2024年6月15日に配布したうめたろう通信vol. 47 のバックナンバーです。
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うめたろう通信2024年6月15日号1枚め
うめたろう通信2024年6月15日号2枚め
うめたろう通信2024年6月15日号3枚め
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うめたろう通信2024年6月15日号8枚め

【 巻頭 】今市歳時記(13)

五月の爽やかな暑さから梅雨入りする頃、また、梅雨明けかあ本格的な夏がやってくる頃、この地域では毎日激しい雷をともなう夕立があります。「雷三日」といって、季節の変わり目にはかならず三日間は雷が続くよ、という言い伝えがあります。例年ですとそろそろのはずなのですが、ことしはまだまだ五月の暑さに引っぱられた毎日がつづいています。これが野菜やお米の生育にどう影響するか……。いまのところ、順調ではありますが、さいごのさいごまで気は抜けません。
もくじ

  • 【 巻頭 】今市歳時記(17)
  • 【 読みもの 】一般漬物学入門(18)・・・1
  • 【 ご説明 】セットの内容について・・・2
  • 【 お知らせ 】汁飯香の店 隠居うわさわ・・・6
  • 【 巻末 】下北沢に出展しています

【 読みもの 】一般漬物学入門(18)

 一月、あるていど漬かってきたカブのススホリは、拍子抜けするほど普通の「カブの漬物」であった。京都の名産品「すぐき」はカブの一種を乳酸発酵させた漬物であるが、これとほぼ同様の味わいがある。現代の原材料と現代の道具立てを使用しているのだから当然かもしれないが、漬物(古漬け)の基本的な技術は、この当時から現在に至るまで、ほとんど変化していないことがわかる。製造フローの最初の工程にあたる塩蔵工程についてはイノベーションが起きておらず、むしろその後の諸工程においてさまざまな工夫が施された、というのが漬物(製品)の歴史ではないかと思われる。
 五月一三日、フタを開けると、クリーム状の膜が全体を覆っていた。膜にさわるとヌルヌルしているため、米由来のでんぷん質が滲出したところに、産膜が張ったものと思われる。また、全体的に液成分が黄色味をましており、ほのかなアルコール臭と酸臭がした。カブ由来の硫化物の色、あるいはメイラード反応による着色と考えられる。水気を切って計量してみると、約910gであった。一月にサンプルとして採取したものとあわせると、約980gとなる。計算上の仕込み塩度としては約5%なので、漬物980gのうち塩分は約50gとなり、カブそのものとしては930gになったことが示唆される。仕込み時のカブの重量は1200gほどだったので、水分がぬけて、歩留まりは80%となった。

【 ご説明 】セットの内容について

日光の梅雨をいつくしむセット

 このたびは第46回目の日光美味定期便にお申込みいただき、誠にありがとうございます。当店では、いま、あじさいが見ごろを迎えつつあります。気持ちのよい陽気の日がつづく半面、雨が少ないのが気にかかってきています。それでは以下、今月の内容です。

ただいま、「日光味噌 梅太郎」が欠品しております。大変申し訳ありません。急な需要増に、味噌のように長い熟成期間を要するものは、なかなかお応えすることがかなわず、しかし、日用品でもあり、非常に申し訳なく思っております。おそらく今回お届けするものと似た味わいで、10月~11月には復活できるものと思います。何卒ご容赦いただけましたら幸いです。

一、上澤梅太郎商店(日光市今市春日町壱)の木桶仕込み味噌(五〇〇g入)

 ふだんは当店以外の生産者さんのお品物から紹介していますが、今回はこちらからご紹介させていただければと思います。
 当店の建屋や設備は、日光宇都宮道路(自動車専用道路)が建設された一九七〇年代に、バイパス整備の区域と重なり、古いものはすべて取り壊しの対象になってしまいました。唯一残ったのが「隠居うわさわ」の建物なわけですが、そのタイミングで、備え付けの木桶等はすべて失われてしまいました。新しい道路は沢山のお客様を運んできてくれたし、新しい設備は、近代的な「合理化」の観点から、当時として最善の選択だったことは理解できます。当店としては、同時に、社長でもあり、かつ、技術面でもクリエイティビティを発揮していた上澤梅太郎が亡くなるタイミングが重なりました。設備が更新され、社長かつメインの醸造技術者だった梅太郎が亡くなったことで、「伝統技法」についての継承がなかなか難しくなった、という課題も残されました。しかしながら、日々の作業のひとつひとつの作法に、ミームのように残ったものがあったのも事実です。
 このたび、おそらくは約60年ぶりに、木桶を使って味噌を仕込んでみました。麹米にはおなじみ八木澤ファームさんの日光棚田米(コシヒカリ)を、大豆は日光市内産の「里のほほえみ」を使用しました。昨年三月に仕込み、自然の気温で熟成させる天然醸造の製法をとり、ひと夏・ひと冬を越えて天地返ししたお品物です。で、肝心の味はどうかというと……そこは皆様でお試しいただき、ご評価いただけましたら幸いです。

近年、コメを中心とした和食素材(みそ、しょうゆ、漬物、佃煮、干物などなど、、、)の消費量は減少の一途をたどっており、大変な危機感を覚えています。一方で「塩麹」ブームを発端として、「手前みそ」づくりなど話題になっており、その価値が見直されつつあります。一汁一菜に代表される普通のたべものが、普通においしく食べられる、その「普通」を大切にしていきたいと思います。

二、松葉屋さん(日光市今市春日町壱)のお徳用あげゆば

お味噌にあわせていただくのは何がいいかと考えたとき、やはり、安定の松葉屋さんにお願いをすることといたしました。
下ゆでして油ぬきをしたら、お味噌汁や煮物の具材としてお使いください。また、賞味期限の短いお品物ではありますが、冷凍保存が可能です。すぐにお召し上がりいただけない場合は冷凍してください。冷凍後1ヶ月ていどはおいしく召し上がっていただけます。

味噌も、ゆばも、ようかんも、すべて豆。もともと精進文化からでてきているもので、東アジアの食文化の特徴をつくっているとも言えそうです。前職で中国の田舎に住んでいたころ、ゆばや厚揚げのバリエーションの豊富なことには驚きました。ほとんど乾燥していて、生食のものはあまりなかったように思います。水の清らかさが、日本文化の特徴を作っているのかもなあ、と思っていました。

三、三ツ山羊羹さん(日光市上鉢石町)のひとくちようかん8個入り

日光銘菓から、三ツ山さんのようかんを。小豆の香りが濃厚で、甘みもしっかりした、昔ながらのようかんです。もともとは棹ものが定番で、個人的にはこれを透けるほど薄くきってぺろぺろ舐めるように食べるのが好み(ちょっと汚くてすみません、)ではありますが、利便性を考えてこちらを選ばせていただきました。濃いお茶と合わせて、また、豆どうしコーヒーとの相性も良いように思います。

四、上澤商店のすなっぷえんどうのたまり浅漬け

旬のスナップえんどうを、さっと下ゆでして、たまりにつけこみました。さくさくした食感と、旬ならではの甘みをお楽しみください。

五、上澤商店のひとくちなす

栃木県産の茄子をたまりに数年間漬け込んで熟成させた「なすのたまり漬」をひとくちサイズにカットしたものです。ねっとりとした果肉と、発酵熟成の作用によって、まるで杏のような芳香がしてきます。「汁飯香の店 隠居うわさわ」では、これに練りからしを和えて提供しています。ごはんのおともや酒肴にぴったりです。

六、上澤商店の「ピリ太郎」

定番のらっきょうのたまり漬に、大阪・堺の伝統野菜としての唐辛子を和えたものです。辛味のなかにも旨味のある唐辛子の風味が生きています。刺激感をお楽しみください。

    

今月もありがとうございました。当店としては、ちょっとした技術的な挑戦があった今月の内容でした。ご感想いただけましたら幸いです。次月の内容は、

  • ・お盆まえの地元銘菓、
  • ・暑さをしのぐ銘菓、
  • ・当店のお漬物ラインナップ

を予定しています。 
みなさま、じめじめ暑い季節ですが、何卒ご健康にお過ごしください。

【おしらせ】

汁飯香の店
隠居うわさわ

ごはん、味噌汁、潰物のよろこびをお伝えします。

〒321-1261
栃木県日光市今市487
Tel 0288-25-5844
毎週土日月のみ8:30-14:00まで営業
*一組様ずつ土鍋で炊飯するため、事前予約いただけると助かります。
0288-21-0002(代)
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【 巻末 】下北沢に出展しています

 一昨年から、毎年6月に1ヶ月間、下北沢BONUS TRACK 内にある「発酵デパートメント」でのポップアップを開催させていただいています。小田急がいわゆる「開かずの踏切」解消のため、東北沢~世田谷代田の区間を地下化したことに伴って、地上にできた広大な線路跡地を再開発したのが「BONUS TRACK」です。下北沢は演劇や音楽、古着屋さんなどのいわゆる「若者の街」。再開発によって若い人たちが住めないような街になってしまうのでは、、、というのは杞憂でした。むしろ若い人たちが小規模に起業できる街区として再整備されました。そのうちのひとつが発酵デパートメント。発酵をストリートカルチャーのごとく発信しています。
梅太郎通信 vol.47
2024年6月15日

文・絵・レイアウト
上澤佑基
発行者
株式会社上澤梅太郎商店
発行所
株式会社上澤梅太郎商店

株式会社上澤梅太郎商店
〒321-1261栃木県日光市今市487
0288-21-0002(代)