狭き門は楽な門

1996年10月30日発行の 「自由学園同学会報」 に、僕の 「狭き門は楽な門」 という文章が掲載されました。原文からこちらへ引き写す際、一部の語句に訂正を加えました。またブラウザで読みやすいよう、改行位置を変えています。


狭き門は楽な門 自由学園35回生 上澤卓哉

皆さん、こんにちは。 私は今この原稿を、秀丸という、当初はコンピュータ ・ ソフトのコーディング用に開発されたエディタで書いています。

これで文章を書くと私の場合、限りなく口語に近づくことを、お許しください。なぜそうなるかといえば、私がこのエディタをEメイルに使っているからです。

ところで 「狭き門は楽な門」 という題名は今年の初めに、自分がいつも持ち歩いているコンピュータのことを考えていて思いついた言葉です。

コンピュータに最重要なものは思想です。そして思想とは 「自分のしたいこと」 を具現化する根本です。私がソフトを選ぶとき、そのシェアや知名度はまったく考慮の外です。大切なのは、それを使って 「何がしたいのか?」 これにつきます。

シェアや知名度に関係ないとは、自由学園にもいえることです。卒業生の数が○万人だとか、有名だとかいうことが、その学校の価値にはなりません。

シェアは狭く知名度の低いソフトで組み上げられてはいるけれど、確固たる思想を持つコンピュータ。卒業生の数は少ないけれど、制帽のマークの真っ先に思想(Thought)が位置する学校。 「自分のしたいこと」 を具現化する根本を持つということに、まさに 「狭き門は楽な門」 を実感します。

ところで私は現在、パソコン通信の道具としてニフティを使い、電子会議室ホームパーティ(以下HP)を主催しています。参加者は自由学園OBをはじめ、遠方では九州の中小企業診断士、果てはインド洋上に出張中の海洋観測船のスタッフまでと、かなりの広範囲に及んでいます。

HPの長所は、1対1の封書のようなものではなく、多対多の芋洗い形式である点です。つまりはデジタルな東天寮。

参加者が規律ある自由な環境の中で、コミュニケイションを重ねる。情報の寡占化は起きず、HP内にアップされたすべての発言を参加する全員が読み、発信と返信を繰り返しながら向上していくシステム。

同学会HPを開設すれば、毎日がホームカミングデイになります。そしてデジタルONのHPと、時には実際に顔を合わせてのデジタルOFF。効果は計り知れなく大きそうです。

「とりあえずやる、後で直す」 これが創造の原動力ですよね。

上澤卓哉 ID:uwasawa.takuya@nifty.ne.jp


同学会報 '96 No.4 通算第74号 1996年10月30日発行 発行/自由学園同学会 編集/同学会広報委員 〒171-8510 東京都豊島区西池袋2-20-16 婦人之友社内 自由学園同学会事務局 製版 ・ 印刷 三好印刷株式会社


(注1)ニフティの 「ホームパーティ」 は、より規模の大きな 「パティオ」 に発展吸収されました。 (注2) 「東天寮」 とは、自由学園男子部中等科1年生から高等科3年生までが共に生活する寮。 (注3) 「同学会」 とは、自由学園の卒業生会。


狭き門は楽な門
1996.1030