生理的なおいしさ、心理的なおいしさに加え、おいしさにはもうひとつ重要な要素があるように考えている。
それは、味の多様性の共存を条件とするものだ。
味の多様性の共存を、一言で表す言葉がうまく見つからなかったため、ひとまずここでは「フーディ的」とすることにした。
「フーディ」とは、食べることそれ自体が個人の人格形成に大きく関わっているような人を指す。


 生理的・心理的においしいものであっても、多様性に乏しい食卓はきっとわびしい。
例えば、すき焼き・生姜焼き・筑前煮は確かにそれぞれご馳走ではあるが、すべて畜肉と野菜を醤油を基本に調味したものであり、同時に並んだら一様に平板な味に感じてしまうだろう。