コンピュータが得意とする機能に、サーチ(検索)とソート(並べ替え)がある。
世の習いとしては、ひとつひとつの点を探すサーチの方が、多く用いられるだろうか。しかし、色濃い中心へ向かう周辺の階調から何ものかをつかもうとするソートこそが、実は面白い。
飛行機による旅はサーチだ。点から点への移動。成田空港を飛び立って、ただ座っていれば、いきなりカルカッタの混沌にたたき込まれる。乗り合いバスや鉄道あるいは徒歩による旅は、ソートだ。目的地から目的地へのグラデーションに、無数の楽しみが散らばっている。
ある秋の一夕、銀座の真ん中にあるとは思えないひなびたモツ焼き屋で、生の焼酎に赤ワインをチョロリと入れた 「ブドウ」 を飲んだ。 このブドウ、店のオキテで3杯しか飲めないことになっているけれど、2杯も飲めば充分の強烈な酒だ。
その後、銀座5丁目の近藤書店、地下鉄銀座駅のキヨスク、本郷三丁目駅前の文泉堂で、計6冊の本を買った。
僕によって1冊だけ買われた本を見ても、僕の人物はなかなか分からないだろう。しかし僕が選んだ6冊の本を俯瞰すると、僕という何かが浮かび上がってくるかも知れない。
オンライン書店の検索サーヴィスで、めざす1冊の本を見つけて購入することはサーチ。ある秋の晩に重篤なアルコール中毒患者として本屋へおもむき、書棚をめぐって目にヒットしたものを次々と買っていく行為はソート。
どう考えても、ソートこそ面白い。コンピュータにおいても、また日常においても。