら店を訪なう。
経営者兼料理長が、「お客様には、過去にお召し上がりいただいた料理をお出しすることはありません」 と、語っている。カメラはここで、ゆっくりと横へ移動する。「シェフの部屋」 へ歩いていくこの店の主を、画面が追いかけていく。
マホガニーのテイブルに、象牙色の素晴らしいデザインのコンピュータが置かれている。主がそのテイブルへ近づいていく。僕はそのコンピュータが電源ボタンを押され、未来的な電子音と共に起動するのを、ワクワクしながら待っている。
やがて主はそのマホガニーのテイブルを回り込み、コンピュータの前を、、、通り過ぎ、これまたマホガニーの巨大な書棚から分厚い顧客台帳を取り出して開いた。
ここで僕はガックリと頭を垂れる。他の番組にチャンネルを回すべく、机上にリモートコントロールを探す。
フランス料理屋のコンピュータには、どのようなソフトが入っているのだろう。"Excel" だろうか、"FileMaker" だろうか、それとも "Access" だろうか。いずれにしても、このコンピュータは動いていない。応接室の飾りとしてのみ機能する革表紙の文学全集と同じ役割を与えられた、哀れな存在だ。
動かないコンピュータと決別するために、このフランス料理屋の主は何をすべきか? それは、以下の3点に絞られる。
* 一抱えほどもあるコンピュータとは決別し、モーバイルコンピューティングを迎え入れる。
* "My Tool" をダウンロードする。
* 僕あてに "My Tool"の習得法を乞うメイルを送る。
売れているソフトと使えるソフトが、イクォールで結ばれているとは限らない。多くの人は、市場のシェアに誤魔化されている。